クレジット
タイトル: SCP-4616-JP - 百鬼夜行的海嘯の鎮圧、あるいは新天地への船出のための悪魔的メゾッド
著者: Radi-gon
作成年: 2026
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:9789149-36-1fbc
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特別収容プロトコル: 妖魔界実体との協定に基づき、SCP-4616-JPの管理を行う妖魔界実体のみがソーダ工業関連工場等に偽装されたSCP-4616-JP収容施設への滞在を許可されます。
不活性時のSCP-4616-JP。裏面には"従業員用"と書かれている。
説明: SCP-4616-JPは基底現実から地獄へと行き来することが可能なウェルギリウス級妖魔界次元路です。この"地獄"とは形而上学的にキリスト教学におけるゲヘナ(γεεννα)に近似する概念として分類され、ダンテ・アリギエーリの"神曲"地獄篇で描写される外次元空間を指します。SCP-4616-JPは現在までに日本国内では██ヶ所が確認されており、本報告書改定時点ではその全てが財団の管理下にあります。協定に基づき提供されているSCP-4616-JPの位置の包括的なリストは別途資料を参照してください。
SCP-4616-JPは全国的な物流の調査による異常存在の捜索プロジェクトの進行中に発見されました。当時、SCP-4616-JPが存在する施設には定期的に大量の塩がトラックにより運び込まれており、財団の注意を引きました。施設からは微弱な妖魔共振エネルギーも検知されており、妖魔界実体の拠点であるとして襲撃計画が立案・実行されました。この襲撃の結果、SCP-4616-JPが発見されました。1以下は捕縛されたTartareanクラス悪魔実体へのインタビュー記録です。
音声記録4616-JP.1
Record 2019/██/██
録音地点: サイト-8181
メンバー: 錦博士、Tartareanクラス悪魔実体
«ログ開始»
錦博士: では、件のポータル SCP-4616-JPについて、幾つか質問をさせていただきます。まず、あれはどういった目的のものでしょうか?
悪魔実体-1: 目的も何も……ポータルの役目と言ったら門の役割しか無いだろ。
錦博士: それについては重々承知していますが、どうしてあれほどの数が必要なのでしょうか?現在発見された地点は一旦封鎖していますが、あちら 妖魔界側からこちら側への妖魔界実体の出現は確認されてません。出入り口というよりは……
悪魔実体-1: (遮って) ちょっと待った。封鎖してるの?あれを?
錦博士: ん?ええ。潜在的なリスクですから。
悪魔実体-1: [溜息] マジで?え?あー……それは困る。けど、機密だし……いやー……
[沈黙]
悪魔実体-1: 分かった。条件付きでの情報提供をしよう。要求は一つだけ……俺が言ったってことを誰にも言わないことだ。リアルに首が飛ぶんで。二つの意味でな?
錦博士: 分かりました。その程度の条件ならば容認可能でしょう。
悪魔実体-1: 助かる。まあ正直機密って言ってもそんな大層なことじゃないんだ。あのポータルは、いわば搬入口なわけ。
錦博士: "搬入口"?
悪魔実体-1: そそ、搬入口。塩のね。
錦博士: "塩"?[沈黙] その……すみません、話が見えないのですが……
悪魔実体-1: まあまあそんな焦りなさんな。でな、これは地獄の管理体制についての話だから、本来は社外秘なんだが……実はな、地獄じゃ罪人とか悪霊を抑え込む時に、塩を使うんだ。
錦博士: なるほど?しかし[唸り声] しかし、なぜわざわざ塩を?塩は通常兵器と比べ扱いも面倒なのでは?
悪魔実体-1: そう、それはまあネックなんだけど、塩じゃなきゃいけない理由があるんだ。あんた、生まれは?
錦博士: 日本生まれ、日本育ちですが。
悪魔実体-1: あー、なら共感しやすいかもな。まず、西洋の文化圏には地の塩っていう文化があってだな。まあ"清めの塩"みたいなものだと思ってもらえれば分かりやすいかな。
錦博士: ええ、そうですね。
悪魔実体-1: けど、神聖なものだったら他にも色々ある。聖水は俺みたいな下級悪魔が扱えないから微妙かもだが、葡萄酒だとか蝋燭だとか、他にもやりようはありそうだろ?それなのに何で塩を使うかって言ったら、浸透圧で殺処分するため、なんだよね。
錦博士: ……は?
悪魔実体-1: つまるところだな、地獄の悪霊はナメクジなんだよ。OK?
