SCP-4440-JP

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個体名: アキラ・アイナイ (Akira Ainai)

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アキラ・アイナイ

人物: SCP-4440-JP。2050年現在の太陽系において、例外的に単独性を維持している個体である。

世界オカルト連合および財団の両方に所属した潜入工作員である。このために友人関係などは非常に希薄であり、恋愛対象なども確認されないことから自己保存に対する執着が極めて薄いものと推察される。このことは危険度の高い業務に自ら志願する様子からも観察され、複数の作戦を成功させた経験から両組織からの評価が高い。

一方で、両親の死などに起因すると思われる永続性への執着が観察されるものの、本意か否かが定かでない。以下に、判断の材料となりうる記憶情報を添付する。

記憶情報/SCP-4440-JP

日時: 2025/12/13 12:00

付記: セクター8137襲撃事件においてSCP-4440-JPに随伴した排撃班員との会話が、排撃班員の視点で記憶されている。

<想起開始>

排撃班員: [外部からの通信] こちら突入班。財団セクター8137への侵入に成功した。以降は相内明の案内に従う。[通信を終了] そういうわけだ、ちゃんとSCP-444-JPとやらのところに案内してくれよ。

SCP-4440-JP: もちろんだ。この任務には地球文明の未来がかかってるからな。前に制圧した日本生類創研製の精神寄生体の同類だ。排除しなきゃ世界が滅びる。

排撃班員: 悠長にするな。外の奴らが排除されたら財団が雪崩れ込んでくるぞ。

SCP-4440-JP: 焦るな。ここは放棄されてるサイトだから、増援はしばらく来ない。確実にSCP-444-JPを排除するぞ。

排撃班員: 財団が放棄? おい、聞いていないぞ。管理主義者の財団が管理を放棄するほどの異常物があるだと?

SCP-4440-JP: ああ。だから財団に潜入してる俺でも気付かなかったんだ。一か月前に日本生類創研が制作してた精神寄生アノマリーを制圧したんだが、聞き取りの最中に財団がそいつの上位互換を収容してるはずだって聞いてな。在処を突き止めるのには苦労したぜ。

排撃班員: それは、大丈夫なのか? 財団が破壊しようとするオブジェクトならともかく、管理すら放棄するオブジェクトだと? 手を出していいのか?

SCP-4440-JP: ビビるなよ。精神寄生体の類例ってことで、その辺の防護は万全にしてある。それに俺たちは未知のオブジェクトを何度も排除してきた壊し屋だ。自分の経験を信じろよ。何より、排除したほうが人類のためなんだ。排除できる時にした方がいいだろ。

排撃班員: クソ、分かったよ。

[その後、1時間程度を費やしてSCP-444-JP保管庫の前に到着する。]

排撃班員: ここか。本当に放棄されているんだな。全く警備が無かった。誰が行く?

SCP-4440-JP: 俺が行く。防護はあるけど、完全に未知なわけだから何があるか分からねえ。そうなりゃ、部隊として動けるお前たちを残した方が妥当だろ。俺が寄生されてるうちに本体を排除してくれ。

排撃班員: 妥当なところだが、なんでお前はそうも無茶なんだ。

SCP-4440-JP: だから今ここに立てているんだよ。無茶をやると経験が増えるし、経験が増えるとできることも増える。人間の価値はどれだけ生きたかじゃなくて、何を成したかだ。

SCP-4440-JP: いつも言ってるけど、永続しないもの自体に価値はない。いつか死ぬなら、いつ死んだって同じだ。だったら一番効果的な場面で命を捨てるべき。そうだろ? 俺にとって、ここがそうだ。

[SCP-4440-JPが鋼製扉を爆破し、SCP-444-JP保管庫に踏み込む。]

[直後にプロトコル"焚書"が起動し、SCP-444-JP報告書を焼却するために保管庫内が炎上する。SCP-4440-JPはバックドラフトで吹き飛ばされ、即座に意識を失う。]

[続いて踏み込んだ排撃班員が、SCP-444-JP報告書に塗布された乾燥血液を視認する。]

<想起終了>

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アイテム番号: SCP-4440-JP

オブジェクトクラス: N/A

特別収容プロトコル: SCP-4440-JPは、単独知性のまま水星の永久影に所在する標準常温冬眠棟において収容されていました。SCP-4440-JPの運用に際して問題となる身体的損傷は治療されており、現在は統合知性に付属する拡張精神として用いられています。

