SCP-4199-JP
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アイテム番号: SCP-4199-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-4199-JPは現在未収容です。各種メディアおよびWebからSCP-4199-JPの関与を示唆する情報を収集・整理し、現在位置の推測を実施します。確度が高いとされた地域にはフィールドエージェントを派遣し、確保作戦を実行します。異常性が行使されたことを証言した人物には聴取を行い、必要に応じてAクラス記憶処理を実施します。

説明: SCP-4199-JPはヒト(Homo sapiens)と自身の身体の一部を交換すると考えられている人型実体です。足取り調査からはSCP-4199-JPが単一の実体であることが確実視されていますが、性質上その外見が一定でないため、人相・指紋・声紋・遺伝子・モーション等身体由来の特徴を検出する方法では継続的な追跡が困難であり、捜索に成果が出ていません。

SCP-4199-JPの異常性は同一器官・相同器官同士であれば全身のどの部位でも標的にし得ると推測されています。部位同士のサイズが異なる場合は適切なサイズへの転換が発生します。血管・神経等の断裂や拒絶反応、血液型の違いによる抗体反応といった身体への悪影響は発生が確認されていません。なお、SCP-4199-JPが異常性を発現するプロセスは、その瞬間の記録が確認されていないため未判明です。

SCP-4199-JPは異常性を行使する対象の人物(以下、対象)に声をかけ、会話を通じて身体部位の交換を申し込みます。ほぼ全ての事例において、対象は当人の主義・思想・宗教教義等にかかわらず自発的に何らかの肯定的な理由を持ち、交換を承諾します。また、対象は交換直後からSCP-4199-JPへの言及意欲が低下します。このことから、SCP-4199-JPが行う交渉には対象に違和感や拒否感、遭遇後の記憶力を低減させる精神影響作用があると見られています。

異常性が行使される身体部位は、SCP-4199-JP側と対象側の少なくとも片方が何らかの傷病を有しています。SCP-4199-JPは必要に応じSCP-4199-JPの身体側が病巣部位である旨の説明を行うと証言されています。異常性曝露後の身体部位は、機械的な検出方法を実施すると以前の対象本人の部位ではないことが確認可能ですが、対象および部位を目視した人物はこの事実が異常であると認識しません。

多くの場合、対象の人格は周囲の人物からは異常性曝露の前後で差が見られないと評価されます。その一方で、異常性曝露以前に献血や臓器提供など身体の一部を提供する医療行為に否定的であった場合、肯定的になる傾向があります。

下記はSCP-4199-JPが関与したと判断されている事例1814件からの特筆すべき抜粋です。

時期: 1942年4月/1971年6月

対象: アイシェ・████・███

場所: トルコ共和国イズミル県

対象部位: 左足膝から下部/鼻から鼻腔にかけて

部位の提供者: 北アフリカからアラビア半島にルーツを持つ男性と推定

対象の認識: 1回目は道を教えた。道案内の途中で足をくじいたときに交換して治してもらった。とても感謝しているし、可能ならば自分も同じように人を助けようと感じた。2回目は街中で偶然会った。見た目が変化していても昔交換した相手だと分かった。長年患っている鼻づまりに愚痴をこぼしたら、目立つほくろがあるが快適な鼻に交換してくれるとのことだったので、応じた。通りがよくなったので交換してよかった。

備考: 同一の対象が複数回SCP-4199-JPに遭遇した事例。本事例の2回目遭遇以降から、SCP-4199-JPについて憂慮の様子や落ち込みの様子が証言されるようになる。

時期: 1982年5月

対象: ルイ・███

場所: アルゼンチン共和国ブエノスアイレス州

対象部位: 右肺を中心とした右上半身の胴体構造

部位の提供者: アフリカ中部にルーツを持つ男性と推定

対象の認識: 事故に遭った直後に会った相手。近くにいた別の人と共に応急処置をしてくれた。交換してくれて助かった。相手のことを恩人だと感じている。交換を承諾した際に相手がどこか落ち込んでいたように見えた。

備考: 対象はSCP-4199-JPが"別の人"と会話し、驚いていた様子があったと証言している。本事例以降、"別の人"を探していると見られる活動事例がいくつか報告されている。"別の人"の素性は不明であり、捜索の対象となっている。

時期: 1993年10月4日

対象: ジーナ・███████・█████

場所: ロシア連邦チュクチ自治管区

対象部位: 頭部

部位の提供者: 鼻はアイシェ・████・███と特定。鼻づまりは対象が医療機関に行くことで治療されている。他の部位について、口内は東南アジアにルーツを持つ女性、頭皮は北ユーラシアにルーツを持つ男性と推定

対象の認識: 相手は店番中の来客。探し人がいると言われたが力にはなれなかった。相手は体に苦痛はないかと聞いてきたが、なぜか顔色が悪くなっていた。頭痛がひどかったため頭を交換してもらった。

備考: 探し人はルイ・███の事例における"別の人"と推測されている。対象は探し人の名前自体は忘れたものの、以前会ったアジア系の人物が似た響きの名前だった気がすると証言している。

SCP-4199-JPは対象と会話する中で自身についての言及を行うことがあります。下記の内容は複数の事例で言及があったと証言されており、SCP-4199-JPの行動分析において重要な情報と見なされています。

