アイテム番号: SCP-4156
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-4156及び関連アノマリーの全ての監視・整備は、SCP-4156-1の直下数kmに位置するサイト-98によって行われます。
無灰状態の大気を維持するために、アングルトン環境安定機の境界線がSCP-4156の周囲に設置されます。生存者のコミュニティは、環境システム周囲の第2境界線における環境的危険物の設置によってSCP-4156-1への接近を避けるよう勧告されます。これを無視して接近が続いた場合、現地保安職員は彼らの撃退のための致死的武力の行使を許可されます。職員によるSCP-4156-1への物理的アクセスはコール管理官による承認を得なければなりません。
各月1日、食物とその他必需品がSCP-4156-1内部に配送されます。この期間中、全てのSCP-4156-2標本はKALEIDOSCOPEを用いて不活性状態に置かれます。
全SCP-4156-2標本の監視はSCP-4156-1全域に設置された隠しマイクとカメラを用いて行われます。同様に、SCP-4156-2によって使用される全てのメディア端末はサイト-98職員によって監視されます。いずれかのSCP-4156-2標本が許容可能な行動を超えた活動を開始した場合、彼らは即座に規定状態に戻され、逸脱の発生が記録されます。既知の逸脱の発生はKALEIDOSCOPEを用いて数えられます。
SCP-4156-2標本が予定外の死を迎えた場合、SCP-4156-3を用いて代替が生産されます。SCP-4156-2標本の境遇がSCP-4156-1外部で一定時間過ごした場合のことを論理的に意味する場合、彼らは収納庫内に入れられ、KALEIDOSCOPEを用いたSCP-4156-1外部での時間についての偽記憶が与えられ、適切な日時にSCP-4156-1へ戻されます。学習コンピュータ タウ-2("ハワード")は手順に従いSCP-4156-2標本が消費するためのメディアコンテンツを作成します。
全SCP-4156-3実例はハルソン上席研究員が供給する指示に従い整備・修理が行われます。SCP-4156-3を用いたSCP-4156-2標本の生成は、事前に取り決められたテンプレートを選択してコール管理官による承認を得なければなりません。
説明: SCP-4156はイベント・インディゴ、その結果として生じたSCP-2000の破壊、その後の人類文明の崩壊の発生後において、手動で歴史をリセットするための実験的手法として連係して用いられる複数の異常物品の総称です。SCP-4156プロジェクトは2034/02/09のイベント・インディゴの発生の後に、サイモン・コール管理官によって正式に提言・実施されました。
SCP-4156-1はオハイオ州の小さな町ウィンストンであり、数年をかけてイベント・インディゴ発生以前の状況に復旧されています。厳密には、SCP-4156-1は2017年中にあった状態に復旧されています。SCP-4156-1内部の全ての建造物と環境には、エリア内の全ての活動の監視能力を維持する目的で隠しマイクとカメラが取り付けられています。同様に、SCP-4156-1内部の全メディア端末のフィードはサイト-98の監視センターからアクセス可能です。
SCP-4156-2はSCP-4156-3によって生産され、SCP-4156-1の市民としての役割に適切な偽記憶を与えられた6297人の人造人間からなります。全ての記憶導入・改変は、当初社会的記憶処理目的で計画されたKALEIDOSCOPEシステムのプロトタイプを用いて行われています。SCP-4156-1内部の全メディア端末と数千の隠しスピーカーを媒体とした認知阻害エージェントの適用によって、全SCP-4156-2標本の記憶は必要に応じて改変可能です。加えて、KALEIDOSCOPEを用いて全SCP-4156-2標本の意識に行われた改変により、SCP-4156-2は財団職員の存在やイベント・インディゴの痕跡などといったSCP-4156-1の正常性に反すると考えられる現象を知覚することができなくなっています。