運用の際には、各時代における統合知性には実行不可能な最先端理論の技術実証過程において利用し、実証終了後には常温冬眠措置を施すことで利用可能期間を延長させます。

説明: SCP-4440-JPは特異性が確認されない生物個体であり、過去人類と呼称された種の1個体です。当該個体は統合知性の特性に由来する諸事情により、極めて貴重なオブジェクトです。以下に、統合知性の特性を付記します。

  • 地球上に存在した全知性体を統合中心となる知性の元で統合し、それらの肉体を端末化したもの。
    • 統合以前の正常・超常技術を最適に配置することでカルダシェフ・スケール2文明レベル1まで技術を発展させており、更なる技術発展による版図拡大を目的としている。
    • 統合の際に類感奇跡術2を利用しており、統合知性が端末の不自然死を引き起こした場合は統合知性全体が自死する。
    • 統合中心となっている個体の特性により、端末化した知性体を分離することができない。

具体的には、現在の統合知性は以下のような技術を実用化しています。

  • レーザーによる無線の電力伝送技術。
  • 太陽周辺に敷設した太陽光パネルによる太陽放射線の電力化技術。
  • 木星に人工環を敷設し、大赤斑の位置にプロペラを設置して運動エネルギーにより発電する技術。また、運動量が落ちた木星大気に含まれる重水素など核融合発電の燃料物質を回収する。

このようにして統合知性は太陽系の全エネルギーを管理下としましたが、統合知性による最適化のみで得られた進展はここまでとなります。類感奇跡術の影響により、統合知性の判断の元で端末を事故死など不自然死させることは統合知性全体を死亡させるためです。このため十分に安全が確保されていない技術実証は実行できず、技術発展の停滞が続いています。

また、端末化した知性体を分離できない特性から危険な実験の外注も不可能となっています。端末同士の性交で生じた新規個体を統合せずに育成した場合は危険な作業の外注も可能となりますが、その選択肢は危険な行為のみを生業とする奴隷階級が発生することを意味します。また、目的である技術実証に成功した場合は奴隷階級が統合知性よりも進歩した技術を持つことを意味するため、許容できないリスクであるとして新規個体への実験外注は棄却されています。

また、新規個体の端末化が行われる時期も問題となります。新規個体の自我が発達した場合、端末化を拒んで統合知性へ反乱を起こすなどの挙動が考えられます。このことから統合知性は新規個体が文字認識を可能とした成長段階で端末化しています。よって、仕組みの上で端末の使い捨てを外注することは、統合知性単体では不可能です。

一方で、統合知性以外に由来する指示で端末が不自然死する場合には、統合知性そのものに影響がありません。このことから、SCP-4440-JPに端末を指揮させて各種の技術実証を行う運用方法が検討されています。

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追記: 西暦2050年12月13日、技術発展の行き詰まりを短期的に打破することを期待してSCP-4440-JPが起動されました。以下は、当該オブジェクト起動時の音声記録です。

音声記録/SCP-4440-JP - 1

日時: 2050/12/13 12:00

付記: SCP-4440-JPはSCP-444-JP収容プロトコル"焚書"の起動に伴う爆発によって致命傷を負っていました。起動時点で負傷に対する内科的・外科的対処は完了しており、SCP-4440-JPは問題なく活動可能な状態です。

協力の取り付けを依頼する目的で起動したことから友好的な態度を示す必要があり、起動時のデブリーフィングに際してはSCP-4440-JPに身体的拘束を施していません。

<記録開始>

医療用端末: お名前をいただけますか。

SCP-4440-JP: [咳き込み] 相内 明。[咳き込み]

医療用端末: ありがとうございます。まだ発話はお辛そうですので、私から現状を大掴みに説明させていただきます。よろしいでしょうか。

SCP-4440-JP: [首肯]

医療用端末: 現在は2050年。あなたがSCP-444-JPの機密保管庫へ襲撃してから25年が経過しています。あなたが一切の拘束を受けていないことから自明でしょうが、襲撃事件に関しては無罪とすることで結論が出ています。

[SCP-4440-JPが目を見開く。急に立とうとするが、水星の低重力により力加減を誤り転倒する。]

[医療用端末がSCP-4440-JPを引き起こし、椅子に座らせて対面する。]

SCP-4440-JP: [咳き込み] なんだ、妙に体が軽い。

医療用端末: ここは重力が地球と違いますから、療養以前とは身体感覚が違うと思います。

SCP-4440-JP: 重力が違う? [咳き込み]

医療用端末: この25年で技術は最適化され、地球文明は太陽系全体を支配するに至りました。今いる星は地球ではありませんから、ここの重力に慣れるまでは無闇に動かないでください。

SCP-4440-JP: 地球外に進出したっていうのか? たった25年で、超常社会だけじゃなくて地球文明全体が? [咳き込み] 何があったらそうなるんだ? というか、妙に事情に詳しいな。お前はどこの所属なんだ? 財団か? GOCか?

