SCP-4667
評価: +11+x
TEETH.jpg

SCP-4667に関連した歯の成長、発展初期段階。

アイテム番号: SCP-4667 Level 03/4667
オブジェクトクラス: Keter 機密

ivanushka.jpg

SCP-4667。

特別収容プロトコル: SCP-4667は現時点で収容されておらず、北海またはバルト海に近い未知の地域にいると考えられています。沿岸地域や海洋動物相における異常な歯の成長の追跡が、SCP-4667の正確な所在地を特定するために行われます。

SCP-4667が発見・収容された場合には、歯が生えている生物のあらゆる集団から約100km離れた場所で、標準的なヒト型生物収容チャンバーに留置されます。生存に必要とされる食事などの措置は、事前に抜歯されたDクラス職員1名が実行する予定です。

説明: SCP-4667は発話障害を持つ26歳のソビエト系女性ヒト型実体です。SCP-4667は全無歯症1であると診断されています。脱落歯および/または代生歯を有する生物は、SCP-4667の近傍2に位置している時、歯牙変形効果の対象となります。

影響された生物の歯はゆっくりと垂直に伸長し始め、また新しい歯が自発的に骨格系から直接成長します(顎骨から始まる)。これらの新たに発達した歯も同様に伸びて、最終的に皮膚や内臓を貫通します。この効果の進行率は散発性であり、現在の理論ではSCP-4667が歯の成長率を部分的に制御できる可能性が示唆されています。

この効果は対象生物の死後も持続します。SCP-4667に影響された生物は専ら、成長した歯が生命維持に関わる臓器を突き抜けて伸びることによって死亡します — 下顎の歯が口蓋を貫通して脳に達するのが一般的な死因です。影響生物の死体がSCP-4667の存在下に放置されると、伸長した歯は集合的に曲がりながら成長し、様々な主題を描写する巨大かつ複雑な模型や彫刻を形作ります。以下はこれらの彫刻の既知の例です。

  • 有翼の女性ヒト型実体 — 子供を抱えている。ヒト男性から成長。
  • 複数のヒト型実体 — 全て外見的に衰弱しており、苦悩する姿勢を取っている。ヨーロッパコウモリのコロニーから成長。
  • より大きな有翼の女性ヒト型実体 — 他複数のヒト型実体に向かって腕を広げている。ヒト男性から成長。
  • 複数のヒト型実体 — 全て外見的に歓喜しており、食物に似たオブジェクトを手に持っている。ヒト男性から成長。
  • 複数のヒト型実体 — 全て攻撃的な姿勢を取っており、有翼のヒト型実体はこれらの攻撃的ヒト型実体集団から飛び去っている。ヒト男性から成長。
  • 女性ヒト型実体 — 他の彫刻に比べて顕著に巨大であり、精緻さを欠く。女性ヒト型実体は泣いているように見える。ヒト男性から成長。

russ.jpg

ラス・スタンフォード、1977年頃。

SCP-4667は存在こそ知られているものの、今まで財団の管理下に入ったことはありません。SCP-4667はソビエト連邦のビルキスク出身であり、元々は地元の歯科医 ヨシフ・エカテリーナによって研究されていました。SCP-4667の異常効果はその後、エカテリーナの同僚であるイギリス人のラス・スタンフォードに通知されました。

スタンフォードはGoI-0435 “イギリス歯科医共同体”The Dentist's Collective of Britainの指導者として知られる人物です。GoI-0435は本来、歯科医の労働組合として結成された組織でしたが、その努力は徐々に、異常および非異常な歯科治療技術と遺伝歯科疾患の研究へと変化しました。

SCP-4667とその異常効果について知らされたスタンフォードは、SCP-4667をイギリスにある自らの事務所へ移転させるように要請しました。スタンフォードと協力して、エカテリーナはイギリス国籍の貨物船 SSメイヴィスの乗務員を賄賂で買収し、輸送手段を手配しました。1985/10/19、メイヴィスはSCP-4667を貨物倉に閉じ込めた状態でイギリスに向かい出港しました。

この間に、全ての乗務員はSCP-4667の効果に曝されて死亡し、エカテリーナとSCP-4667は失踪しました。

以下はメイヴィスから発見された注目すべき監視映像記録です。

映像記録


ship.jpg

ソ連から出港するSSメイヴィス

主要人物:

  • ボレスラフ・コンドラット - 船長
  • カールトン・ティルダ - 一等航海士
  • ケネルム・ハイラム - 機関長
  • ウィルヘルム・カール - 二等航海士
  • セバスチャン・ウェンデル - 甲板員
  • ヨシフ・エカテリーナ - 歯科医、即席の船医






貨物倉 - 23:02

(SCP-4667は貨物倉横の小部屋の中におり、ウェンデルがこの部屋のドアの外に立っている。カールがウェンデルの傍を通りかかる。)

カール: あの女はそこで何してるんだ?

