SCP-4233
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SCP-4233、2007年頃。

アイテム番号: SCP-4233

アノマリークラス: Keter

脅威レベル:

特別収容プロトコル: SCP-4233の異常な物理的特性は一次収容の可能性をほぼ完全に阻んでいるため、実現可能な物理的収容の手段が考案されるまでは、二次収容手順が妥当なものと見做されます。あらゆるSCP-4233の目撃情報や引き起こされた被害には、報道管制と合わせて適切なカバーストーリーによる説明を行います。SCP-4233の異常効果が公然と行使されるのを目撃した民間人には、機動部隊の裁量で記憶処理が施されます。

財団聴取ネットワークPANOPTICONは、財団執行司令部にあらゆる巨大海洋生物の信頼できる出現報告を警告するものとします。海上部隊シグマ-58“ボトムフィーダーズ”はSCP-4233の移動経路を追跡し、可能な限り頻繁に無線連絡を確立して、前述したような海洋生物の発見を援助するように指示されています。

説明: SCP-4233は顕著な異常性を示し、不明確な課題の下に行動している、起源と組成が不明な水陸両性ヒト型実体です。

SCP-4233は外見上、頑丈な銅製ヘルメット、ガラスの覗き窓、錘付きの靴を備えている19世紀後半の潜水服を着用した人間に類似しています。しかしながら、SCP-4233の体形は不均衡で、一般的な人間よりも全体的に大柄です。SCP-4233は直立時の身長およそ2.5mで、異常発達した胴体が太く巨大な腕を支えているため、やや類人猿めいた体格になっています。毎回出現するごとに、SCP-4233は長さ約1.8m、推定重量550kgの無銲錨を持ち歩いています。この錨は全体的に腐食し、フジツボなどの固着性海洋生物に覆われています — これらはおよそ75年間の海洋環境への継続的曝露と一致します。SCP-4233は錨を右肩に担いでおり、今日まで何か明確な目的のために使用する様子が観察されていません。

SCP-4233の主要な異常性はその肉体的・機械的特性にあります。SCP-4233のスーツは既知のあらゆる透過式電磁イメージングに対して不透明であり、これまでのところ、損傷を全く負わないことが証明されています。SCP-4233の耐久性と体力を数値で表すのは困難であると確認されています。1953年に初めて出現して以来、複数の機会において、SCP-4233は対戦車榴弾、地対地ミサイルシステム、そしてある一例においてはアイオワ級戦艦からの一斉片舷艦砲射撃を、観測可能な損害や動作障害を全く被ることなく受け止めました。SCP-4233は如何なる物理収容の試みにも注意を払っておらず、典型的には進路上に配置されたバリケードや障害物を突き抜けて歩き、前進を妨害しようとする排撃班の努力を無視します。

SCP-4233の出現は不規則で観測可能なパターンに従っていません1が、その振舞いは一貫性があり予測可能です。SCP-4233出現事象は、当該実体が海中から浜辺または海岸線に向かって歩み出すことで始まります。上陸地点は無作為かつ民間人の有無に関係なく選択されているようです。SCP-4233は現在までにカリフォルニア州、ヴァージニア州、スコットランド、ノバスコシア州、グリーンランド、タイ、オーストラリア、チリ、日本、ナミビア、オマーン、カムチャッカ半島などに出現しています。

上陸すると、SCP-4233は直線的に緩やかな速度(時速5kmを僅かに下回る)で歩き続け、負傷した民間人、動物、木などの大型植物を避ける時だけに進路を変更します。SCP-4233はどのような時点でも立ち止まる/速度を変える様子が見られず、しばしば倒木、乗員のいない車両、巨石、廃墟などの進路上の物体をそのまま歩き過ぎる(そして破壊する)ことがあります。SCP-4233は海に到着するまで設定した進路を前進し続け、時にはそのために数ヶ月かけて大陸全土を横断します。海岸に辿り着くと、SCP-4233は立ち止まって錨を下ろし、1回だけ拍手して、錨を担ぎ直し、移動を再開して視界から見えなくなるまで海中へと歩いていきます。

