アイテム番号: SCP-4374-JP
オブジェクトクラス: TiamatKeter
特別収容プロトコル: 本報告書にて指定された概念は事態の進展があるまで暫定的に名辞災害(Eshuクラス)と同等の扱いを行い、あらゆる名前、肩書、呼称で言及してはいけません。世界の全てに牙をむくそれらに言及する際には、それらに対する描写のみが使用可能です。描写を用いる際は、毎回、必ず変化をつける必要があります。
描写に変化を付けないことそれ自体が即座に収容違反に直結する可能性はこれまでの収容の試みによって限りなく低いものとなっていますが、収容違反のリスクを最小限に抑えるため、このプロトコルを厳格に実行し続けてください。識別のために、描写は色分けをすることが可能であり、命名の多様性を確保するために装飾的な表現を使っても構いません。なお、収容違反防止のため、描写を用いる機会は必要最低限に留めて下さい。このプロトコルのため、本報告書におけるそういった描写の大多数はアクセスに簡易措置のみならず専用の正式措置を要する後半部分のセクションに集中しています。
全てのSCP-4374-JP関係者は、自らによってSCP-4374-JPの収容違反が発生する危険性が高まっていると少しでも感じた場合、たとえその根拠が直感のみに基づくものであっても、即座に予め配布されているクラスA記憶処理剤を用いて自己記憶処理を行ってください。記憶処理剤を使用した際には自動的に収容チームへメッセージが送信されるため、収容チームからの返信によって状況を把握し、記載された指示に従ってください。
説明: SCP-4374-JPは、人類を含むあらゆる一定以上の知能水準を持つ生物がそのトリガーとなる何らかの存在を伴った記憶を想起した際に発生する現象です。条件に該当する記憶が想起されると、その記憶の内容の出来事が実際に起きた地点にて、その内容が不明な原理で実体化します。SCP-4374-JP現象を引き起こす記憶の内容はSCP-4374-JP-A、SCP-4374-JP現象によって実体化したSCP-4374-JP-AはSCP-4374-JP-Bとして指定されています。
SCP-4374-JP-Bとしての実体化は、対応するSCP-4374-JP-Aを想起した人物(以下、想起者と記載)がその時点で位置していた現実での場所から特定の範囲内に存在するものすべてが対象になり得ると考えられています。また、SCP-4374-JP-Bとして実体化する対象のSCP-4374-JP-Aにおける場所が、その中で想起者が位置していた場所から特定の範囲内に含まれていることもその条件の一つであると推測されています。
この際、その対象が写真である場合は、写真に写った物体ではなく写真そのものが実体化します。具体例を挙げると、仮に犬の写真を見たという要素を含む記憶がSCP-4374-JP-Bとして実体化した場合、犬ではなく犬が写った写真がSCP-4374-JP-Bとして出現します。現時点で確認されているSCP-4374-JP-B実例には、人工物を含めた無機物、有機物、人間を含めた多種多様な生物、天候や周辺環境などが含まれています。
SCP-4374-JP-Aにおいて何らかの動作や運動を行っていた物体・人物は、実体化後、基本的にその通りの動作や運動を行います。この際に後述する妨害が十分に行われなかった場合、想起されたSCP-4374-JP-Aに含まれる挙動の完遂後、SCP-4374-JP-Bは不明な原理で消失します。
SCP-4374-JP-Bはその出現時と消失時を除き、物理法則に従います。そのため、SCP-4374-JP-Aに含まれていない何らかの物体が偶然SCP-4374-JP-B出現地点およびその付近に存在していた等の理由により、SCP-4374-JP-Bの動きが物理的に妨げられることがしばしば起こります。この妨害によってSCP-4374-JP-Bが本来行われるはずであった挙動をSCP-4374-JP-Aにおける挙動と十分近い形で完遂できなくなった場合、SCP-4374-JP-Bはその動きを停止し、消失することなくその場に残留し続けます。
SCP-4374-JP-Bは出現時、その時点で出現地点に存在していた固体および液体の干渉を受けます。その場合、結果としてSCP-4374-JP-Bはそこにもともと存在していた物体を内包した、または交差した、あるいはその物体に内包された形で出現します。これらの物体の存在は多くの場合において、SCP-4374-JP-Bの挙動を物理的に妨げる、あるいはSCP-4374-JP-BをSCP-4374-JP-Aにおける状態と十分かけ離れた状態に陥らせることによってSCP-4374-JP-Bが残留し続ける要因となります。特にSCP-4374-JP-Aが景色に関わるものであった場合、このパターンがしばしば発生します。