ウェンデル: (ドアの覗き窓から中を窺う。) 歩き回ってる。

カール: まだ? 何か言ったかよ?

ウェンデル: あの歯医者の話じゃ、口が利けないそうだ。どっちみち歯も生えてない。

カール: ふん。どうしてまた俺たちはこいつを運ばなきゃならねぇ?

ウェンデル: さぁね。でも見張っておく必要がある。暫く立ちっぱなしなんだ、椅子がありゃいいんだけどさ。

カール: 俺がちょっと探してみるよ。

(カールは立ち去る。ウェンデルは壁にもたれかかり、咳き込み始める。)

ウェンデル: 居心地はOKかい、お嬢さん? 必要な物とか無いかい?

(沈黙。)

ウェンデル: せめて頷くか何かしてもらえると- (咳き込む。) 助かる。

(沈黙。)

ウェンデル: その、俺はそろそろ夕食の残りを取りに行こうかと思うんだ。実はかなり腹が減ってる。

(ウェンデルは再び咳き込み始め、1本の異常に長いヒトの歯を手の中に吐き出す。ウェンデルは歯を見つめた後、窓からSCP-4667を覗き込む。)

ウェンデル: ああ、有難う。

(ウェンデルは何気ない様子で歯を口の中に戻し、大きな音を立てて噛み潰してから呑み込む。)

ウェンデル: (咳き込む。) いやいや、もういい、今はもう大丈夫。

(ウェンデルはもう1本の異常に長い歯を咳と共に吐き出す。)

ウェンデル: じゃあ、お言葉に甘えて。


船橋 - 22:59

(コンドラットが鼻歌を歌いながら船を操舵している。海図を見ている時、コンドラットの手は痙攣しているように見える。)

コンドラット: (低い呟き。) -手根管症候群め。畜生、少しは待てねぇんか?

(コンドラットが鉛筆を持ち上げた時、静かなピシリという音が聞こえる。コンドラットは突然かつ急速に後ろに身を引く。)

コンドラット: クソッ! い、痛ぇ、何が-

(コンドラットの左人差指の爪がひび割れ、外側に盛り上がっているのが見える。)

コンドラット: こりゃ何だ?

(ティルダが船橋に入ってくる。)

ティルダ: どうかしましたか、ボレスラフ?

コンドラット: 俺の指が、あぁ、いや、船を任せたぞ。俺はあの医者と話してくる。

ティルダ: えっ、な- (咳き込む。) 何があったんです?

コンドラット: 知らん、ただちょっと、行かないと… (船橋から離れるにつれて声が小さくなる。)


個室-A - 23:10

iosif.jpg

ヨシフ・エカテリーナ、1970年頃。

(エカテリーナがベッドで日記を書いている時、コンドラットが入室する。)

コンドラット: ヨシフ、だっけか?

エカテリーナ: うむDa。何かあったのかね、あー、あの娘に?

コンドラット: いや、ウェンデルが面倒を見てる。実は俺の爪がな、この- (爪を見せる。) よく分からねぇんだ。

エカテリーナ: ふむ、成程。

(エカテリーナは肩掛けカバンからペンチを取り出す。)

エカテリーナ: じっとしていろ、痛むかもしれんぞ。

(コンドラットはナイトスタンドに手を乗せ、エカテリーナは指爪の欠片を除去し始める。指爪の下に、1本の長いヒトの歯が見える。)

コンドラット: 何が- 何がどうなってる‽ そりゃ-

エカテリーナ: じっとしていろ。

(エカテリーナはコンドラットの指から強引に歯を抜き始める。コンドラットは罵倒語を叫ぶ。歯を引き抜かれた指は著しく出血し始める。)

エカテリーナ: (歯をナイトスタンドに置く。) 包帯を取ってくる。

コンドラット: 一体… (えづく。) げ、原因は一体何なんだ‽

エカテリーナ: (コンドラットの指に包帯を巻き始める。) あの娘が制御を失っている。

コンドラット: あの女の子? そ、それでアンタがここにいるのか? 何故あの子はこの船に乗ってる? 何か歯医者の-

エカテリーナ: 私は暫く前からあの娘の世話をしていた。彼女は、あー、天賦の才がある。彼女はそれを制御できるのだが、今は、あー、制御を失いつつある。

(エカテリーナは肩掛けカバンから巻尺を取り出し、歯に宛がう。)

コンドラット: さっきから何の話をしてやがるんだ?

