SCP-4412
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SCP-4412

アイテム番号: SCP-4412

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-4412はサイト-76の標準的な異常物品収容ロッカーに保管されます。

SCP-4412の実験に用いられた職員は、最低でも実験後1ヶ月間、サイトの心理学者と毎週面談する必要があります。

説明: SCP-4412は20世紀初頭に流行した様式と一致する大型のカーペットバッグです。これにも拘らず、バッグには目立った摩耗がほとんど無く、非常に良好な状態にあります。

人間がSCP-4412を開けると、内部に1つの物体が出現します1。取り出されない限り、この物体はバッグを閉じた時点で消失します。これらの物体の種類に一貫したパターンは断定されていません。しかしながら、対象者はしばしば回収した物品を、自らの個人的経歴における特定の出来事の別な、より理想的な結果を示唆するものだと考えます。

補遺4412-1: 実験ログ:

被験者 出現した物品 認識された重要性 注記
スタンレー・ダイアモンド博士 2015年に財団で発生した事案の不完全なリストを収めた2インチバインダー。 ダイアモンド博士は、この物品は彼がSCP-████の収容違反を阻止できた場合の一連の流れを表していると考えた。ダイアモンド博士はこの収容違反で顔面に複数の傷を負っている。 ダイアモンド博士は後に数日を費やしてSCP-████の収容違反記録を精査した。事案当時の分析は、ダイアモンド博士が収容違反を阻止できた可能性は無視できるほどに低いことを示唆するものだった。
エージェント セドリック・フーリエ ゴールドバンド型のダイアモンドの指輪。 エージェント フーリエの婚約者は、彼が財団に雇用されて間もなく婚約を破棄している。フーリエは過去に指輪を見た覚えがなかったが、“いかにもあいつが気に入りそうな”デザインであると述べた。 現在までのところ、被験者と物品の接点は非常に状況的です。出現する物品が実際に何らかの平行世界に起源を有するのか、認識災害効果を及ぼしているのかを断定するには、更なる研究が必要です。 - ハート博士
ケビン・ゲイツ研究員 サムスン社製スマートフォン ゲイツ研究員は即座に物品をSCP-4412の中に戻し、閉じて消失させた。彼は物品の重要性を詳しく述べるのを拒否したが、顕著に取り乱していた。 補遺4412-2を参照。

補遺4412-2:

序: SCP-4412の実験から数日間、ゲイツ研究員は顕著に取り乱していた。このインタビューは事後調査として実施されたものである。

日付: 2019/5/5

質問者: ケネス・ハート博士

回答者: ケビン・ゲイツ研究員


<記録開始>

ハート博士: こんにちは、ゲイツ研究員。今からあなたのSCP-4412曝露に関して幾つかの質問をしたいと思います。

ゲイツ研究員: おいおい、ケニー。そう畏まるな、まだ友達だろ。

ハート博士: 私なりのユーモアさ。君のインタビュー嫌いは知っているが、これはどうしてもやらなきゃならない。4412の実験で何が起きたかを話してもらえないか?

ゲイツ研究員: あれはただ… 悪い思い出が蘇った、それだけの話だ。

ハート博士: どういう思い出だった?

ゲイツ研究員: 俺はもう事後調査に答えたはずだ、何故またこれを行う?

ハート博士: 4412だけの問題じゃないんだ、ケビン。あの実験以来 — 君は様子がおかしい。よそよそしくなった。君がまだ職務適格者かどうかを疑っている奴らすらいる。

ゲイツ研究員: クビになるのか?

ハート博士: 待てよケビン、そんな事は言ってない。

ゲイツ研究員: エージェント パーカーに言われてインタビューを設定したんだろ? あいつは先日、この件で俺にしつこく文句を言ってたからな。

ハート博士: 落ち着け、これはパーカーとは何の関係もない。君がいつもの調子を取り戻す手助けをするために、4412で何があったかを知る必要がある。

ゲイツ研究員は深い溜め息を吐き、テーブルに視線を落とす。

ゲイツ研究員: オーケイ。さっさと済ませちまおう。

ハート博士: 最初から始めようか。その記憶はいつ頃のものだ?