錦博士: あーいえ、理解できないというわけではなく……その、本当に?
悪魔実体-1: マジマジ、大マジだよ。小さい頃にやったことない?
錦博士: ……まあ、一度だけ。
悪魔実体-1: おお、なら話が早い。そう、実は地獄の悪霊共はナメクジ野郎Sluggerだったわけだ。
錦博士: なるほど……
悪魔実体-1: まあ実際は現世にいるナメクジが進化した土着生物なわけだが。でな、地獄ってのは硫黄の匂いと罪人の穢れがジメッと漂う所なんだよ。そういうジメッとした空気も穢れも、あのナメクジの大好物なんだ。最初は地獄の掃除屋的なただの生き物だったんだが……
[沈黙]
悪魔実体-1: なあ、これは愚痴なんだがよ……最近の人間って、あまりにも皆罪深すぎないか?ここのところずっと地獄は飽和気味だぞ?特に酷いのは姦通に肥満、自殺とか……つまりは第二圏とか第四圏2とか大体そこら辺だな。
薊野博士: ええと、死者は何かしらのプロセスで全てそちらに送られるということですか?
悪魔実体-1: んなわけ、こっちだって忙しいんだ。分業ぐらいしてるさ。無宗教の野郎は大多数をこっちで受け入れしてるが、大抵は宗教に沿った地獄に送られるよ。あんたは 無宗教そうだな。まあいいや、死ぬ前には何かの宗教に入っておくんだな!こっちに来られたら気まずくて合わす顔がねえ!
[笑い声]
[溜息]
悪魔実体-1: あーそれで……だな。あの搬入口がないと、悪霊がこっち出てきちまうんだよ。正直、ここ一世紀は特に酷い。罪人とか悪霊が多すぎるんだよ。これまでは罪人とか、悪霊とか、一緒くたに牢屋とか釜に放り込んでおけばよかったんだが……地獄も人手不足でキャパオーバだからさ、最近は塩もみして抑え込んでるわけ。傷口に塩塗れば罪人も少し大人しくなるし、悪霊に対しては効果テキメンよ。[溜息] だからこそ、多分このまま封鎖が続くと不味いことになるんだ。
錦博士: ……不味いことというのは?
悪魔実体-1: あえてこっちの言葉で言うのなら 百鬼夜行だよ。それも、ナメクジの。
«ログ終了»
補遺1: 収容安定化
SCP-4616-JPの封鎖開始からおよそ2日後、81管区では現実性の有意な低下が見られました。SCP-4616-JP封鎖以前の日本列島での平均ヒューム値は平均して0.92Hmでしたが、封鎖後には最大で0.78Hmにまで低下しました。これにより81管区での異常存在発生の増加が懸念されていました。
この事態を受け財団日本支部は奇跡術による召喚を通じてSCP-4616-JP運用に携わる妖魔界実体への交渉を予定していましたが、妖魔界実体側からのコンタクトが先んじて行われました。以下は出現した妖魔界実体との会話ログの書き起こしです。
音声記録4616-JP.2
Record 2019/██/██
録音地点: サイト-8181
メンバー: 薊野あぞの博士、Tartareanクラス悪魔実体
«ログ開始»
悪魔実体-2: アポ無しでの交渉を失礼します。こちらからの連絡が遅くなり申し訳ありません。[溜息] もう少し縦割り体制が緩和されるだけでいいのですが……
薊野博士: いえ、こちらこそ交渉の場を設けてくださったことを感謝します。
悪魔実体-2: ええ、構いません。地獄社サービス部門主任、サルガタナス殿下の秘書を務めておりますレラジェと申します。どうぞよろしくお願いします。 [以後レラジェと表記]
薊野博士: こちらこそよろしくお願いします。SCP財団サイト-8181上級研究員の薊野です。
レラジェ: 本日はこちらの次元路……SCP-4616-JPでしたか?についての取り決めをということで。基本的にこちらとしてもある程度の制限は飲むことが可能ですが、運用の妨害・封鎖の撤廃は譲ることができません。詳しくはこちらの内部機密に抵触するためお話できませんが ああいえ、もう情報は入手されているのでしたね。例の次元路が封鎖された場合、地獄側における正常な封じ込めサイクルが乱れ、そちらの世界に不都合な輩が踏み入ることになります。サイクルの乱れは こちらとしても面倒ではあるのですが あなたがたにとっての方がより不都合なことなのではないでしょうか?
