任務内容: SCP-4750の確保
担当職員: エージェント・アルンファスト・ハラルドソン、機動部隊パイ-1("シティ・スリッカーズ")
<ログ開始>
アルファ: オーケー、マイクチェック。
ウルフ: このそよ風の囁きが我が家にもあればよいのだが。
ブラヴォー: さあ、仕事だ、兄弟。こちら、ブラヴォー。
チャーリー: チャーリー。
デルタ: デルタ、問題ありません。
司令部: 全員いますね。状況は次の通りです。活動的な敵性現実改変能力者がストーン・タウンの裏通りに潜伏しており、ハラルドソンがターゲットまでの道のりを知っています。あらゆる戦闘行為は非致死的なものでなければなりません。アルファ、全員のテーザーが機能していることを確認してください。
アルファ: テーザーのチェック並びに充電・配備を完了した。アルンファスト、これまでにテーザーは使ったことは?
ウルフ: トールの射出機のことか?ああ、あるとも。
<ブラヴォーの笑い声>
ブラヴォー: トールの射出機?そりゃいい。あんた最高の言葉を思いついたな。
チャーリー: 心配するなよ、お嬢さん。
アルファ: 全員集中しろ、任務中だ。アルンファスト、俺たちはお前をウルフと呼ぶことになっている。お前はブラヴォーとチャーリーを仕立て屋まで案内する。仕立て屋の姿を確認したら、トールの射出機を抜け。デルタ、配置についているか?
デルタ: ばっちりです。メインストリートまでの射線は通っています。この道を来た奴さんを黙らせる準備は出来てますよ。
アルファ: 上出来だ、総員行動開始!
ウルフ: 何、今からだと?
アルファ: どうかしたのか、ウルフ?
ウルフ: 本当に今から彼を攻撃しなければならないのか?
司令部: 私たちは夜明け前、つまり人通りが制限されている時間帯の中で、最大限周囲が明るい時間帯に決行することにしたのです。私たちの行動が遅れるほど人通りは増えていく一方ですから。そうなれば民間人に死傷者が出る危険性が高まります。ターゲットは典型的な活動的敵性実体です。私たちが素早く行動しなかった場合、どれだけ多くの人々が皮を剥がされることになるのか分かったものではありません。任務を遅延させる理由はありますか、ウルフ?
ウルフ: 私は…いや。理由はないな。君たちを連れて行こう、ブラヴォーにチャーリー。
アルファ: それでいい。では時間を無駄にするのはこれくらいにして行くぞ。
ウルフ、ブラヴォー、チャーリーはストーン・タウンに進入する。
ウルフ: ここだ。彼の店はこの路地の突き当りにある。
チャーリー: 上出来だ。俺はここに路地の入口をまたぐようにテスラ・ゲートを設置する。お前さんのIDが入力されたならば、こいつはお前さんを守り、一方でターゲットには手痛い衝撃を与えてくれるだろう。
司令部: 細心の注意を払ってください。我々は未だターゲットがどのようにして犠牲者の皮を剥ぐのか知りません。検死解剖の結果から分かっているのは、道具を使用した痕跡は確認されなかったということだけです。まるで皮が1枚の布のように剥がれ落ちたとでもいったかのように。
<ウルフは唸っている。>
ウルフ: 1人で行かせてくれ。彼は私を知っている。何も疑わないだろう。
ブラヴォー: 俺はすぐ外にいるとするよ。あんたに何かあったら中に入る。あんたの皮を盗み取る前にターゲットを無力化することを忘れるなよ、いいかい?素早く静かにやるんだ、そうすれば俺たちは全員ここからすぐにでも立ち去れる。
<ウルフは唸り続けている。>
アルファ: お前が緊張しているのは分かった。だがそうやって唸るのは間違いなくやめたほうが良い、ウルフ。俺たち全員にお前の唸り声が聞こえている。隠密行動の妨げだ。
ウルフ: ああ。分かった。
チャーリーとデルタが配置につき、ウルフとブラヴォーは店舗に接近する。
ブラヴォー: ウルフ?あんた、またそいつをいじってるじゃないか。本当に大丈夫なのか?