話題 言及
身体の交換をする理由 物体を交換する能力がある人に身体を交換してもらうことで家の外に出ることができた。その人は自分にとって救世主である。救世主に倣い、他者が身体に困った部分を持っていたら交換している。
家庭、境遇について 実父は既婚者の母を誘惑し自分を生ませた。実父の血が容貌と誘惑する力に顕れたためか、母の夫や土地の民に嫌われて、あてがわれた家に閉じこもっていた。
交換の承諾で落ち込む理由 自分の行いを自分で止められない現状に恐ろしさを感じている。

補遺: 2007/12/06にすい臓がんによる多臓器不全で死亡した短編小説家の宮田 星氏の遺品から、SCP-4199-JPと推定される人物との対話を収録した音声記録が発見されました。宮田氏は一つのテーマに対し多角的な視点を得るために様々な属性の人物へインタビューを行っており、当該の音声記録はその一環であると考えられます。

<録音開始, 2007/07/12>

宮田氏: どうして今、正式にインタビューを受けてくれる気になったんですか。

SCP-4199-JP: [男性の声]以前は、心の準備ができておらず断ってしまいました。随分と経って、最近になってようやくあなたを見つけた次第です。遅くなって申し訳ありません。

宮田氏: そんな、またお会いできて嬉しいですよ。こんな死にかけの木っ端文章屋のことを思い出してくださって。[咳]

SCP-4199-JP: 忘れたことはありませんよ。……先日の話は、今も気持ちは変わりませんか。

宮田氏: 交換、でしたっけ。そうですね、必要がないと言いますか。もう仕方のないことと思っていますよ、病院嫌いの不摂生の運命としてはね。

SCP-4199-JP: そうですか。[吐息]

宮田氏: それでは、インタビューを。アルゼンチンの時1はあなたの境遇と、救世主さんの話を少しお聞きしたんでした。そうすると、やはり出奔してからの話に興味が引かれますね。

SCP-4199-JP: 放浪の中でのエピソードは、たしかに多くあります。しかし、単調だと思いますよ。結局は肉体を交換してきただけです。私の救世主ならきっとそうすると思って、ある人の苦しみを耐え得る別の人に移し替えてきたという話に尽きます。

宮田氏: それでも、長らくいろいろな地域を旅して、多くの人と話したでしょう。悲しみや喜びを見たり感じたりしてきたのでは。

SCP-4199-JP: ここしばらくは、悲しみも喜びもどうにも霞んでしまっています。ずっと、悩んでいることがありまして。

宮田氏: どういった悩みです?

SCP-4199-JP: あるとき、一度交換をした相手とまた会いました2。その人は交換してから足の調子がいいと言って喜んでいました。そして、自分の体を分けて他の人を助けられたらと考え、献血ドナーに登録したと言いました。……あなたならきっとそうすると思って、と。

宮田氏: 暗い声ですが、何か問題が? 善意の連鎖で良い話だと思ったのですが。

SCP-4199-JP: 正に、連鎖であることが問題なのです。私の考えが交換した肉体を通してその人に波及している。私を経由した肉体が私から離れても、私という属性を取り除けていない。私は交換によって人々を私で染めてきたのではないかと、思い当ってしまったのです。その時から、もし交換によって世界全ての人の肉体が私を通ったのならば、それは世界全ての人を私と呼べるということなのではないかという疑念に取り憑かれました。

宮田氏: なるほど。[唸り声]テセウスの船という同一性のパラドックスがありますが、その逆ですね。あなたの体になった腕や足一つ一つがあなたという同一性を持ち続け、あなたが活動を続けるならいずれ誰もがあなたになる。

SCP-4199-JP: [吐息]その通りです。私が家に籠っていたのは、家の外の場所が私を受け入れないという孤独があったためです。私は私だけが存在する家でしか存在できませんでした。別の運命を得られたならば、そのような孤独に甘んじる必要はありません。だから、家を出たのです。他者を、私を受け入れる家の外を求めたのです。

宮田氏: ああ。もし世界全ての人をあなたと呼べるのならば――

SCP-4199-JP: ――私はまた私だけが存在する場所にいることになります。家よりもずっと広いはずの世界は、新しい一部屋でしかなくなります。そうなったら[吐息]そのような運命であるのならば、私の旅の意味はどこにあるのでしょう。どこを、私の家の外と呼べばいいのでしょう。

宮田氏: 他者を求めているのに、他者と関わると孤独が加速するということですか。それは、確かに悩ましい。絶対にあなたに染まらない人を世界中から探すのは[沈黙]あれ。

SCP-4199-JP: だから、探して、インタビューを受けに来ました。宮田さんに会いに来ました。以前、先日、そして今日も。

宮田氏: そうか。

SCP-4199-JP: 私との交換を拒否できるあなたを、新たな救世主だと思っているのです。私になることのないあなた。[鼻をすする音]

宮田氏: [沈黙]それは、買いかぶりというものですよ。[笑うような咳]

<録音終了>

本インタビューの記録日時前後から宮田氏が死去するまでの期間、宮田氏の自宅に素性不明の人物が出入りしていたと近隣の住民が証言しています。さらなる捜索が続けられていますが、宮田氏の死去日以降、SCP-4199-JPの活動は確認されていません。

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