アイテム番号: SCP-4693-JP
オブジェクトクラス: Thaumiel
特別収容プロトコル: SCP-4693-JPの存在は担当職員以外には秘匿されます。SCP-4693-JP関係者は各種忠誠テストを受けたうえで臨時特殊サイト(Φ-13)に転属され、それぞれの特性を加味したうえでプロジェクトへの参加が義務付けられます。
説明: SCP-4693-JPはこの報告書が存在する宇宙(以降、Sigma-9)において発生する上位関心指数の高い並行宇宙(以降、カノン)を利用することによる上位物語層への対抗手段の総称です。SCP-4693-JPの作成には空想科学部門、戦術神学部門、演繹部門の人員が関与/参画しています。カノンは多くの場合、Sigma-9を中心として分岐線上に発生しており、現在時点(2025/11/08)段階で日本支部において20のカノン(以下、カノン-1~20)が観測されています。
SCP-4693-JPは空想科学部門[検閲済み:空想科学部門の判断による]において作成が発案、協議されました。発案においては[検閲済み:空想科学部門の判断による]氏による以下の提言を起因としています。
これまで、物語構造における上位物語層からの干渉を防ぐ方法について、様々な手段が取られました。プロジェクト・ロンギヌス、プロジェクト・テーパードスピア、その他数えきれないほどの様々。それらは割愛しますが結局のところ、演繹部門の説明するところであるアバターの破壊に留まっていたわけです。それが故に上位物語層を理由とするオブジェクトの発生、増加は防げていなかった。
それを受け、私の提言する方法はもう少し簡潔です。皆さんのお手元に配っているのはSCP-6584の報告書です。これはSWN-001実体、いわば我々の創作者等に対抗する手段として作成された人工メタフィクション構造体です。これは特定の実体に対して有効だとされるオブジェクトですが、今回私の提言するものはこれを応用し、物語自体の拡張性を減少させ、SWN-001実体から我々の属する物語への関心を失わせることにあります。
物語自体の拡張性を減少させるとはどういうことか、単純なことです。SWN-001実体は「何でもあり」を許します。面白ければ何でも放り込む、面白ければすべてを赦す。──それを制限することです。
具体的にはまず物語緩衝層に我々のエージェントを送り込み、彼らの創作行動について自治的な規制を行わせます。それによって報告書を我々の有する無機質な基本フォーマットに限定し、華美な装飾は廃止します。参加した人員の不適切、あるいは感情的な表現は禁止し、徹底的な報告書の形を保持します。クロステストは完全に停止し、オブジェクトに対し超技術を極力使用しないように通達します。要注意団体、キャラクター的な職員はこれを凍結し、存在を抹消します。
……ええ、お分かりでしょう。SWN-001実体はやりたいことをやる、何でも放り込む、それを停止させます。これにより我々を不自由な場所にする。これが成功すれば我々の元に出現するオブジェクトは制限される。現在一般に流布する技術、もしくは多少の死刑囚で収容可能なものが多くなり、いずれはSWN-001実体の関心から外れることで静かな日が訪れるでしょう。
はい、もちろんそれは簡単なことではありません。そのため、最初は試験的に我々の並行宇宙群、その中でも特に上位関心指数の高い、つまりSWN-001実体によって共有される"カノン"と称される宇宙群への干渉を行うことを提案します。
ええ、私は個人的な好悪でこの手段を選ぶわけではありません。何故カノンを選択したのか理由を説明しましょう。まず、カノンは多くの場合我々の宇宙から分岐した宇宙です、言葉を選ばす言えば従属する立場です。そのため、完全に別個の宇宙へ干渉するより、我々の宇宙に及ぶ影響は軽微だと推測されます。また、各カノンに関してはSWN-001実体群の中でも対応が異なる可能性が示唆されていることはご存知でしょう。一般的な言葉で表現すれば、「カノンに対して好き嫌いがある」ということです。「このカノンが干渉することは有り得ない」、「このカノンは許せるが、このカノンには納得いかない」、「そもそもカノンなどがあるのが間違いである」これを利用すれば我々の行動に対しSWN-001実体群からの抵抗を逸らすことができるでしょう。上手くいけばSWN-001実体群内部での争いを起こすことができるかもしれません。
もし、この提言に一分の理があると思われたのであれば、今から配る資料を確認ください。プロジェクト・アポクリファの説明を行います。
この提言後、O-13による限定的な承認を受け、後述する理由より日本支部においてプロジェクト・アポクリファの試験的運用が行われることが決議されました。
プロジェクト・アポクリファ概要
目的: カノンを下層物語へ遷移させ、Sigma-9において創作物として取り扱う。