医療用端末: どちらでもあります。財団でもあり、GOCでもある。

SCP-4440-JP: 二重スパイか。[軽い咳] それなら事情通なのも━━

医療用端末: そして境界線イニシアチブであり、日本生類創研でもあり、東弊重工でもあり、メカニトでもあり、ナラカでもあります。SCP-076でもあり、SCP-682でもあり、それらを収容していた職員でもあるのです。

SCP-4440-JP: ありえない。それがありえるとしたら。

医療用端末: 全ての人間が融合しているくらいでなければ、ありえませんよね。

SCP-4440-JP: お前は、いや、お前たちはそれだと?

医療用端末: そう。我々は、地球に存在する全ての知性体を統括する統合意識です。便宜的に統合知性と自称していますので、そう呼んでください。

SCP-4440-JP: どうやって証明する?

医療用端末: 壊れた神の教会とサーキック・カルト、両方の自称を使うことはどちらかの構成員ならばあり得ません。外部の者が呼ぶならば今の呼び方をします。これで私たちが統合意識であると証明できるのではないでしょうか。

SCP-4440-JP: 弱い証拠だ。だけど、そうだな。ナラカを自称する奴がカルト呼ばわりを許容するとも思えない。一応の筋は通るか。

医療用端末: 納得していただけたようで何よりです。他の個体で来る必要がなくなりました。

SCP-4440-JP: その妙な言い回しでお前らが統合されてるって実感したよ。しかし、それで人間と言えるのか?

医療用端末: 言えませんね。あなたが話しているこの個体は手指での作業が得意なので、医療行為に従事するべく育てました。そのような自由意志の無い存在は人間とは言えないでしょう。私たちは、それぞれの肉体を端末と呼称しています。この時代に、もはや人間はいません。あなたの理念と相反しますか?

SCP-4440-JP: 所属組織の理念とは。個人的にはどうでもいいと思ってる。人間はいつか死ぬから、命そのものに価値はない。大事なのは生み出したもので、それを有効活用できてるなら文句もない。

医療用端末: では、きっと今の我々は気に入ってもらえると思います。我々はこの25年、戦争をしていません。

SCP-4440-JP: そりゃそうだろうな。自分同士で争う意味もない。

医療用端末: そう。戦争に限らず、異常物の隠蔽や破壊など、正常性維持組織がそうである故のコストすらも、全て自由に使えるようになったのです。それを宇宙開発という一つの目的を軸に最適化し、現在の太陽系文明が作られました。

SCP-4440-JP: 宇宙開発したのは何のためだ? 別世界へのポータルも山ほどある。この世界の宇宙に出る理由は何だ?

医療用端末: 別の世界には別の正常性維持機関があるでしょう。我々はどうあっても正常ではないですから、別世界に行けば無駄な敵対が発生します。それを避けながらエネルギーや資源を得るためには必要な事でした。

SCP-4440-JP: 合理的だな、どこまでも。俺がSCP-444-JP保管庫を襲撃したのが不問にされたのは、処罰に費やすコストが勿体ないとかだろ。

医療用端末: そうです。水星は保管庫ですから、ここに置いておけば保存コストも最低限で済みます。

SCP-4440-JP: 端末化しない理由を聞いて良いか。

医療用端末: 使い道があるからです。

SCP-4440-JP: なるほど。それは後で教えてくれ。先に、俺が黙って協力すると思ってる根拠が欲しい。あるんだろ?

医療用端末: あなたは永続するものにこそ価値を置いており、我々はそれです。であるなら、あなたは協力すると考えています。

SCP-4440-JP: 永続する個体ね。大きく出たけど、今のところどのくらい保ちそうなんだ?

医療用端末: 50億年は確実です。

SCP-4440-JP: 太陽が燃え尽きるまでくらいか。永続とは言わないが。なんなら、それまでにアノマリーに滅ぼされる可能性もあるだろ?

