警告: 以下のファイルはブラックロック指令に基づく機密情報です
当ファイルに明示的なO5承認無しで行われるアクセス試行は記録され即時懲戒処分の対象となります。
アイテム番号: SCP-4144
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 公的組織や政府機関によるニューラルネットワークの開発は、SCP-4144の検出を防ぐために監視され、必要に応じて改竄されます。
財団の制御下に無い機関による記憶補強化合物の開発は、機動部隊イプシロン-7(“勿忘草”)が標準的な任務の一環として、必要とされるあらゆる手段を以て阻止します。
説明: SCP-4144は朝食という概念です。SCP-4144の異常性は多種多様ですが、専ら関与した全ての人間の記憶と経験を改変する形式で発現し、起床してから現地時間の正午までの間に食事をしたと思い込ませます。
この効果は、SCP-4144を食べているとされる人々の画像・動画への知覚や、具体的にSCP-4144のための食品を調理・購入していると考えている人々の記憶にも及んでおり、これらの活動が実際に起こっていると信じさせます。何世紀にもわたる歴史的・文化的な証拠にも拘らず、近年の研究は、人類史上の誰一人として“朝食”と表現し得る食事をした経験が無いことを示唆しています。
SCP-4144を観念化すると、その人物は食べようとしていた食事と共に現在地から自然消失し、表面的な外見が似ている押出法ポリスチレンフォーム1製のマネキンと一時的に置き換えられます。これらのマネキンはSCP-4144-1に指定されます2。観察者はSCP-4144-1実例を置換された人物として知覚します。食べる予定だった食品の消費に典型的な時間が経過した後、マネキンは消失し、本来の人物が適切に配置された食事の残りと共にその場に再出現します。
SCP-4144-1実例は通常、転送された人物に予想されるあらゆる行動を実行します。帰還した影響者はSCP-4144-1が取った全ての行動を、あたかも自分自身が行ったかのように記憶しています。ある種の記憶転送が両者の間で起きているのか、影響者がSCP-4144-1実例を遠隔制御しているのかは不明です。
この期間中の影響者の所在地は現在まだ分かっていません。
SCP-4144は画像識別訓練を受けたニューラルネットワークの不一致が注目された時に発見されました。“朝食を食べる人”やその他類似のタグを付けられた画像は、調査を促すのに十分なほどの頻度でニューラルネットワークの判断と一致しませんでした。記憶補強薬の影響を受けた人物が、実験用の写真に自分の特徴を帯びたSCP-4144-1実例を知覚できた時点で、何らかの異常現象が起きていると断定されました。
SCP-4144調査ログ
実験1 | |
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過程 | Dクラス職員D-545-578は大量のクラス-X記憶補強薬を投与され、ボウル入りのシリアルを食べるように指示された。 |
結果 | 再出現したD-545-578は即座に倒れ、喘ぎ始めた。D-545-578は暗闇の中である程度の距離を落下した後、濃い色の流体で満たされた袋または嚢の内部へと入り、嚢の入口が頭上で閉じたことを記憶していた。D-545-578は左大腿部に鋭い刺すような痛みを感じた後、息を止め続けることができなくなり、流体が肺に流れ込んだ時に意識を喪失した。D-545-578は自身の腿に装飾的なマークで囲まれた穿刺傷があり、そこから濃褐色の流体が漏れているのが見えると主張したが、研究者たちは問題の傷を知覚できなかった。液体は数分以内に乾燥、蒸発したと伝えられ、傷が存在した証拠は残らなかった。D-545-578の肺から流体の痕跡は発見されなかった。 |
実験2 | |
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過程 | Dクラス職員D-954-112は大量のクラス-X記憶補強薬を投与され、ボウル入りのシリアルを食べるように指示された。 |
結果 | D-954-112は実験1で記録されたものと類似する体験を記憶していた。穿刺傷があるとされる部位(今回は左胸部)の広域スペクトルイメージング画像が撮影され、D-954-112は流体サンプルを採取するためのキットを与えられた。傷は再び流体によって密封され、流体は傷や周囲のマーキングの痕跡を残すことなく3分以内に乾燥、蒸発した。 撮影された画像の分析は、切り傷と擦り傷による模様に囲まれた深い穿刺傷の存在を明らかにした。この模様は反ミーム的なシンボルを形成し、創傷や流体の正常な知覚を妨げていた。流体の分析は失敗した — 実験が行われた時、サンプルは既に残存していなかった。 |