今日まで、SCP-4233の進路は主だった人口の中心部を横切っていません。1962年、1972年、そして1998年の過去3回のみ、小規模な村や町2から5km以内の土地を通過していますが、町の境界線内には立ち入っておらず、調査に訪れた民間人や法執行機関の職員と何らかの形式で交流したこともありません。これが偶然なのか、SCP-4233の意図的な計画なのかは現在も不明確です。SCP-4233に知性があるかは不確定であり、動機は仮にあるとしても現在不明です。 (下記の補遺を参照)

補遺4233-01: 2017年12月1日、SCP-4233がバフィン島の東海岸に接近した際、SCP-4233を追跡していた海上部隊シグマ-58“ボトムフィーダーズ”隊員らは、劣悪な音質の無線伝送で、伝統的な舟唄“酔いどれ水夫をどうしよう”の鼻歌を口ずさむ低い男性の声を受信し始めました。三角測量でSCP-4233が伝送の発信源であると速やかに特定されました。これはSCP-4233が何らかの電磁信号を生成した最初の既知事例です。NTFシグマ-58はその後、SCP-4233との接触を確立する許可された試みのために、SCP-4233の伝送周波数を隔離することに成功しました。結果として得られた意思疎通の転写は以下の通りです。

日付: 2017年12月1日
場所: カナダ、バフィン島の東部海岸線から約1km地点。インタビューはSCP-4233から3km離れたNTFシグマ-58の追跡・偵察トラックから実施された。

(SCP-4233の放送信号は安定した状態で隔離されている。SCP-4233の鼻歌は明瞭に聞こえるが、信号は比較的低品質で耳障りな音を伴っている。NTFシグマ-58隊員 ケンドラ・ヒル軍曹が、シグマ-58戦略司令部からクリアランスを得て口頭での接触を開始する。)

ヒル軍曹: 通信テスト、ワン・ツー。こちらは財団機動部隊シグマ-58のケンドラ・ヒル軍曹、この周波数で放送している未特定の実体に呼び掛けています。このチャンネルは受信を行っていますか?

(鼻歌が止まる。僅かな空電音を伴う短い沈黙があり、やがて空電が収まる。SCP-4233は英語で応答する。)

SCP-4233: んんーん。今日の風には新たな友か。受信できてるとも、ミス・ヒル、あんたの上官たちの声と同じように聞こえてくる。なかなか泳ぐのに適した日だと思うね。

(SCP-4233の声には全体的に液体の泡立つ音が散在している。)

ヒル軍曹: あなたは誰ですか?

(笑い声。)

SCP-4233: 詮索好きじゃないか。だがその答えは長くなるし、あんたには俺を捕まえておける時間が殆ど無い。言葉と箱はあんたたちの大いなる愛であり、あらゆる愛は尊重されるべきだろう。しかし言葉は俺から洗い流され、俺は俺自身の箱だ。時と潮の流れの中では、大した物でもないがね。

ヒル軍曹: あなたはなのですか?

SCP-4233: 平和と重荷、肝心要の存在さ。俺は水と鉄の中で自らの緩やかな歩みを行く者。俺は砕け散る波。深みの凪であり、邪悪の骨にかけられる凄まじい圧力だ。そちらに危害は加えない。あんたがあんた自身の摂理を脅かそうとしない限りはな、ハハ。

(ヒル軍曹の次の質問は、異常知性体との接近遭遇時に職員に提供される標準質問リストから逸脱している。)

ヒル軍曹: 何処へ行くのですか?

