
SCP-4316。
特別収容プロトコル: キャンプ・カナブは財団によって買収されています。全ての実験はSCP-4316主任研究員のハーラン博士を通して予定されます。

キャンプ・カナブの地図。SCP-4316は赤で強調されている。
説明: SCP-4316はウェストヴァージニア州のサマーキャンプ場、キャンプ・カナブにある焚火です。州の記録によると、この土地は1955年に買収され、キャンプ場が構築されました。1977年までキャンプ避暑地として運営されていますが、その時点で記録は途絶えています。キャンプ場には7棟のキャビンに加えて、カヌー桟橋、キャンプファイヤー用の炉、食堂などのレクリエーション施設が多数設けられています。
SCP-4316の異常効果は点火された時に発現します。SCP-4316は未知のガス状物質(以下SCP-4316-Aとする)を大量に生成し、SCP-4316-Aは霧を形成して地面の近くに漂います。SCP-4316-Aを吸入した全ての人物は12~16時間継続する遁走状態に入ります。SCP-4316が生成できるSCP-4316-Aの量には上限が無いように思われます。SCP-4316は日の出近くになると、焼けた形跡の無い木材を残して自ら消えます。

SCP-4316。
SCP-4316-Aはキャンプ・カナブを通して拡散しながらヒト型の形状を取ります。これらの形状は概ね不明瞭で詳細な顔立ちを欠いていますが、性別・身長・衣服などの全体的な特徴は区別できます。事象1回ごとにそれぞれ独特な6~13体の形状が観察されています。
SCP-4316-Aを吸入した人物は、その後の夜間を通してヒト型形状群との活動に従事します。この活動内容は、SCP-4316の傍の地面にただ寝転がることから、近くのパゴタ湖での水泳に至るまで幅広く変化します。ヒト型形状群はどの時点でも言葉を発しません。
日の出から約1時間後、SCP-4316-Aはあらゆる物体表面で結露し始めます。ヒト型形状の活動は鈍化した無気力なものになり、やがて完全に消散します。影響者は、前夜の出来事に関する鮮明ながらも誤った記憶と共に、周辺状況への認識をゆっくりと取り戻します。
補遺SCP-4316.01: 以下の実験は、ペンシルベニア州のキャンプ場“キャンプ・カナデンシス”に13歳から16歳まで参加した経験があるDクラス職員1名を用いて実施されました。
[記録開始]
[21:00] - SCP-4316が点火される。D-4314がSCP-4316-Aを吸引する。D-4314からの発声は無い。
[21:34] - D-4314はSCP-4316を離れてキャビンの一つに入る。5体のSCP-4316-Aヒト型実体が、それぞれ異なる二段ベッドの隣に立っている。D-4314はキャビンに入りながら話し始める。
D-4314: お前らここに居たのか! 来いよ、カウンセラーたちは全員キャンプファイヤーの所だ。
ヒト型実体群はキャビンの出口に向かって移動する。
D-4314: ジャレッドの隠してるアレは手に入ったか?
ヒト型実体群が静止する。
D-4314: 最高。よっしゃ、行こう。
[21:35] D-4314は5体のヒト型実体を連れて、パゴダ湖を円形に囲む道筋を歩いてゆく。他のヒト型実体たちがSCP-4316の周りに身動きせず立っているのが見える。D-4314は道筋へ向かう途中、キャビンの裏で身体を寄せ合って立っているヒト型実体2体の傍を通り過ぎる。
D-4314: ヒューヒュー! おアツいねぇ、スタン!
[22:04] D-4314は一行の先導を止め、パゴダ湖の隣にある岩棚に腰かける。ヒト型実体群はD-4314と共に円陣を組むが、座らない。D-4314はヒト型実体群がまだ立っているのに気付いていないらしく、彼らの膝を見ている。
D-4314: レイチェル、冷たいの取ってくれないか?
誰も動かない。
D-4314: ありがと。でもさぁ、俺たち去年も同じ事したのに、カウンセラーたちがもっとマトモな隠し場所を用意してないのには正直驚いたよ。
沈黙。
D-4314: でも今回の俺は捕まってないし?
D-4314は笑う。
D-4314: シンディと言えば、あいつ何処?
沈黙。
D-4314: まぁまぁ確かにね。ホント、あいつは腕時計を1時間早く合わせとくべきなんだよ。
沈黙。
D-4314: いや、いいわ。お前たちだけで行ってて。
沈黙。
D-4314: 今はちょっと泳ぎたい気分じゃないんだよ、な?
沈黙。
D-4314: だから — オーケイ分かった。分かったよ行くよ。
D-4314は服を脱いで下着姿になり、歩いて湖に入る。他のヒト型実体群は湖の上を浮遊している。
D-4314: おっ、この野郎!
D-4314はヒト型実体群に水を浴びせかける。
D-4314: 来年はもっと上の方に行こうぜ。飛び込みができる滝があるって聞いてる。
沈黙。
D-4314: いや、俺はまだ行ったこと無い。
沈黙。
D-4314: シンディから聞いたのさ。
ヒト型実体群は岸辺に向かって漂ってゆく。
D-4314: 待てよ、俺今何て言った? おい?
