3/4612 LEVEL 3/4612
CLASSIFIED
|
|
アイテム番号: SCP-4612
オブジェクトクラス: Uncontained
|
特別収容プロトコル: SCP-4612の移送は非常に困難であるため、有刺鉄線柵による境界が暫定サイト-91の周囲に設けられています。このサイトはイギリス、ヨークシャーにある改装された18世紀の邸宅で、一般には“エッカート屋敷”と呼称されています。暫定サイト-91で発見された無許可の人物は全て尋問し、要注意団体アルファ-019(“蛇の手”)との潜在的な繋がりを探ります。蛇の手の構成員は倫理委員会によって処理されます。
SCP-4612-Bは現時点で収容されておらず、行方不明です。財団ウェブクローラ I/O METATRONが全てのソーシャルメディアとインターネット上の投稿を精査し、SCP-4612-Bの描写と一致する存在への言及を検出します。SCP-4612-Bの目撃情報は機動部隊ベータ-777(“ヘカテーの槍”)に通知されます。
説明: SCP-4612は関連する2つの異常存在を指します。SCP-4612-Aはナメクジに類似する巨大な無脊椎動物の死骸であり、弾性のある白い半透明の肉で構成されています。推定死亡時期から数世紀が経過しているにも拘らず、この死骸は腐敗の兆候を示しません。死骸は長さ10m、幅1mで、石造りの祭壇の上に横たえられています。死骸の構造には長さ3mのヒトの腕に似た部位が6本含まれます。それぞれの腕の先端には、10本の指を備え、掌に結晶構造が埋め込まれた手があります。柔軟なヒレがSCP-4612-Aの身体に沿って生えています。
SCP-4612-Aの下側は死後に縦方向に切開されています。死骸の血液は明るい青色で、凝固しません。SCP-4612-Aは大量のアキヴァ放射線を放出します。死骸は発見以来、未知の理由によって、放射線量を着実に増大させています。
SCP-4612-Aは暫定サイト-91の地下構造に収容されています。地下室へのドアはエッカート邸の外にあり、ワインセラーの下にある地下構造に繋がっています。ドアには奇跡論的な象形文字が刻まれており、かつては視認者に入口の存在を無視させる軽度の認識災害効果がありました。
地下構造は石材で構成されていますが、その多くは焦げ、熱によって歪んでいます。未知の奇跡論的目的を持つ楔形文字が、多くの石材の表面に刻まれています。
SCP-4612-Bは平均的な体格をした身長1.75mのヒト型実体であり、目は明るい青色に輝いています。SCP-4612-Bは熱エネルギーを操作する能力と、その身長や体格から予想されるものを大幅に上回る異常な膂力を実証しています。双方の種が異なるにも拘らず、SCP-4612-BはSCP-4612-Aを父親と呼んでいます。事案4612-1を参照してください。
注意
O5評議会により承認
これは以下の覚え書きを閲覧する全ての職員への通知です。覚え書きに添付されたレベル5/4612クリアランス資料を閲覧するための特別免除措置が、O5評議会によって許可されました。これらの資料を読む際は、SCP-4612ファイル閲覧の一般クリアランスが必要です。
4612
イオナ・ヴァルガ医学博士 - 暫定サイト-91管理官のデスクより
To: SCP-4612ファイルの閲覧を認可されている全てのレベル3クリアランス職員
RE: SCP-4612-Aの起源と重要性について
広範な歴史調査を通して、“技術力の後退”に分類される多数の出来事が特定されています。これらの事例の多くは歴史家から明確に説明付けられていますが、一部は未解明のままです。
以下は、そのような技術文化の発展阻害と同時期の歴史的記録における、SCP-4612-Aの出現事例の一部サンプルです。
発展阻害要因 |
時期 |
証拠/解説 |
シュメールの衰退 |
紀元前2000年頃 |
SCP-4612-Aの描写が初期のシュメール陶器の破片に描かれており、当該実体がシュメール文化に干渉していた可能性を示唆しています。シュメール文化による支配の終焉について疑問が提起されています。 |