想起者が記憶するSCP-4374-JP-Aが曖昧なものであった場合、出現するSCP-4374-JP-Bの外見や内部、挙動なども同様に曖昧なものになります。SCP-4374-JP-Aの曖昧さのためにSCP-4374-JP-BがSCP-4374-JP-Aと同様の挙動を完遂することが物理的な要因で不可能になった場合も、SCP-4374-JP-Bはその動きを停止し、消失することなくその場に残留し続けます。また、想起者がSCP-4374-JP-Aの位置を誤って記憶していた、または曖昧に記憶していた場合、SCP-4374-JP-Bは実際にSCP-4374-JP-Aの内容が起きた位置ではなく、想起者の主観に基づいた位置に出現することが判明しています。この際、特にSCP-4374-JP-Aの位置記憶が曖昧であった場合のみ、SCP-4374-JP-Bが同時に複数箇所に出現することがあるという研究結果が報告されています。
SCP-4374-JPが発生するようになった原因の調査は他の喫緊の課題が極めて多数存在していたために長らく見送られてきましたが、現在順次開始されつつあります。
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REQUEST="Discovery_Process"
簡易措置実行
閲覧者の表層クオリア圏を測定中…
…
…
測定終了
[ACCESS: GRANTED]
発見経緯: SCP-4374-JPは、協定世界時2054年6月9日19時40分04秒頃以降、少なくとも財団が明確に観測可能な範囲全域で同時に発生するようになりました。これによってSCP-4374-JP-Bが全世界で大量発生し、人口密集地や観光地など、理論上SCP-4374-JP-Aが生まれやすい地域を中心として各地に甚大な被害が発生しました。以下は、SCP-4374-JP発生当初に観察されたSCP-4374-JP-Bの例です。なお、ここに提示する例の一部はあくまで代表的な一例であり、類似の事例が多数存在することに留意してください。
SCP-4374-JP-B実例: 身元不明の家族とその家具
出現地点: 古家達三博士の自宅
概要: 古家達三博士と連絡が取れなかったために訪れた他の職員によって、自宅の台所にて死亡している古屋博士が発見された。発見された際の古家博士は、SCP-4374-JP-B実例である10代前半と思われる男性の実体と身体の大部分が空間的に重なっていた。その際、古屋博士が所有していた家具をはじめとする多くの私物は残留したSCP-4374-JP-B実例と交差・融合しており、古屋博士の妻、そしてSCP-4374-JP-B実例の男性の両親と思われる男性と女性の実体が、全て何らかの家具と交差した形で発見された。これらのSCP-4374-JP-B実例は古屋博士の自宅のかつての所有者およびその所有物であった可能性が有力視されたが、調査の有益性が低いと判断されたため事実確認は行われていない。
SCP-4374-JP-B実例: ニューヨーク州に存在する様々な代表的ランドマーク
出現地点: ニューヨーク各地
概要: 恐らくかつてニューヨークに住んでいたまたは訪れたことがある人々の一部の記憶が曖昧であったため、自由の女神像をはじめとする多くの特徴的なランドマークに類似した実例がそれらが本来位置しない場所も含めたニューヨーク各地で大量に出現、それらのほぼ全てが既存の建造物などの干渉を受けたためにSCP-4374-JP-B実例は増加の一途を辿り、財団がニューヨーク州内でSCP-4374-JP-B解体作業を実施した時点でもはやその数の測定は不可能であった。その際、SCP-4374-JP-B内部からは出現地点に存在していた人間のものと思われる人体の一部およびヒト組織の痕跡が多数発見された。
SCP-4374-JP-B実例: 大量の雪
出現地点: ウィスラー・ブラッコム
概要: 人々がレジャー目的で訪れた際に記憶された積雪が実体化したと推測される。多くの想起者の存在によって狭い範囲にSCP-4374-JP-Bが集中的に出現、結果として大規模な雪雪崩が自然発生し、周辺地域は大きな被害を受けた。詳細な被害状況は、その時点で既にカナダ政府および国連関係機関が麻痺状態に陥っていたこと、そして雪雪崩による被害そのものが非異常であったために財団の調査が早期に打ち切られたことで、現在でも不明なままである。
SCP-4374-JP-B実例: 地形及び水、建造物
出現地点: 地球全域
概要: SCP-4374-JP発生直後より、「山や渓谷といった地形、建造物などが複数重なり合って存在している」といった旨の報告が多数されている。また、SCP-4374-JPの発生開始以前と比較して、地球の海面が1cm前後上昇していることが明らかになった。特に建造物に関しては、財団関連施設に限定しても既にかつてそこに存在していた設備の再出現、ドアが閉まった位置と開いた位置の双方で存在する、SCP-4374-JP-B実例の出現によるものと思われる施設の外見の変化などが多数確認されている。