注記: 実験3-5では基準を確立するために同じ実験が繰り返された。全員が同様の体験を報告しており、唯一の顕著な違いは創傷の位置である。全ての被験者の検査で、彼らが食べようとしていた食事は、帰還した時点で胃の中に存在していたことが判明した。関与した全てのDクラス職員はこれを極めてトラウマ的な経験であったと報告し、以来全員が“朝食”と見做し得る食事を摂るのに消極的な様子を示している。
実験6 | |
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過程 | D-748-664は大量のクラス-X記憶補強薬を投与され、1時間分の酸素供給を伴う環境防護スーツ、標準的な野外サバイバルキット、記録装置、多数のサンプル収集容器を提供された。彼はその後、調理済みの肉、ジャガイモ製品、ベイクドビーンズ、果物から成る相当量の朝食を食べるように指示された。 |
結果 | D-748-664は食事のために着席した時点で、環境防護スーツの密封ヘルメットを脱ぐ前にその場から消失した。これによって、SCP-4144の効果を引き起こすのは実際の食事過程ではなく、朝食を摂る意図さえあれば十分であると確認された。 実験結果の完全な詳細は探査記録転写4144-001を参照。 |
探査記録転写4144-001
SCP-4144に関連する活動を通じて接続された不明な異次元空間の探査
注記: D-748-664(以降D-748とする)のGPS追跡装置は、サイト-89実験チャンバー内の当初の位置を示し続けた。無線通信の試みはSCP-4144-1実例からの可聴応答をもたらしたが、音声通信が行われた証拠はこの記録上には存在しない。
異次元空間内で撮影された映像記録は、SCP-4144の他要素を取り巻く反ミーム特性の対象ではないと思われ、記憶補強薬を使用せずとも視聴可能である。
この記録におけるD-748の発話は、概ね彼が目撃した事物への不正確な説明が散在する罵倒語の長い羅列でしかないため、除去されている。
[記録開始]
[00:00] D-748は即座に落下し始める。ヘルメットに設置された照明は、有機物と思われるチューブの内部を覆う粘性の流体を照らしている。
[00:03] D-748は流体の表面に叩き付けられた衝撃で叫び、チューブ壁を覆っているものと同じ乳白色の液体の溜まりに沈む。赤い皮膚様の有機物で構成されていると思しき厚い嚢がD-478の周囲で閉鎖され、彼を完全に密封すると共に、カメラ映像を不鮮明にする。
注記: D-748は苦痛の叫びを上げた後、この時に腰背部に鋭い物が数度衝突したと報告した。衝突物はD-748の環境防護スーツを貫通できなかった。
[00:16] D-748は繰り返し罵倒語を発しながら、ベルトに装着したナイフを取り出し、嚢を切り裂いて出ようとする。
[00:34] D-748は嚢を切り裂くことに成功し、断裂した嚢から推定1.5m落下する。彼は喘ぎながら繰り返し罵倒語を発する。大気は顕著なオレンジ色を帯びている。
[00:50] D-748は事前の指示通り、大気、流体、ナイフに残った嚢の素材のサンプルを採取する。D-748はまた、剥離用具を使用して、黒い石のような材質に見える地面のサンプルも採取する。
[1:45] D-748は空間内を見渡す。明かりは彼のヘルメットライトが発するものに限られており、それ以外は完全な暗闇である。D-748が脱出したものと一致する数百個の有機的な嚢が、それぞれ約2mおきに列を成して下がっている。嚢の約40%は内部に動きが見られるが、詳細は視認できない。壁らしきものは見えない。
[1:59] D-748はスーツ内の方向センサーが北であるとしている方角へ歩き始める。
[2:03] 微かに女性的な悲鳴が聞こえ、続けて何かが流体表面に叩き付けられる音がする。D-748が音のした方向を見ると、嚢の一つが上部を閉鎖するのが見える。嚢は激しく動き回るが、やがて静止する。D-748は歩き続ける。
[2:48] 別の微かな悲鳴が遠くから聞こえる。D-748は数百個の嚢を通り過ぎるが、他に特筆すべきランドマークは存在せず、地形や風景にも変化が見られない。