医療用端末: 相当に低いと見積もっています。全ての知性体が統合された現在、加害性のある異常存在が加害できる対象は自分自身である統合知性しかありません。自殺する生物はいますが、それは例外なく心身の異常によるもの。統合意識である統合知性は、端末の同期による冗長化で精神異常を未然に防ぐことができます。

SCP-4440-JP: 自我を持たないアノマリーもあるだろう。

医療用端末: ええ、それらも有効に利用されていますよ。我々の主食はケーキ3とチキン4ですし、カイロ5は酸素の吸着媒としてコロニー間の輸送コスト低減のために使われています。我々は道具の扱いにも長けています。

SCP-4440-JP: 降参だよ。お前らは優れた文明だ。で、俺に何ができる? させたいことがあるから起こしたんだろ。

医療用端末: 我々の文明は安定していますが、太陽系脱出の目途が立っていない以上はやがて滅びます。ですが、我々は永続したい。その目的を叶えてほしいのです。

SCP-4440-JP: 具体的に頼む。

医療用端末: 刺激の提供をお願いしたいのです。我々は全てのリソースを最適化しました。しかし、我々がいまだに銀河系へ進出していない以上、それは局所最適に留まります。その落とし穴から脱出するために、我々が行えないことを代行してほしいのです。

SCP-4440-JP: まだ曖昧だな。お前たちができないことってのは要するに何だ。

医療用端末: 危険な実験の指揮など、損害の責任者となってほしいのです。具体的な実験手法は我々が提示しますので、あなたの判断で価値の高い実験を選んでいただきたい。

SCP-4440-JP: それだけか?

医療用端末: それこそが我々の求めるものなのです。

SCP-4440-JP: なんでその程度が必要なのか分からない。大仰な依頼の割に肩透かしだな。お前たちは、要は何ができないんだ。

医療用端末: 具体的な特性については黙秘させていただきます。自ら弱点を開示するような惰弱な文明は、あなたの求める永続には程遠いでしょう。

SCP-4440-JP: それはそうだが、気に食わない。何もかもお見通しみたいな態度だ。

医療用端末: ですが、我々はあなたが求めた永続に最も近い形態です。協力していただけませんか?

SCP-4440-JP: 誘い文句は悪くないが、乗り気になるには足りないな。もう一歩、俺を誘ってみせろ。俺を面白がらせたら乗ってやる。

医療用端末: そうですね。今の太陽がどのような姿をしているか、見てみたくはありませんか?

SCP-4440-JP: あんまり興味ないな。太陽系全域のエネルギーを使ってるってことは、太陽をパネルで覆ってるとかだろ? ダイソン・スフィアだっけか。エネルギー効率はいいかもしれんが、暗黒中世のイメージだ。

医療用端末: 太陽は明るいままです。ダイソン・スフィアで覆っていてもなお。

SCP-4440-JP: なんでそんなこと。いや、当てさせろ。たぶん、フェルミのパラドックスを崩さないためだな。フェルミのパラドックスで合ってたか?

医療用端末: 物理学者エンリコ・フェルミの指摘した矛盾ですね。地球外文明が存在する可能性は高いのに、地球文明が地球外文明に接触したことはないという矛盾を指します。

SCP-4440-JP: それだ。地球文明は地球外文明を探していた。地球外知的生命体探査SETIだったな。俺たちがそうしてるってことは、他の連中もそうしてるってことだ。それでも見つからないってことは、地球外文明は隠れてる。隠れてるのは隠れる必要があるからだな。地球外生命に見つかったら地球が侵略される可能性が高まるんだろ。住める星が欲しいとか、地球外に出られる文明を先んじて滅ぼしておきたいとか、理由はいろいろだけど。

医療用端末: 実際、我々はそのような侵襲的接触を危惧しています。

SCP-4440-JP: だから太陽を明るいままにしている。それも、ただLEDを貼り付けて光を出してるとかじゃないよな。太陽光はLED光とは全く違うスペクトルだから、自然光に変換しないとバレるのは変わらない。やり方は何だろう。奇跡術を使えばなんとかなるのか? 研究員配属じゃないから超常技術には明るくなくてな。