ウルフ: コインは重要なんだ。彼はこれがどのような意味を持つのか知っている。
ブラヴォー: まぁ…いいだろう。気を引き締めなよ、兄弟。あんたに怪我をして欲しくはないんだ。
ブラヴォー: ウルフが店の中に入った。
<ウルフのチャンネルの音が弱まる。カサカサという音だけが聞こえる。>
アルファ: ウルフ、お前のチャンネルは正常に機能していない。これが聞こえるか確認しろ。
<ウルフのチャンネルに変化は見られない。>
ブラヴォー: あいつは中で誰かと話しているようです。あいつが何と言ってるのかは分かりません。しっかりしろ、兄弟、そいつを撃って家に帰るぞ…
<ウルフのチャンネルからはカサカサという音が聞こえ続けている。>
ブラヴォー: あいつは聞いてもいなければ、ターゲットを撃とうともしていません。突入します。
<木製のドアが開け放たれる。ブラヴォーのチャンネルからウルフの抗議が聞こえる。ゴボゴボというような悲鳴(SCP-4750のものと推測される)が聞こえる。テーザーが発射される。木製のドアが勢いよく閉まる。>
ブラヴォー: ウルフ!あんたの耳の中のそよ風の囁きを復旧させな!あんたはヤツを見つけた!どうして撃たなかったんだ?
<ウルフのチャンネルからカサカサという音がしなくなる。>
ウルフ: 私は…私たちは今から彼を追う。
アルファ: ブラヴォー、報告しろ。ターゲットには命中したのか?
ブラヴォー: 残念ながら。ヤツは奥の部屋へ逃げ込んだ。ヤツの動きは本当に年寄りの…
<チャーリーの息を呑む音と呻き声>
アルファ: チャーリー!状況!
<チャーリーのゴボゴボという声>
アルファ: ウルフ、チャーリーの状態を確認してくれ。ブラヴォーは追跡を。
ブラヴォー: ターゲットはここに引き返してきてはいません。
ウルフ: チャーリー!彼の皮膚はあそこだ!
ブラヴォー: 何だって?嘘だろう!すぐに引き返す!
アルファ: チャーリーのために出来ることはあるか?
ウルフ: 後で彼に栄誉を授けることが出来る。
ブラヴォー: ああ、神よ。チャーリー…ああ、彼は逝ってしまった。ターゲットはどうやってゲートを通過したっていうんだ?
アルファ: ゲートのところには俺が行く。ターゲットの後を追え。デルタ、人通りはどうか?
デルタ: まだまばらです、大半は店を開けている店主たちですね。待ってください!ターゲットが見えます!
アルファ: ターゲットを捉えたら撃て。ブラヴォー、ウルフ、デルタのもとへ向かえ。
デルタ: ヤツは何人かの絨毯売りのすぐ後ろにいます…いいぞ、兄弟たち、絨毯売りたちが動い…そこだ!ヤツには俺が見えている?
<デルタのチャンネルからさえずるような音に続き、濡れた毛布が落ちたような音がする。>
アルファ: デルタ!全員デルタのところへ行け!
<ブラヴォーとウルフは外階段を上る。>
ウルフ: 手遅れだった。デルタは皮を剥がされている。
ブラヴォー: なんだっていうんだ?ここは屋上だぞ!
アルファ: ターゲットはまだ遠くには行っていないはずだ。周囲の路地を確認しろ。
ウルフ: 彼を見つけた!許さんぞ、悪党め!
ブラヴォー: ちょっと待て…ああ…
アルファ: ブラヴォー?一体どうしたんだ?
<ブラヴォーが階段を駆け下りる。>
ブラヴォー: たった今ウルフが自分のシャツを引き裂いてから向こう側へ飛び出したかと思うと、自分のシャツと一緒に電源ケーブルを掴んで路地へ駈け込んだんです。
アルファ: うむ…その2つを見つけてから…
<ウルフが苦痛に絶叫を上げる>
ブラヴォー: ウルフ!
ウルフ: (SCP-4750の声で)ハァァァ…自分のシャツを!どうして自分のシャツを脱いだんだ!
ウルフ: お前に教えてやる必要は…
ウルフ: (SCP-4750の声で)わしにお前さんのコインを渡しな。
<ブラヴォーのチャンネルからテーザーの発射音が聞こえる。SCP-4750は息を吐き出すと倒れ伏す。>
ブラヴォー: ターゲット沈黙。ウルフ…神よ…
<ログ終了>
追記: SCP-4750は拘束されました。エージェント・ハラルドソンの腰部より下部の皮膚は剥がされており、エージェント・ハラルドソンはその負傷が原因となって24時間内に死亡しました。エージェント・ハラルドソンの下半身の皮膚からは、陰嚢内に入った100タンザニア・シリング硬貨が発見されました。この皮膚は保存され、調査のためにサイト-17に送られました。