SCP-4087-JP
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インシデント4087-JP-0211発生地点付近

アイテム番号: SCP-4087-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 警察機関に配置中の財団エージェントを中心に、SCP-4087-JP関連の失踪者を観測する監視網が確立されています。該当する失踪者の発生時は近隣のサイトに通達されるため、適切な拘束手順を執行できる職員が確保に向かってください。適合する人員がいない場合、機動部隊な-4"森禍"へ応援を要請することが可能です。

説明: SCP-4087-JPは、日本国内の森林1を視認することで発生する強迫性障害と、それに伴う人体消失現象です。SCP-4087-JPの影響を受けた対象は「近くの森で何か異常が発生している」という強迫観念を訴え、当該の森林へ向かおうとします。しかし、どのような異常が発生しているかについて合理的な説明を行えた事例は存在しません。また、記憶処理によってこの強迫観念を消去することは不可能です。

この行動が阻害されなかった場合、対象(以下、SCP-4087-JP-1)は侵入した森林内で痕跡を残さず消息を絶ちます。一連の過程が第三者に観測されない限りSCP-4087-JPの発生を認識することは困難ですが、2005年に失踪した知人について私的に調査を行っていた財団の職員によって異常性が確認されました。以下の通話記録を踏まえた要請によって2000-2005年の国内行方不明事件を対象とした調査が実施され、このうち失踪者に森林関連の異常な言動が記録されていた18件がSCP-4087-JPの影響と見做されています。

襟羽博士から提出された通話記録


襟羽: 何かあったのか?仕事中だろ。

対象: いや、いま職場じゃなくて、███の方に向かってる。

襟羽: ███?何で。

対象: 分からない。昨日、あそこの森がなんか変だったから…っていうのは説明になってないよな?

襟羽: ああ。どういう───

対象: でも説明できない。ずっと気になってて、気づいたらここにいた。どうやって抜けてきたのかも思い出せない。

襟羽: [不明瞭な罵倒] 落ち着け、止まれ。多分何かの認識災が…くそっ、今どこにいるんだ?

対象: ███近くの森沿いの……

[以降、30秒間に渡り呼びかけへの応答が停止し、断続的に雑音が流れる]

[通信途絶]

SCP-4087-JPの発生を予測する手段は未確立ですが、併発する強迫性障害はSCP-4087-JP-A(後述)によって対処可能です。SCP-4087-JP-Aと接触したSCP-4087-JP-1の精神状態は回復し、消失イベントも発生しません。

機動部隊な-4"森禍"所属隊員、各サイト管理官、選抜された植物学の研究員へSCP-4087-JP-Aの位置情報を閲覧する権限が付与されています。新たにSCP-4087-JP-1が拘留された際は権限を持つ職員の主導下で処置を行い、終了後に関係者へクラスB記憶処理を実施してください。

SCP-4087-JP-A

説明: SCP-4087-JP-Aに該当するキンモクセイ(Osmanthus fragrans)は、2名以上の観測者が存在すると不可視となる小規模な認識災害を伴っています。SCP-4087-JP-Aを目視している人間が1名の場合のみ、開花状態のキンモクセイとして認識することが可能です。

キンモクセイの繁殖には人為的な株分けが必要ですが、SCP-4087-JP-Aは通常キンモクセイの生育には向かない環境下を含む全国に散在しており、未知の繁殖手段を有していると推定されます。また、インシデント4087-JP-0211以降に行われた実験で、SCP-4087-JP-AはSCP-4087-JP-1に発生する強迫観念を打ち消す性質を持つことが確認されました。

SCP-4087-JP-Aによる治療実績

2009-2011年の間に、SCP-4087-JP-1と判断された被験者██名にSCP-4087-JP-A視認処置が行われています。その後、全例において強迫観念の再発及び再失踪は確認されていません。対象にはクラスB記憶処理剤を使用しSCP-4087-JPに関する記憶を消去していますが、処置後は非異常性のキンモクセイに関心を示しやすくなる傾向が見られます。

注: SCP-4087-JP-AはSCP-4087-JPの関連事象として位置づけられていますが、分類の見直しが検討中です。詳細な経緯はSCP-4087-JP研究アーカイブインシデント記録4087-JP-0211SCP-4087-JPに関する提言を確認してください。