SCP-4233: 海底に沿って歩き、波を通して見上げる。俺は塩まみれの世界でもこの目が最高に利くことを知っている。だが風と草にはそれ特有の魅力がある。人生の大半が暗闇と泥である者にとっては、一輪の花でも純粋な宝だ。深淵には美を愛でる目が無い。昆布は見かけほど面白くないぞ。

(ヒル軍曹は標準的な行動プロトコルからの逸脱を忠告されるが、同じ趣旨の質問を続けることを許可される。)

ヒル軍曹: 何かを探しているのですか?

SCP-4233: その通り。俺の兄貴だ。あいつの信号は見つけ難いから、俺の声が届くように、良い場所を探して彷徨わなきゃならない。

ヒル軍曹: あなたのお兄さんとは何者ですか?

SCP-4233: あんたたちはもう雷の本に兄貴のことを書いてるぜ。俺に似たスーツを着てるが、色は白で、水でなく虚空に耐える作りになってる。我が兄、月の闘士。とても素早く空を駆け、とても強く、度々とても阿呆な真似をする。近頃はいよいよ阿呆に磨きがかかってきた。あいつと話したいんだ。俺が呼びかけてるのを知らないんだと思う。兄貴は何かに注意を払うのが苦手な性分だから。

ヒル軍曹: 何故そんなにお兄さんと言葉を交わすのが重要なのですか?

SCP-4233: あいつの話が真実なのか、それともまた何か適当な事をやってるのか確かめたい。真実なら、助けになりたい。そうでないなら、逆に助けになってくれないかと頼むつもりでいる。

ヒル軍曹: あなたは何の助けを必要としているのですか?

SCP-4233: 生きとし生けるものは全て海から来た、ヒルさん、別な奴らもそこからやって来る、そして俺はそいつらを遠ざけておかなきゃならん。奴らが上陸したら酷い惨事が起こるだろう。俺は深海じゃ割と良い戦いっぷりだ。俺の鋼鉄はあの怪物どもに重く死の歌を唄う。だが時代は変わる。奴らはとても早く変化する、そして俺は強い反面、遅いんだ。兄貴は雷電の速さで動き、心から愛している正義と同じように打つ。きっと大いに助けになるだろう。それに時々あいつの冗談は面白い。少なくとも俺のよりは笑える。

ヒル軍曹: 何か我々が支援できることはありますか? これを全てあなた一人きりで行う必要はないはずです。その、我々にも我々なりの強みがあります。

(笑い声)

SCP-4233: あんたの気迫はあんたの偉大なご先祖様たちと同じく逞しい。しかしな、そちらが俺を止めたくても、これが俺の宿命の流れ方だ。俺は戦い、深淵での戦に勝つ。俺の大いなる重みが敵を押し潰す。やがて水は平静を取り戻し、上に住む全ての人々が楽に呼吸できるようになるだろう。俺にはできないがね。今のところ、俺は一人で降りてゆく。

(SCP-4233は海岸線に到達する。シグマ-58のカメラは、SCP-4233が立ち止まり、脇の浅瀬に錨を配置する様子を捉える。)

ヒル軍曹: 私には分かりません。孤独であることは本当に必要ですか? そうしなければならないのですか? ただ情報を明かしてくれるだけでもいいのです。

SCP-4233: 俺たちは皆自分の道を流れ、自分だけの重荷を負わなきゃならない。あんたにはあんた流の、俺には俺流のやり方がある。その高貴な銃を置いて休ませ、戦の歌を止めろ。浜辺に背を向けて、偉大な太陽の暖かさの中に立つがいい。あんたたちは安全だ。奴らは群れ成して蠢いているが、どれほど悪辣な大海魔も、俺の強大な錨の重みの下で息を継ぐことはできやしない。何せ俺は…

(SCP-4233は手を打ち合わせ、122デシベルの金属的な音が響き渡る。海水の巨大な波によって、SCP-4233から5km以内の海面が約1.2m上昇する。この波の起源点は不明である。)

SCP-4233: …シー・チャンピオンだからな。

ヒル軍曹: ま、待ってください、具体的にそれは—

(SCP-4233が水中に入り、無線通信が途絶える。)

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