SCP-4374-JP-B実例: 人体
出現地点: 人類が居住する地域全域
概要: 人体がSCP-4374-JP-B実例として出現し、残留した場合、他の実例と同様に動きを停止するが、その後も少なくとも数日間、おそらく数ヶ月以上、水や食べ物を一切摂取していないにもかかわらず、また一切の活動を行っていないにもかかわらず、不明な原理でその生命活動は維持される。これらの実例の正確な数の測定は放棄され、現在は生物でないSCP-4374-JP-B実例の処分と同様の手順で終了処分が行われている。
END="Discovery_Process"
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REQUEST="Initial_Detention"
簡易措置実行
閲覧者の表層クオリア圏を測定中…
…
…
測定終了
[ACCESS: GRANTED]
初期収容: SCP-4374-JP発生開始から1時間前後は、SCP-4374-JP-Bの正体が一切不明であったために財団の対応は後手に回ったものでした。しかし、財団各部門間での緊密な連携、世界オカルト連合(GOC)をはじめとする他の異常組織との迅速な協力体制の形成に成功した結果、SCP-4374-JP現象の発生条件が特定のクオリアに基づく記憶の想起にあることが短時間で判明しました。SCP-4374-JP発生開始からわずか2時間20分後の協定世界時2054年6月9日22時00分には、異常性が全世界で発生しておりこれ以上の隠蔽が極めて困難な試みであると推測されることを根拠とし、GOCおよび国際連合と共同で捲られたベールシナリオ及びSCP-4374-JP現象の詳細を全世界に向けて公表するに至りました(財団内においては財団-GOC-国連共同宣言と呼称)。この際、既に判明していた調査結果よりSCP-4374-JP現象の発生原因とその簡易的な予防法を公表、周囲への周知を呼びかけました。また、NK-クラス"グレイ・グー"世界終焉シナリオの阻止を目標として、財団とGOCとの間での協力体制の維持増進に留まらず、各国政府および国際連合も交え、かつてのヴェールの内外問わず合同で対処にあたるという点で合意しました。
しかし、SCP-4374-JP現象による被害により、同日中にはほとんどの非異常的な通信手段が途絶、非異常組織との連携は絶望的なものとなりました。さらに、財団自身もSCP-4374-JP-Bの物理的な被害、そしてそれに起因する無関係なオブジェクトの予期せぬ破壊または収容違反、何らかの理由でオブジェクトそのものがSCP-4374-JP-Bの起源となったことによる事実上のオブジェクト増殖事案の多発により、11日には財団サイトの約8割が機能を事実上停止またはSCP-4374-JP対処のための資源の捻出が不可能な状況に陥りました。その時点では超常的手段によってGOCをはじめとする異常組織との連絡自体は維持できていたものの、前述の財団への被害および他組織も同様の被害を受けたことによって協力体制が有効に機能しなくなり、事実上各組織が個別で対処を行うこととなりました。
その一方で、前述した通り9日の財団-GOC-国連共同宣言において財団らがSCP-4374-JP現象の簡易的な予防法を公表し、周知を呼び掛けたことは予想以上の効果をもたらしました。これはかつてない異常現象の現実での発生に突如直面した人々が極度の恐怖に駆られ、各通信手段が既にダウンしつつあったにもかかわらず凄まじい速度で予防法が拡散したためです。この際、ある程度の偽情報や情報の誇張があったにもかかわらず予想外の拡散速度が見られた最大の要因は、予防法の内容がその性質上人々の恐怖を強く煽るものであったために、その根幹自体は変質することなく極めて正確に伝達されたことであると推測されています。
結果として、10~11日頃にはSCP-4374-JP現象の発生数はピークを迎え、SCP-4374-JP-Bの物理的被害による死者の急増という要因も合わさってその後は急激に減少、後に行われた試算によると、16日にはピーク時の0.08〜0.12%程度までに抑制されていました。しかしながら沈静化には程遠く、依然としてSCP-4374-JP現象が常に財団および人類社会の存立を脅かし続けているという状況は継続していました。
END="Initial_Detention"
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REQUEST="General_Containment_Procedures"