(ハイラムが入室する。)

ハイラム: すみませ- そ、それは一体-

コンドラット: 今説明してる暇は無い、ケネルム、お前-

ハイラム: いえ、重要な話です。船の速度が速すぎます。機関室だけでは手に負えません。

コンドラット: ああん? 多分カールトンがサボってやがるんだ。煙草でも吸ってるんだろう、蹴り入れてやれ。

ハイラム: 分かりました。指のほう、どうぞお大事に。

(ハイラムが退室する。)

コンドラット: で、さっきの話はどういう事だ?

エカテリーナ: 私も詳しくは分からん。イギリスの同志ラスは私より多くの事を知っている。上陸時に彼がもっとマシな説明をするだろう。

コンドラット: じゃ、アンタが分かってる事は何だ?

エカテリーナ: 彼女は歯を育てる。それが全てだ。名前すらない。

コンドラット: 歯?

エカテリーナ: 私が抜いた歯を見てみろ。長さはどのくらいだ?

コンドラット: 32mm?

エカテリーナ: 切歯は普通22mmでなければならない。

コンドラット: (皮肉を込めて) ほう、それがこいつの変な所だってか?

エカテリーナ: 歯は今33mmになった。近頃、頻繁に舌を噛んではいないか?

コンドラット: いや、そりゃ — ウェンデルの様子を見てくる。

エカテリーナ: 行きなさい。私は残って研究しなければならない。

コンドラット: 分かった、気を付けてな。

エカテリーナ: 付けるとも。

(コンドラットが立ち去る。)


船橋 - 23:21

(ティルダと思われる姿が舵輪の前に存在する。ティルダは伸長した無数の歯に全身を囲まれており、それらの歯は船の制御盤と絡み合っている。ティルダは身動きしない。)

(ハイラムの姿が船橋に通じる廊下に見える。ティルダを見て、彼は後ずさりし始める。ハイラムはやがて気絶し、数分後、様々なパキパキという音が聞こえる。血溜まりがハイラムの身体の下に形成され始める。)


貨物倉 - 23:30

(ウェンデルは何かを噛んでいる様子だが、物を噛み潰す音は聞き取れない。)

ウェンデル: (顕著に舌足らずな声。) もっとあるかい?

(カールが入室する。)

ウェンデル: ああ、ウィル! 余った歯、持ってないか?

カール: おい、何だ? 何が起き-

ウェンデル: いや、ちょっと待った。

(ウェンデルは自らの眼窩に指2本を突き入れ、1本の伸長した歯を注意深く取り出す。)

ウェンデル: まだ何本か残ってたらしい。 (含み笑い。)

(コンドラットが入室する。ウェンデルは歯を口の中に入れて噛み続ける。)

コンドラット: ウェンデル、そいつは何だ?

カール: この野郎自分の歯を食ってやがるんだボレスラフ!

ウェンデル: (含み笑い。) 君らの料理より美味しいね。

コンドラット: 何を? ウェンデル、あの小娘-

ウェンデル: ああ、ご心配無く。まだ見張ってます。

コンドラット: いや、ウェンデル、奴のせいでお前はおかしくなってる、そんな、そんな風に目から歯が生えてきたりするはずが無ぇんだ! 気付いてるだろ、なぁ?

ウェンデル: へぇ、いつからです?

(ウェンデルの胃の中で歯の欠片が突然伸長し、彼の腹部とシャツを穿刺する。ウェンデルが倒れる。)

カール: 畜生、ウェンデル! どう-

コンドラット: か- 鍵持って来い。あの女を船外に投げ捨てる。

(カールがウェンデルから鍵を取り上げる。カールが鍵をドアに近づけた時、1本の歯が彼の人差し指先端から伸びて親指を突き刺し、カールは鍵を取り落とす。)

カール: クソッ!

(SCP-4667がドアの下から手を伸ばし、鍵を掴む。)

コンドラット: お前- (笑う。) そんな事したって鍵は開かねぇんだよ、能無しめ!


