アイテム番号: SCP-473
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-473の周囲5kmの区域への全職員の立入を禁じます。O5の許可なくこの範囲内で人体実験を行うことは禁止されています。とりわけ、この5kmの区域内で人命が失われるのは避けなければなりません。さらに20kmの距離を、2個以上の財団の戦闘部隊で常時確保する必要があります。許可なくこの区域に進入する船舶はすべて撃沈し、乗員は排除してください。このサイトに近寄りながら20kmの危険区域の外に留まっている船舶については、乗り込んでクラスA記憶処理を施した上で退去させてください。
説明: SCP-473は、難破した16世紀初頭の典型的なスペインのガレオン船です。北緯██度██分██秒、西経███度██分██秒の海底で停止しています。SCP-473は、[編集済]大学の運用する調査船が喪失したのちに財団の注意を引きました。SCP-473に近づいた捜索救難チームは、「くすくすと笑うような、助けを求めるような」異常な音声を報告しています。彼らの報告によると、音声は英語、スペイン語、そして不明な言語で発せられたとのことです。[編集済]の内部にいたエージェントは乗員と船舶が喪失したことを伝え、直ちに捜索を中断する措置をとりました。
付記: この難破船はSCP-473に指定されましたが、現在のところ異常性は難破船の貨物に起因すると推測されています。これについてのさらなる調査は現時点では推奨されていません。
接近結果: SCP-473に接近した船舶が遭遇する現象には、姿のない声(財団の職員と活動についての知識を有しているように思われます)、そして船舶の原因不明の振動と衝撃といった多少の物理障害などがあります。共通しているのは、電気障害により基本および緊急照明が動作不良を起こす点です。これにより船内は完全な暗闇に陥り、SCP-473の作り出す人を惑わせる声とともに極度の方向感覚の喪失の原因となります。区域内の職員は、すべての連絡可能な者の物理的存在を確認すること、そして発生源の確認できないいかなる声も無視することが推奨されています。(SCP-473の方向の)水中から断続的に助けを求める叫び声が聞こえることが予想されますが無視してください。小さな物体が自発的に動くのが認められましたが、作戦に混乱を来すほどではありませんでした。SCP-473の20km圏内では鋭利な物体と武器類は鍵のかかった容器に確保してください。
補遺1:
インタビュー SCP-473-b
回答者: J. ████、SCP-473を確認し音波調査した財団所属船の副船長
質問者: ヘイレン博士、SCP-473プロジェクトリーダー
序: 財団の駆逐艦████は、6kmの距離に退避し沈没する前にSCP-473の4km以内を航行していました。船からの避難は(船長を除き)成功しましたが、乗員が救助を待つ3時間のあいだに16名が死亡しました。以下は生還したうち最も階級の高いオフィサーへのインタビューです。
<記録開始、[20██/4/17]>
ヘイレン博士: 駆逐艦████はSCP-473を発見した数分後に沈没しました。船がどのように損傷を受けたのか説明していただけますか?
副船長: どのようにかはよく分からないが、何が起きたのかははっきり分かる。例の海域に近づくにつれて、あの声は大きくなっていった。甲板の下で船体にいくつか強烈な衝撃を受けているとの報告が入りはじめた。それは近づくにつれて激しくなっていった。船がわずかに振動し始め、電気機器がいくつかショートを起こした。船長はこの場所から脱出しようと、方向転換するよう命令した。しかし我々が転回した時には、すでにボルトに影響が出はじめていた。
ヘイレン博士: 説明してもらえますか?
副船長: 内壁から落ちはじめたのだ。ねじ、ボルト、忌々しい調度品の釘……。すべてが衝撃で外れ、抜けはじめた。一部のものにいたっては溶けてくっついていた。声はどんどん酷くなっていった。にもかかわらず、船を猛烈に揺らし船体全部をバラバラに分解している間も、そいつらはずっと淡々として穏やかだった。そいつらのうちひとつは、彼が私に見せることができる素晴らしいものすべてについて語っていた。他のひとつは早口でまくし立てるばかりで私には理解できなかったが、彼女は怒っているようだった。我々が聞くことができた声は全部、あるはずの体がただのひとつもなかった。どの声が乗員のものなのか奴らのものなのかわからなくなった……。何だったんだあれは。
ヘイレン博士: 貴方が█████船長を最後に見たのはいつですか?
