除染チームが常時マイケルズ博士に随行し、彼が去った後にそのエリアを消毒します。このチームの隊員が任務内容や彼らを取り巻く状況について話し合うことは許可されません。
映像記録
日付: 2019/10/20
時刻: 08:16 UTC
序: マイケルズ博士は言語学および誤伝達の分野において優秀な能力を示す財団の貴重な資産です。職員安全性評価試験(PSAB)の適用は、彼の個人的幸福に対するリスクの特定に必須です。マイケルズ博士のメンタルヘルスの問題を特定するため、指定の職員が施錠された収容室の内部でPSABを実施しました。
[記録開始]
最近のマイケルズ博士の写真。至近の風景は編集済み。
質問者: オーケイ、ではまず名前を述べてください — そういうプロトコルなので — その後、始めます。どうですか?
マイケルズ博士: [彼は深呼吸する。] 分かった。俺の名前はジェレミー・フェルドソン・マイケルズ博士。
質問者: 良いですね、では-
[質問者はマイケルズ博士の頭上を一瞥し、座ったまま身じろぎする。]
質問者: いや、失礼しました。さて、あなたは昨日サイトの精神科医を訪れて面談しましたね。これはその補足調査の一種です。どういう気分だったかを教えていただけますか?
マイケルズ: ああ、ええと、俺はちょっと前から少し頭がボンヤリしてるんだ。どういうのかは分かるだろう — 家族から離れた場所に駐在してる時は、誰だってああいう感じの気分になる。だよな?
質問者: うーん、もっと具体的に説明していただけますか? その“ボンヤリ”はどのように現れるのです?
マイケルズ: 考え事を止められない、そんな漠然とした感覚が絶え間なく続いてる。何かが頭から離れないようにな。比喩的な意味だぞ、勿論。
質問者: その感覚が大体いつ頃始まったか分かりますか?
マイケルズ: 俺たちがD-4428-3を喪った直後のはずだ。つまり、数秒以内。
質問者: [メモ帳に書き留める。] 成程、では、そこでトラウマ的な経験をしたのですね。
マイケルズ: まぁそんな所だ。
質問者: この特定のDクラス職員は、あなたの個人研究チームの一員だった。私が述べた情報は正確ですか?
マイケルズ: 正確だよ。
質問者: 他には誰がチームに所属していましたか?
マイケルズ: あー、順不同になるが、エージェント ローズウッド、D-4428-1、D-4428-2、収容エンジニア ハワード・ウィンターズ、そしてガビ・カルパナ研究員だ。
質問者: 成程。ではジェレミー、その感覚は繰り返し発生していると思いますか?
マイケルズ: いいや。こう、出たり引いたりさ。時には予想より強い圧をかけてくる。
質問者: 分かりました。資料によると、あなたの家族にはトラウマ的な経験が無いそうですね — その、あなたの弟さん以外には。弟がいますよね、ジェレミー?
マイケルズ: そうだ、俺には弟がいる。
質問者: 精神科医は弟さんを“ストレス要因”であるとしています。説明していただけますか? 彼に何があったのですか?
マイケルズ: ええと、あいつが今何処にいるかは言えない。知らないんじゃない。俺はあいつの話を持ち出したくない。
質問者: 間違っていたら訂正してください… 弟さんはあなたに敵意を向けていましたね。
マイケルズ: 確かにろくでもない野郎だったが、あいつに関して言えば、それ以上に陰湿だった。俺の両親はまだ子供だったあいつを養子にして、あいつはそれ以来ずっと血の繋がってない弟だった。俺たちは割と仲良く付き合ってた。ところが、俺たちが育っていく間に、あいつの中で何かが切れた。その後にあいつがやった事は全部、家族に負担を掛けるばかりだった。
質問者: その時期から敵意を見せ始めたんですか?
マイケルズ: 喧嘩を売っては来なかった — そういう奴じゃあない — あいつはまるで、家族みんなにとっての重荷みたいで、特に俺にとってそうだった。結局のところ、俺たちは一緒に大きくなったし、あいつは俺に一番ベッタリ懐いてた。だが俺が大学に行こうとした時、あいつは- うん、俺を行かせようとしなかった。
質問者: 精神科医のメモによると、あなたは彼を– これは何です? あなたは彼を“寄生虫”と呼んだそうですね。
マイケルズ: [彼は一瞬だけ身を強張らせた後、溜息を吐いて落ち着きを取り戻す。] 俺は一人きりになりたい、それだけだった。だが、俺が引っ越して、最後にあいつの姿を見てから何週間も経った後、あいつは普通にそこに居たんだよ。俺は何百マイルも離れたのに、何故かそこに居た。あいつは同じ事を他人にもやってる。俺は- 俺たちは最初じゃなかった。
質問者: 分かりました。 [ページを捲る。] では、ジェレミー、あなたの好きな色は何ですか?
マイケルズ: むらさ– いや、待て。多分それは飛ばしていいだろう。
質問者: え- その、いいんですか?
マイケルズ: いいから次の質問に進んでくれ。
質問者: [沈黙し、片手を耳に当てて記録装置から隠す。] そう言えば、マイケルズ博士、あなたは確か下水の逆流について相談しに来たんでしたよね?
[マイケルズ博士は頷く。]
質問者: 実は最近、その原因が分かったという報告を受けました。保安職員の1人が — 放棄された地下階層の一角で大規模なパイプの破裂を発見しました。そこら中が水浸しになっていました。でも、何故そうなったかは誰も分かっていません。
マイケルズ: ついさっきの出来事か?
質問者: いいえ、約1週間前です。機動部隊が派遣されて、隊員1人がヘドロの中で行方不明になりました。部隊が探しに戻ってきた時には、まるで体力を奪われたかのような有様でした。無事でしたが、非常にゆっくりと歩いていたんです。
マイケルズ: 成程ね。
質問者: [鋭く息を吸い、座ったまま前屈みになる。] 機動部隊は、あなたと同様、その隊員も頭がボンヤリした感覚を訴えたと言っています。
マイケルズ: そいつも? ふぅん、面白い偶然だな。
質問者: 全くですね。
[記録終了]