クレジット
タイトル: SCP-434-JP
著者: ©︎
ukit
作成年: 2015
アイテム番号: SCP-434-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-434-JPが発生しうる公共機関には二名の担当職員が配置され、発見したSCP-434-JPは午前5 時までに回収します。回収したSCP-434-JPは最寄りの財団施設で裁断し、紙屑はサイト-81██で焼却処分します。回収漏れによる収容違反発生を防止するため、窓口業務を行う公務員にはカバーストーリー『印刷所の手違い』を適用し、民間人にSCP-434-JPを供与することがないように指導します。SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2が発生した場合、これらの活動に対しては最小限の干渉を行うに留めますが、その際は居所を財団保有のマンションである██████になるように誘導します。これら実体の行動は収容室の監視カメラによって記録し、434確定事象からの逸脱が無いかどうかを確認して下さい。434確定事象13142号の発生前には、民間人の巻き込み防止のためにSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2付きの監視要員は事象の発生予想位置をサイト-81██に報告しなければなりません。
説明: SCP-434-JPは、現在日本国で使用されている婚姻届と同一の内容が印刷された紙です。これらの対象は日本国内の役所内にランダムに発生し、どの時点かは不明ですが婚姻届保管場所に混入します。SCP-434-JPは外見からは婚姻届用紙と区別が困難ですが、平均的な婚姻届用紙よりも著しく紙質が劣っているため、注意すれば識別は可能です。これら実体の特異性は、婚姻関係を結ぼうとする36 歳以下の男女が各々の氏名を書き込んだ時から開始し、最も初めには男女の「婚姻関係を結びたい」という抵抗不可能な衝動として現れます。その後、SCP-434-JPの効果の下で婚姻を結んだ男女は434確定事象13142号以外の原因では死亡することが無くなります。具体的な例を挙げると、対象を撃とうとした銃器は必ず機能不全を起こしますし、ナイフを使って対象を攻撃しようとすれば攻撃者は延々と攻撃を回避され続けるか、あるいは繰り返し転倒するなどして対象に危害を加えることが出来ません。また、434確定事象以外の原因で疾病に罹ることもありません。
この状態となった男女はそれぞれSCP-434-JP-1(男性)、SCP-434-JP-2(女性)に指定されます。また434確定事象の完成に必要な範囲で、SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2は指定以前に負った負傷や疾病が回復します。これは外見的にはゆるやかな治癒、若返りのように見えますが、生体解剖を含む検査ではどのようなプロセスでこの回復が行われているのかは解明できていません。
SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2はそれ以前の関係性とは無関係に、互いに「離れがたい」「愛着がある」などというような感情を抱くようになり、SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2はSCP-434-JPを可能な限り早急に市役所などに提出しようとします。婚姻関係が成立する前の段階ではこれら実体は通常の手段でも終了しうるため、終了措置が必要な場合はこの提出前の期間にのみ、SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2実体を終了することが可能です。婚姻関係が成立するとSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2は434確定事象として指定されている一連の過程を経て必ず死亡します。その主な内容としては、
1. 婚姻届提出から3ヶ月以内のSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2の東京都████████████への転居、同居の開始。
334. 前号の事象後16 日以内に、各実体は従前の仕事を辞め、東京都████████████近隣のランダムな企業で再就職する。
809. 同居開始より1 年5 ヶ月後のSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2の第一子誕生。
などがあります。そして最後の事象は婚姻届提出から23 年と7 ヶ月後に発生する以下のものです。
13142. SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2が第三子の█████誕生日を祝うために、東京都████████████のいずれかの高級飲食店へ434確定事象9471号で購入した車両で向かう途中、差し掛かった交差点でSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2は運送会社のトラックに衝突される。この事故が原因の負傷で付近の病院に搬送され、各実体は死亡する。
