SCP-4029
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財団記録・情報保安管理局より通達

SCP-4029の収容プロトコルと説明は現在、最近の進展を踏まえて修正中です。調査が完了し次第、改訂版がデータベースにアップロードされます。詳細は補遺1998-12-06を参照してください。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ

アイテム番号: SCP-4029

オブジェクトクラス: Keter

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エジプト、アスワン。SCP-4029はサーモン色の建造物(右)の左側に位置していた。

特別収容プロトコル: 機動部隊ウプシロン-Peorð (“スリングズ・アンド・アロウズ”)1のユニットが、貫通性の無い鈍的攻撃、大きな音(130~140デシベルの間)、明るいストロボライト、その他様々な感覚刺激を組み合わせてSCP-4029を人口中心部から遠ざけます。SCP-4029が休眠状態に入った時は必ず反ミーム障壁をその周囲に構築します(説明を参照)。SCP-4029を移動不可能にする手段が現在研究されています。

説明: SCP-4029はかつて█████工業社の地域本部だった大規模オフィスビルで、体節がある機械仕掛けの脚10本2(うち2本は先端にハサミが付いている)を使用した移動が可能です。SCP-4029は低レベルの自我の兆候を見せており、自己保存の本能を示し、外部からの刺激に反応します。SCP-4029は完全な水密性で、正面入口の代わりに設けられた単一のエアロックからのみ入場できます。構造の内部には透き通った栄養豊富な3液体が充満しています。入口にアクセス可能なのはSCP-4029が休眠状態または不動の間だけです — 休眠する時のSCP-4029は、正面入口が地面と同じ高さになって脚が完全に隠れるまで、地中に脚を埋め込みます。

SCP-4029の内部は本来のレイアウトから殆ど変化していませんが、以下の注目すべき例外があります。

  • 前述した液体から老廃物を抽出し、液体を再充填するために改造された空調システム。
  • 照明やカメラなど、数多くの(全てではない)電気設備に施された防水処理。
  • 4階と5階の中心部にある、何も無い広い空間(詳細は探索ログ4029-1を参照)。
  • ワークステーションが密集した一区画。それぞれのワークステーションには小さな金属製のデスクと標準的なオフィス椅子(どちらも床にしっかり固定されている)、そして1970年代のマイクロコンピュータ1台が収容されている。マイクロコンピュータは製造元不明で、配線の束が背面から床、天井、壁の大きなポートまで延びている。これらのワークステーションの~98%は、首の後ろに挿入された透明なプラスチックチューブで酸素を供給されている人間が占有している。大多数の人物(SCP-4029-1と指定)は█████工業社の元・従業員のように見えるが、身元不明の個体もまた観察されている。

SCP-4029-1個体群は月曜日から金曜日(祝日を除く)、09:00から17:00まで、各々のワークステーションで基本的な計算(加算・減算・増分など)を行います。SCP-4029-1が活動していない期間のSCP-4029は完全に休止状態かつ無反応です。これはSCP-4029の知性がネットワークの創発特性である可能性を示唆しています。

以下はSCP-4029の出現を巡る時系列です。

日付 出来事
1929/9/29 █████工業社が破産宣告を受ける。
1979/9/30 過去に█████工業社が所有していたオフィスビルが隣の建物に向かって著しく傾いている様子を写した写真がエジプト、アスワン市の新聞に掲載される。
1979/10/3 SCP-4029は正午頃に自らを地面から引き抜き、20分以内に重大な物的損害、200名以上の負傷者、100名の死亡者をもたらす。SCP財団はエジプト軍が対応して境界を設定するまで関与できなかったが、暫定的な収容措置として反ミーム障壁を構築し、アスワン市内を逃げ惑うSCP-4029の知識を抑制することができた。
1979/10/4 財団はすでに現地にいたエジプト軍と協力し、SCP-4029を市内から無人の砂漠地帯へ追い出す。11:00までにSCP-4029は無事アスワン市外へ出される。サイト-29でSCP-4029(当時はURA-2979)の収容を議論する会議が招集され、R&Cチームは2班に分けられる。一方の班はアスワン市内/周辺で記憶処理と偽情報作戦を展開し、もう一方の班はSCP-4029自体の収容を行う。
1979/10/5 機動部隊ウプシロン-Peorðの活動休止ユニットが、SCP-4029をサハラ砂漠の遠隔地に誘導し続ける任務に割り当てられる。収容プロトコルが承認され、その後間もなく記憶処理作戦が開始される。
1979/10/10 SCP-4029は依然として未収容だが、休眠期間と容易に予測できる性質のために管理可能と見做される。SCP-4029の存在に関する知識が民間社会から一掃された時点で、SCP-4029は収容済の異常存在であると宣言され、現在の指定名称が与えられる。SCP-4029の収容は注意を要する状態が無期限に維持されており、新たなアイデアが出た場合には収容プロトコル改訂が予想される。