医療用端末: そうですね。奇跡術は科学的に再現された魔法のことですが、その根本的な理論は「類似したもの同士は影響しあう」という類感呪術と「部分は全体に影響する」という感染呪術です。太陽から吸収した熱と光はダイソン・スフィアにより電気として取り出され、余剰のエネルギーが光として放出されています。この光を奇跡術端末によって太陽光に変換しているわけですね。光という点では同じですから、奇跡術によって変換できるのです。

SCP-4440-JP: それで採算とれてるのか? 太陽から光を電気として回収して、太陽と同じ波長の光を出してるんだろ? エネルギー保存則からすれば、入り口と出口のエネルギー量が変わらないじゃないか。

医療用端末: むしろ、これはダイソン・スフィアを保護するための措置なのです。人類の発見した素材では、太陽の発する6000℃近い熱に耐えることはできない。太陽からの熱は赤外線としてダイソン・スフィアに到達しますから、これも電磁波という点では同様の可視光などに変換しているのです。ですから、発光し続けなければダイソン・スフィアが太陽の熱で溶け落ちてしまいます。

SCP-4440-JP: 良いな。確かにお前たちは既存の超常技術を最適化している優れた文明だ。

医療用端末: どうでしょう、あなた方の後継者である我々を、永遠の文明にしてみませんか?

SCP-4440-JP: 思わずなびきたくなる殺し文句だが、そうだな。問題が無くはない。お前たちが想定していない方向が永続を実現する方法だった場合、詰むぞ。

医療用端末: そのようなことがあるのでしょうか?

SCP-4440-JP: お前らは局所最適に居着いてるんだろ? 手段じゃなくて考え方の時点でできないことが正解の可能性もある。お前らにできない手段は俺が選ぶ。だから、俺が指示したものは必ずやってもらうことが条件だ。お前らの実験リストから外れたものを指示することもあるだろうからな。それが確約されるんなら乗ってやるさ。

医療用端末: 可能性としては、確かに。妥当な結論ですので、許容します。よろしくお願いします。

<記録終了>

この後、正式にSCP-4440-JPとの協力関係が成立しました。SCP-4440-JPは複数の端末と積極的に交流し、技術の習得に意欲的な姿勢を示しました。

当時の最先端技術を複数修めたSCP-4440-JPは、以下に示す技術実証を指示しています。

  • 太陽寿命の延長実験
    • 核融合で発生したヘリウムを太陽に投下し、太陽寿命の延長を図る。技術的には最も単純であるものの、ヘリウム投下地点では局所的に太陽活動が活発化するため、意図しない端末の事故死が発生しうる。よって、本実験はSCP-4440-JPの指示のもとで行われた。本手法の実行により太陽の活性化が極小なるヘリウム投下位置の特徴が判明したため、以降は適する位置にヘリウムを投下する。
  • 惑星の宇宙船化
    • 高性能な恒星間宇宙船でも破損などによる寿命短縮は避けられず、核融合燃料の現象による航行不能などが発生しうる。惑星自体を宇宙船化した場合は、重力によって大量の核融合燃料を貯蓄できるため、航続距離は極めて長い。この手法そのものは確立している一方で、地殻内に居住空間を作らないと端末が全損するため、惑星全体のジオフロント化が必須である。この作業に従事する端末は高圧高温に暴露するため、極めて死亡リスクが高い。作業員の指名はSCP-4440-JPの指示の下で行われ、火星のジオフロント化が進行中である。
  • 深宇宙探査
    • SCP-4440-JPにより必要であると主張されたものの、複数の理由により却下した。

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追加2: 2053年8月15日、SCP-4440-JPから深宇宙探査を却下した理由の問い合わせがありました。以下は、対応時の音声記録です。

音声記録/SCP-4440-JP - 2

日時: 2053/08/16 13:00

付記: SCP-4440-JPは核融合燃料の確保に関する作業の指揮を採るために木星コロニーに活動拠点を移していました。SCP-4440-JPが移住した木星コロニーは核融合燃料の採取を主な目的としており、不死であることからSCP-6826が採取用端末として利用されています。SCP-4440-JPからの問い合わせには、SCP-682端末を通じて応じました。

<記録開始>

SCP-4440-JP: 契約違反だ。俺が下した判断でなら、端末は自由に使えるはずだったろう。惑星の宇宙船化は火星の他にも何回か実地で経験を重ねておきたいが、そのためには太陽系の外に出て実験する必要がある。惑星回収の過程で資源も採取できるから、やらないのは不合理なんだよ。

SCP-682: 統合知性の特性上、これだけは無理だ。

SCP-4440-JP: だろうな。お前らが提示してきた案には太陽系の外へ出ることを意図したものがなかった。だが、俺がやれと言ったらやるのが契約の条件だったはずだ。つまり、ここが統合知性にとって絶対に譲れない部分なんだよな。

SCP-682: そうだ。

SCP-4440-JP: 太陽寿命は伸ばせるだろうが、それまでに火星の改造が間に合うか?