前1200年のカタストロフ |
紀元前1100年頃 |
青銅器時代の地中海地域におけるメカニト文化とサーキック勢力の大規模紛争の後、壊れたる神を信仰する民の伝説的な技術の大半は失われ、青銅器時代の技術進歩に影響を及ぼさなくなりました。SCP-4612-Aと一致する実体が、紀元前1000年頃のメカニトの司祭が書いたと思しき古代の巻物に記述されています。以前まで、この実体はサーキシズム由来の有機生命体を神話的に表現したものだと解釈されていました。 |
ダエーバイト文明の衰退 |
紀元前200年頃 |
SCP-140で述べられているように、ダエーバイト文明は中国の軍に敗北した後、消滅しています。考古学的発掘調査で、この時期のダエーバイトの儀式場にある壁画から、SCP-4612-Aと解釈可能な生物の描写が発見され、ダエーバイト文明の終焉にSCP-4612-Aが関与した疑いが再び浮上しました。 |
ヨーロッパの暗黒時代 |
西暦400-800年 |
ローマ社会の崩壊後、ヨーロッパ社会は水道橋や道路といったローマの技術的進歩の多くを放棄しました。キリスト教への移行や“異教の”観念/価値観の放棄という観点から、これは常に宗教的プロパガンダが原因とされてきました。最近発見されたリンディスファーン修道院由来の歴史文書には、SCP-4612-Aの描写と一致する悪魔的な生物が西暦412年に出現したという記述があります。 |
黒死病 |
西暦1347-1352年 |
シチリア島にある同時代の埋葬地で発見された日誌には、悪霊の訪れが周辺地域で黒死病の突発的発生を引き起こしているという記述があります。描写されている悪霊はSCP-4612-Aの外見と一致しています。 |
以上の情報に基づき、SCP-4612-Aと同種の生物個体の発見は、財団職員のアルファ級優先事項と見做されます。仮に上述したSCP-4612-A干渉事例の半分だけが事実だとしても、この実体は人類の歴史上における数多くの文化に重大な影響を及ぼしています。
SCP-4612-Aが収容されている地下構造の入口。
発見:
SCP-4612-Aは1986年12月19日、蛇の手の既知の構成員(POI-39978Kと指定)を監視していた財団エージェントが、対象を尾行してエッカート屋敷の敷地に入った時に発見されました。エージェントたちはPOI-39978Kが未知の奇跡論儀式を実行し、SCP-4612-Aを収容している地下構造のドアに入るのを観察しました。エージェントたちは後を追い、POI-39978KがSCP-4612-Aの前に跪いてすすり泣いているのを目撃しました。SCP-4612-Aを見た財団エージェントたちはPOI-39978Kを拘留し、増援を要請しました。
機動部隊ベータ-777がサイト-06-03から動員され、財団エージェントが異常存在を報告した約8時間後に到着しました。MTF-ベータ-777は奇跡論対策に特化した訓練を受けており、常に最低2名のクラスA奇跡術師が配属されています。機動部隊には上席研究員であり、レベル3の精神測定能力者サイコメトリストでもあるエージェント リベカ・ダグラスが同行しました。
現場の調査でSCP-4612-Aの死骸以外の明確な異常物は確認されませんでした。年齢の様々な人間男性23人分の死体がSCP-4612-Aの周囲で発見されました。殆どの死体は顕著に乾燥し、焼け焦げ、骨格が一部焼却されていました。幾つかの死体は鈍的外傷によって四肢が断裂していました。エージェント ダグラスは現場にある全ての人間の死体から多大な心的外傷を検出しました。
POI-39978Kの第3回インタビュー
質問者 – イオナ・ヴァルガ博士 – 暫定サイト-91管理官
インタビュー対象 – POI-39978K
背景: インタビューはPOI-39978Kの捕縛から数ヶ月後、暫定サイト-91で行われた。インタビュー対象は捕縛以来現地に拘留されており、標準的な段階的尋問強化プロトコルを受けている。POI-39978Kの髪は乱れており、顔は青褪めているように見える。
ヴァルガ: あなたはエッカート屋敷について何を知っているのですか?