薊野博士: ええ、その認識で構いません。こちらにおいても現実性の低下による異常存在の出現増加が懸念されています。
レラジェ: なるほど。話が早い。[溜息] 次元路の存在が露見した以上、何かしらの対応は行わなければならないでしょうね。程度にもよりますが、こちら側はある程度の譲歩が可能です。
薊野博士: はい。こちらからは門の完全管理が条件となりますが、運用については不介入の方針が決定されています。門の通行は管理を行う悪魔以外が禁止されるという条件となります。
レラジェ: ふむ……[唸り声] そちらのスタンス上予想されていたことではありますが、その条件には少々問題があります。
薊野博士: ……問題とは具体的に?
レラジェ: こちら側の譲歩が過大であることです。貴方がたのスタンスや理念を加味した上で、この要求を我が社が完全に飲むことはできないでしょう。私個人としてはやむなしという立場ではありますが、上層部 特に君主であるサタン様は憤怒の御方ですから、ほぼ確実に強行案を提言するものと思われます。
薊野博士: ……それは しかしそれでは……
レラジェ: (遮って) 分かっています。社内でも軍事侵攻案は出費が嵩むために否定的な意見は多く、採択される可能性は低いです。しかし、強硬派が一定数存在することは認めざるを得ません。[深い溜息] サルガタナス殿下からは「あちら側の最低限の譲歩は引き出せ」と申し付けられております。ですのでこちら側からは折衷案として、塩の購入に関する支援を要求いたします。正直な所、地獄での悪霊用の塩の生産は、人を釜茹でにして得られるごく僅かな量しか存在しません。年間で一トンにも満たないのです。そのため、財団を窓口として塩を安く そうですね、原価の8割ほどで転売していただく。或いは財団で生産した塩を原価で買い取ること。これが、こちらが提示可能な最低限の譲歩です。
[10秒間の沈黙]
薊野博士: [溜息] 承知いたしました。それで手を打ちましょう。飲めない程の要求ではありませんから。
レラジェ: 分かりました。交渉の場を設けてくださりありがとうございました。良い返答をお待ちしております。
薊野博士: ええ、こちらこそありがとうございました。
«ログ終了»
その後、妖魔界実体の折衷案を受け入れることが日本支部理事会内での全会一致により可決されました。細かな協定文についての交渉の後、SCP-4616-JPの運用についての協定契約が効力を発揮しました。以降、SCP-4616-JPは安定的な収容を維持し続けており、異常存在の出現件数も中央値へと近づきつつあります。
この状況を鑑みてSCP-4616-JPはSafeクラスに再指定され、現在の特別収容プロトコルへと改定されました。現在、SCP-4616-JPは安定的な収容が行われています。収容が不安定化しています。補遺2を参照してください。
補遺2: インシデント発生
2024年11月19日、SCP-4616-JPよりは外見上全身が溶解したような姿をした敵性人型実体が複数出現し、出現から38時間後には銃火器類の攻撃によりその殆どが無力化されました。特筆すべきこととして、当該実体は悪魔実体の証言に反し、食塩への耐性を有していました。当該実体の詳細については以下のレポートを参照して下さい。
このインシデント発生を受けてサイト-8181の薊野博士により、妖魔界実体の召喚・インタビューが行われました。以下はインタビュー記録の書き起こしです。
音声記録4616-JP.3
Record 2024/11/20
録音地点: サイト-8181
メンバー: 薊野博士、Tartareanクラス悪魔実体
«ログ開始»
薊野博士: 呼びかけへの応答、感謝します。
レラジェ: ええ、今度は先を越されてしまいましたね ええ、あのナメクジについてですね。こちらでも確定した情報は出せていませんが、おおよそ正しいと思われる情報が手に入りました。
薊野博士: はい、こちらも同様です。あの人型実体は…
レラジェ: ナメクジに寄生されている。それも、大量に、です。これまでは単体の生物として振る舞っていた悪霊たちが、群体の生物のような振る舞いを見せ、罪人共の頭に入り込んでいます。そして、一部は我々の頭にも。
薊野博士: ちょっと待ってください。"我々"というのは……つまりは 彼らは妖魔界実体にも寄生し得ると?
