SCP-4358
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収容以前のSCP-4358に通じる経路。

アイテム番号: SCP-4358

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-4358を構成する土地は財団のダミー企業を通して買収され、現在はイズールト・パーク・メトロパークス内部の変電所に偽装されています。SCP-4358は有刺鉄線のフェンスで囲われ、収容担当官によって毎日検査されます。SCP-4358の収容任務には、長距離恋愛関係を維持している人物のみが配属されます。収容担当官には毎月1回の交際関係セラピーが義務付けられます。この交際関係が終了した場合、懲罰措置を伴わない異動となります。

SCP-4358-ADAM及びSCP-4358-EVEが関与した全ての事件は、プロトコル・パーカー-バロウを通して曖昧化できます。SCP-4358-ADAM個体とSCP-4358-EVE個体は丸一日拘留してから解放します。

説明: SCP-4358はオハイオ州イズールト・パークの“恋人たちの小径”ラヴァーズ・レーン1だった区画です。SCP-4358に入った恋愛関係の人物2名は、SCP-4358-ADAM及びSCP-4358-EVEと指定される2体の実体によって肉体の制御を奪われます。この憑依現象は16時間継続します。一度に存在できる個体の数に上限はありません。知識と経験は各個体間で共有されます。SCP-4358-ADAMとSCP-4358-EVEは、自分たちが憑依する肉体の性別を選り好みしません。

ショーニー族の神話や初期のアメリカ入植者の証言は、SCP-4358が400年以上前から活動していることを示唆します。

SCP-4358-ADAMは急性の窃盗症と攻撃的な態度を示し、宝飾品、ナイフ、香水、自動車などを盗むと共に、SCP-4358-EVE以外の存在には敵意を露わにします。しかしながら、これらの感情の激発は大部分が演技であり、実際に危害を及ぼす事例は滅多にありません。これは、SCP-4358-ADAMの行動目的が、SCP-4358-EVEを感心させる、または何らかの形で機嫌を取ることであることを示唆します。

SCP-4358-EVEの心理学的プロファイルは重度のアドレナリン中毒を示唆しており、SCP-4358-ADAMは一貫してこの欲求を満たします。SCP-4358-EVEはしばしば、SCP-4358-ADAMが盗んだ物品を使って、店頭の製品を傷付ける、自動車で郵便受けをなぎ倒す、タイヤを切り刻むなどの器物破損行為に従事します。

16時間が経過すると、影響者は憑依されていた間の出来事を思い出せなくなります。SCP-4358-EVEとSCP-4358-ADAMは両者ともに、複数の個体間にまたがる自らの行動を思い出せます。

インタビューADAM-21:

これはSCP-4358-ADAM個体を対象とする21回目のインタビューであり、エリオット・ダーシー研究主任と個体番号SCP-4358-ADAM-21の間で行われた。SCP-4358-ADAM-21は40歳のアフリカ系アメリカ人女性である。

ダーシー: こちらはエリオット・ダーシー博士です。私は現在、21番目のSCP-4358-ADAM個体と—

ADAM-21: まず、俺は-EVEと呼ばれるのを望んでいたと明言しておきたい。イヴはリンゴをかじってからアダムに渡したのだろう? 俺がかつて愛する者を無法者の生活へと導いたように。俺こそが扇動者だった。

ダーシー: これはあなたたちのような2実体に慣習的に付けられる名称に過ぎません。こうすれば会話でも文章でもあなたたち2人を区別しやすくなります。気にする必要はありません。

ADAM-21: それはそれとして文句は言わせてもらおう。

ダーシー: 分かりました。あなたを怒らせるつもりはありません。あなたたちにとって、時間が非常に貴重なのは理解しています。私にとっても、妻と過ごす時間は非常に貴重ですからね。

ADAM-21: お前の妻は美しいか?

ダーシー: 私はそう思います。

ADAM-21: その美しさも我が愛する者のそれと比べれば必ずや色褪せるだろう。お前はせいぜいが寝取られ男だな。不能の寝取られ男だ。

ダーシー: 実は-EVEについての話を聞きたいのです。生きていた頃のあなたたちの関係を語ってはもらえませんか?

ADAM-21: 俺たちはもう存在しなくなったとでも?

ダーシー: あなたたちが本来の肉体を持っていた時期の話です。

ADAM-21: 俺は男であり、戦士であり、偉大な領主に恩義があった。俺は剣と魂に誓いを立てて主君に仕えていた。彼は残酷な男だった。俺は彼のあらゆる命令に従った。卑しい身分から、彼に最も近い護衛にまで出世した。主君に最も近い地位を与えられたのは俺一人だった。何より、他の誰もが失敗しても、俺ならば彼を守れると信頼されていた。

ダーシー: では、-EVEは?