貨物倉:横の部屋 - 23:36

(SCP-4667は鍵を部屋の向こう側に投げる。SCP-4667はその後、ドアを見つめる — その間、叫び声がドアの向こうから数分間にわたって聞こえる。歯が伸びてゆく様子が覗き窓越しに見える。叫び声は約30秒後に停止する。)

(SCP-4667がドアから目線を逸らすと、外部にある歯の成長が止まる。SCP-4667は部屋の隅に移動して、顕著な凸部が生じている天井を見る。天井は亀裂音を立てながら更に下方へと膨張し始める。歯が天井の亀裂から見える — やがて天井は崩れ、ハイラムの死体が一緒に落下してくる。ハイラムの背中は歯の成長の著しい影響を受けている。天井が崩れた時点でカメラは破壊される。)


船橋 - 23:40

(燃料不足を示す標識が点滅しており、廊下には穴が開いている。SCP-4667がこの穴から、ゆっくりと上昇する伸びた歯の柱に乗って現れる。SCP-4667は柱から船橋に降り、横のドアを通ってデッキに退出する。)


デッキ - 23:41

(エカテリーナが救命ボートを用意している様子が見える。SCP-4667がデッキに現れる。)

エカテリーナ: (ロシア語) ここの余所者たちと違って、私があなたとその技巧を気に掛けているのはご存知でしょう。あなたの復権をお待ちいたします。私の奉仕が満足のゆくものであったことを願っています。

(SCP-4667は数秒間エカテリーナを見つめ続けた後、船橋に戻る。エカテリーナは数分後、慌しく救命ボートで去る。)



1985/10/21、メイヴィスはイギリスの東海岸に漂着しました。この後、スタンフォードとGoI-0435構成員の大多数が残骸の場所へ向かいました。どのようにして当時のGoI-0435がメイヴィスの所在地を知ったかは不明です。現場からはメイヴィスの乗務員全ての死体、1枚の写真、録画を継続している破損したフィルムカメラなど複数の物品が回収されました。

以下はフィルムカメラから回収された録画記録と、同じ現場で回収された写真です。

(録画者は草原を歩いている。他の様々な構成員と共に、スタンフォードの姿が横に見える。)

dentists.jpg

回収された写真。“歯科医会議、1981年、僕らは日々強くなる。”という文言が裏面に記されている。スタンフォードがテーブルの端に写っているのが分かる。

録画者: どうして彼女がここに居るって分かるんだ、ラス?

スタンフォード: 僕に昨夜そう語り掛けた。彼女は僕らに見てほしいのさ。ぐらつかないように撮り続けてくれ、他の皆もこれを見たがるだろう。

(メイヴィスが背景に見えてくる。スタンフォードは難破船に向かって走り始める。)

スタンフォード: そこに居るのかい?

(他構成員の様々な呟き声。)

スタンフォード: これが、これがその船だな? SSメイヴィス、だろう? ヨシフが買収した船だ。き、君はもう去ってしまったのか?

(この時点で、SCP-4667が船のデッキに立っているのが見える。)

スタンフォード: そこか! そうだ、イヴァデンテ、僕らは君の技巧、君の聖なる業を研究している。僕らには患者の歯の中から君の叫びが聞こえるよ。全ての者が君の贈り物を見放してはいない、全員がそうじゃない。

(SCP-4667が薄ら笑いを浮かべる。)

スタンフォード: 僕は君が言ったとおりの事をした。君-

(伸長した普通の大きさの歯だけで構成されている巨大な鳥類様の翼が1対、SCP-4667の背中から広げられる。何が翼の構造を一まとめに保っているかは不明確である。)

スタンフォード: ああ、そうとも勿論だとも、君の翼のため、だからこそだったんだね。

(GoI-0435が一斉にお辞儀をする。)

スタンフォード: 君の贈り物を明らかにしなさい、イヴァデンテ。見過ごした人々に明確にしてあげなさい。

(SCP-4667は空中に浮き上がり、イギリス本土に向かって飛ぶ。SCP-4667がフレーム外へ退出すると、GoI-0435はSCP-4667が飛び去った方角へゆっくり歩いて移動し始める。録画者はカメラを落とすが、気付いていないようである。GoI-0435が静かに歩く音が遠ざかってゆく。)

この出来事の後、全てのGoI-0435構成員は行方不明になりました。SCP-4667は未だ逃亡中です。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。