SCP-4808-JP
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繁殖期のSCP-4808-JPの胞子嚢。内部には後述する単細胞性構造体が存在している。
繁殖期のSCP-4808-JPの胞子嚢。内部には後述する単細胞性構造体が存在している。

アイテム番号: SCP-4808-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 2023年に実施された大規模回収作戦以降、自然界に自生しているSCP-4808-JPは確認されていません。加えて、異常性に起因する事案の早期把握が極めて困難であるため、野生個体やその影響下の人物に対する調査は現在行われていません。第Ⅴ期のSCP-4808-JPによるものと思われる事案が発生した場合、関係者への記憶処理の後、カバーストーリー「機器のトラブルによる事故」を適用してください。

収容下のSCP-4808-JPはサイト-8152の胞子植物用特別収容セルにて栽培され、株分けを通じて常に約100株程度の状態が維持されます。一般的なイヌワラビと同様に照明、肥料、水分の供給が行われます。

収容セル内に立ち入る場合は担当研究員の許可を得た上で防護服を着用して行ってください。この際、意図しない単細胞性構造体の散布を防ぐため、男女の職員が同時に収容セル内に立ち入ることは禁止されています。

説明: SCP-4808-JPは異常性を有するイヌワラビ(Athyrium niponicum)です。外見的特徴は非異常のイヌワラビと同一ですが、生態の一部が異なり、特に繁殖手段において大きな差異があります。

以下はSCP-4808-JPの生活環のうち、通常のイヌワラビからの逸脱がみられる要素を時系列順にまとめたものです。


第Ⅰ期: 成熟期

SCP-4808-JPの成熟期は通常のイヌワラビと同様に7月から10月ごろであり、胞子嚢群が形成され始めます。しかしながら、このとき胞子嚢内部で形成される物質は通常の胞子とは異なる、不明な単細胞性構造体(以下単細胞体と表記)です。単細胞体には発芽能力が存在せず、一般的な胞子とは違い長期間の乾燥への耐性もありません。一方で、低水準ではあるものの代謝機能を有しており、外殻の一部を用いての移動も可能です。


第Ⅱ期: 侵入期

第Ⅰ期のSCP-4808-JPにヒトの男女が同時に接近した場合、それらに対して胞子嚢から単細胞体の散布が行われます。この際に散布される単細胞体の量は非異常のイヌワラビにおける胞子の散布量よりも多く、基本的に散布された単細胞体は接近者の足元付近へと付着します。ヒトに付着した単細胞体は皮膚上を移動し、体内への侵入が可能な箇所を探します。SCP-4808-JPの成熟が夏季であることもあり、多くの場合、体内への侵入は蚊などによる虫刺症を利用して行われます。

体内へと侵入した単細胞体は血流を利用して全身を移動します。この際の単細胞体はある程度の太さをもつ血管に優先的に流れる傾向があり、結果として体内における主要な動脈、静脈を循環して流れることとなります。また、単細胞体のうち脳幹付近を通過したものはそこで移動を停止し、報酬系を刺激することでドーパミンの過剰な分泌を促します。これはアドレナリンの放出へとつながり、結果として宿主に対して恋愛に類似した異常な興奮状態および異性への接触欲求を引き起こします。この際の感情の対象にはそれまでの交際関係に関わらず、単細胞体散布時に接近していた異性が優先して選ばれることが判明していますが、これはドーパミンの非日常的な分泌量による非異常の現象であると考えられています。この結果、SCP-4808-JPによる単細胞体の散布を同時に受けたヒトの男女はお互いに相手に強い好意を抱く事例がほとんどです。なお、これらの心理変化に対して対象らは「一目惚れ」などと呼ばれるような瞬間的な恋愛感情の高まりだと自認しており、異常なものであると認識することはありません。


第Ⅲ期: 分化期

脳幹に残留せずに血流に乗って体内を移動した単細胞体はやがてヒトの生殖器官へと蓄積されます。蓄積後の単細胞体は周囲環境に応じて性質を変化させます。具体的にはアンドロゲン1環境下の場合はヒトの精子様構造、エストロゲン2環境下の場合はヒトの卵子様構造へと分化します。

分化後の単細胞体は生殖器官内の細胞環境に作用することにより、通常の生理過程において生成されたヒトの生殖細胞を順次吸収、消費して自分と同質の単細胞体を生産します。この過程が進行した結果、散布からおよそ10日が経過した時点で生殖器官にて生成される生殖細胞は完全に単細胞体へと置換されます。