簡易措置実行
閲覧者の表層クオリア圏を測定中…
…
…
測定終了
正式措置実行
測定装置の装着を確認しています…
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閲覧者の深層クオリア圏を測定中…
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測定終了
[ACCESS: GRANTED]
注: 以下に記載する一般向け収容プロトコルは財団-GOC-国連共同宣言の文字起こしの一部を引用したものであるため、聴き手の感情に強く訴えかけることを目的とした表現が頻出するほか、現在との情勢の違いにより一部収容違反を誘発するリスクが生じる記述が含まれています。収容違反リスクが無視可能なほど低い部分についてはその実用的・資料的価値のために原文のまま掲載されていますが、収容違反リスクが存在する部分は特別収容プロトコルに基づき、色分けの上で装飾的・抽象的表現を用いて言い換えられていることに留意してください。
以下は世界オカルト連合及びSCP財団の総意によって作成された宣言であり、国際連合が両組織及び本宣言の信頼性を保証します。
現時点で私たちの存在を知らない方々へ。私たちは世界オカルト連合、そしてSCP財団という組織を代表しています。私たちのかつての使命は、異常な事物、実体、その他様々な現象をあなた方の混乱を招かぬように、あなた方が平穏な日常を送り続けることができるように秘密裏に対処することであり、それらはそれぞれの組織によって異なるアプローチで展開されていました。この使命は過去100年以上にわたって私たちの組織の焦点でした。
今まさに世界を脅かし続けているやむを得ない事情により、この方針は変更されました。私たちの新たな使命は人類ぐるみでのこの異常現象の根絶です。
もしご理解いただけたのであれば、今からお伝えするあの異常現象の発生条件、そしてその予防法である一般向け収容プロトコルGeneral Containment Proceduresを各自実践し、また周囲の方々に拡散していただきたく思います。
単刀直入に申し上げます。あの異常現象は、私たち人類が既に失った数多くの感情を伴った記憶、俗に言う思い出を想起した際に発生します。
私たちがかつての思い出を思い出すとき、かつて大切にしていたはずだった感情を抱くと、それが実体化し、その思い出が刻まれた場所で、今そこにある物や人を傷つけます。
対処法は至ってシンプルです。あの日あの時のことを思い出さないでください。
あなたが思い出さなければ、あなたのあなたが長年過ごした実家のベッドで眠るとき感じたであろうものに満ちた生活は再び帰ってくるでしょう。
あなたが思い出さなければ、あなたやあなたがあなたがあなたとお互いの意志の一致によって結ばれた伴侶やその二人の間に生まれた子に対して多くの場合抱いていたであろう思いを感じる相手が脅かされる日常は終わりを迎えることでしょう。
あなたが思い出さなければ、あなたの順風満帆な日常に本来満ちており、生活を彩る小さな、あるいは大きな様々の物事からあなたが得られたであろう感情は再び戻ってくるでしょう。
とはいえ、「思い出すな」と言われれば言われるほど、人間はそのことを思い出してしまうものです。ですので、私たちはあなたに非常に心苦しいアドバイスを贈らなければなりません。
何かのことを考えないようにするには、他の何かのことを常に考え続けることが最も簡単かつ効果的です。ですので、あなたがあなたの中から断ち切らなければならず、そして既に断ち切った凶器を持つことで傷つく人々のことを想像し続けてください。
あなたが家族でのささやかな団らんの中で感じたであろう気持ちのひとときを思い出したなら、その思い出は家を強引にそこへと引き戻し、そこで暮らす大切な存在の命をも塗り替えようとするでしょう。
あなたが恋人とその永遠の恋人が恋人たる存在になった根拠を確かめ合った日を思い出したなら、その思い出は夜の街を傷付け、見知らぬ誰かとその恋人との間を永遠に引き裂こうとするでしょう。
あなたが仲間たちと何かを成し遂げ、その「成功した」という事実から生まれ、あなたたちを包み込んだはずの感情を分かち合った瞬間を思い出したなら、その思い出は他を損ないそして損なわれ、その地を穢しながら朽ちていくでしょう。
もう一度申し上げます。あなたの大切な「あなたの健全な面を形作ってきた思い出」を思い出さないでください。代わりに、あなたの忌まわしい「悪しき思い出」を少しでも長い時間思い出してください。あなたのその内心が人類を救います。
当然、我々も現在根本的な解決策の研究に全力を注いでいます。最長でも数ヶ月以内に、このような苦労をせずとも済む生活を取り戻すことを約束いたします。もうしばらくの辛抱です。全人類のみなさん、ご協力よろしくお願いいたします。
