SCP-4266
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現在は放棄された惑星である地球は、既知の最も固有のSCP-4266の発生場所である。

アイテム番号: SCP-4266

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 地球は一般市民から放棄された状態を保たなければなりません。監視衛星ネットワークを維持し、各衛星には標準軌道捕獲装置を備え付けてください。これらの衛星は地球への着陸を試みる宇宙船を検知・削弱し、なおも着陸を続ける宇宙船があれば非致死的な形で無力化します。乗組員は船から退去させ、最寄りの宇宙港に送った後、記憶処理薬を投与してください。

少数の財団職員がSCP-4266の研究続行のために地球への滞在を許可されます。各担当職員は互いに物理的に離れた状態を保ち、常時監視されなければなりません。

説明: SCP-4266は惑星地球上にのみ存在する、現在も未知の異常な感染ベクターであり、知的生命体同士の共感レベルの低下を引き起こします。このベクターは一種の強制効果と考えられており、歴史上の人類間の暴力的交流1はほぼ全てがこの効果によるものです。

SCP-4266の効果が最初に発見されたのは2080年、初めて成功した火星コロニーが設立された5年後のことでした。かつて暴力犯罪の要因であると考えられていた社会経済的な不平等性や複雑な人間関係が存在していたにも関わらず、暴力犯罪の水準が予想されていた平均値よりも遥かに低いことが注意を引きました。心理学実験により、コロニー住人は地球で測定された基準値と比べて極めて高いレベルの共感性を有していることが判明しました。これは当初マーズ-1の特異性であると考えられていましたが、その後に月、イオ、ガニメデのコロニー、小惑星帯上における複数の宇宙港に設立されたコロニーでも同様の効果が認められ、この効果は予想に反して、地球以外に局在していると結論付けられました。

そのため、この効果を特定の物体や区域に隔離する試みは完全に失敗しました。暴力的振る舞いには「特定区域の人口密度の増加とともに暴力の水準が増加する」等の自明なものを除いて、パターンは確認されませんでした。

補遺4266-a: 当面における財団の対応

財団はこの知識を一般に広めることは全人類に悪影響をもたらすであろうと結論しました。特に、あらゆる人類の暴力性が外部から強制されたものであるという発見は既存の司法制度に対する信頼の喪失につながり、さらには世界の政府機関に対する揺さぶりにもつながりかねないと推測されました。また機能継続のための暴力の存在によって成り立っている多数の独裁政権はSCP-4266の真実味を強く否定したでしょうし、その後の対立によって多数の暴力的紛争が引き起こされる公算が濃厚でした。さらにSCP-4266の存在を認めることは、全人類がこの効果から逃れようと性急にも宇宙に行こうとする原因となり得ました。既存のコロニーではそのような大規模な地球脱出を支えることはできなかったでしょうし、コロニーの資源も急速に枯渇していたでしょう。

したがって長期的な戦略が実行に移されるまで、財団は地球外コロニーにおいて暴力犯罪の影響を再現することによりSCP-4266の効果を隠蔽しました2。財団エージェントは合意の上で市民との物理的抗争を実施したり、私的に同様の抗争を行ったふりをしたりする3ことによって、致命的でない危害を再現しました。致命的な危害については、自然死した死体を暴力の犠牲者に見えるようにして用いることで再現されました。また財団エージェントはコロニー住人らの平和維持軍の上層部に潜入し、暴力犯罪統計を人為的に水増しして報告していました。

最終手段として、財団は利他主義的な関係における共感性が目に見えて増大したことに対する理屈付けの試みである大衆向けのプロバガンダキャンペーン「新たなる世界に、新たなる尊重の形を (New World, New Respect)」を実施しました。このキャンペーンの結果として、暴力の再現は徐々に縮小されていき、一般には人類は単に漸次的に暴力を捨て去る形で「進化」したと説明されました。

補遺4266-b: 地球からの退去

2106年、財団は人類のための最も適正な長期的戦略は地球を最終的には完全に放棄し、人類からSCP-4266の有害効果を取り除くことであると結論しました。この戦略の第一段階は、地球から来た人々を支えられるコロニーのインフラを整備することでした。この段階は数世紀かかるものと算出されていましたが、共感レベルの増大により協力の水準が高まったため、計画よりも遥かに速いペースで進行しました。財団はこれに気付いた後、SCP-4266に関する情報をコロニー政府の選ばれたメンバーと共有することを決定しました。SCP-4266の性質を知ったコロニー上層部はこの戦略に賛成し、およそ数十年でこの取り組みを完了させるために財団と共同で仕事にあたりました。

第二段階は地球人類をコロニーへ移住するよう説得することに関するものでした。前述の通り、単純にSCP-4266の存在を知らせるだけでは大規模なヒステリーや暴動が起きる可能性が高かったため、代わりにカバーストーリーが流布されました。「オペレーション・ファロン」に指定されたこのカバーストーリーは「地球上に蔓延した未知の遺伝病によって大規模な不妊が引き起こされつつあり、唯一の回避策は地球を永久的に離れることである」というものでした。このカバーストーリーは、人類の生殖機能を一時的かつ可逆的な形で抑制する█████████████-31と呼ばれる財団が開発した化合物の計画的散布によって支援されました。これによる妊娠率の急落はオペレーション・ファロンの信憑性を向上させ、地球人類の90%の自発的移住へとつながりました。

暴走した地球上の財団グループが█████████████-22 (完全かつ不可逆的な人類の不妊を引き起こす化合物で、早期の段階で却下されていた) を地球全域に散布した時点で、財団は残る10%を説得する計画を策定しました。この行動は財団司令部により公式に糾弾され、あらゆる形態での█████████████の製造は中止されました。しかしこの行動による実際的な結果として、オペレーション・ファロンのカバーストーリーは完全に受け入れられました。残存人類を移住させるためのその後の努力に対する抵抗は著しく減り、最終的にわずか十万人のみが残る結果となりました。2271年までに最後の1人が自然死し、地球は公式に放棄宣言されました。

現時点で進行中である第三・第四段階は地球放棄後を取り扱います。SCP-4266の効果の原因を解明することは、同様の事象を地球外においても繰り返さないために不可欠であると判断され、特別収容プロトコルで述べられている通り、財団職員による小規模なチームが地球上での活動を続けています。さらに、地球は人類に対して物理的危険性をもたらし得るあらゆる発見済みのアノマリー用の隔離区域に指定されました。該当するアノマリーは暴力的挙動が発生し次第、地球に移送されます。

補遺4266-c: SCP-4266に関する倫理委員会報告書

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