注: SCP-4087-JPの発生条件および対象者の属性について、『生活圏内に0.3ha以上の樹木密集地帯が存在する』こと以外の共通項はないと推定されています。条件に該当する国内の居住者は███万人規模に達します。しかし、想定される未捕捉事案を計上してもSCP-4087-JPの発生頻度は極めて低く、併発する強迫性障害の治療法の確立が優先事項と判断され、SCP-4087-JP研究担当は神経科学チームに変更されました。

2009年1月、SCP-4087-JP関連の失踪事件が報道で取り上げられる事案が発生し、SCP-4087-JP-1を確保する専属機動部隊の設置が提言されました。これによって機動部隊な-4"森禍"が創設されましたが、提言者である襟羽博士が手続き上で職権乱用を行ったとして3か月の謹慎処分を受けています。博士はこの直後にインシデント4087-JP-0211の当事者となり、SCP-4087-JP-Aを発見しました。


インシデント記録4087-JP-0211

概説: 2009/02/11、襟羽博士からサイト-8121管理官へ「SCP-4087-JPの影響を受けた」というメッセージが送信がされました。同日中に機動部隊な-4"森禍"が捜索を行い、端末の位置情報からサイト-8121の付近にある███町の森林内で襟羽博士を発見しました。これは、SCP-4087-JPの影響を受けたとされる人物が消失を免れた初の事例です。

以下はインシデント後に行われた聴取記録です。

対象: 襟羽博士

インタビュア—: 卯木博士


<録音開始>

卯木博士:それでは聴取を開始します。まずは襟羽博士、療養中にも関わらずご協力いただきありがとうございます。

襟羽博士: 大丈夫です。むしろ軽い脱水くらいで3日も医務室にいるなんて申し訳ない。それにしても、君からインタビューを受ける日が来るとは。

卯木博士: あなたの心理的抵抗を軽減するための人選だそうです。えー……これに関しては私より博士の方が詳しいと思いますが、SCP-4087-JPの認識災害に晒された場合、最終的に意思疎通は不可能になりますよね?ですが今は通常の会話が成立していますし、認識の歪みも見られません。影響を受けたと仰っていたはずですが、それに虚偽はありませんか?

襟羽博士: 今の私の状態がこれまでのケースと比較して異常であることは理解しています。ですがあのメッセージを送ったとき、私は確かにSCP-4087-JPの影響を受けていました。───君はこれまでの研究報告に何度か閲覧申請をしていましたね。研究費の無駄遣いと悪名高い、私の執心の産物ですが。

卯木博士: そんな風に言わないでくださいよ。ええ、拝読していました。

襟羽博士: それであれば、SCP-4087-JPが初めて確認された事例を知っていると思います。あの時、弟は自分の行動がおかしいと分かっていたから電話してきたんです。SCP-4087-JPによる強迫観念を自覚することは可能なんですよ。私は謹慎中でしたが幾つかの低脅威度オブジェクトの責任者ですし、失踪する前に誰かに伝えなければと思って、弟と同じことをしたまでです。

卯木博士: なるほど。その時の精神状態や認識について詳しく思い出すことは可能でしょうか。この点に関して有意な解答が行えた実例はありませんが……。

襟羽博士: できます。まあ、あまり楽しい状態ではありませんでしたが…。私はあの日、寮ではなく自宅に戻って弟が消えた場所を再訪していました。ですが、しばらくして帰宅したあと、見に行った森のことがやけに頭に残っていて。あの奥で何か起きているかもしれないと酷く焦って────耐えられず引き返そうとした時、これはSCP-4087-JPの影響だと気づいたんです。

卯木博士: そこでメールを送ることが出来たと。その……影響の原因が分かっていても、そこへ向かってしまったんですね?

襟羽博士: ええ。体験して分かりましたが、あれはそういう思考を一方的に押し付けてきます。異常だと分かっていてもどうしようもありませんでした。

卯木博士: 分かりました。ええと……ではとりあえず、もう一つの本題に移りましょう。どうやってあなたが戻ってきたのかということです。それも、まったく正気の状態で。

襟羽博士: [沈黙]…そこについてですが、私が回収された付近に奇妙な木がありませんでしたか?