この時点でSCP-434-JPによって発生した特異性は消滅し、434確定事象は終了します。そして434確定事象13142号の完成により、SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2は先述の通り死亡します。また全ての434確定事象に共通することですが434確定事象はどのようにも妨害不可能であり、過程の変更こそ可能であるものの結果を変えることには成功していません。SCP-434-JP-1、2に強い影響を受けていた事物は、この時点で影響から脱します。例えば、SCP-434-JP-1-a、SCP-434-JP-2-aの子どもは経過観察が続けられていましたが、他のSCP-434-JP-1、2の子どもの行動パターンと有意な共通性が存在しないことが確認されています。また、同様の生育過程を経た人物の行動パターンサンプルと比較しても大きな逸脱も、共通性も見て取れません。
SCP-434-JPの最初の発見例は1962年の東京都██████区役所の受付カウンターで受理され、その場で直ちにSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2実体が発生しました。財団はその後、SCP-███-JPの致命的な被害を受けてなお生存していたSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2を発見し、実験や各実体からの報告により20██年にはSCP-434-JPの特異性の範囲を特定しています。現在までに12組のSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2実体が発生しており、現在は東京都████████████にある財団保有のマンションに設けられた収容室に全実体が収容され、特異性の研究が進められています。これらの諸活動は通常の夫婦とほとんど変わらず、434確定事象の影響により前述の住居から転居することも無く、また各実体の逃亡の試みは完全に失敗に終わりますが、各実体には念の為に1組ごとに2名までの監視要員が割り当てられています。
補遺: 以下は、20██年までにSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2に実施されたインタビューログの中で重要とされたものです。現在もSCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2の持つ特異性の究明が続いていますが、SCP-434-JP-1、SCP-434-JP-2実例が少ないことから、これは難航しています。
SCP-434-JP-1-b 第7回 インタビュー記録 1983/██/██
対象: SCP-434-JP-1-b(強盗殺人、現住建造物等放火)、SCP-434-JP-2-b(誘拐、殺人)
インタビュアー: エージェント坂場
付記:SCP-434-JP-1-b、SCP-434-JP-2-bは制御された環境下で発生したSCP-434-JP-1実体の最初の例です。これら実体は共に元Dクラス職員であり、SCP-434-JP-1-aで得ることの出来なかった特異性の初期のデータを収集する目的で、SCP-434-JPへ暴露させました。第7回インタビューは収容開始から6年後に行われたもので、場所はマンションの収容房内です。
<録音開始,(1983/██/██)>
エージェント坂場: こんにちは、SCP-434-JP-1-b、SCP-434-JP-2-b。前回から何か変わったことなどはありましたか?
SCP-434-JP-1-b: いやあ順風満帆とはいえないけど、ガ……(口ごもる)子ども達もようやく手が離れてきて、親としても楽になってきました。
SCP-434-JP-2-b: ええ、性格が合わないと言ってきましたけれど、彼も大分丸くなってきて私としては喜ばしいです。頂いた新しい名前も、なんとか馴染んできたところです。
エージェント坂場: それは結構。では2-b。かつてあなたのした犯罪行為についてですが、今はどんな感想をお持ちでしょうか?まだああした事をやろうという意思はありますか?
SCP-434-JP-2-b: (軽く鼻を鳴らす)主婦の身で体制転覆なんて出来るわけがないでしょう?まあできる事と言えば、せいぜいテレビの討論番組を見て、この人の肩を小突きながら毒を吐くくらいなものです。
SCP-434-JP-1-b: 難しいことはよく分からないもんで、俺もウンウン頷くばっかりでして参りますよ。
エージェント坂場: 話題を変えましょう。先日行かれた遊園地での話です。行かれたのは████████████で間違いありませんか。
SCP-434-JP-1-b: はい、子どもら二人とも私達と連れ立って行きました。娘の方が帰り道で寝てしまってもう重くて、こいつももうこんなに大きくなったんだと……。
エージェント坂場: (SCP-434-JP-1-bを遮って)まず乗ったのはコーヒーカップのアトラクション?
SCP-434-JP-2-b: ええ、まさかあそこまで監視してたの?