SCP-4156-3はSCP-███の転用によって得られた300基の装置の総称です。SCP-4156-3は十分量のバイオマスが供給された際に任意の体格のSCP-4156-2標本を生産することが可能です。それぞれのSCP-4156-3実例は作成中のSCP-4156-2標本に求められる性格を規定することが可能な管理コンソールと、1×2mの直立したチャンバーからなります。必要時に全設備が稼働させられている場合、SCP-4156-3システムは48時間でSCP-4156-1の人口を完全に補充することが可能です。
以下はプロジェクト中のSCP-4156の全システム障害と、その修正及び未来における発生の防止のために取られた対応の記録です。
障害の性質: 直近の隠しスピーカーと十分に近接していなかったため、SCP-4156-2-4830(難聴を持つように設定された)は、食物の月例配送中KALEIDOSCOPEによる不動化が行われなかった。他の全SCP-4156-2標本が不動化されたのを見た際、SCP-4156-2-4830はパニックに陥りエリアから逃走を試みた。
修正措置: SCP-4156-2-4830が逃走を試みている間に、急派された保安職員が沈静・再確保に成功した。SCP-4156-2-4830の補聴器はKALEIDOSCOPEに必要とされた際に認知阻害エージェントを送信できるよう改造された。
追記: この件のせいで、私は初めから正しいことをしていなかったのではないかと心配になっています。特別に聴覚上の問題を抱えた個人を作成するのなら、それに応じた対策を講じるべきではないでしょうか?さらに言うなら、なぜ彼らをそんな状態にする必要があるのでしょうか?私が見る限り、これはプロジェクトをずっと維持困難にしているだけです。 - ハルソン上席研究員.
君の懸念はよく分かるし感謝もするがデイビッド、こういうことが見過ごされるのは必至なんだ。かつてのように社会を再建したいのなら、我々が楽をするためだけに社会を変えることはできない。偉業の始まりに欠陥はつきものだ。君に頼みたいのは、もう少しの間たった少し信頼を持ってくれることだけだ。 - コール管理官.
障害の性質: 定例記憶維持中の過失によって、多数のSCP-4156-2標本が矛盾し、両立しない記憶を受け取った。数人の標本は昏睡状態に陥り、自殺・殺人行為をした標本も存在した。
修正措置: 全SCP-4156-2標本はKALEIDOSCOPEを用いて強制的に不活性状態に置かれた。欠陥のあるSCP-4156-2標本は回収され、記憶修復では生存不能になると考えられたため安楽死させられた。同一の代替がSCP-4156-3によって生産され、集団内に再導入された。
追記: これがまだ使い慣れていないシステムで、このような問題が不可避であるということは受け入れています。しかし、SCP-4156-2の置換は安易に行っていいことではありません。行うには資源が必要で、資源は無限ではないのです。プロジェクトを実行可能に保ちたいのなら、今後はもっと注意しなければなりません。 - ハルソン上席研究員.
この障害に関する私の個人的審査を受けて、私は私が立案したガイドラインが全く守られていなかったと結論を下さざるを得ない。SCP-4156-2の境遇を私の元の仕様を超えて変えることはいかなる状況でも許可されないと明確にしたと思うのだが。それは許容できない。 - コール管理官.
障害の性質: SCP-4156-2集団の大部分が重篤な呼吸器障害を経験し始めた。KALEIDOSCOPEを用いてSCP-4156-2集団を不活性状態に転換した後、施設全域でアングルトン環境安定機の稼働が継続しているにもかかわらず、大気中に存在する灰と煤によって影響された標本の肺が著しい損傷を受けていることが医学的検査によって示された。
修正措置: 影響された全標本は安楽死させられ、置換された。
追記: アングルトンさん、即刻説明を頂きたい。 - コール管理官.
プロジェクトの立案中やプロジェクトの進捗についてのその後の会議で明確にしようとしてきたように、安定機の主要目的は大気汚染の隠蔽であって除去ではないんです。汚染物の大半はそこに残っています。何度も何度も言っているように、スイッチ1個を押すだけでまた空気を綺麗にするなんてできません。 - アングルトン技術主任.
SCP-4156-2の次世代はもっと呼吸器系に耐久性を持つように設定することを提言します。大気中の汚染を除去できないとしても、我々には彼らにその代わりの生き残る術を必ず与えることができます。 - ハルソン上席研究員.