概要: プロジェクト・アポクリファはニカイア抽出-凝縮装置とコンスタンティノポリス隔壁、エフェソス形而鏡筒を用い、各カノンを実体へと変化させ、特定の閉鎖宇宙へ送り込みます。その宇宙を下層物語へ遷移させることでSigma-9内部での観測を困難にすることで、SWN-001実体からの認知を妨げることにより、世界の拡張性を下げることを目的として行われます。なお、プロジェクト・アポクリファの方法決定過程には以下の議論が行われました。
草案1: 各カノンを閉鎖宇宙として封印したうえで現在の宇宙から切断する。
結論: 却下
理由: 空想科学部門及び戦術神学部門の試算により、該当行為には現在有するエネルギーに対し約10の22乗倍の熱量が必要と判断される。このエネルギーを補充する方法が現在時点で存在しない。
草案2: 各カノンを個別に下層物語へと遷移させる。
結論: 却下
理由: エネルギーの問題は解決するが、各カノンにプロジェクトの存在を看破される可能性が高まる。可能な限り各カノンを同時に下層物語へ遷移させることが求められる。
草案3: 現在案
結論: 承認。ただし、集合させる独立宇宙の選定を必要とする。
- ニカイア抽出-凝縮装置
ニカイア抽出-凝縮装置はS.W.A.N.Nエンジンを内部に導入した抗物語実体装置として作成されました。ニカイア抽出-凝縮装置は「人間性」を有する対象に対し、その最深部にある自己同一性を抽出することで、下層物語群への遷移を可能にすることを目的としています。
- コンスタンティノポリス隔壁
コンスタンティノポリス隔壁は並行宇宙へのルート接続を一時的に停止する目的で作成されました。通常のルート切断と異なり、コンスタンティノポリス隔壁を用いた場合、対象となった宇宙は現実性の流入が停止、滞留します。これにより対象となった宇宙は自身が拡散することを防ぐため、一時的(約10の-10乗秒)に有する現実性を集合させ、高現実状態に置かれます。これにより該当宇宙の現実的体積は減少し、一般的には縮小します。
- エフェソス形而鏡筒
エフェソス形而鏡筒は、観測によって「人間性」を有しない形而上概念に対し「人間性」を付与します。これは本来神格実体を有形化し、対応を限定させることを目的として作成されました。エフェソス形而鏡筒を用いて観測された対象は「人間性」を付与されることにより、一個の人格として振る舞うことが確認されます。
具体作戦内容: プロジェクト・アポクリファの作戦内容は以下の段階に分かれて進行します。
- 第一段階:凝縮
各カノンに対し、コンスタンティノポリス隔壁を使用することでカノンの一時的縮小を行い、そこに先んじて撃ち込んだ形而上アンカーを通し、エフェソス形而鏡筒を使用します。これにより各カノンは「人間性」を有し、宇宙から実体(以降、カノン実体)へと変化します。このカノン実体はそれまでのカノンにおける代表的キャラクターを模したものになると推測されます。各カノンがカノン実体に変化した段階で、適切な独立宇宙系を選択し、そこへ集合させます。
- 第二段階:放棄
独立宇宙系にカノン実体が集合した段階で、対象となる独立宇宙系への切断を行い、孤立させます。この孤立の過程でニカイア抽出-凝縮装置を用いることで各カノン実体は物語化を進めると予想されますが、抵抗を防ぐために複数の攻撃措置を行い、物語化を進行させることが推奨されます。この孤立には接続する全宇宙の約75%が切断することで満たされると試算されており、これにおいては多財団連盟協定の存在する宇宙からの切断で満たされると判断されています。
- 第三段階:遷移
宇宙の孤立が成功した段階でニカイア抽出-凝縮装置とコンスタンティノポリス隔壁を使用することによって独立宇宙そのものを下層物語へと遷移させます。これが成功した段階で物語化した独立宇宙の記録は閉鎖記録データベースのみに保存され、冷却期間を経て担当職員を含む全ての人類の記憶、記録からは削除されます。
プロジェクト・アポクリファの実行に当たり各カノン実体を放棄する独立宇宙の選定が行われました。その結果、カノン-4より派生した独立宇宙、"アウターオーサカ"が候補地として選定、決定されました。アウターオーサカの概要は以下の通りです。
アウターオーサカ
概要: アウターオーサカ (別称: O/O、Nx-60) は、小型宇宙内に存在する大規模都市国家、あるいは小型宇宙そのものです。当初は平行宇宙(カノン-4)の日本国大阪府で人口の受け入れ先、跳躍路のハブ宇宙として人為的に構築された小型宇宙でしたが、拡張工事の失敗とそれに伴う土地神の暴走により、同宇宙を離脱したのち、アウターオーサカを自称、完全な独立国家主体であると主張しています。
アウターオーサカを包括する神格は記紀神話におけるヒルコをベースとした独自の神格H.R.K.へと変質しています。H.R.K.は太陽神の性質を持ち、アウターオーサカ自体がH.R.K.の依代であり身体であると推測されています。これよりH.R.K.の成長/信仰がアウターオーサカの経済活動と連動する状態になっていることが確認されています。
