SCP-4542
評価: +8+x
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アイテム番号: 4542
レベル2
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
warning

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SCP-4542の1個体

特別収容プロトコル: SCP-4542個体群はサイト-71 異常動物学部門の昆虫型生物収容チャンバー7にまとめて収容されています。収容要件の緩和のため、収容下のSCP-4542個体の90%を毎月殺処分することが許可されています。

機動部隊ヴィクター-17 (“ネイチャー・ボーイズ”) はSCP-4542の疑いがある目撃情報を調査し、発見された個体を特殊なベンジオカルブ濃縮液の直接散布によって駆除します。制御困難な規模に達した群れに対しては、この薬剤を農薬散布飛行機から撒くものとします。

説明: SCP-4542は、バッタ亜目に属し、アナウサギ (Oryctolagus cuniculus) と重要な遺伝的属性を共有している異常な人工昆虫種です。

SCP-4542は体重が僅か3グラムであるにも拘らず、1日あたり最大20グラムの植物を摂取できます。この体重と食物摂取量の比率は、バッタ亜目の昆虫には生物学的にあり得ないものです。食物摂取量と体重の不均衡を説明付けるための実験では、決定的な結論が得られていません。

SCP-4542の卵は24時間以内に成熟し、これは他のバッタ亜目の繁殖速度の約300倍に相当します。この繁殖サイクルは8日ごとに繰り返されます。

SCP-4542の平均寿命は10年に及び、記録上最高齢の個体は13歳で自然死しました。SCP-4542の寿命はアナウサギの平均寿命と直接相関しており、SCP-4542がウサギのDNAを含んでいるのが原因だと仮定されています。

発見: SCP-4542は1995/06/02、ケンタッキー州リッチモンドの町周辺の植生が、未知の昆虫の群れによって食い荒らされているというニュースが報じられた時に発見されました。財団エージェントが事態を収拾した後、リッチモンドの住民は記憶処理されました。

エージェントたちは、SCP-4542の群れの発生源が、ケンタッキー州リッチモンドにある焼け落ちた家屋跡であることを特定しました。記録によると、この家屋は自称アマチュア昆虫学者であるクレイグ・ラーソンの住居でした。更なる調査の結果、ラーソン氏が所有し、SCP-4542個体の保管に用いられていた賃貸ユニットが発見されました。

補遺: 回収された情報

以下は、クレイグ・ラーソン氏のノートから発見された一連のメモです。

1995/03/16

今日はベラが訪ねてきた。コレクションに加えた新しいバッタを見せたが、どうやら目が怖かったようだ。これでベラのお気に召さない虫は10匹近くなる。

そうとも、総料理長という母さんのお仕事はカッコいい。ところが、父さんは家でコンピュータをいじり回し、気色悪い昆虫で遊んでばかり、というわけだ。

1995/03/20

ベラは未だに私の趣味を“やな感じ”だと考えている。離婚して以来、あの子との会話はほとんど無くなった。幼かった頃の娘に戻ってほしい… かつてはあんなに仲が良かったのに。

どうにかしなければいけない。ベラの友達は最近ウサギを飼い始めた。あの子はウサギを可愛いと思っている。

1995/03/27

今日はイカれた閃きがあった。バッタとウサギの交雑種。可愛らしく、それでいて昆虫だ。ベラも気に入るだろう。

しかし、もちろん馬鹿げている。ひとまず、バグ・バーンの店員たちにこのアイデアを聞いてもらおう、少なくとも笑ってはくれるはずだ。

1995/03/28

店員たちに例の“バッグス・バニー”の話をしたところ、ジョンが似たようなプロジェクトを普段から手掛けている人を知っていると言った。電話番号を教えてくれた。

試しても損は無いだろう 是非とも試さなければいけない。ベラのためだ。

1995/04/02

例の人物と電話で話した。話の内容はよく分からなかったが、必要な機材は発送してくれるそうだ。値段も良心的だった。私はその裏にある科学を理解できなかったが、彼は説明書を箱に入れておくので理解する必要は無いと言った。

