SCP-4078
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アイテム番号: SCP-4078
レベル1
収容クラス:
neutralized
副次クラス:
none
撹乱クラス:
none
リスククラス:
none

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SCP-4078

特別収容プロトコル: 財団公共歴史部門は、SCP-4078のかつての異常性が一般社会に認知されるのを防ぎ、かつ旧ソビエト連邦の農業関連の記録を改竄するために、引き続き歴史記録の改変を行います。同様に、ラマルキズム遺伝法則は誤りであるという従来の科学的コンセンサスを覆す全ての証拠や研究は、財団公共科学部門によって抑制されます。

説明: SCP-4078は旧ソビエト連邦のクラスIV現実改変ヒト型実体、生物学者、政治思想家のトロフィム・ルイセンコでした。大半の現実改変実体とは異なり、SCP-4078の現実改変効果は意識的に使用・制御される異常な能力ではなく、SCP-4078が存在する状況下での物理的・生物学的法則の歪曲という形で発現しました。即ち、SCP-4078は非異常な経験科学ではなく自らの信念によって、疑似科学的な実験の成り行きを左右し、異常な成果を得ることができました。

補遺4078-1: 発見

その生涯において、SCP-4078は主流のダーウィン進化論とメンデル遺伝学から著しく逸脱した、生物学的遺伝に関する疑似科学理論を推進しました。ソ連当局の承認を得たSCP-4078は、実質的にソ連における正当な遺伝学の分野全体、並びにその分野に属するソ連の科学者たちを糾弾・追放し、数多くの科学者が逮捕・殺害されました。

後年“ルイセンコ主義”と呼ばれたSCP-4078の理論は、生物がその生涯において獲得した属性や行動様式が遺伝すると主張した、より古い時代のラマルク学説に類似していました1。公には、SCP-4078はこの手法でソ連の農業に変革をもたらすことが可能だと主張していましたが、ソ連共産党の内輪では、ソ連の権益を世界に広げるために異常な生命体やバイオ技術を創出することを約束していました。

SCP-4078_presenting.jpg

ヨシフ・スターリン (右端) をはじめとする共産党員の前で自説を発表するSCP-4078 (左) 。

SCP-4078の異常性は、第二次世界大戦の終戦後間もなく、財団の戦後監視委員会が実施した調査で明らかになりました。財団、西側諸国、独立した科学研究がいずれもSCP-4078の学説とその結果をソ連のプロパガンダとして否定したのに対し、SCP-4078が約束した結果を裏付けるような諜報上の証拠が相次いで得られました。その後の調査で、SCP-4078は自らの異常な能力を利用して、後にSCP-4078-Aと指定される生命体の創造に成功したことが確証されました。

検証されたSCP-4078-A生物の抜粋
指定 生物種 注記
SCP-4078-A1 各種の農作物 小麦、ライ麦、大麦といった数種類の植物。温度変化や水分への曝露などの特定の条件下で、劇的な細胞変態を起こし、別品種の植物に変化する場合がある。財団の植物学研究ではまだ再現されていないものの、既存の標本はほぼ無制限に制御可能。
SCP-4078-A2 哺乳類 数種類のイヌ。個人資産額、家族の社会経済的歴史、経済的思想によって人間を区別し、追跡することができる。回収された最後の標本は1959年に死亡し、能力が再現されることはなかった。
SCP-4078-A3 微生物 数種類の一般的な細菌株。特異な細胞分裂特性を有する。調査でその具体的な異常性や用途はまだ解明されていない。
SCP-4078-A5 鳥類 [補遺2参照]。全ての標本は終了されたか、或いは実質的に追跡不可能なほど散逸したと考えられる。

補遺4078-2: 終了

1953年、戦後監視委員会・ソビエト連邦部門長のジョセフ・マイヤーズ博士が、以下の終了指令書をO5評議会に提出し、承認を求めました。

終了指令書 TO/SHA/1953/Feb-027

日付: 1953/2/19

対象: ヒト型アノマリー疑惑実体 SHA-176、別名トロフィム・ルイセンコ。職業: VASKhNIL (全ソ連農業科学アカデミー) 遺伝学研究所所長。モスクワのアカデミー本部と█████の保安施設を交互に行き来している。