レラジェ: ええ、その通りです。具体的にはサービス部門の末端職員が寄生されました。おそらくは塩に適応すべく、生まれ方を変えたようです。正直、適応力がここまでとは思っても見ませんでした。塩が安定供給されるようになってから、十二分とも言える量を投入してきたことが仇となった訳です。
薊野博士: ……なるほど、話を遮ってしまい申し訳ありません。こちらでも共有しておきましょう。しかし、我々は対応策について話し合う必要があります。
レラジェ: ええ、承知しておりますとも。……基本的に罪人共は実体を持ちます。霊的存在ではないのはご存知とは思いますがね。ですので、本来の有効な鎮圧策は銃火器や聖水の利用です。考える脳さえあれば脅しも有効だったのですが。
薊野博士: 地獄にも銃火器が?
レラジェ: ええ、意外にもそちら側のものと遜色ない技術力ですよ。銃のプロトタイプが何を利用していたかは、ご存知でしょう?
薊野博士: ……硫黄ですか。確かにそうですね。[沈黙] しかし、当該実体には銃火器はそこまで有効ではありませんでした。体表の粘液が保護膜の役割を果たしています。効果がないわけではありませんが、有効とは言い切れません。
レラジェ: その通りです。となると残る案は聖水の利用ですが、こちらも銃火器同様に懸念点があります。我々は聖水を扱えないということです。聖水に身を滅ぼされては敵いませんから。現状、外に漏れ出た個体を処分して貰う形でなんとかやりくりをしていますが、内部状況はひどいものです。[溜息] それこそ、地獄がナメクジの洪水で埋め尽くされるのもそう遠くないと思うほどにです。洪水は地上だけにしてほしいものですが。
レラジェ: 現状こちらとしても内部でどうやりくりしていくか議論中ですが、基本的には不安定な封じ込めになるかもしれません。申し訳ないですが、こちらとしても不可抗力ですので
薊野博士: (遮って) いえ、この問題の全てを解決する方法は、無いわけではありません。
レラジェ: [溜息] やはり、提案してきますか……(肩をすくめる) 「地獄への財団サイトの建設」。それが提案でしょう?
薊野博士: その通りです。財団側からは地獄へのサイト建設を提言します。具体的な内容としてはサイト建設に十分な土地の利用や軟体実体無力化のための聖水の搬入の許可が主な要求となりますが……どうでしょうか?
レラジェ: ええと[溜息] 申し訳ないのですが、それ私の一存では決められません。その提案は私が扱う地獄の管理体制だけの問題ではなく、地獄の安全保障や治安問題の場にまで発展しますので……なので一度、持ち帰らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?
薊野博士: ええ、勿論です。了解いたしました。
レラジェ: それでは、失礼します。
薊野博士: ありがとうございます。今回はどうもありがとうございました。
レラジェ: ……ええ。
«ログ終了»
このインタビューの後に開かれた財団日本支部と本部による協議において、薊野博士よりプロジェクト・インフェルノが正式に提言され、賛成票17-反対票3で可決されました。以下は提言時に提出されたアーカイブ済みの簡易ファイルです。
SCP Foundation
Official Documentation
プロジェクト・インフェルノProject・Inferno
概要
プロジェクト・インフェルノは所謂西洋圏における"地獄"と呼ばれる外次元空間にサイトを建設することを最終目標とする財団日本支部・本部共同大規模プロジェクトです。
背景
本プロジェクトはSCP-4616-JPに指定されている次元路より度々基底現実へと侵入を繰り返していた軟体実体3への根本的な対応を行う必要性を主張するサイト-8181所属薊野博士より提言されました。現状の対症療法的な収容ではなく原因療法的な収容の確立を求める声に答えた形での提言でした。
実施計画
本プロジェクトは交渉・建設の2フェーズに大別可能でありそれぞれ一般部門と渉外部門が交渉を、建設は建設部門が担当します。(懸念点については後述。)
予算案については付録文書 - 計上予算を参照してください。
想定されるリスク・懸念点
妖魔界側の反発
本プロジェクトは非常に急進的な計画であり、妖魔界実体との激しい摩擦を引き起こしかねません。予想される反発として土地の強制収用的な態度への反発、不平等感への反発が挙げられます。妖魔界実体側には主権の概念が存在することは既に確認されており、治外法権的な状況を作り出さないための配慮が求められます。
スケジュールリスク
SCP-4616-JP-1実体群の侵入が相次いで発生していることから鑑みても、外次元内の収容状態は非常に劣悪である可能性があります。そのため、サイトの建設前に建設予定地から半径300mの範囲でSCP-4616-JP-1の無力化を行うことが必要でしょう。この際には聖水や特殊仕様の火炎放射器を利用した無力化を行うため、妖魔界実体側への通達も合わせて行う必要があります。
補遺3: 交渉
プロジェクト・インフェルノ実行に際し、妖魔界側との本格的な交渉が地獄にて開始されました。交渉は財団側からは薊野博士が、妖魔界側からはGoI-4616("地獄社")の代表であり、キリスト教の伝承における最高位の悪魔であるサタンが交渉を行いました。
映像記録4616-JP.1
Record 2024/11/23
撮影地点: "地獄"
付記: 薊野博士は簡易版TRE共鳴結像イメージャー4及びボディカメラを携帯している。
«抜粋開始»
錦博士: では、SCP-4616-JPを活性化させます。妖魔界側によるとサタンの居る場所まで少し歩く必要があるようです。その……[沈黙] やはり銃器や聖水を携帯したほうが……
薊野博士: (遮って) 錦くん、お心遣いはありがたいが、それは争いの口実になりかねないと言っただろう。ましては相手はサタン、最高位の悪魔だ。サブマシンガンで撃ったって傷一つつかないだろう。でも、心配してくれてありがとうね。
錦博士: ……はい。博士、どうかご無事で。
(薊野博士が右手を振りながらSCP-4616-JPへと進入する。)
薊野博士: あなたは……!