上手くいけばいいのだが。ベラは今週末は来たくないと言った。私たちの友人は誰もが母親に味方しているし、今ではベラもそうだ… どこまで耐えられるだろう。

1995/04/07

ようやく荷物が届いた。さては届かないのではと思い始めていた自分が馬鹿らしくなってしまった。

説明書はいたって単純だし、ウサギも手に入れたし、必要なものは全部揃っている。

ベラのためだけに秘密の実験をやっているんだと言ったら、とても興奮しているように見えたが、断言はできない。成功を祈るばかりだ。

1995/04/09

万事準備が整った、実に単純だった。単純すぎる。だんだん疑わしくなってきた。説明書によると1週間かかるらしいので、まずは様子見だ。ベラを失望させたくない、あの子が離婚は私のせいだと考えているのは分かっている。またしてもがっかりさせるわけにはいかない。

1995/04/16

上手くいったぞ! 昨日の朝チェックしたら、あの機械の中に小さな生き物が2匹いた。想像以上に成長が速いので、成功と見做していいだろう。たくさん食べるが、健康体そのもののようだ。今のところは秘密にしておかなければいけないが、何か壮大な事に関わっているのを感じる。

ベラは来週来る。どうか気に入ってくれますように。

1995/04/22

やったぞ! ベラが今日訪ねてきて、サプライズをお気に召したようだ。上手くいったなんて信じられない。ベラは来週もまた来たいと言った。やり遂げたんだ!

1995/04/28

“むしうさちゃん”が卵を産んだぞ! 少なくとも数千個の卵が囲いの中にある。明日ベラに見せるまで待とう。もし今後数週間で実験が上手くいったら、ベラの誕生日に1匹プレゼントしよう。最高にクールな父さんだと思ってくれるに違いない。

1995/04/29

もう孵化した。今朝ベラと私が見に行ったら、囲いはいっぱいになっていた。どういう理屈でこんなに急速に成長したのか分からない。ベラは虫ウサギたちを見て大喜びだったが、私は少し不安だ。この先どうやって餌を確保し、隠し続ければいいか見当も付かない。全て保管ユニットに移す必要がある。あそこなら誰にも見つからないはずだ。やり方はどうでもいい、そうしなければマズい。

クソッ、クソッ、クソッ! 私はなんて馬鹿なんだ。倉庫への移動中に虫ウサギの入った木箱を落とした。半数が飛び去って、何処に行ったか分かったものじゃない。見つけなければいけない、他の虫ウサギはもう産卵し始めている。

1995/05/08

大変な事態になってしまった。奴らは至る所にいる。高速道路の脇に2つの群れが見え、その後ろには不毛な土地が広がっていた。私はなんて事をしてしまったんだ。ベラはウサギについて訊ねてくる。何を言えばいいか分からない、きっと嫌われてしまう。

1995/05/09

ニュースは奴らが既に町の半分を食い尽くしたと報じている、もうおしまいだ。これ以上ここにはいられない。家を焼けばきっと皆は私が死んだと思うだろう。ベラを連れて逃げる。

今日、軍人たちが町に姿を見せ始めたようなので、私はこの国を、恐らくは永久に離れることにした。家が焼け落ち、私の人生が終わった今、愚かで身勝手な嫉妬でベラの人生までも破滅させるわけにはいかない。メモはこの倉庫に置いていく。これを見つけたなら、どうか、娘のベラに愛していたと、申し訳なかったと伝えてほしい。

ラーソン氏の倉庫を調べた結果、80,000匹近いSCP-4542個体の群れが発見されました。うち50匹が捕獲され、残りの個体は処分されました。ラーソン氏の所在を突き止める試みはいずれも成功していません。ラーソン氏が購入した機材の出所についての調査は現在も進行中です。

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