END="General_Containment_Procedures"
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REQUEST="Anti-Nostalgia_Protocol"
簡易措置実行
閲覧者の表層クオリア圏を測定中…
…
…
測定終了
正式措置実行
測定装置の装着を確認しています…
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閲覧者の深層クオリア圏を測定中…
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測定終了
[ACCESS: GRANTED]
補遺: 17日時点で、SCP-4374-JP現象の発生数はピーク時の0.05〜0.08%程度で下げ止まりとなっていました。当該現象は確かにピーク時に比べその発生数が大きく減少したものの、依然として当時の財団の対処能力を大幅に超過しており、当該現象の継続的な発生、他組織との連絡の途絶による協力体制の事実上の喪失、財団への甚大な被害などの複合的な要因のため、遅くとも同月中には人類文明の保全の継続が不可能になると試算されていました。この状況の深刻さを根拠に、アンチノスタルジア・プロトコルの実行によって問題となっているクオリアを人類全てのクオリアから消去することによって間接的にSCP-4374-JPを収容することが決定されました。
アンチノスタルジア・プロトコルとは、かつて実行されたアンニュイ・プロトコルを改善して立案された措置であり、段階的な手順によって莫大なリソースの消費と引き換えにより速やかな全世界へのクラスE記憶処理を可能にするものです。
以下に、現在実行されているアンチノスタルジア・プロトコルのうち、既に完遂された第三段階までの各段階ごとの概要およびその経過を述べます。なお、表中の日付は全て協定世界時を基準として表記されています。
概要: 本格的な化合物ENUI-5散布前の簡易措置
開始日: 2054/6/17
終了日: 2054/6/24
説明: クラスE記憶処理薬として用いられる化合物ENUI-5は、消去する記憶の内容を正確に指定することができるという性質上、散布前に綿密な調整を行う必要があります。
特に今回の事例では、感情というクオリア学においても特に難解な分野での記憶処理が要求されているため、また、異常であったことを忘却させる、すなわちその存在への違和感を忘却させるというクラスE記憶処理薬の本来の目的とは異なり、それそのものは異常ではないクオリアを忘却させる、すなわちその存在そのものを忘却させるというクラスE記憶処理薬の本来の使用目的ではない用途でクラスE記憶処理薬を用いようとしているため、その調整には最短でも半年以上、最長では十年前後の年月を要することが想定されます。
この問題に対処すべく、第一段階では複雑な調整を必要としない他の種類の記憶処理薬の散布、ミームエージェントの配布などの財団が実行可能なさまざまな手段を状況に応じて併用し、必要であるならば簡易的な調整のみを施した化合物ENUI-5を全世界に散布することで、本格的な散布までの代替的な措置とします。
この段階の核は、本プロトコルが最終的な全人類のクラスE記憶処理を前提としていることです。この前提が存在するため、通常であれば広義の人類文化保全の観点や倫理的観点などの要因によって実行が事実上不可能な措置の一部を実行することが可能になります。
今回のケースでは、クラスD記憶処理薬の限定的な散布による一部の古い記憶の消去、ミームエージェントの配布による恐怖をはじめとした人類の負の感情の増幅および既に忌むべきものとなった感情の可能な範囲での排除または変質、そしてごく単純な調整のみを施した化合物ENUI-5の微量散布による全般的な記憶削減、その他13種類の措置によって異常性の原因となる感情とSCP-4374-JP-Aの想起を様々な角度から抑制するものです。
結果: 第一段階は当初の予定通り完遂されました。これにより、SCP-4374-JP現象の発生数のうち財団が認知可能なほど大規模なものは1日に数百〜数千件程度まで減少しました。
概要: 第三段階開始までの正常性維持
開始日: 2054/6/24
終了日: 2054/8/31
説明: この段階は第三段階に向けての準備期間であるといえます。この期間を活用して、第三段階で用いる後述の措置の事前準備を完了させます。
全ての財団職員は、SCP-4374-JP現象予防のために職員専用の個別処置を可能な限り早期に受けます。
また、第一段階で行った措置の結果を監視し、状況に応じて措置の調整を行います。この際、第一段階と同様に通常時に比べより多彩な手段をとることが可能です。