レラジェ: どうもお久しぶりです。前回の交渉役のレラジェです。
薊野博士: 貴方のような高位の悪魔が出迎えですか……[笑い声] これは先が恐ろしいですな。
レラジェ: ハハ、厄介な案件を持ってきたツケだそうです。面倒なことに、サタン様の居城まで徒歩で向かわなければなりません。まあ、安全保障上の問題が絡んだりするので……地獄の観光だと思ってついてきてくださいね。
薊野博士: 了解しました。
(両名が歩き始める。)
薊野博士: ……やはりというかなんというか……暑いですね。
”地獄”内部の様子。
レラジェ: ええ、ここはサタン様の直轄地、第五圏5の田舎ですから、整備も禄にされていません。
薊野博士: なるほど……整備されていないと仰っていましたが、具体的にはどういう……
[突如、道端の溶岩川から人の叫び声が上がる。人型実体は複数体存在し、互いに言い争っているように見える。]
レラジェ: ……はい、整備されてないとたまにああいうのが流れてくるんですよね……
溶岩流を流れる人型実体。
薊野博士: な、なるほど……
レラジェ: まあ、田舎に行くとこんな光景もよく見ますが、都市部は本当に良く発展していますよ。地獄と言うと溶岩だらけの荒野を想像する方も多いかもしれませんが、案外緑地や近代的な都市もあるのですよ。
薊野博士: ほう、それは興味深い。地獄の植生なんかはどうなっているんでしょうか?
レラジェ: それはですね……
[冗長さ回避のため省略]
薊野博士: しかし、交渉が成功するかは中々に不安なところがありますね……
レラジェ: ああ、それなら案外成功すると思いますよ。
薊野博士: またまた御冗談を。
レラジェ: ふふ、まあ実際に交渉すれば分かりますよ。
薊野博士: それはどういう……
レラジェ: (遮って) ほら、もう着いてしまいましたよ。
薊野博士: えっ、
レラジェ: さて、私がお供できるのはここまでです。それでは、ご武運を。
薊野博士: ……ええ、ありがとうございました。
(薊野博士がレラジェへお辞儀をし、レラジェは消失する。)
薊野博士: さて……
(薊野博士は門へ向き直り、ノックする。)
不明な声: 入れ。
(門が開かれ、薊野博士は内部に歩いて行く。)
薊野博士が通った道。
サタン: ようこそ、俺の城へ。地獄の君主として、お前を歓迎しよう。
薊野博士: こちらこそよろしくお願いします。財団の薊野博士です。本日は地獄へのサイト建設の交渉に参りました。
サタン: ああ、聞いている。[笑い声] だが”サイト”なんて言葉で濁さずに、はっきりと”軍事基地を置かせろ”と言えばいいだろうに。
薊野博士: いえ、単なる基地ではなく研究設備も併設されているため完全に軍事的な基地とは言い難く……
サタン: (遮って) 俺からすれば同じことだ。ナメクジの件があるとは言え、腹の中をまさぐられるのは良い気分ではないな。
薊野博士: しかし、何かしらの対応を取らなければいけないことを理解されているからこそ、今回交渉に応じてくださったのでしょう?
