アイテム番号: SCP-4642
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: サイト-17にある未使用の航空機格納庫1棟が、SCP-4642の収容室として改装され、サイトの焼却炉に直接通じる排水システムが設置されています。格納庫のドアは溶接による閉鎖状態を保ち、収容室への入場は南側の壁に新設された除染シャワーに通じる保安ドアからのみ認められます。
承認された実験中でない限り、SCP-4642は収容室の床に固定されます。現在の実験スケジュールでは、SCP-4642-1の生産にあたって、毎月3人のDクラス被験者を使用する必要があります。Dクラス被験者は裸体で実験を受ける必要があります。
説明: SCP-4642はヒトの解剖学的要素と組成不明の鉄系金属で構成された生体力学的オブジェクトです。SCP-4642は芸術的な用途に使用されていたと考えられています。試験の結果、SCP-4642の生物学的素材は全て遺伝的に同一だと確認されています。
SCP-4642は、仰臥位で横並びに配置され、皮膚と肉を接合された3人分のヒトの胴体で構成されています。この接合は、隣接する胸郭同士を連結する金属製の帯で補強されています。四肢と骨盤は外科手術で切除され、胸骨は分割されていますが、これらの部位の皮膚は傷ついていないように見えます。各胴体の脊椎の下端に椎骨が追加され、全長2mまで延長されています。脊椎の先端は上方・内側に湾曲し、一点で合流しています。
腹部臓器は存在せず、それぞれ特定のヒト体液 (胃酸、精液、硝子体液など) を満たした28個の膀胱に置換されています。SCP-4642が活性化すると、これらの液体は膀胱から尿道管に排出され、未知の手段で再補充されます。尿道管は複雑なネットワークを形成し、SCP-4642の腹面にある80ヶ所の括約筋に繋がっています。各括約筋には独立して可動し、SCP-4642の体外に4インチまで伸長するヒトの舌が内蔵されています。
SCP-4642を構成する胴体はいずれも断頭され、首の切断面は移植皮膚に覆われています。中央の胴体には、首の切断面に後頭部を接着する形でヒトの頭部が取り付けられており、眉間にローマ数字の “ L ” の刺青があります。この頭部は男性と思われ、青白い皮膚、黒い髪、青い目を有します。瞼と舌は外科手術で切除され、顎はワイヤーで開かれています。鉄系金属でできた長いクランクが口からSCP-4642の体内へと伸びています。1
クランクを回転させると、SCP-4642は活性化します。組成不明の浮力ガスが各胴体の肺に充満し、膨張して気球を形成した肺は、分割された胸郭を押し広げて腹部の空隙を埋めます。SCP-4642はこの時点から浮遊し、未知の手段で空中を推進移動できます。この状態の時、SCP-4642の腹面にある舌は括約筋から出ており、ゆっくりと前後に動きます。
移動し始めたSCP-4642は、最も近くにいる人間に向かって浮遊します。1種類以上の液体が膀胱から尿道管システムを通って排出され、SCP-4642は舌を使って、これらの液体を対象者の露出した皮膚に塗り付けようと試みます。対象者の皮膚露出が十分でない場合、衣服を脱がせようとする様子も記録されています。
SCP-4642が施すボディペインティング (以下SCP-4642-1実例とする) は専ら抽象的な幾何学模様から成っていますが、点描画、タシスム、インパストに類する画法も含んでいます。描画に用いられる液体の性質上、SCP-4642-1実例は容易には観察できず、また永続的なものではありません。SCP-4642-1実例は観察者への異常な影響を及ぼしません。
SCP-4642の描画行為に晒された人物は、主にSCP-4642に対する新しい印象、もしくはそれ以前の印象の変化という形で、異常な心理学的影響を受けます。SCP-4642は通常、SCP-4642-1実例を生成すると活動を停止しますが、状況に応じて非典型的な行動が観察される場合もあります。
補遺 1: 特筆すべきSCP-4642-1実例
| 実例 | 被験者 | 使用された液体 | SCP-4642の反応 | 被験者の反応 |
| SCP-4642-1-E | D-1407 | 血液、粘膜分泌物、唾液 | SCP-4642はSCP-4642-1実例の完成後もD-1407との接触を続け、通常よりも長時間活動していた。 | 被験者はSCP-4642に対する好意的な見方を示し、更なる接触を求めると共に、実験体制の拡充を提案した。 |