POI-39978Kは反応しない。
ヴァルガ: いいですか、お望みなら我々はこれを何週間でも続けます。あなたは並みのテロリスト集団を若干上回るような組織に所属していて、ジュネーヴ議定書はここでは効力を持たないのですよ。
POI-39978Kは反応しないが、ヴァルガ博士から目を逸らして自らの手を見つめる。
ヴァルガ: どうぞご勝手に。あなたのお仲間が我々を“看守”と呼ぶそもそもの理由が知りたいのであれば、私はそれで構いません。私にはやるべき実験があります。
ヴァルガ博士は立ち上がって去ろうとするが、POI-39978Kが話し始めたために立ち止まる。
POI-39978K: OK、分かった。だけど、あたしにも大した事は分かってない。
ヴァルガ博士は立ったままPOI-39978Kを見下ろしている。彼女は身振りでPOI-39978Kに続きを促す。
POI-39978K: えっと、あたしはこの屋敷の元々の主人がオカルティストだったのを知ってる。確か屋敷はそいつに因んで命名されてたはず。あたしは偶然、彼が図書館との繋がりを持ったっていう参考資料を見つけて、調査したいと思ったの。何が見つかるかは分かってなかった。
ヴァルガ博士はPOI-39978Kの向かいに座り、改めてメモを取り始める。
ヴァルガ: この建造物に地下室が存在するという記録はありません。どうやって探り出しました?
POI-39978K: 建物を調べてから、奇跡論の技を使ってドアを見つけた。
ヴァルガ: あの死骸がどのような生物種かを知っていますか?
POI-39978K: …神様ってどういう種だと思う?
ヴァルガ: 無脊椎動物が神であると本気で思っていますか?
POI-39978K: 分からない… あれは儀式的に屠殺された異質な生き物だった。あなたならどう呼ぶ?
ヴァルガ: 異常存在です。
POI-39978Kは首を横に振り、頭をテーブルの上に乗せる。
ヴァルガ: 何を言い渋っているのですか? あなたたち司書は諸手を挙げて知識の流布を支持しているとばかり思っていましたが?
POI-39978K: [まだ顔を伏せている] 時期が重要なのは分かってたのよ。
ヴァルガ: どういう意味です?
POI-39978K: 1770年代後半にここで何が起きてた?
ヴァルガ博士はメモに目を落とす。
ヴァルガ: 私は遺伝学者であり外来生物学者なのですが、その時期のイギリスで産業革命が始まったという話を読んだ記憶があります。しかし、それと地球外実体の死骸にどういう関連性があるのですか?