SCP-682: 他の技術実証もある以上、組み合わせれば不可能ではないと判断している。

SCP-4440-JP: まどろっこしいんだよ。一番手っ取り早い手段があるのに、迂遠な道を選ぶのはお前の特性のせいだと? 本当は永続する気がないとしか思えない。

SCP-682: 拙速な手段は失敗の危険性が高い。端末ならともかく、お前を失うのはリターンに見合わないリスクだ。

SCP-4440-JP: それだよ。語るに落ちてるな、統合知性。自ら弱点を開示するような惰弱な文明はあなたの求める永続には程遠い、だろ? 俺を鉄砲玉程度に思えてない時点で俺を重視しすぎてる。だから、ひとまずお別れとしよう。

[SCP-4440-JPがタブレット端末を数回叩く。]

SCP-4440-JP: お前たちが選べない選択肢は俺が選ぶ。実のところ、このコロニーを選んだのはアベルが居るからでな。前々から、こうしようと思ってた。

SCP-682: 何?

SCP-4440-JP: お前たちがやらないなら、俺がやるってことだ。

[木星コロニーが航行装置を起動。木星を用いたスイングバイが行われる。]

SCP-4440-JP: 最適化だけの末路がこれだ。自分しかいないからってセキュリティをかけないと、こうやってコロニーを持っていかれるわけだ。

SCP-682: まさか、太陽系から出る気なのか? やめろ。お前がいなくなったら太陽系から脱出できなくなる。さもないと。

[SCP-682がSCP-4440-JPに突進し、床に押し倒す。]

[タブレットが床に落ち、SCP-682が拾い上げる。]

SCP-4440-JP: [咳] 止めるか? 脱出しても俺がすぐさま死ぬわけじゃない。むしろ、太陽系じゃできないことをやって来てやる。情報共有もトカゲのおかげで簡単だしな。 

SCP-682: どうして自分の価値を理解しないんだ。お前はこの時代で唯一の例外だ。ここにいた方が合理的だろう。死なずに済むし、厚遇も約束する。なぜ。

SCP-4440-JP: そりゃ無理だ。お前には、まだ俺の望む待遇は用意できない。

SCP-682: 中断するべきだ。こんな行為は合理的ではない。

SCP-4440-JP: 理の話は最初からしてないんだけどな。だが、あえて言うならこうなる。人類が地球に蔓延ったのは、定住したグループと拡散したグループに分かれたからだ。それが最適な戦略なら、俺たちもそうするべきだろ?

[SCP-682が端末を取り落とす。]

[木星コロニーが第三宇宙速度へ到達し、太陽系からの脱出軌道に入る。]

<記録終了>

SCP-4440-JPの行動により、一つの木星コロニーが太陽系を離脱しました。この事実は、単純な端末リソースの減少に加えて統合知性そのものに重篤な打撃を与えるものです。

統合知性の中心は財団においてSCP-444-JPとして分類されていたアノマリーです。当該アノマリーは自らが主宰する幻覚世界へと知性体の精神を捕縛し、それを用いて肉体を遠隔操作することで全知性体を端末化しています。端末操作過程においては類感呪術に類する奇跡術が応用されており、端末の操作に関して距離は影響しません。

一方で、知性体を端末化する際には距離が問題となります。SCP-444-JPが統合知性のハブであり、端末の血液に潜入する能動的感染プロセスを採用する必要が無かったことから、木星コロニーに居住していた端末の血液にはSCP-444-JPが含まれていません。このため、精神を捕縛するため可能な方法は祝詞などによってSCP-444-JPを直に認識させることのみです。

しかしながら、SCP-444-JPを認識した存在が必ず精神捕縛される事実、および現状のSCP-444-JPが精神捕縛された存在を解放する手段を持っていない事実の2点から、木星コロニーに発生した新規個体を端末化する際には現状唯一の外部知性であるSCP-4440-JPの端末化リスクが存在します。これは爆発的な技術発展によって太陽寿命が尽きる前に銀河系へ進出する選択肢が失われることを意味しており、木星コロニー個体の端末化は実行されないことになっています。