拒否する。SCP-4156の目的はかつてのように人類文明を再建することだ。そこに変化を加えたならそれはかつての通りの再建ではなくなってしまう、そうじゃないか?私はSCP-4156-1に近接した場所での安定機のさらなる建設を命令している。 - コール管理官.
障害の性質: 学習コンピュータ タウ-2("ハワード")の予期せぬ故障により、タウ-2が手順通りにSCP-4156-1に対して作成・配信している全メディアが連続したランダムな音と金切り声に置換された。これらの音声はKALEIDOSCOPEの心理的プログラミングと逆の影響を持っているように見え、このためSCP-4156-2は即座にSCP-4156-1を取り巻くアングルトン大気安定機と大気中の汚染を認知することが可能となった。持続しているKALEIDOSCOPEのプログラミングと彼らが認識する現実の不一致により、SCP-4156-2集団の大多数が昏睡状態に陥り、意識が残留している個体は自殺・殺人行為をした。
修正措置: 全標本は安楽死させられ、置換された。学習コンピュータ ベータ-94("アイザック")とガンマ-12("ノア")が存続している財団サイトとの接触の試行から、手順通りのメディアの作成の任務を共有するために再割り当てされた。
追記: 残念ながらこの件に割り当てる学習コンピュータが何台あっても、この件はそれらが設計されたタスクとは全く種類が違います。それらはオンラインユーザへのなりすまし、コミュニケーションチャンネルの監視などの単純なコミュニケーション任務に使用するためのものです。またこのような障害が起こるのは必至でしょう。これは恐らくアーカイブされたメディアを再放送するだけで避けられたのではないでしょうか?標本が絶対に気づかないことを保障するためにKALEIDOSCOPEを使うこともできたはずです。 - ハルソン上席研究員.
現時点でSCP-4156-1のシナリオにさらなる変更を行った場合、プロジェクト全体が無意味になってしまうだろう。 - コール管理官.
障害の性質: SCP-4156-2集団の次世代の生産の際、全標本が重篤な発育異常を持っていることが判明し、生産直後に死亡した。
修正措置: 全標本は再利用され、新世代が生産された。
追記: できる限りの再利用を行う限り、これに対処するのはそこまで難しいことではないはずだ。偉業の始まりに欠陥はつきものだ。 - コール管理官.
障害の性質: SCP-4156-2集団の次世代の生産の際、全標本が著しい発育異常を持っていることが判明した。集団の75%は生産直後に死亡し、残りは植物状態のままである。
修正措置: 全標本は再利用され、新世代が生産された。
追記: このプロジェクトにある困難性から考えると、他の財団の生存者とコンタクトを取るための努力の倍増の方がいいアイデアかもしれません。話す時間があればの話ですが、それによって我々を助けるために現在のコミュニケーション配列をどう拡大するかについての意見をまとめました。 - アングルトン技術主任.
懸案事項を記録した。 - コール管理官.
障害の性質: SCP-4156-2集団の次世代の生産の際、 全標本が求められた体格から少し逸脱していることが判明した。しかし、全標本は生存することができ、実際は逸脱の大半が髪の色や顔の特徴などの審美的なものだった。
修正措置: 全標本は再利用され、新世代が生産された。
追記: なぜこのようなことが命令されたのかの説明を要求します。正直に言って私には資源の無駄のようにしか見えません。彼らの行動が同じである限り、彼らの見た目が重要でないことに疑いの余地はないのではないでしょうか? - ハルソン上席研究員.