| SCP-4642-1-G | D-0483 | リンパ液、腹腔液、膿汁 | SCP-4642は描画を始める前に何度か試し描きを行い、完成後には自らの可動部を一つ一つ屈曲させた。 | 被験者は、SCP-4642が“より一層の作業を必要としている”と述べ、SCP-4642を“修復”する機会を求めた。 |
| SCP-4642-1-J | D-1672 | 涙液、細胞内液、膣分泌液 | SCP-4642-1実例は一際緻密な螺旋模様で構成されていた。SCP-4642は即座にこの実例を消し、描画をやり直した。 | 被験者は懸念と苛立ちを交互に繰り返し、果たしてSCP-4642に理解者がいるかどうかを問いかけた。 |
| SCP-4642-1-N | D-4495 | 皮脂、膿汁、胃酸、耳垢 | SCP-4642はSCP-4642-1実例の完成直後に活動を停止した。 | 被験者はSCP-4642の機械的、生物学的要素とその役割について詳細な概説を行った。被験者はSCP-4642の構造に対してやや批判的であったものの、全体的に“自尊心”が感じられると述べた。 |
| SCP-4642-1-R | D-3084 | 尿、房水、胆汁 | SCP-4642は急速に動き、拘束されるまで壁や床に繰り返し激突した。 | 被験者はSCP-4642を破壊したいという強い欲求を表明した。SCP-4642は“失敗作”であり“恥ずべきもの”だと述べられた。被験者は他人がSCP-4642を“好き”か否かを巡って軽い偏執病の症状を示した。 |
| SCP-4642-1-Y | D-2926 | 羊水、脳脊髄液、乳糜 | この実験の後、SCP-4642は6ヶ月間、再活性化することができなかった。 | 被験者はSCP-4642に対して冷静に反応したが、その後、自傷行為によって重傷を負った。以下のインタビュー抜粋を参照のこと。 |
補遺 2: インタビュー書き起こし抜粋
回答者: D-2926
質問者: デニス・クズネツォフ上席研究員
注記: D-2926は手首、胴体、ふくらはぎの裂傷、並びに歯と顎の深刻な外傷で急性の失血状態に陥り、サイト医務室に収容された。録音中を通して、D-2926の声はくぐもっているか不明瞭であった。彼の言葉は可能な範囲で書き起こされている。
クズネツォフ: では、事件の話に移ろう。1週間前、君は異常オブジェクトとの実験を行ったね?
D-2926: <不明瞭>
クズネツォフ: もっと彼をマイクに寄せてくれ。もう一度頼む。
D-2926: はい。
クズネツォフ: このオブジェクトは君の身体に絵を描いた、そうだね?
D-2926: はい。
クズネツォフ: 実験中、君は苦痛、不快感、不安を全く報告しなかったね?
D-2926: その通りです。
クズネツォフ: そして、その後も何も起こらなかった。
D-2926: いいえ。
クズネツォフ: オーケイ。実験直後にどう感じたか教えてほしい。
D-2926: どう説明したらいいでしょう? あの時の感情は - まるで <不明瞭> が役目を果たしたような気がしました。素敵だと思える点もあれば、もっと違う感じだったら良かったという点もありましたけど、全体的には出来栄えに満足しました。あの経験から何かを学べた気がします。
クズネツォフ: しかし、ストレスを感じたり、不幸せだったり、否定的な感情は無かった?
D-2926: はい。
クズネツォフ: では、今はどんな気分だ?
D-2926: 基本的には同じ気分です。多分 <不明瞭> 。
クズネツォフ: 改めて伝えておくが、嘘を吐くと罰則があるぞ、D-2926。医療報告書には、君がベッドフレームに側頭部を打ち付けて数本の臼歯を叩き出し、その歯根を鋭利に研いで、自分の胸部・腹部を切開したとある。どうやら皮膚を剥がし、ぶら下げたまま放置したらしいじゃないか。
D-2926: はい。
クズネツォフ: 両手首と両脚の傷は — 君が残りの歯で食い破ったせいで生じたものだ。当直に発見された時、君は左手首から露出した動脈を、右足首の動脈に繋ごうとしていた。更に、君は舌の一部を噛み千切り、胸部の傷口の1つに押し込んでいた。
D-2926: その通りです。
クズネツォフ: これだけの怪我を負ったのに、アノマリーは自殺願望を吹き込まなかったと言い張るのか?
D-2926: 先生、あの作品にどんな失敗があったにせよ、私に自殺願望を抱かせたりはしませんでした。それどころか、触発されたような気がしています。
クズネツォフ: 触発された? 自傷行為に?
D-2926: 新しい創造に。