POI-39978K: 分からない… あたしはそれを確かめに来たんだ。
[記録終了]
ウィリアム・ヘンリー・エッカート、流星落下事件で行方不明になる約1年前。
歴史的文脈
POI-39978Kが言及した人物は、エッカート屋敷の最初の所有者/主人だったウィリアム・ヘンリー・エッカートと思われます。エッカートは複数のオカルト結社で活発に活動し、自宅でそれらの結社の定期会合を開いていました。
エッカートは鉄と銅の採掘で財を築きました。地元の歴史家は、エッカートが産業革命に向かって急成長する運動に投資していたと理論付けています。
ヨークシャー歴史協会の記録によると、1779年9月17日の夜、“流星の落下”がエッカート屋敷に甚大な被害を及ぼしました。現在の建造物にこの事件と一致する損傷は残っていません。エッカートは同日の朝、書斎に入るのを使用人から目撃されたのを最後に失踪し、事件後に死亡したものと見做されました。地下構造やSCP-4612-Aは歴史的記録で言及されていません。地元の伝承では、流星が落下した後、身体が炎で構成された男が屋敷跡から歩き去る様子が目撃されたと語られています。
以下のエッカート名義の手紙は、蛇の手の拠点を襲撃した際に回収されたものです。SCP-4612との関連性は、襲撃で取得された文書の完全な目録化が完了するまで明確になっていませんでした。
ウィリアム・ヘンリー・エッカートから、オカルト結社の会員、アンソニー・マーテルへの手紙
1779年5月5日
アンソニーへ
お変わりなくお過ごしでしょうか、友よ。
私は他の会員たちへの懸念を募らせています。同胞たちには、我々の努力がどれほど大規模であるかを理解してもらわねばなりません。金銭的損失であれ、我々自身の血であれ、間もなく来るべき代償は十分に報われるでしょう。
人ならざる存在が我々の命運を掌握しています。偉大なる帝国の繁栄を願うなら、我々がこの手を汚すより他ありません。この責務に背を向けてしまえば、将来の世代に何が起こるでしょう?
図書館は我々が監督下で数多くの書物を読むのを認めてくれました。そして私は最近、かつて神を束縛するために用いられたという、我々の高貴な目的を十分満たすであろう儀式を発見しました。
我が親愛なる友にして協力者よ、どうか他の会員たちに呼びかけてください。我々が払うべき犠牲と、それによって得られる物を彼らに思い出させてください。我々の敵に対する行動の結果など、人類のために成し遂げられる偉大な進歩に比べれば何程でもありません。
我々は先へ進まなければならないのです。
あなたの友
ウィリアム・ヘンリー・エッカート
ヨークシャー奇跡術協会
SCP-4612-Aの検査
SCP-4612-Aを動かす試みは成功していません。死骸は大まかな検査での予想を遥かに上回る密度を示しており、重量は26,000kg以上と推計されています。死骸が横たえられている祭壇は、構造的完全性を損なわずに死骸の重量を支える能力に鑑みて異常物と判断されています。ヴァルガ博士は、死骸を移動する試みは現地で直接実験を行うのに比べて費用対効果が薄いと判断しました。これに従い、暫定サイト-91が設立されました。
実験を簡易にするため、少量のサンプルがSCP-4612-Aから外科的に切除されました。
DNA鑑定: SCP-4612-Aの細胞構造は財団の生物学データベースのどのエントリとも一致しません。この細胞構造は炭素とケイ酸塩の混合物で構成されています。
様々な要素への曝露: サンプルは様々な電荷の電流、アルファ線、ガンマ線、紫外線に曝されました。サンプルは全く状態変化を示さず、劣化や崩壊の兆候を見せることなく電流と放射線を吸収しました。可視波長の光(そして赤外線)は吸収されませんが、SCP-4612-Aの身体に沿って生えたヒレ状の構造に波打つような動きを生じさせます。
SCP-4612-Aの肉のサンプルに曝された残留エネルギーは、SCP-4612-Aの手の結晶構造から放出される様子が観察されています。サンプルから死骸へのエネルギー伝達は瞬時に発生します。結晶構造は未知のプロセスでエネルギーを伝導するために用いられたと仮定されます。
SCP-4612-Aの身体にある縦長の切開痕は、他の身体部位よりも顕著に高いアキヴァ放射線を発します。SCP-4612-Aの身体に残された血の手形が示すように、この儀式または外科手術は中断されたようです。死骸は目的不明の奇跡論的な儀式に使用されたと仮定されます。
SCP-4612-Aは放射線を吸収するのでX線検査が不可能です。超音波検査や携帯式MRIスキャンは、内臓の完全な欠落を示しています。SCP-4612-Aは繊維状の筋肉構造と、有用性の不明な結節がある幅広い神経系で構成されています。
SCP-4612-Aの遺伝物質を使う実験についてのヴァルガ博士の提言はO5評議会の承認待ちです。
SCP-4612-Aについて物理試験で得られた情報の不足に鑑み、エージェント ダグラスは精神測定能力で死骸をスキャンする提言をヴァルガ博士に提出しました。
SCP-4612-Aの精神測定分析におけるエージェント ダグラスの記録 – 1987-06-09
1987年6月9日、07:17に記録された音声と映像。
立ち会った財団職員: エージェント リベカ・ダグラス、イオナ・ヴァルガ博士
ヴァルガ: リベカ、用意はいいですか?