D-4314は岸辺に歩いて戻り始める。
D-4314: そんなに経ってないだろ! あと少なくとも1時間しなきゃジャレッドは探し始めないって!
D-4314が水中に引き込まれる。
[22:27] D-4314は監視担当の職員によって湖から回収される。緑藻の房が5本、D-4314のくるぶしに巻き付いていた。“C+T”1と記された腕輪が藻に絡まっているのが発見された。
[記録終了]
補遺SCP-4316.02: D-4314の完全な回復後、彼はトラヴィス博士によってインタビューされました。
質問者: アダム・トラヴィス博士
対象: D-4314
[記録開始]
トラヴィス: その後の調子は?
D-4314: りょ- 良好だよ。
トラヴィス: 本当かね? あまり気分が優れないようなら、改めて予定を-
D-4314: 大丈夫だ。さっさと済ませよう。
トラヴィス: オーケイ、あー、昨夜の件では何を覚えている?
D-4314: 俺は焚火に火を点けて、顔を幾つも見た。高校とか行きつけの溜まり場にいた友達の顔だ。
トラヴィス: 具体的には? 名前を挙げられるかね?
D-4314: シンディ・クレンショウ。あの子があそこに居た。サマーキャンプに来てたのを覚えてる。はっきりと。
トラヴィス: 彼女と何をした?
D-4314: 俺たちは… 桟橋で一緒にぶらぶら歩きまわったよ。ただそうしてるだけで幸せだった。
トラヴィス: そうか-
D-4314: あの子に… あの子に何が起きたか俺は全く思い出せない。
トラヴィス: えっ? 何の話だ?
D-4314: あの子は消えた。あの子はもういないんだ。それで俺はどうしてそうなったかさえ覚えてないんだよ。
トラヴィス: 君はサマーキャンプ以外でそのクレンショウさんの記憶があるかね?
D-4314: 勿論だとも! 手紙をやり取りした。ペンパルみたいに。
トラヴィス: 手紙には何と書いてあった?
D-4314: はっきりとは覚えてない。何十年も前の話だからな。何かこう、俺たちの人生に関するあれこれだったのは確かだ。来年のキャンプで何をするかの計画とか。
トラヴィス: 彼女の手紙で何か詳細な点を思い出せるか?
D-4314: それはその、覚えてるはずなんだ。
トラヴィス: 彼女は兄弟姉妹に言及したかね? 学校でのトラブルは? 友達との口論とか?
D-4314: わ… 分からない。
トラヴィス: 何処へ行けば手紙が見つかるかは分かるか?
D-4314: 分からない。
トラヴィス: そもそもそれらの手紙が本物だったのは確かなんだろうね?
D-4314: 分から- いや。分かるぞ。あれは現実じゃなかった。あり得ない。現実じゃない方がいい。
トラヴィス: 何故そう思う?
D-4314: シンディ・クレンショウは実在しないからだ。だろ?
トラヴィス: オーケイ、分かった。我々は君のキャンプの記録を調べたんだが、君と同時期に“シンディ”という人物が参加したことを示すものは全く無かったよ。
D-4314: そうか。ああ、そうだろうな。
トラヴィス: 多分、君は少し休んだほうが良い。
D-4314: …でも切手を買った思い出ははっきりあるんだ…
トラヴィス: 1、2時間したら戻ってくる — ゆっくり休息するんだぞ? 医者を呼んで血圧を測らせるからな。
[記録終了]
補遺4316.03: 実験の繰り返しによる効果を確認するため、D-4314を利用した追加実験が予定されました。問題の実験の終了時、彼は無意識の状態で小さな紙文書を握りしめているのが発見されました。文書のスキャンは以下に添付されています。
キャンプ・カナブ1976年度夏季お楽しみ祭り!
キャンプ・カナブへようこそ! 私たちキャビン・リーダーが皆さんを素敵な短期合宿にお出迎えします。この書類にはキャンプ場のルールと夏のイベントスケジュールが書いてあるので、しっかりと読み込んでください。皆さんが楽しいオール・アメリカン・サマーを過ごせますように!
ルール
1- 礼儀正しく!
2- 散らかしたあとは掃除しよう!
3- いじめっ子ではなく、友達になろう!
4- キャビンのドアをノックされた時は返事をしてはダメ!
5- キャビン・リーダーの許可や監督無しに何処かへ行かない!
6- 楽しもう!
スケジュール:
6/15 キャンパー到着、チェックイン
6/16 オリエンテーションの日
6/17 キャンプ一斉キャンプファイヤー
6/18 キャンプ交流会、ハイキング
6/19 アルティメット・フリスビー大会
6/20 歌の集いの夜
6/21 パゴダ湖への遠足
6/22 キャンプ一斉キャンプファイヤー 夜間カウンセラー捜索隊
6/23 キャビン対抗オリンピック 警察の事情聴取
6/24 ハイキング
6/25 カヌー キャンプ一斉捜索隊
6/26 キャンプ一斉キャンプファイヤー キャンプ一斉追悼
6/27 サバイバルスキル 水上安全講習会
6/28 川の流域についての授業 告別式
6/29 パゴダ湖への遠足 キャンパー チェックアウト、出立
このキャンプ・カナブでは、私たちはいつも家族です! また来年お会いしましょう!