ADAM-21: 当時の彼女は女だったはずだ。我が主君の妻のために献身する処女だ。そして美しかった。始めて宮廷で彼女を見た時、槍を取り落とした。俺は彼女の物になること以上を望まなかった。だが、俺は主君に身を捧げていた。妻を持ち、後継ぎを設けるのは俺の役目ではなかった。

ダーシー: どんな経緯で思いが報いられたのを知ったのですか?

ADAM-21: ある晩、彼女が俺の下に来た。王が情交を望んだので、俺が部屋の扉の外に立っていると—

ダーシー: 彼は王だったのですか?

ADAM-21: 領主はある意味では王でもある。大した事ではない。彼女が扉の所までやって来た。そして彼女自身を俺に押し付けた。俺は彼女を愛した、木彫りの扉に身体を擦り付けながら。尻は木片まみれになったが、俺は彼女の物になった。

ダーシー: その後、何が起きたのですか?

ADAM-21: 指輪があった。素晴らしいルビーを嵌め込んだ素晴らしい指輪だ。俺は愚かだった。情熱に駆られて、それを主君から盗み、愛する者に与えた。彼女はそれを受け取り、俺たちは男とその妻のように親密な間柄になった。神父も司祭者も要らなかった。俺たちには指輪があった。

ダーシー: そして、あなたの主君は気付いた?

ADAM-21: あれが国家の印章だったなどと、どうして俺に分かっただろう? 俺は宝石に興味を抱いた試しがなかった。俺たちは引き回され、四つ裂きにされた。それがここに来た顛末だ。お前には以前も話したはずだ。

ダーシー: 以前のお話では、あなたは女主人から盗みを働いた侍女でしたね。

ADAM-21: そうだ。

ダーシー: どちらが事実ですか?

ADAM-21: それは重要ではないだろう。

ダーシー: 結婚したいと思う相手に指輪を贈るのは、現代になってからの風習だと知っていましたか?

ADAM-21: いいや、しかし興味深いな。 <ダーシー博士の指輪を指す。> 妻からの贈り物か?

ダーシー: プロポーズしたのは私からですね。私の指輪は2人で一緒に買ったはずです。

ADAM-21: 俺たちの指輪と比べれば糞だな。

ダーシー: -ADAM、はっきり特定できないヨーロッパの王国に生まれた男女が、何故かオハイオ州に現れるなんてあり得ますかね?

ADAM-21: ヨーロッパと言った覚えは無い。

ダーシー: あなたはイズールト・パークという名前の町で、自分と-EVEは中世の悲劇的な恋人同士だと信じている。興味深いと思いますか? “トリスタンとイゾルデ”の物語を読んだことはありますか、-ADAM? あなたが憑依した人々の中に、この物語を知る者がいたと思いますか?

ADAM-21: お前の言葉が真実であろうと、物語は同じだ。彼女のためなら何でもする。俺は失敗を犯した。そしてもし俺が彼女を気に掛け続けたら、彼女が俺のせいで受けた仕打ちの10億分の1程度は埋め合わせられるかもしれない。

ダーシー: 申し訳ありません、-ADAM。

ADAM-21: どの道同じだ。さぁ、俺を帰してくれ。お前とは違って、俺には妻を幸福にする意志がある。もしお前が望むなら、お前の妻をここに招いても構わんぞ。その時は、俺たちがお前たちの身体に、何かしら情熱に近いものを吹き込んでやってもいい。

ダーシー: オーケイ。いいでしょう。また次回お会いしましょう。

インタビュー終了。

インタビューEVE-22:

これはSCP-4358-EVE個体を対象とする22回目のインタビューであり、エリオット・ダーシー研究主任と個体番号SCP-4358-EVE-22の間で行われた。SCP-4358-EVE-22は37歳のヒスパニック系女性である。

ダーシー: こちらはエリオット・ダーシー博士です。私は現在、財団の拘留下にいる22番目のSCP-4358-EVE個体と同席しています。

EVE-22: はいはい、早めに済ませてよね。

ダーシー: 苛立っているようですね、-EVE。

EVE-22: アンタと話すぐらいならあの大男の所に戻りたい、博士。あいつと出会った成り行きを話してほしいんだろ?

ダーシー: -ADAMは我々とのインタビューについて話したでしょう。

EVE-22: 僕らの間に隠し事は無い。

ダーシー: あなたたち2人がどのように出会ったかを教えてください。

EVE-22: あれはね — ああ! 時間って面白いもんだね? — 30年代? 50年代かも。確か、確かその当時の僕はアメフトのクォーターバックの花形で、彼女は… 何て言ったっけ? “不良”だ。こう、何だろう。多分暴走族だった。あの子は僕がそれまでに会った誰とも違ってたよ。あの頃、世間の人々は彼女みたいじゃなかった。彼女は盗んだ。罵った。タバコを吸って酒を飲んだ。あんな女の子とは一度も会ったことがなかった。知り合いは誰もあんな感じじゃなかった。僕はそれが好きだった。

ダーシー: それで、悲劇的な終わりが訪れたのですか?