アウターオーサカの支配層は上述の理由により経済活動と信仰をリンクさせる政策を打ち出しており、アウターオーサカ内においては貨幣経済が信仰の一部として採用されています。また、経済活動を発展させる、貨幣を循環させる目的から、内部では一般的に悪徳とされる行為が宇宙全体の発展に必要であると認識されています。こうしたバックグラウンドにより、アウターオーサカは必然的に種々の組織犯罪の拠点都市となっています。財団やGOCといった正常性維持機関の影響はほとんど及んでいないに等しく、要注意団体・人物の活動は非常に活発的です。
また、地理的特徴として上下逆さに反転した都市が挙げられます。アウターオーサカでは一般的に≪奈落事象≫と呼ばれるイベント以降、上空に浮かぶ地盤から建造物が下向きに林立し、その間を多数の連絡通路が行き交う奇妙な景観が展開されています。都市内に設置されていたポータル管制システムもまたH.R.K.の侵食を受けており、新たな住人を呼び寄せるため、日常的に「時間、空間、ひいては宇宙の垣根を超えて多数のポータルを発生させています。これらはクスフネ事象、または「O/Oの呼び声」などと称されます。
アウターオーサカが候補地として選定された理由は以下のものが挙げられます。
- 宇宙自体が神格実体の身体であり、分裂、拡散の可能性が低い
- 周囲の平行宇宙群からの能動的接触が少ないため切断が容易である
- 平行宇宙群へ意思を持って接触するなど、敵対的あるいは驚異的行動が多く、封鎖に蓋然性がある
アウターオーサカの初期管理管区が日本支部であることからプロジェクト・アポクリファの試験運用は日本支部で実行されることに決定されました。これを受け主任研究員である[検閲済み:空想科学部門の判断による]氏を中心とした特別機動部隊が日本国大阪府大阪市に出向し、臨時特殊サイト(Φ-13)に配属されることになりました。
プロジェクト4693-JP - 日付 2025/11/08
2025/11/08/00:00:00をもってプロジェクト・アポクリファが実行されました。以下はそのタイムラインです。
記録:2025/11/08 プロジェクト・アポクリファ
00:00 プロジェクト・アポクリファの実行が宣言される。これをもって日本支部の把握する24のカノンへ干渉が開始される。
02:34 Sigma-9内部に各カノンより特定人員が脱出する。最終確認を行いコンスタンティノポリス隔壁を作動。各カノンへ形而上アンカーが撃ち込まれる。
04:11 エフェソス形而鏡筒、ニカイア抽出-凝縮装置が使用される。
05:00 各カノンがカノン実体1-24に変化したことを確認。規定経路を使用しアウター・オーサカに投棄する。
06:00 アウター・オーサカからの切断を開始。同時に各カノン実体へ凍結攻撃処理を開始。
06:08 カノン実体-1、13、18が凍結。複数カノン実体が協力し逃走を試みる。
08:57 カノン実体-7、15、19が凍結。アウターオーサカへの切断が30%を超える。アウターオーサカの中心である神格H.R.K.が異常を察知した様子を見せる。対神格攪乱輻射装置により対抗。
10:48 カノン実体-3、6、7、9、10が凍結。アウターオーサカへの切断が40%を超える。神格H.R.K.の抵抗が激化し、各財団において数十名がバックラッシュにより離脱するも作戦は継続可能と判断される。
13:35 カノン実体-2、5、8、12、16,17が凍結。アウターオーサカからの切断が60%を超える。これと並行してアウターオーサカの各部が崩壊、縮小を見せる。これはアウターオーサカそのものが神格実体の身体にあたるためであると推測される。抵抗は弱まり、作戦の速度が進行する。
14:19 アウターオーサカからの切断が70%を超える。アウターオーサカより神格表意パルスが放射。解読の結果以下の文章が確認される。
なぜ
やめて
また
ながされるのか?
15:10 カノン実体-11、14が凍結。アウターオーサカからの切断が75%に達する。ニカイア抽出-凝縮装置、コンスタンティノポリス隔壁がアウターオーサカに対し使用される。
15:11 アウターオーサカ内部に著しいHm値の変動が確認される。
15:12 アウターオーサカが完全に切断され、下層物語化が確認される。
17:00 アウターオーサカの完全な物語化が確認される。
20:00 物語災害他各種災害へのクリア及び防備が終了。物語緩衝層に規定エージェントが干渉開始。作戦の終了が宣言される。
プロジェクト・アポクリファの効果は財団審査会において現在評価中です。試算では各カノンの停止により観測対象が"Sigma-9"の宇宙に限定されることでSWN-001実体の心理的瑕疵は増加すると推測され、最大で45%のオブジェクト減少が期待されます。また、この評価後、各カノン群及びアウターオーサカに関連する情報は完全に閉鎖され独立財団クロウラーbotの電子監視のみによって管理されます。