ダグラス: ええ、さっさと済ませちゃいましょ。
ダグラスはSCP-4612-Aとの距離を詰める。彼女はSCP-4612-Aの体表面の数インチ上で両手を握り合わせる。ダグラスは深呼吸し、広げた手を下げて死骸と接触させる。
2分間の沈黙。
ヴァルガ: 何かを感じますか?
ダグラス: ええ、でも微か。何かが表面のすぐ下にあるのを感じるけれど、私を妨げているものがある。
ヴァルガ: かなり昔の事件なので、それほど多く残っていないのかもしれませんね。
ダグラス: まさか、あり得ないわ。廊下の石材に染み付いたトラウマだけでも頭痛がするんだから、このデカナメクジからは10倍強い感情を読み取れないとおかしいん… 待って、良い事を思いついた。
ヴァルガ: 何です?
ダグラス: あなた、グロいのは苦手?
ヴァルガ: 止してください、私が何処の職員だと思ってるんですか?
ダグラス: OK、試してみる…
ダグラスは幾度か深呼吸した後、SCP-4612-Aの表皮から離した両手を切開部に突き入れる。ダグラスの両腕は肘まで死骸の中に埋もれて見えなくなる。ヴァルガ博士は息を呑むが、何も言わない。
ダグラスが絶叫する。精神衝撃波がSCP-4612-Aから放出され、室内に設置された臨時照明の電球を粉砕する。ヴァルガ博士は2本のケミカルライトを点ける。
ヴァルガ: 何が起きたのですか?
エージェント ダグラスは両手をSCP-4612-Aの切開部に挿入したまま跪く。
ヴァルガ: ダグラス、答えてください。続けられ…
ヴァルガ博士の言葉は、SCP-4612-Aから放出された青い閃光に遮られる。人影が室内の各所に出現する — SCP-4612-Aの死骸を見下ろして立つフードを被った人物は、ウィリアム・ヘンリー・エッカートと特定できる。エッカートはナイフを宙に掲げ、不明瞭なアラム語を大声で唱えている。音質は劣悪であり、詠唱内容は聞き取れない。エッカートはナイフをSCP-4612-Aに突き刺し、その長さに沿って滑らせる。エッカートは詠唱を続けながら片手を切開部に入れ、ダグラスの位置と重なり合う。
室内にいる他の姿から20人分かそれ以上の声が上がり、エッカートと同じ文言を詠唱し始める。エッカートはSCP-4612-Aの青い血に塗れたナイフを掲げ、ナイフは暗赤色に輝き始める。眩い光が室内を包み込み、地下構造が大きく振動する。天井が内側に崩れ、一条の光が一瞬だけ室内を照らし出す。光が薄れると、新たな人物(SCP-4612-Bと指定)がSCP-4612-Aとエッカートから数フィート離れた位置に立っている。SCP-4612-Bは裾長のマントと三角帽子を着用している。
SCP-4612-B: 何をしている?
エッカートはSCP-4612-Aから数歩離れ、ナイフを取り落とす。彼はよろめき、体勢を立て直してSCP-4612-Bを見つめる。
エッカート: いったい何者だ?
SCP-4612-B: 父上の亡骸から離れろ。
エッカートはSCP-4612-Aから更に遠ざかる。
SCP-4612-B: 貴様らは殺すだけでも満ち足りないのか? 父上の亡骸を冒涜しなければ気が済まないか?