障害の性質: 敵対的な生存者のコミュニティ(アメリカ陸軍の離反者であると特定された)が食物とシェルターを探すためにSCP-4156-1を攻撃した。彼らは現地保安職員と交戦し、6時間の衝突の末両者に多くの死傷者を出しながらも撃退された。戦闘中にSCP-4156-2標本も多数が殺害され、その他の集団のメンバーは衝突中にSCP-4156-1から逃走したと考えられている。
修正措置: コール管理官の位置が確認されていないため、さらなる措置は未だ取られていない。
追記: N/A
悲しいことに、本日08:43、サイモン・コール管理官が米陸軍の離反者との衝突の後に亡くなられたことを発表しなければなりません。ただ今、我々はこれが自殺だと考えています。詳細な状況についてもっと知りたい場合は読み進めてください。ただし、あなたには何の義務もありません。
戦闘後の混沌の中で、コール管理官の位置を特定するのは不可能だということが分かりました。それ自体がおかしなことです。ここは毎日常に隅から隅までカメラが見張っています。私は初め、人質として離反者たちに連れて行かれたのかと疑いました。恐らくは食物やその他の資源と交換するために。勿論、馬鹿げた考えです — 彼らは管理官が誰なのかすら知らなかったでしょうから。しかしその時は爆発の音がまだ耳に残っていて、まともに考えることができなかったのです。
それでも、結局彼がどこに行ったのかは分かりました。誰かがランバート通りのある家の記録装置を全て切っていたのです。ここは注意を払う必要すらないほどの、全く取るに足らない小さな場所でした。勿論通常の状況下ならすぐに気づけていたでしょうが、さっきも言ったように — 爆発があったので。
まだ保安職員の大半がSCP-4156-1に隠れる残党を捕まえに行っていたので、ランバート通りには1人で行くことになりました。馬鹿げたことをしたのは分かっています。通りをまだフラフラ歩いている生存者に撃たれる可能性はとても高かったでしょうが、その時はそんなことを考えもしなかったのです。私はそこをただ茫然と歩いていました。出会った数名のSCP-4156-2は戦場にいることをたった今理解したかのように逃げ惑い、叫んでいました。ただ整然と仕事場へ向かっている者もいました。片手の付け根から血が流れ出ているのに、もう片方の手でサンドイッチをかじっている男性も見ました。無論、私に気づく者は誰もいませんでした。
着いた時にはランバート通り34番地のドアはすでに開いていました。タウ-2が考え出した最初のアニメの1つが中のテレビに流れているのが聞こえました。入ってすぐサイモンは見つかりました。
彼は片手に拳銃を持ってソファーに座っていました。後ろの壁には脳が飛び散っていました。顔がほぼ吹き飛んでいたので、彼が最期に何を感じたのかは分かりません。ソファーの彼の隣には6、7歳の少女が座っていました。アニメを見ていたのは彼女でした。無論彼女の顔にも血と脳がかかっていました。彼女はとても近いところにいましたが、結局私達が認識できないようにしているということには気づかなかったようです。
すみません。
戻ると、私はコール管理官の人事ファイルの、彼がSCP-4156-2集団のために作ったガイドラインに目を通しました。勿論前に見たことはありましたし、それが信じられないような仕事であることもすでに知っていました — つまり、6000人の異なる人々を設計するわけですから — しかしガイドラインの彼の個人的なバージョンには、標本全員に彼のメモがありました。
最初にいくつか無作為に目を通しただけの時は分かりませんでした。メモの大半は職業、日付、通りなどの1語だけでしたから。しかしそこまで短くないメモに目を留めた時、分かってきたのです。長い文章、大切な思い出、我々がつけたものとは違う標本への名前。 これらはランダムな顔ではありませんでした — 彼らはサイモンが知っていた人物であり、1人1人彼が知っていた通りに再現されていたのです。
彼の子供の頃の恩師。
彼の両親。
彼の同僚。
彼の隣人。
彼の友人。
彼の兄弟姉妹。
彼がほんの少し出会った人々 — 郵便配達員、銀行の窓口係、道ですれ違った人々。
彼の妻。
彼の娘。
私は彼の娘を見たことがありました。彼女の写真を見た瞬間に理解しました。顔に父の血がついた状態でアニメを見ている彼女を見ました。彼がそうしたのです。私がそうしたのです。彼女は死体を運び出す時さえも気づきませんでした。しかし実のところ、彼女が気づいていたとしてもそんなことはどうでもよかったのです。サマンサ・コールは死んだのですから。もういないのですから。
みんなもういない、そうでしょう?
本プロジェクト全ての見直しが必要かと思います。