卯木博士: 回収任務に当たった機動部隊から特別な報告はなかったかと。詳しく説明していただけますか。

襟羽博士: はい。私は焦りに流されるまま歩いていて、その時にはもう何かまともに思考できる状態ではありませんでした。ですが……。うーん、そこで、急に1本の木が目に入りました。黄色い花がついているのが見えて、2月なのに咲いてるのは妙だと思って……その途端、急に我に返ったんです。ものすごく混乱しましたよ。

卯木博士: それは……。

襟羽博士: SCP-4087-JPの影響を受けた人間がどうなるかは私が一番よく知っています。だからこそ何が起きたのかと呆然としているうちに、機動部隊の方に確保されました。花がついていた木は良く確認できませんでしたが、帰還できた理由に心当たりがあるとすればあれくらいです。

卯木博士: では、とりあえずその木については調査要請を出すとして……なぜその木を見てそうなったか、博士はご自身でどのように分析していますか?

襟羽博士: SCP-4087-JPの元研究主任として?

卯木博士: はい。

襟羽博士: 確実なことは言えません。私しか事例がないですから。ですが、SCP-4087-JPが「森で何か起きている」という偽の認識を私に植え付けていたのに対し、あの木の違和感がそれを打ち消した、というような仕組みではないでしょうか。或いは、あれ自体が確認されていなかったSCP-4087-JPに関連する事象の一つなのかもしれません。

卯木博士: ありがとうございます。あー、当事者の見解として報告しておきましょう。…では、そろそろ面会時間の終了が迫っていますので、聴取は以上で一旦打ち切ります。引き続きご協力をお願いしますね。

襟羽博士: はい。お疲れ様でした。

<録音終了>


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回収地点で発見されたSCP-4087-JP-A

インタビューに基づいて博士の回収地点付近で探索が行われた結果、証言と一致するキンモクセイが発見され、SCP-4087-JP-Aに分類されました。同様のキンモクセイは、現在までに34例が確認されています。

補遺1: SCP-4087-JP-Aを使用した現在の収容手順の策定後、留保されていたSCP-4087-JPのKeterへの分類変更に関する協議は中止されています。

補遺2: インシデント以降、襟羽博士は無期限の経過観察処置下に置かれています。博士はSCP-4087-JPに関する研究への復帰を辞退しましたが、SCP-4087-JP-A群の管理責任者と専属機動部隊の部隊長を務めています。


SCP-4087-JPに関する提言-2012/03/16

内容: この報告は、インシデント4087-JP-0211の3年後に、神経科学チームから研究を引き継いだ卯木博士から提出されたものです。

SCP-4087-JP担当就任後の初仕事として、現状と今後に関するいくつかの所見を述べさせていただきます。

SCP-4087-JP-A群が、SCP-4087-JP-1に発生する異常の抑制において顕著な成果を挙げてきたことは疑いようがありません。処置後に強迫性障害による後遺症が確認された事例は存在せず、襟羽元研究主任によって策定された管理手順も安全に運用されてきました。

しかしながら、これらの成果が「SCP-4087-JPの収容」を意味するのか、という点においては慎重な再検討が必要です。

SCP-4087-JPの発生原因は未だ解明されていません。当該現象の発生件数が短期間に増加した場合、現行の収容体制では処置人数の限界を超過する可能性が指摘されています。現在、影響拡大時を想定した収容手順および対応体制の策定を予定しています。

また、我々はこれまで認識災害を伴う人体消失と異常なキンモクセイ群の存在を連鎖的な現象として扱ってきました。しかしながら、この両者が同等の異常であるという根拠は十分に検証されていません。SCP-4087-JP-Aの精神治療効果は、SCP-4087-JP-1にのみ有意に作用しているだけで、別の異常の一側面に過ぎないのではないかと私は懸念しています。もしこれが立証されるようなことがあれば、SCP-4087-JP-Aに依拠した収容手順、管理体制、現在の分類の全てを見直す必要があります。

SCP-4087-JPが、SCP-4087-JP-Aによって鍵付きの箱に収められていると断じることは出来ません。

SCP-4087-JP 主任研究員 卯木 ██





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