エージェント坂場: いいえ。それでジェットコースターに乗り、その後にお昼の休憩を取ってから、観覧車に……。
SCP-434-JP-1-b: 待ってくれ、どういうことなんだ?監視はしてなかったんだろ。
[SCP-434-JP-2-bは青ざめ、子ども部屋の方をしきりに気にし始める]
SCP-434-JP-2-b: これも、そういう?筋書き通りの……。
エージェント坂場: まだ確かだとは言えません。それを検証するためのあなた方です。
SCP-434-JP-2-b: そう、ですか。
エージェント坂場: とにかく、ではちょっと書き出して見ていただいてもいいですか?園内に入ってから……。
[ここで子供部屋の戸が開き、SCP-434-JP-2-bが慌ててそちらに駆け寄る。エージェント坂場の判断で、記録はここで中断された]
<録音終了>
SCP-434-JP-1-c 第1回 インタビュー記録 1988/██/██
対象: SCP-434-JP-1-c、SCP-434-JP-2-c(殺人)
インタビュアー: エージェント圷
付記: SCP-434-JP-1-cは財団エージェント██████でしたが、脳腫瘍により余命わずかとなったため、SCP-434-JPの実験被験体に志願しました。この対象には、体調や身辺の変化などについて定期的な報告を義務付けています。SCP-434-JP-2-cはDクラス職員から無作為に選出された日本人女性です。このSCP-434-JP-1-cに対する最初のインタビューが行われたのは確定事象1 号より1 年経過した時点で、場所はマンションの収容房内です。
<録音開始,(1988/██/██)>
エージェント圷: こんにちは、SCP-434-JP-1-c。前回報告では元気そうだったが、今はどうだ?
SCP-434-JP-1-c: いま、ちょっと風邪を引いてまして……妻にも迷惑をかけてしまって申し訳ないですな。
エージェント圷: 風邪?ちょっと待て。
[エージェント圷はこの発言を受けて手元の資料を確認する]
エージェント圷: 事象623号だな。詳しくは教えられんが、まあちょっとすれば良くなるようだね。
SCP-434-JP-1-c: それを聞いて安心しましたよ。
[ここでインタビューの席に、お茶を持ったSCP-434-JP-2-cが合流する。]
SCP-434-JP-2-c: お茶です。よろしければどうぞ。
エージェント圷: これはどうも。SCP-434-JP-2-c、今はいかがですか?医療記録には重い精神疾患があるということでしたが。
SCP-434-JP-2-c: つらい時期が今まで続いてきましたけれど、主人に支えてもらって良くなりました。それに、母親になるのに私がしっかりしなくちゃ。
エージェント圷: それは結構ですね。それにしても、なんだかベビー用品が男の子のものが多いですね。まだ性別はわからないんでしょう?
SCP-434-JP-2-c: いえ、きっと長男です。かわいい、彼似の子がもうすぐ……。
エージェント圷: いやはや、私には子どもがいないもんでよく分からないですな。では、なんと言いますか、夫婦仲はいかがです?お互いの間で喧嘩などはありますか?
SCP-434-JP-1-c: いや、そういったことは一度も。……お互いに惹かれ合っていますよ。あの後からずっとね。
SCP-434-JP-2-c: あなた?
SCP-434-JP-1-c: なんでもないよ。さて、他にお聞かせすることはありますか?
エージェント圷: 今の仕事についてはどうだ?
SCP-434-JP-1-c: 順調そのものです。昇進も、もう手の届く所にあるという具合でしょうか。しかし、まさか一般企業で働くことになるとは考えもしませんでしたね。
エージェント圷: ああ、予定通りだな。
SCP-434-JP-1-c: ……これも?
エージェント圷: 434確定事象の内容に含まれていることだ。昇進後の階級までは決まっていないから、どこまで昇進するかはお前の能力次第だな。
SCP-434-JP-1-c: そうですか……まあ頑張りますよ。全てがもう決められているにしてもね。
エージェント圷: もういい、ありがとう……録音終了。
[以下の部分は、エージェント圷の持参した所定の録音機ではなく、室内に設置された録音装置の記録です。この部分での圷の発言はSCP-434-JP-1-cに大きく影響を与えたと評価されており、これは参考のために付されています。]
SCP-434-JP-1-c: 圷さん、俺はどうしたら……いやどうしようもないのか。俺はこいつとままごとをずっと続けなきゃならない。この異常を収めるために。
SCP-434-JP-2-c: えっ……?
エージェント圷: 止せ。
SCP-434-JP-1-c: 俺はもう、生きた現実と切り離されて、もう後は檻の外を眺め続けるだけ。もう何もかも……。
エージェント圷: 何もかもじゃない。そもそも考えてもみて欲しいが、人間誰しも決められた道筋の上を歩いてるじゃないか。俺達なんかがその典型だろ。お前の場合、それが極端なだけだ。そう考えるんだよ。
SCP-434-JP-1-c: そんなに簡単なものでは……。
エージェント圷: 知ってるはずだ。人間の一生なんぞ、吹けば飛ぶような簡単な物だろう?