[3:13] D-748は周辺環境が倉庫のように見えると述べる。彼が真上を見ると、約10m頭上に金属と有機物の両方で出来たパイプもしくはチューブが密集したネットワークがあり、そこから嚢がぶら下がっているのが分かる。
[3:24] カメラは遠くに一瞬の動きを捉えるが、D-748は再び前方に目を戻して歩き続ける。D-748は動きに気付いていないと思われる。悲鳴やその他の叫び声が定期的に様々な距離から聞こえてくる。
[4:48] D-748は嚢が全く下がっていない概ね円形のエリアに辿り着く。エリア中心部には直径約5mの円形の穴があり、過去の実験でDクラス職員の傷から漏れているのが目撃された流体の描写と視覚的に一致する、濃褐色の液体が満たされている。一定量の流体が穴の上部にある多数の有機チューブから注がれ続けている。
[5:02] D-748は軽くエリアを見渡した後、穴からサンプルを採取するために膝を付く。嚢の間にあるやや広めの隙間が東西に3分かれ、通路を形成するのが空き地から見える。
[5:35] D-748は穴からのサンプル採取を完了し、東に向かって通路を進む。カメラは足音を検出し、D-748もこれを聞き付ける。彼は驚いて振り向き、観察可能な特徴を持たないSCP-4144-1実例の存在に気付く。SCP-4144-1実例は穴の縁に歩み寄った後、軽く中を覗き込む素振りを見せてから、向きを変えて離れる。SCP-4144-1実例はD-748に気付いていない。
[6:13] D-748はSCP-4144-1実例に声をかける。SCP-4144-1実例は立ち止まって彼を見つめた後4、向きを変えて走り去る。D-748は罵倒語を発し、反対方向の通路を下ってゆく。
[7:02] D-748は歩き続けている。風景に変化はない。定期的な悲鳴とその後の流体への衝突音が続いている。
[8:39] カメラは嚢の列の間に、複数の姿が動いているのを捉える。複数名の足音が接近してくるのが聞こえる。D-748は振り向き、3体のSCP-4144-1実例が真後ろにいるのを発見する。彼は向きを変えて走ろうとするが、自身がSCP-4144-1実例群に包囲されていることに気付く。SCP-4144-1実例群はD-748を掴み、通路のさらに先へと引きずってゆく。彼は抵抗を試みるが失敗する。
[9:59] SCP-4144-1実例の一団はD-748を別の空地へと連行する。彼は抵抗を試みてもがき続けているが、成果は無い。空き地の中心部には、白い有機素材で作られた表面的に心臓に類似する巨大構造物が、天井から太いチューブで吊り下げられている。構造物は静かに拍動している。さらに多くのチューブが構造物の底から、下の地面に空いた巨大な穴の中へ延びているのが見える。
[10:23] 心臓型構造物の側面に大きな裂け目が自然形成され、内部から1体のSCP-4144-1実例が歩み出る。裂け目は継ぎ目を残さずに密封される。他2体の実例が新しく現れた実例に近付き、その顔面に何かを適用し始める。
[11:00] 新しく現れたSCP-4144-1実例は、心臓下部の穴に延びるチューブと接続されている先端の尖った長い棒を手渡され、他2体から離れる。D-748は捕獲者たちによって引きずられていき、新しい実例が彼に接近する。当該実例の顔には、表面的にD-748と似た特徴が描かれている。実例は一瞬D-748を見つめる。
[11:30] SCP-4144-1実例はD-748の腹部に棒を刺し込む。束の間の叫び声が聞こえた後、映像がロストする。
[記録終了]
事案4144-001報告
実験6の開始から12分後、D-748は“朝食”を終える前に突然立ち上がり、室内にいた警備員2名を食器で攻撃しました。D-748を拘束する試みは、彼が人間の基準を遥かに超える膂力を示したため失敗に終わり、警備員は両名ともに多数の深い穿刺傷を負いました。警備員は最終的に致死的な武力を行使し、D-748を終了しました。
検死解剖はD-748の全身が押出法ポリスチレンフォームで作られていたことを明らかにしました。しかしながら、着用していた全ての衣服や機材は元々D-748に支給されたものと確認され、サンプルや記録もまた回収されました。
白い流体と嚢のサンプルの分析結果は決定的なものではなく、何らかの不明な有機物であるという結論しか得られませんでした。大気は主にアンモニアで構成されており、床のサンプルは主に鉄とカルシウムから成るもので、骨と同様の構造を有していました。褐色の流体を分析した結果、乳糖、大豆製品、加工小麦および米製品、様々な種の動物由来のタンパク質、様々な種の果物由来の繊維で構成されていることが判明しました。