ゲイツ研究員は肩をすくめる。

ハート博士: ケビン、質問に答えてくれ。大丈夫。

ゲイツ研究員: 大体… 18年前だと思う。

ハート博士: 君が財団で働き始めたのもその時期だったな? 財団への参加に関する記憶だったのか?

ゲイツ研究員: いや… 正確には違う。ある意味。

ハート博士: どういう意味なんだ?

ゲイツ研究員は目を閉じる。

ゲイツ研究員: これは… 俺の妹の思い出なんだ。

ハート博士: 妹がいたとは知らなかった。

ゲイツ研究員: もう妹の話はあまりしないんだ。

ゲイツ研究員は目を固く閉じる。彼は椅子に座ったままゆっくりと身体を前後に揺らし始める。

ハート博士: ケビン、何が起きたか話してくれてもいいんだぞ。私にはそれで君をどうこう判断する気はない。

ゲイツ研究員は静かに溜め息を吐き、目を開ける。

ゲイツ研究員: ああ。なんでパーカーがお前にこれを任せたのか分かるよ。

彼は含み笑いする。

ゲイツ研究員: それで、ローラの話だ。可愛い子だった。麻酔科医になるための勉強をしてたよ。俺たちはとても仲の良い兄妹だった。だが俺は… あー… 幾つかの悪い選択をした。

ハート博士: 何をしたんだ?

12秒の沈黙。

ハート博士: 続けてくれ。大丈夫だから。

ゲイツ研究員: 俺は当時のボーイフレンドと… その… 破局した。詳しく語るつもりは無いが、重要なのは俺がそれを上手く受け止められなかったことだ。

ゲイツ研究員は溜め息を吐く。

ゲイツ研究員: 一番近くのバーに駆け込んだ。妹は友達の家から帰るために車が必要で、俺は馬鹿みたいに、自分が迎えに行くといった。酔ってたことは伏せた。何が起きたか想像が付くだろう。

数秒の沈黙。

ハート博士: 彼女は死んだのか?

ゲイツ研究員は静かに頷く。

ハート博士: …すまなかった。辛かっただろう。

ゲイツ研究員: 財団は既に俺に目を付けていて、飲酒運転と故殺の罪程度では申し出を引っ込めるのに十分じゃなかったらしい。刑務所に行くか、財団で働くかを選べというわけだ。後はもうお前が知っている通りさ。

ゲイツ研究員は深呼吸して視線を上げ、ハート博士を見る。

ゲイツ研究員: 俺は — 今日はもう十分に話したんじゃないか?

ハート博士: 君はまだ4412がこれにどう関わったか話していない。

ゲイツ研究員: ケニー、お願いだ。お前が俺を助けようとしてるのは分かる、でも俺は独りきりにしてほしい。

ハート博士: もう二度とこれについては訊ねない。だから話してくれ。

ゲイツ研究員: ロック画面に、妹の古い番号から1件の不在着信が表示されてた。

ゲイツ研究員は静かに泣き始める。

ゲイツ研究員: あの朝の電話だった。

ハート博士: すまない、ケビン。君にとって辛い事なのは分かっていたのに。

ゲイツ研究員: あれから、もし違う事をやってたらどうなったかを考えなかった日は1日も無い。もし俺があんな臆病者じゃなければ、アレックスは俺を見放さなかっただろう。もしあのバーに入らなければ。もし妹にノーと言っていれば。もしあんなに速く走っていなければ。今はもうそれが分かる。俺は… 耐えられないんだ。あのバッグは俺を嗤っている。俺を嗤っている…

ハート博士: そんなに自分を追い詰めるな。私たちは“もしも違っていれば”の世界に住んではいない。

ゲイツ研究員: お前には分からないよ、ケビン。何処かにいるもう一人の俺は感情を適切にコントロールする方法を知っていたらしい。でもこの俺は違う! この俺は泥酔した挙句、妹をトラックと衝突させた。この俺は…

ハート博士: すまなかった、ケビン。他にどう言えばいいか分からない。

ゲイツ研究員: もしもあの時に戻れたらと思う… もう一度やり直せたなら… もう一度だけ、愛してると妹に伝えられたなら…

<記録終了>

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