
SCP-4557を構成するアライグマのうち3匹、収容違反後に撮影。
アイテム番号: SCP-4557
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: その性質上、SCP-4557の確実な収容は現在不可能です。財団職員がニューヨーク市警察に潜入し、SCP-4557の目撃情報を逐一報告します。また、これらの職員は全ての目撃者に記憶処理を施します。SCP-4557が出現した場合は、機動部隊パイ-1 “シティ・スリッカーズ” がSCP-4557を構成するアライグマに鎮静剤を投与し、SCP-4557-1へ移送します。
SCP-4557-1を内包する建造物は、財団によって買収され、民間人の立ち入りが禁止されています。改修工事というカバーストーリーの下に、金網フェンスがこの建造物の周囲に構築されています。SCP-4557を研究するため、エリア-555がこの建造物の内部に設立されています。SCP-4557-1は常時監視カメラで観察され、SCP-4557の消失はエリア-555に報告されます。
説明: SCP-4557は5匹の Procyon lotor (アライグマ) です。これらのアライグマは単一のヒト型実体を形成しています。1匹がヒト型実体の“胴体”となり、残りの4匹は中央個体の四肢に噛みついて“腕”及び“脚”の役割を果たします。全ての個体は各々の自由意思で分離・移動できます。SCP-4557を形成するアライグマは脅威に晒されると分離します。四肢を担当する個体は、尾を使って物体を操作できます。中央個体は発話能力を持ち、知性体であると推定され、他4匹を共有意識によって制御します。留意点として、中央個体の役目を果たすアライグマは、ヒト型実体としての形状が崩れるたびに変化します — SCP-4557が再形成される時、中央個体の異常性は全て別のアライグマに受け継がれます。SCP-4557はしばしば黒いトレンチコートとフェドーラ帽を着用します。
SCP-4557は警察の捜査を題材とするメディア、とりわけ“フィルム・ノワール”ジャンルの映画に関心を示します。SCP-4557は一見したところ不定期に、警察への協力を意図して、犯罪の捜査が行われている現場に出現します。特筆すべきことに、SCP-4557は殺人事件の捜査を好む一方で、強盗・器物損壊・放火の現場にも姿を見せます。
SCP-4557-1はニューヨーク州ニューヨーク市にある███████ビルの一室です。SCP-4557-1は、SCP-4557の現在の生活空間の役割を果たしています。捜査を終えると、SCP-4557はSCP-4557-1に転移します。同様に、SCP-4557がニューヨーク市域外へ出ると、SCP-4557-1に転送されます。
補遺4557-1
以下は殺人現場に出現したSCP-4557の映像記録の書き起こしです。問題の動画はA██████巡査の胸部カメラで撮影されました。簡潔にまとめるため、無関係なデータは省略されています。
[記録開始]
[A██████巡査が居間に立っている。女性が床の血溜まりの中に横たわっている。もう一人の警官、P███巡査が近くに立ち、死体を調べている。]
A██████巡査: 身分証はあったか?
P███巡査: ああ。免許証だ。名前は██████ █████████。
A██████巡査: 夫とかボーイフレンドは-
[SCP-4557が死体の近くに出現し、A██████巡査の発言を遮る。A██████巡査が後ろへ飛び退いたかのようにカメラ視点が揺れる。]
A██████巡査: なんだ、こいつ?!
SCP-4557: おや、またしても殺人か。この街では殺しが絶えないようだな。毎日のように新しい死体から新鮮な血が流されている… 失礼、味見させてもらうよ。
[SCP-4557は身を屈めて血を舐め始める。P███巡査が後ずさりし、トランシーバーを掴む。]
P███巡査: おい、現場にアライグマが出た。しかも喋って — 嘘じゃない、本当に言葉を話してるんだよ!