サタン: ……ふん、まあ良い。実はな、サイトの建設自体は認めてやっても良いと考えてる。
薊野博士: ……それはまたどういうことでしょうか?
サタン: 良いだろ、理由が何だって。
薊野博士: まあ、そう……ですね。
[沈黙]
サタン: 悪魔との取引があっけなく終わって不安なのか?
薊野博士: まあ、有り体に言えばそうですね……失礼ながら、何か裏で企んではいないかと嫌でも勘ぐってしまいます。
サタン: [聞き取り不可能]
薊野博士: 何ですって?
サタン: 財政難なんだよ……!
薊野博士: はい?
サタン: ……税率を全ての税で一律15%引き上げたんだ。そしたら経済活動が縮小したり、資本逃避が起きたり散々だ……ただ、一度上げた生活水準は下げづらいだろ?ラチェット効果だっけ?とにかく、税収は増えるどころか減るばかりで大変なんだよ。
薊野博士: つまりは……外資導入をしたいということでしょうか?
サタン: そうだ。勿論免税はするし、ある程度の優遇措置も取ろう。重要物資の生産を任せろとは言わない。ただ、通常の物品でも財団が仕入れるには大仰なものであったり、流通に手間取ったりするものがあるだろ、そういうものの生産を地獄が請け負うというのはどうだ?地獄で生産をしてしまえば、世界中の拠点に輸送するのにも手間取らないし、そちらにとっても十分に理のある提案だと思うが……
薊野博士: なるほど……生産品目については要検討ですが、外資導入に関しては財団フロント企業で十分に対応可能だと思います。
サタン: 本当か!恩に着るぞ……この恩はいつか必ず返す。
薊野博士: ……なら、一つだけお願いを聞いていただいてもいいですか?
サタン: 今か?いいとも。
薊野博士: 治外法権をくれませんか?ほら、財団職員がそちらで活動する際、法制度の違いで面倒事は避けたいですし。
サタン: ……ぐっ。
[10秒間の沈黙]
サタン: ……悪魔に二言はない。許可しよう。
薊野博士: では地獄への外資導入を対価として、サイトの建設、治外法権を認めてもらうということで構いませんね?
サタン: ……ああ、それで構わない。品目については追々また連絡してくれ。俺直通のホットラインも開通させよう。
薊野博士: ええ、勿論ですとも。良い交渉をありがとうございました。
サタン: ああ……
«抜粋終了»
交渉は無事に終了し、プロジェクト・インフェルノが始動しました。それに伴い、SCP-4616-JP報告書の改定が行われています。報告書草案は現在担当職員にのみ開示されています。
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特別収容プロトコル: SCP-4616-JPの情報へのアクセスは担当職員とレベル4クリアランスレベル職員のみに限定されます。この機密指定についてはSCP-4616-JPの運用が成功し次第、順次情報を解放することが予定されています。
SCP-4616-JP-1を除く日本国内に存在するSCP-4616-JPについては、GoI-4616("地獄社")との協定の下で運用が行われ、塩や聖水といった戦略的重要物資の搬入路としてその一部が利用されます。協定締結時に不要と判断された次元路は封鎖/破壊が行われ、準監視対象地点に定められます。
外次元サイト-616には機動部隊な-2("半グレ聖歌隊")が駐屯し、SCP-4616-JP-2実例への対処を行います。
現在、"地獄"への進出を行う財団フロント企業の選定と"地獄社"との選定企業の擦り合わせが行われています。
説明: SCP-4616-JPはコンメディア型デニス級外次元空間6と基底現実を行き来することが可能なウェルギリウス級妖魔界次元路です。発見経緯などの詳細については旧版の報告書を閲覧してください。
SCP-4616-JP-1はサイト-81HD7 帯広分署の地下4階に設置されたSCP-4616-JPであり、基底現実側から当該外次元に正規での進入が可能な唯一のアクセスポイントとなっています。SCP-4616-JP-1は当該外次元内に存在する外次元サイト-616のゲート棟へと接続されており、原則財団職員のみが利用することが可能です。
SCP-4616-JP-2は当該外次元内において出現する敵性軟体実体です。詳細については開博士によるレポート(改訂版)を参照してください。未だ研究段階ではありますが、SCP-4616-JP-2は身体構造や宗教的性質などから聖水への免疫系統は将来的にも持ち得ないことが確認されており、SCP-4616-JP-2は安定的な収容が確立されたものと見られています。