副船長: 彼は転回命令を出し、彼が甲板の下のものを確認する間ブリッジで対処にあたるよう私に指示した。私が船を放棄する命令を出し、彼以外の全員が救命ボートに乗り込んだ後になるまで、私は彼がいないことに気付かなかった。ああ、それだけで終わっていたなら……。
我々は救命ボートを漕いで沈没する船から逃げ始めると、彼が助けを呼んでいるのが聞こえた。遥か遠くの沈没船の方からだ。彼と私は█年の間ともに任務に当たってきた。SCP-███の接収を一緒に手伝った。それは彼の声だったと私には分かる。私は彼が船の外かどこかに叩き出されたと判断した。そして救命ボートで彼を回収しに行くよう命じた。船が沈もうとしているのを見た。船が水面下に完全に沈んだとき、3、4kmは離れていたはずだ。無音だった。まるで子供の浮きが釣り糸に従って魚に引かれるようだった。乗員たちに死者が出ているようだったが、私は彼らをもっと悪い場所へ送ろうとしているのだ。
しばらくしてダニエルズが、私がいかに酷い人間かを私に対してつぶやき始めた。どうして無駄に全員を死に追いやるんだ、と。彼は、切り抜けるには救命ボートから飛び出して俺と一緒に行くしかない、と言った。救命ボートに他の者たちがいなかったら、おそらく私もそうしただろう。我々は、友人たちが背後で助けを呼んでいるのを聞きながら数時間漕ぎ続けた。
奴らは遠く離れている時でさえ、我々に囁きかけるのを止めなかった。私の友人█████は私に、今まで見た中でもっとも美しいものを見たと言った。彼は決して信心深い質ではない。にもかかわらず彼は神を見たと言っていた。神が彼に見せたものを、私にもぜひ見てほしいと。
我々は仲間を見捨てたわけじゃない。本当だ、見捨てたわけじゃ……。<記録終了>
結: █████教授および調査船████の乗員一同がSCP-473に"捕獲"されたことが確認されました。職員および民間人がSCP-473近傍で死亡するのを防ぐため、強硬な手段をとることを推奨します。今のところ、いずれのサイトにあってもDクラス職員が捕獲されることで固有の危険性が回復し急激に脅威が増すおそれがあるため、現行の場所での収容を維持してください。
付記: インタビュー対象J. ████の遺体が20██/4/24に彼の宿舎で発見されました。自殺と思われます。傍にあったメモ書きには「見捨てるべきじゃなかった」と書いてありました。認識災害の可能性があるため、SCP-473の調査は継続中です。
補遺2:
継続調査により、前述の教授█████が悲劇に見舞われた大学のSCP-473の地点への調査隊を主導していたと分かりました。彼の調査ノートは彼とともに失われたと思われますが、彼の最後に外部へ送ったEメールには調査の状況がいくらか記述されています。
20██/1/15送信
サマンサへ
君の言う通りだ。あの調査書は冗長すぎるし、どうしても私の主張を収めきることができなかった。君も知っての通り、彼は小軍隊を南へ率いエクアドルへ向かい、ついにはスーパイ1を鎮めるのを任されていた高司祭を殺害した。だがそれだけじゃない、彼は司祭の2人の娘を捕まえて先住民の個体例としてスペインに送致する準備をしていたようだ。このクズ野郎は彼女たちを戦利品(あるいはもっと酷いもの)にしようとした。いずれにせよ、船の積荷目録には彼女たちの個人的な所有物が数多く記載されていた。そのリストの中に、神そのものを表象していると私が考えているものの項目があった。こっちは真正の戦利品だ。
積荷目録にはありとあらゆる黄金と大学が欲しがりそうな工芸品が記載されていたんだ、たとえ我々がこれを見つけなかったとしても……。インカ人が死の神と本当に信じていた工芸品を持ち帰れるというのがどんなに凄いことか、君には想像もつかないだろう?
それではご機嫌よう。
███████P.S.
これは秘密にしておいてくれ。もし大学から叩き出されたらえらいことだ!