状況: SHA-176は自らの地位を利用して、科学者、農家、その他の農業従事者に異常な超科学的方法論と理論を強要しています。論理的に考えれば、これらの技術はソ連経済を著しく低迷させるはずですが、当部門に提出された諜報報告書 (添付) によれば、SHA-176の理念が及んでいるソ連の様々な経済セクターでは、総生産量の推定値と実績値にかなりの不整合が見られます。SHA-176は共産党に入党して以来、異常な性質を持つと思われる技術を実現すると約束していたために精査されていましたが、共産党の序列に潜入した財団の諜報員はこれらの異常性を確認できていませんでした。この強力な証拠に鑑みて、当部門はサイト-17からカント=ブランニング・カメラの試作機を借り受け、SHA-176の異常性を確認しました (具体的な測定値を添付) 。

異常な生物学的現象が広まる可能性に加え、ソ連国民の間で (もしくは、考えたくもありませんが、ソ連軍の内部で) 異常な慣行が横行する恐れがあるため、SHA-176の存在は財団の利益に対する明白かつ差し迫った脅威です。従って、大至急終了する必要があります。

手法: 財団によるこの種の攻撃は、通常ならばアメリカやイギリスの偽旗を掲げて行われます。しかし、現在の政治情勢がそれを許しません。同様に、民間人への巻き添え被害の恐れや、我々の工作員が捕獲・尋問される危険性があるので、モスクワやその周辺での攻撃も実行に移せません。従って、SHA-176を奇襲し、圧倒的な戦力で排除するには、ソ連当局が自ら進んで証拠を隠滅してくれる実験施設内が最適な場所です。

諜報報告によると、この書類の作成時点から3週間以内に、SHA-176は私的な研究施設へと引き揚げます。現地で採用された、いざとなれば財団との関係を否認できる工作員から成る機動部隊と、当部門が取得したイリユーシン爆撃機飛行中隊は (職員ファイルを添付) 、研究施設がある████████渓谷に到着したSHA-176とその護衛を奇襲します。持続的な爆撃の後、工作員が着陸して廃墟を調査し、生存者と、排除すべき異常生命体の証拠を探します。

SHA-176に対する我々の最大の強みは、あれが自らの異常性に気付いておらず、科学者を自認している点です。SHA-176は生物学の法則を歪めることは可能かもしれませんが、我々と同様に、銃弾や砲弾の基本的な物理学を制御することはできません。

署名、
マイヤーズ部門長

戦後監視委員会
ソビエト連邦部門

O5評議会は翌日この終了指令を承認し、翌月中に作戦を完了させるために、ソビエト連邦部門が選抜したエージェントの起用を許可しました。

回収された映像: SCP-4078の終了

序: 作戦に関与した爆撃機のうち2機は、作戦を記録するための撮影班を載せていた。当時の技術力の限界によって、映像は無音である。作戦中に起きた出来事によって、回収された映像は全て著しく破損していた。識別可能な映像の書き起こしは以下の通り。



00:00: 任務開始。爆撃機部隊が離陸し、撮影班が記録を始める。

01:02: 研究施設が下方に見えてくる。この施設は渓谷の底に密集したコンクリート製掩蔽壕から成っており、周囲は深い森に囲まれている。これらの掩蔽壕は後ほど、主に地下空間への出入口として使われていたことが判明する。未舗装路が1本だけ施設に通じている。

01:46: 護送車隊が施設への通路を下って来るのが見えてくる。

01:52: 明らかな戦略ミスで、地上部隊が所定の位置に到達した護送車隊を迎撃できる場所にいない。信号が届かないため、爆撃機は攻撃を控える。約3分後、映像が破損して断続的になる。

02:02: 映像が回復。この時点で、地上の機動部隊は既に施設の警備部隊と交戦している。

02:07: この時点で、施設の境界フェンスは破られ、掩蔽壕はほぼ廃墟化している。工作員らが施設に突入する。

02:11: 工作員らが施設から退避し始め、その多くが重傷を負っている。カメラ1が小さな暗色の飛行実体の集団を記録するが、そのうち1体がカメラ1に向かって加速し、カメラ1は機能を停止する。

02:12: カメラ2は、同じ飛行実体が作戦行動中の別な爆撃機に群がる様子を記録する。群れが機体を突き破り、未使用の弾薬が空中で爆発し始める。

02:14: まだ飛行しているのはカメラ2を搭載した爆撃機だけである。地上の工作員らは既に撤退したらしく、生き残ったパイロットは接近する未確認飛行実体からの逃亡を試みている。

02:16: 映像が完全に劣化する。


結: 作戦が壊滅的な結果に終わったため、共産党の綿密な監視が続けられ、情報や残存アノマリーを回収するための更なる作戦が実施された数ヶ月後まで、SCP-4078の終了処分成功は確認されなかった。SCP-4078の死はその後10年以上公表されなかった。

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