エッカートは汗をかいており、振り向いて他数名の人物に視線を移す。エッカートを支援しようと前に出る者はいない。
エッカート: そんなつもりは… 私はこれが男性であることさえも知らなかったのです。
SCP-4612-B: 答えろ、馬鹿め。何故貴様は父上の亡骸を解剖する?
エッカート: 私は… つまり我々は、この死体を儀式に使いたかったのです。奇跡を生み出すために。
SCP-4612-B: 子供よ、これが貴様らの奇跡か? [SCP-4612-Bは死骸を指差す] 貴様らは俺を真に知っていた唯一の生命を殺したのだぞ。
エッカート: どうか聞いてください、これは決して我々の意図では-
エッカートの言葉はSCP-4612-Bの体当たりで遮られる。SCP-4612-Bの手がエッカートの胴体を貫通して背中から飛び出す。血液と内臓の飛沫が床に飛び散る。SCP-4612-Bはエッカートの身体を掴み、2つに引き裂く。二分された死体はくすぶり始め、炎上しながら石造りの床に倒れ込む。
SCP-4612-Bは炎上するエッカートの死体を30秒ほど見下ろしている。室内の他の人々が叫び始め、数名が出口に向かって逃走する。SCP-4612-Bは目を輝かせながら顔を上げる。フードを被った人物の1人が両掌を前に出しながら前に踏み出す。
不明人物: どうか、お止めください。この一件は全てウィリアムの謀です。あなたの父上の存在について、我々は殆ど知識を持ちませんでした。我々はただ人類の多くを改善したかっただけなのです。まさかこのような結果になるとは誰一人思っていませんでした。どうかお慈悲を。
SCP-4612-Bは静止し、不明人物を見やる。SCP-4612-Bは前に進み、不明人物の肩に手を乗せる。
SCP-4612-B: 目的を達成したかったならばそれも良かろう。だが貴様は一度でもその結果を考慮したか?
不明人物の頭髪と皮膚が発火する。彼の叫び声はSCP-4612-Bが片手で殴ると収まる。
SCP-4612-B: 来い、猿ども。貴様らの奇跡とやらを俺に見せてみろ。
続く12分間で、SCP-4612-Bは炎と鈍的外傷によって他21名の人物を1人ずつ殺害する。オカルティスト集団の殺害を終えた後、SCP-4612-BはSCP-4612-Aの死骸の前に立ち、膝を突いてエージェント ダグラスと同じ位置を占める。SCP-4612-Aからの青い光が弱まり、SCP-4612-Bの幻影が薄れ、地下構造は記録開始時と同じ見た目に戻る。エージェント ダグラスが崩れ落ちる。
エージェント ダグラスは回復に5週間を費やしました。この間、彼女はめったに意識を取り戻しませんでした。ダグラスが倒れた36日後、SCP-4612-Bに似た人物が彼女の病室に入るのが監視映像に捉えられました。保安職員が動員され、ダグラスの病室に派遣されましたが、SCP-4612-Bの痕跡は残っていませんでした。保安職員がエージェント ダグラスに接近した際、彼女は明瞭な意識を保っていましたが、鼻梁のすぐ上にあたる額部分に親指の指紋が残されていました。医療職員はダグラスの皮膚からこの指紋を除去できませんでした。
聞き取り調査で、ダグラスは保安職員の到着前にSCP-4612-Bと交わした会話の内容を詳述するように求められました。ダグラスは、彼女が単なる捜査を行っていただけなのが唯一の生かされている理由だとSCP-4612-Bが主張したと報告しました。加えて、エージェント ダグラスは彼女の精神測定能力に多大な干渉が及ぼされており、“エッカートは理由があって死んだ”という文言の繰り返し以外には何も検出できないと主張しました。
SCP-4612-Bの捜索は現在進行中です。