EVE-22: いや。僕らはまだ一緒にいる。ちょっとガクッと落ちた時期があるだけ。僕らの両親は、僕ら2人が会うのを嫌った。まぁつまり、僕の親はそうだった。彼女の親が心配してたとは思えない。それどころか校長まで首を突っ込んできた。覚えてるよ、校長は僕らを1人ずつ呼んで説教した。彼女の話によると、校長は彼女をひたすら怒鳴りつけたそうだ。善良な青年を汚しやがったとね。僕に対しては、彼女の影響を受けないでくれ、良きキリスト教徒の道を歩んでくれと泣かんばかりに頼み込んだ。

ダーシー: そして、その後は?

EVE-22: その日、僕らは校長の車を盗んだ。いや、直接盗んだのは彼女だ。その後は、ええと、軽く暴れたのを覚えてる。楽しかったよ。保安官の家に卵を投げ付けた。校長のタイヤを切り裂いた。でも、交通事故を起こした。僕は運転の仕方をそれほど良く知らなかった。そして僕らは死んだ。バーン。そんな感じ。

ダーシー: あなたたち2人が何世紀も前からここに存在したらしいという事実と、今の話の辻褄をどう付けるつもりですか?

EVE-22: 愛は時代を超えるんだよ、バーカ。

ダーシー: 実はこの土地の歴史を調べてあります。10代の若者が巻き込まれた交通事故は数多く発生していますが、いずれも致命的なものではありません。

EVE-22: それらしく聞こえるね。

ダーシー: では、今のは作り話なのですね。

EVE-22: いいや。

ダーシー: 何故そう思うのですか?

EVE-22: 実際に起きたからだ。僕は大失敗を犯した。そして今、僕らはここに立ち往生してる。

ダーシー: 自分が異常現象の原因だと思っているのですか?

EVE-22: あいつが先に進めないのは、僕のせいだと思う。変わったのは僕だ。あいつが居なければ僕は何者でもない。僕が悪いんだとすれば理に適ってるだろ? だから、僕はあいつに借りがある。あいつを精一杯、永遠に愛するべきなんだ。もし僕の愛があいつをここに縛り付けるのなら、僕はそれを真剣に受け止めるべきじゃないか? 責任を取るべきじゃないか?

ダーシー: -ADAMも私に同じ事を言いましたよ、-EVE。

EVE-22: あいつらしいや。でも馬鹿げてる。僕はあいつを愛してるけど、あいつはとても馬鹿だ。これは全部、何もかもが僕のせいなのに。たまには、身体から身体へ憑り付くのも良い体験だ。でも、時間が問題だ。たまに、僕らが一緒にいない時の時間はとても長い。その間の僕らは引き離されている。

ダーシー: この話をしたのは初めてですね。

EVE-22: 訊かれなかったからね。

ダーシー: 他のカップルを通して愛を経験していない時、あなたたちは何処にいるのですか?

EVE-22: 何処にもいない。何も無い。

ダーシー: 大丈夫ですか、-EVE?

EVE-22: 戻りたい。アンタたちはほんの少ししか時間をくれない。

ダーシー: 相応しい人材を提供するのは、我々にとって高コストなのです。輸送費を考慮してください。

EVE-22: もううんざりだ。僕をここから出せ、クソ野郎。せっかく用意した僅かな時間まで独り占めするなよ。

ダーシー: 分かりました、-EVE。また別の機会に話しましょう。ありがとうございました。

インタビュー終了。

補遺4358: SCP-4358-ADAMとSCP-4358-EVEの交際関係を継続させるためのコストが高額であることから、収容プロトコルはダーシー研究主任の指示で変更されました。倫理委員会の異議申し立ては、O5評議会の8-5の投票で否決されました。

収容プロトコルが改定されました。

事案4358-2: 収容担当官2名がSCP-4358-ADAM個体とSCP-4358-EVE個体に変化していたと判明しました。2名は収容プロトコルに違反し、恋愛関係を結んでいたことが明らかになりました。収容担当官2名は、お互いに心酔してはいたものの、肉体関係には発展しなかったと主張しました。彼らは懲罰措置を受け、再配属されました。

収容プロトコルが現行バージョンに改定されました。

事案4358-4: 定期検査中、ダーシー研究主任が結婚指輪を紛失しました。結婚指輪は2羽のナゲキバト(Zenaida macroura)の巣から発見されました。更なるSCP-4358周辺地域の観察によって、現地の野生動物が異常な求愛行動を示す事例が複数確認されました。

収容プロトコルは直ちに改定される予定です。

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