[SCP-4557が顔を上げてP███巡査を見る。]
SCP-4557: 警官諸君、会えて光栄だが、ここからは私が担当する。安心し給え、この事件は我が肉球の内にあるのだ。君たちが“murder she wrote”1と唱えるより早く解決してみせよう。
A██████巡査: 証拠から離れろ!
[A██████巡査がSCP-4557に駆け寄る。SCP-4557は分離し、死体の反対側で再集合する。]
SCP-4557: ふむ… 被害者の背中には幾つもの細い傷痕… 出血… そうか!
P███巡査: どうなってんだよ?! おい、すぐに動物管理局を呼んでくれ!
SCP-4557: ワトソン君たち、どうやら手掛かりを掴んだようだ… この女性は刺殺されている。
A██████巡査: なん… もう撃っていいか、こいつ?
SCP-4557: 心配ご無用、謝礼は必要ない。この街が安全であると分かれば、それこそが私の報酬となる。しかしまぁ、小切手を郵送してくれるなら断りはしないがね。
P███巡査: 何を言ってんだ…? 動物管理局はまだ来ないのか。この… アライグマ?みたいな奴が証拠を荒らしてやがる。
[SCP-4557が現場から消失する。]
[記録終了]
結: SCP-4557の消失から約15分後、財団エージェントが現場に到着し、全ての関係者にクラスB記憶処理を施した。
補遺-4557-2

財団に買収される前のエリア-555の外観。
SCP-4557は財団職員にタイプライター、デスク、ランプの支給を要請しました。20██年11月11日、SCP-4557が書いた全ての文書類を財団職員が毎日検査するという条件で、この要請は許可されました。以下は、補遺4557-1で示された出来事に関するSCP-4557の記述からの抜粋です。
20██年12月20日
どうやらこの街では日ごとに新しい捜査が始まっているようだ。何故ニューヨーク市にはこんなにもクズばかりがのさばり歩いているのか、不思議に思えてくる。しかし、私はそれで報酬を得ているのだから文句は言えまい。
今日もまた、女性が自宅で死んでいるという通報があった。市警察が私の狡猾な機知と愛嬌を活かさない限り、この事件が解決不可能なのは分かっていた。彼らはほとんど懇願するようにして私を捜査に招いた。私は雨の中を彼女の家へ向かった。
一見、事件を解明するのは不可能にも感じられた。手掛かりはなく、現場の警官たちもほとんど役に立たなかった。一人は冷静さを失い、私を攻撃しようとした。しかし、彼のことは責められない。もし私が彼の立場であったなら、私のような有り得ないほどの美男と比較されれば、相当に嫉妬心を掻き立てられたに違いない。ともあれ、この事件は迷宮入りかと思われた。あるものを見つけるまでは…
血だ。そして幾つもの傷痕。いずれも小さな切れ込みのようだった。全てをまとめ上げるのに一瞬かかったが、私はついに謎を解き明かした。
この女性は後ろから刺されたのだ。
正直なところ、私がいなかったら市警察はどうするつもりだったのか見当も付かない。彼らは一日おきに私を新しい事件に関わらせる必要があるらしい。だが、それは世界最高の都市で最も優秀な探偵である代償だ。
補遺-4557-3

SCP-4557が描いた絵の一例。
20██年5月19日、SCP-4557は████████出版社が所有・使用するオフィスビルに出現しました。目撃者の証言によると、SCP-4557はホチキス留めされた複数の紙束を頭上に掲げて、施設の中央に立っていました。SCP-4557は紙束を繰り返しオフィスの従業員に差し出し、幾度もオフィスを出入りしてデスクに紙を積み上げました。財団職員はSCP-4557を再収容し、全ての目撃者にクラスB記憶処理を施しました。
この行動について質問されたSCP-4557は、“私の小説を出版してくれる相手を探して”いたと説明しました。SCP-4557が提供した紙の内容は、SCP-4557が書いた文章と、SCP-4557を描いた数枚の絵で構成されていました。この事件に続いて、SCP-4557のタイプライターは財団職員に押収されました。