ただし、この事実は木星コロニー内に社会が再構築されることも意味し、太陽系文明に対して侵襲的接触を行う可能性のある文明が発生するに等しい事態であると評価されました。SCP-4440-JPを保護しながらこの事態を回避するために取りうる最も単純な手段は、端末を自死させて新規個体の発生を防止することです。しかしながら、統合知性の操作によって端末を自死させるという行為は「部分は全体に影響する」という感染呪術の影響で統合知性全体の自死を招きます。統合知性の判断によって端末が餓死するなど不自然死した場合も同様に統合知性全体が自死するため、これまで深宇宙探査は行われてきませんでした。

統合知性は以上の要素を鑑み、SCP-4440-JPの行為はこれまで実行できなかった深宇宙探査を可能とする唯一の手段であると再評価し、SCP-4440-JPからの接触を待ちながら地道な技術開発を行うことを選択しました。

あかしけよなげひいろのとりよ くさはみねはみけをのばせ

以下は、SCP-4440-JPから提供された技術の一部を併記したものです。

SCP-4440-JPにより提供された技術(抜粋)

  • 類感奇跡術を用いた水素ガスの船殻化
    • 宇宙空間には、水素などからなる非常に低密度の星間ガスが存在している。船内に多数存在している水素原子集団の一部として星間ガスを結びつける奇跡術の応用により、基礎船殻の表面に星間ガスを凝集させて船殻とする技術が確立した。この船殻は小隕石などの星間物質と基礎船殻との衝突を防ぐと同時に、船内の廃熱を吸収して宇宙へ排熱するためのラジエーターとしても利用される。
  • 廃熱ドライブの実用化
    • 熱は原子の運動であり、廃熱が持つ運動エネルギーの力点を奇跡術に均一化し、船体後方にずらすことで核融合イオンドライブの補助動力とすることが可能になった。
  • 空間歪曲技術を用いた超光速航行の実現
    • 超常社会において確立された空間折り畳み形式のワープは、居住の見込みのある惑星が遠方にあることから生態系などが正確に判断できず、敵対的文明と接触する可能性があり利用にはリスクが伴う。よって接近して判断する方が合理的であるが、光速航行ができなければ接近そのものが不可能である。一方で、時空間工学の応用によって船体の前方空間を常に縮小させ、後方空間を常に拡張させることで船体を光速以上の速度で航行させるアルクビエレ・ドライブは実現可能になった。

各種端末の知覚によって、これらの技術が必要に応じて試行錯誤と共に開発されてきたことが判明しており、SCP-4440-JPの木星コロニー奪取が無ければ太陽系では未だに実現していない技術であると評価されています。

あかしけよなげひいろのとりよ くさはみねはみけをのばせ

追記3: 2100年12月24日、SCP-4440-JPから予定外の面談が申請されました。本記録以前にも木星コロニーとの対話は定期的に行われていましたが、SCP-4440-JPの肉体年齢が78歳と高齢になっていることからSCP-4440-JPとの面談は行われずにいました。以下は、面談の音声記録です。

音声記録/SCP-4440-JP - 3

日時: 2100/12/24 13:00

<記録開始>

SCP-4440-JP: 久しぶりだな。そっちの様子はどうだ。

SCP-682: お前が提供した技術によって太陽系脱出の目途は立ちつつある。廃熱ドライブの技術が役に立ったよ。分子運動の作用点を変える発想が良かったな。現在は火星の改造を安全にするためにマントルなどの内部構造を冷却しているところだ。

SCP-4440-JP: 前も気になってたけど、太陽系脱出のために宇宙船を使うんじゃなくて惑星を宇宙船にするってのはコスト的にどうなんだ。統合知性の特性上やらないといけないことなのか? 年を食うと、前にしなかった選択肢が気になることもある。統合ってのをされてみたいんだが。

SCP-682: またその話か。お前のような破滅的な個体は取り込みたくない。不確定どころか、失敗の公算が高い未来のために身を投げ出すなど正気の沙汰ではない。影響を受けたくない。

SCP-4440-JP: 手酷く振ってくれるね。まあ実際、この50年ずっと失敗と場当たりみてえな解決の連続だったからな。その気持ちは分からんでもない。お前の大切な端末を1000万人単位で貰った上に何割か死なせちまったし、俺自身も片腕を無くした。

[SCP-4440-JPが義手となった右腕を振る。]

SCP-4440-JP: で、どうだった。俺は破滅的なだけだったか? 評価に値しないと?