SCP-4029が█████工業社の破産後も探索されず無人のままだった理由は不明です。SCP-4029は現時点でミーム的/反ミーム的特性を帯びているとは考えられていませんが、1929/9/29から1979/10/3まではその類の異常性が存在した疑いがあります。█████工業社そのものに自己抑制的な情報性質があるという理論も調査中ですが、まだこの仮説を裏付ける証拠は発見されていません。

補遺1980-01-29 | 探索ログ4029-001:

序: 1980/1/1以降、ドローン探査では情報が得られなくなった。SCP-4029-1個体群(推定4)はドローンを捜索し、破壊してエアロックから排出した。これに伴い、数機のドローンが唐突な通信断絶後にSCP-4029内部でロストした。SCP-4029の有人探索を実行するための機動部隊が設立された。

記録装置がロストした場合の予防策として、研究チームが暫定サイト-4029(SCP-4029は移動するので常設サイトを設けることができない)から映像を監視・記録した。

探索隊: 暫定機動部隊デュプリク-4(“インナー・ワーキング”)の隊員は以下の通りである。

  • エージェント ジェシカ・ウォーターズ; 機動部隊ゼータ-9元・隊長、機動部隊アルファ-5隊員。異常空間の探査においてチームを指揮した実地経験あり。
  • エージェント ラングドン・ファーマー; 機動部隊ゼータ-9ナビゲーター。異常空間で進路指示を行った実地経験あり。
  • エージェント ジョン・ショルツ; 機動部隊ガンマ-6元・隊員。浸水環境その他の液体が充満した領域で進路指示を行った経験者。
  • レスリー・ハリントン博士; 生化学者/超常物質研究者。
  • D-004590; 3件の殺人罪で投獄されていた元・海洋写真家。発話障害者。
  • エージェント 4-B-モーティス; 壊れた神の教会からの亡命者。フィールド任務に参加するという条件の下で財団に保護されている。酸素供給を必要とせず、大部分の毒性環境から影響を受けないために選抜された。
  • エージェント ヴィンセント・ラフェリエール; 複数の機動部隊に所属し、幾つかの致命的ミッションに参加した経験豊富なエージェント。特にSCP-4029との関わりは無い。

ログの関連領域から回収された文書が各ログに添付されている。これらは全て以下の探索任務で発見された。これらは今日までに回収された唯一の書類であり、一部は水害を受けているが部分的に判読できる(転写に際し、水害を受けた部分は"[…]"で表されている)。






機動部隊員7名のうち5名は、翌週土曜日の休眠期間中、裸体かつ無意識の状態で-4029のエアロック内から発見された。探索機材は現在まで回収されていない。ファーマーとウォーターズは斑状に皮膚が変色し、さらにファーマーは左目を恒久的に失明していた。モーティスは身体の化学組成やSCP-4029内で過ごした時間と一致しない酸化を示しており、左腕と腹部パーツの一部を失っていた。ハリントンは回収後間もなく致命的な心臓発作を起こした — 死因は大量の標準的なオフィス用ホチキス針が全ての主要な動脈に存在したためと断定された。ショルツは無傷で発見された。エージェント ラフェリエールは回収されておらず、ヒレンバーグ博士の監督の下で再配属が保留されている。D-004950は建造物内に留まっているものと推定されている。

補遺1998-12-06 | SCP-4029の劣化:
異常に長期間の休眠(1週間)の後、SCP-4029の上部を構成していた建造物は、天候による損傷の蓄積が原因となって崩落しました。建造物内からは明らかに全ての貴重・複雑な構成要素が除去されており、液体は排出されていました。28体の死体と共に、1体の女性SCP-4029-1個体が瓦礫から回収されました。心的外傷のため、対象からは有益な情報を得られていません。しかしながら、対象は以下の手紙を所持した状態で発見されました。

  • 文書4029-14:

ベントレーへ



█████工業はもう存在しない。君は幽霊のために働いている。君の居場所からは見えないだろうが、もう誰も我々の名前すら覚えていない。私は敢えてそう望んだ。事実、もう誰も私を記憶していない。

しかし、君はその無意味な仕事から離れられる。君の無意味な人生から。実在から。それが君にとってどれほどの困難か我々は分かっている。毎日の出世競争。終わりの無い重労働。恐ろしいほどの単調さ。君が必要とすらしない馬鹿げた退屈な事をして給与を受け取るためだけの、九時から五時までの不愉快で馬鹿げた仕事。より壮大な何かの一部になるのに憧れて君の中で疼く虚無を満たすことはできない。いや、もうそれは憧れではない。君も気付いているはずだ。

きっと怖れているだろう。不安がっているだろう。心配する必要など無いと伝えるために、私が此処に居る。君は既にそれを感じるかもしれない。まぁ確かに、この水準まで身を屈めなければならないのには閉口させられる。だが心配しなくていい。君にも理解できる言語で話しかけるつもりだ。今まで自分が話せるとは思ってもいなかったであろう言語。人間を超越した人間にぴったりの、言語を超越した言語。

上級管理職へようこそ。





敬具、ハワード

これらの発展に加えて、SCP-4029の機械的下部は完全に失われており、東に向かって地質学的な擾乱の跡が残されていました。Keter分類は留め置かれたまま、研究が進行中です。

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