財団は、十分な人的・物的資源が確保される場合のみ、人口密集地帯を優先してSCP-4374-JPに関連する調査および残留したSCP-4374-JP-B実例の処分を行います。
この際、場合によっては一般人へのプロパガンダも行います。これは第一段階時点でのSCP-4374-JP収容が未完成なものであり、一般人が一般向け収容プロトコルを実施するかどうかによってSCP-4374-JPの発生数が変化すると思われるためです。財団への不信感が抑制不可能であると判断された場合は、記憶処理やミームエージェントといった超常措置の限定的な活用が認められます。
結果: 第二段階は当初の予定通り完遂されました。また、一般人の対財団感情は許容範囲内であり、超常措置は取られませんでした。SCP-4374-JP現象の発生数はこの期間を通して比較的安定しており、財団の想定範囲内で推移していました。
特筆すべき点として、各国政府の機能停止によって世界各地で小規模な自治組織が乱立し、非暴力的な対立または暴力的な抗争が頻発していることが調査の中で明らかになりました。こういった治安の悪化はSCP-4374-JP現象の抑制という観点ではむしろ有益であるため、これらへの対処は財団への敵対行為がない限り行われていません。
概要: 一度目の本格的なクラスE記憶処理
開始日: 2054/9/1
終了日: 2054/9/7
説明: 第三段階で最も重要な手順は、中程度の調整を施した化合物ENUI-5によるクラスE記憶処理薬の散布です。第一段階の項で述べた通り、化合物ENUI-5の正確な調整には長い年月を要します。この問題を軽減するため、不完全な調整で妥協した化合物ENUI-5を中継ぎとして敢えて用います。
この方法は対応速度という面では優秀ですが、不完全な調整で妥協した化合物ENUI-5を用いるという性質上、予期せぬ効果の発生などの大きなリスクがあります。そのため、この段階では特に財団のリソースを集中する必要性があります。したがって、財団の必要最低限の業務と本プロトコルを除いた全ての活動は一時的に中断され、本プロトコルの支援に注力されます。
今回の事例では、消去対象となるクオリアをある程度定め、クラスE記憶処理薬の効果によって人類のクオリアから概念含めて消去することを目的としています。
結果: 第三段階は当初の予定通り完遂されました。その結果、第二段階までの措置の効果と合わせてSCP-4374-JP現象は急減し、その発生数は一日あたり数件〜数十件以内に抑えられていると推測されています。また、それによる人的・物的被害は十分に少なく、現在の財団でも対処可能であると判断されました。この結果を受け、SCP-4374-JPのオブジェクトクラスはKeterへと再分類されました。
留意すべき点として、第三段階完遂時点でのこのプロトコルは完全なものではないということが挙げられます。
特に、記憶処理の不完全性から、何らかの理由で人間が既に報告書上にしか残されていないクオリアを認知した場合、それがその人物の中に復活し、SCP-4374-JPの収容違反を引き起こす危険性が指摘されています。なお、本報告書で行われているように、その厄介な言葉遊びの対象によって生じるリスクは、毎回それぞれ異なった表現を用いた上で、例えばそれがどのような事象によって想起されるかの抽象的な説明を行うなどの方法で言い換えることによって、そのほとんど全てを解消することが可能です。しかしながら、新たな命名を行う、繰り返し同じ表現を用いるなどの手段はその名を認知することにほぼ等しく、むしろ収容違反の一助となります。ここまで述べてきた対処法の性質が偶然にもプロトコル4000-Eshuという無関係の前例に酷似していたことが、現行の特別収容プロトコルの根拠となっています。
前述したように、アンチノスタルジア・プロトコルは現時点では第三段階の完遂に留まっているため、未だ最大限の予防効果は発揮できておらず、SCP-4374-JPの完全な収容は本プロトコルの完遂を待つ必要があります。とはいえプロトコルそのものは順調に経過しており、第三段階終了の翌日である9/8の財団が取得可能な全ての観測結果において、この段階で消去されたと想定されているあらゆる感情は認められませんでした。
2054/9/8より、第五段階の準備期間である第四段階が実行されています。第五段階では完全に調整された化合物ENUI-5を用いた全世界へのクラスE記憶処理、第六段階ではさらなる記憶処理によるヴェールの復活とクオリア変容後の人類存続のための措置が主軸に据えられています。このセクションのさらなる情報更新は、第四段階開始から2週間以内に行われる見込みです。
END="Anti-Nostalgia_Protocol"
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