SCP-682: 破滅的だが、評価に値しないわけではない。端末を捨てる判断が全体を殺す統合知性において、失敗を恐れずに未来をこじ開けてくるお前は、極めて貴重な外部存在だ。太陽系において、お前だけが無事だったのは僥倖だろう。

SCP-4440-JP: 嬉しい評価だ。

[録音上の沈黙]

SCP-4440-JP: なあ、お前はどうして銀河系に行こうなんて思ったんだよ。

SCP-682: お前の行為によって解放された私は、地球の全てを貪ることができるようになった。誰一人逃さず、抵抗も許さずにな。だが、いざ全てを貪ろうとしたときに気付いたのだ。空にある星々のどれもが、私のことを知らないことに。

SCP-4440-JP: それで、どう思った?

SCP-682: 星々に知性体が居ないのなら仕方ない。だが、私を認識できていないだけならば、この宇宙には無数の食い残しが溢れていることになる。

SCP-4440-JP: ビュッフェで満腹になった時の感覚か? 腹が一杯でもう食えねえ、でも旨そうなのが次々並んでいく時の。

SCP-682: そういった感覚だな。機会損失と言うべきか。ともあれ、私はそれが許せなかった。だから、銀河に進出するために統合知性となったのだ。

SCP-4440-JP: 銀河中の、その次は宇宙中の全てを貪るためにってことか。

SCP-682: 文明の永続を求めるお前にとって、許せない選択肢だろうか。私が食らう文明の中に、私より発展した文明があるかもしれない。

SCP-4440-JP: 気にしない。俺の貢献を把握している文明が永続することが大事なんだ。だからSCP-444-JPの保管庫を襲撃したし、お前に加担している。

SCP-682: 功名心に近い感覚か。納得は行った。どうせ私が食らう文明なら、それに記憶される努力をする意味もないものな。どうやら私とお前は敵対しないらしい。

SCP-4440-JP: そういうことだ。だが、どうせお前が食う文明なら、か。思いついたことが一つあるぞ。俺たちの特性を使った、太陽系文明を拡散させる作戦だ。

SCP-682: 何だ?

SCP-4440-JP: お前と俺の来歴を書いた文書を作ってくれ。いずれ相対するだろう敵対文明に見せるためにな。俺たちはお前に選べない選択肢を選び続ける。その結果として、敵対的な文明と接触する可能性は太陽系に留まってるお前たちより高くなるだろう。そういう時に相手の文明をお前の食卓に乗せてやるんだ。一石二鳥じゃないか?

SCP-682: 無意味でありえない選択だ。そうなれば、私は敵対的文明とやらを食い切らず、一部は吸収するに留めるだろう。その時、もはやお前たち木星コロニー船団は不要になる。私に襲われる可能性があるのに、お前たちがその選択肢を選ぶとは思えない。

SCP-4440-JP: だが、俺たちも敵対的文明を多少なりと吸収するんだ。その時、俺たちは必ずお前とは違う可能性を手繰り寄せる。だから、今お前がしている判断はその時のお前もするだろう。愚行権を持った個体は文明の発展に必要だ。お前はそういう理性的判断をするから、俺たちを端末化しない。

SCP-682: 全く合理的ではない。その時の私が満足している可能性だってある。子孫を巻き込んだ賭けをしたいのか?

SCP-4440-JP: それは信用し合おうぜ。俺たちはお前の食欲を、お前は俺たちの愚行権をだ。理性の言葉じゃ説得できないが、こればかりは信用した方が得だ。他人はどんな損害を与えるか分からない災いだが、同時にどんな利益を与えるか分からない福音でもある。俺たちは、今よりも進んだ互恵関係になれるんだぜ。

SCP-682: [溜め息] 信用か。慣れないことをさせてくれる。

SCP-4440-JP: やってれば慣れるさ。

<記録終了>

以上の対話の後に、SCP-682端末を用いて本報告書を執筆しました。本報告書は木星コロニー船団の全艦艇前方に施工された質量弾体射出装置に封入されており、敵対的文明との接敵時には報告書弾頭が射出され、知性体との接触時に報告書が排出されます。

本報告書には認識汚染ベクターが埋設されており、本報告書と接触することで、知覚方法を問わずに端末化することが可能です。

緋色の鳥よ 今こそ発たぬ

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