SCP-434-JP-1-c: それは、確かにそうですけど。
SCP-434-JP-2-c: さっきから、なんのお話なの?私にはよくわからないのだけれど。
エージェント圷: いや、お気になさらず。まあなんというか、平凡な人生の話ですよ。皆が羨んでやまないような……。
<録音終了>
SCP-434-JP-1-c 第21回 インタビュー記録 20██/██/██
対象: SCP-434-JP-1-c
インタビュアー: エージェント飯塚
付記:本インタビューは、434確定事象13142号の起こると予想されている日の一週間前に行われました。
<録音開始,(20██/██/██)>
エージェント飯塚: SCP-434-JP-1-c、先月通知されたカウンセリングの件を断りましたね。なぜです?
SCP-434-JP-1-c: 無駄だからな。というか、何年も前に知ってたことだ。もうすぐなんだろう?
エージェント飯塚: 圷の言ったことは忘れてください。あれは不確定な情報です。我々も最善の努力を以って最後の事象に干渉する予定です。ですから、悲観せずこれまで通り協力を……。
SCP-434-JP-1-c: 君には分からないだろうが、これは予感のようなものでな。圷さんの言ったことは関係ない。きっと、どのようにしても防ぎようのないことだ。
エージェント飯塚: なぜそう思われるのですか?
SCP-434-JP-1-c: いいか。俺は、少し前に車を買った。次女が私立大学に進み、その下の弟がまた私立大にと言って、金が無いにも関わらずだ。だが俺は車を、しかも安くはない車を買ってしまった。
エージェント飯塚: ええ、それはあなたの報告通りです。前の二例の実体にも確認されていた行動で、434事象に数えるかどうか審議されていると聞いています。
SCP-434-JP-1-c: ああ、間違いなくそうだろうな。自分で非合理なことと分かっていながら、どうしようもなくあの車が欲しくなった。今までもそんなことが続いてきた。決められた筋から外れた瞬間に誰かの手が伸びてきて、元のレールに戻される。それで俺も、だんだんとその手が見えるようになってきてな。今見えているのはトラックの車輪の下だ。
エージェント飯塚: ですから……いや、なぜトラックと?前回のログの圷は単に交通事故だと。
SCP-434-JP-1-c: 何と言えばいいのか。ある作曲家の曲ばかり聴き続けていると、なんとなく次のフレーズが分かるようになるだろう?多分そういうものなんだと思う。
[SCP-434-JP-1-cは所在なく手を擦り合わせつつ、十秒ほど沈黙する]
SCP-434-JP-1-c: もうそれもどうでもいい、この件に関しては……もう仕方がないと思っているんだ。
エージェント飯塚: なんですって?
SCP-434-JP-1-c: 君達はこう思っているのかもしれない。俺達が「なにかに操られて、安っぽいホームドラマを演じさせられている哀れな被害者だ」とかな。だがそうではないんだ。楽しいこともあった。辛いこともあった。治ると分かっていても、妻が重病になったときは辛かったし、子供を遊園地に連れて行くのさえ「確定事象」だったが、それでも俺達の人生だったんだ。
エージェント飯塚: ともかく、これまでと変わらず協力はしてくださるわけですね?
SCP-434-JP-1-c: そうだね。それにもしかすると、息子の誕生日を平和に祝えるかもしれない。君達は道路封鎖なり、私達を遠くの武装サイトに隔離したりするんだろう?私達ももちろん協力するとも。ただ、少し頼みがある。
エージェント飯塚: なんでしょうか?ひとまず伺いますが。
SCP-434-JP-1-c: あいつは頭の弱い女だ、何にも気がついてない。あれには……妻には何も言わないでくれ。
<録音終了>
補遺2: SCP-434-JPステータスを表示します。日数が6000 日を超える場合は表示しません。表示されないデータについては、サイト-81██へ問い合わせてください。
データサーバーへ接続しています……
[エラー。サーバーとの接続が予期せず解除されました。]