また、脳幹に残留した単細胞体は時間経過に伴ってドーパミンの放出量を増大させていきます。この傾向は散布から10日以上経過した際により顕著なものとなります。これにより、男女双方において対象人物への感情はより依存的なものへと変化し、恋愛関係や婚姻関係などの既存の社会的関係を無視して対象個体との接触や関係維持を最優先とする傾向が顕著になっていきます。しかしながら、これら心理変化は外部からはあくまでも非異常の範囲内の現象として捉えられる程度であり、またその過程が一般的な恋愛の流れと類似していることからも対象らによる異常性の自覚は難しく、その関与を特定するのは極めて困難です。


第Ⅳ期: 結合期

ヒトの生殖活動によって女性器内で結合した2種の単細胞体は、通常のヒトの受精卵と同様の過程を経て発達します。この結果、単細胞体は外見上ヒトの胎児と一致する形状へと成長していきます。しかしながら内部では母体から供給されるエネルギーを用い、通常のイヌワラビの胞子と同様の特徴を有する物質が生成、充塞されます。この物質の生成は妊娠からおよそ15週間ほどで停止し、その後の母体から供給されるエネルギーは外殻の拡張に用いられるとともに第Ⅴ期に備えて貯蔵されます。

単細胞体で形成された胎児は栄養の要求量が一般的な胎児と比較して著しく高く、臍帯や胎盤などの周辺組織には持続的な負荷がかかります。この結果、多くの事例においてこれらの組織には不可逆的な損傷が発生しますが、その進行は緩慢です。

また、第Ⅳ期における胎児には骨格や一部の臓器が一般的な胎児と同様に形成されます。これは肉体の安定性を高めると同時に通常の胎児との判別を困難なものとしています。

単細胞体によって形成された胎児は発育速度が通常のヒトの胎児と比較して早く、基本的には30週前後で破水が認められます。この結果、出産は多くの場合において春季に行われます。

妊娠の成立を男女問わず宿主が認知した場合、脳幹にてこれを検知した単細胞体はドーパミンの放出を停止し、オキシトシン3の放出を促すようになります。これにより双方において対象人物への興奮は減退し、代わりに安心感や庇護欲を中心とした親愛的な感情が優勢となります。また、特に母親側にはオキシトシンに加えてエンドルフィン4の放出も同様に促されるため、前述の損傷による痛みを母親が自覚する事例は稀です。なお、これらのホルモン分泌による心理変化についても対象らは従来と同様に異常性の関与を自覚せず、あくまでもパートナーおよびその間に産まれる子供に対する純粋な愛情であると認識します。


第Ⅴ期: 散逸期

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インシデント-4808-JP-2にて爆破が発生した██病院の一室。当時は収容方法が確立されておらず、偶発的な原因によって発生した。

ヒトの出産によって単細胞体由来の新生児が外気に曝露した場合、第Ⅴ期へと進行します。空気との接触によって皮膚が乾燥した新生児は、腹部と背部の皮膚の厚さの差による収縮率の相違のため、胎内と同様の屈曲姿勢へと変化した後、全身が反り返る形で破裂します。これは通常のイヌワラビにおける胞子嚢の破裂と類似した機序であり、この際のエネルギーには第Ⅳ期にて貯蔵された母体からの栄養が用いられます。この結果、迅速かつTNT火薬換算で50g〜100gほどの威力をもつ爆発が引き起こされ、新生児の体内の胞子様物質は半径20m以上の範囲へと散布されます。これは比較的小規模な爆発ではありますが、新生児の体内の骨が破砕、飛散するために被害は深刻化しやすく、特に母体に対しては骨盤の粉砕骨折や子宮の破裂などの被害が多くの場合発生します。これらは再妊娠が不可能になるほどの重大な被害ではありますが、適切な治療が行われた場合、致命傷となることはほとんどありません。

爆発によって飛散した胞子は羊水に由来する粘着性を有しており、周囲の物体に付着します。この粘着性は時間経過に伴う乾燥により弱まり、爆発から平均して3時間ほど経過したのちに胞子は地面へと落下します。この性質のため、胞子が付着した物体の移動は二次的なSCP-4808-JPの活動範囲の拡大につながると推定されています。

粘着性を失った胞子は外見上通常のイヌワラビのものと同一ですが、乾燥や温度変化に対する耐性などの環境耐性は非異常の範囲を逸脱しています。その結果、SCP-4808-JPの胞子は定着率が高く、繁殖において有利であると考えられています。一方で挙動は通常のイヌワラビと同様であり、落下地点が生育に適した環境であれば発芽し、定着します。

出産による爆発を宿主が認識した場合、生殖器および脳幹に存在する単細胞体は急速に活動を停止します。これにより双方においてオキシトシン分泌量が大幅に減少し、結果として両者には愛情的感情の極端な低下が発生します。この結果、爆破直後の対象らは胎児の死亡や母親の再妊娠の不可能化に対する強い喪失感を感じることとなります。その後の両者は関係の改善を図る場合がほとんどですが、相手との関係性などに対して認知的不協和5による強い忌避感を抱くことが多く、同時にこれは対象による自己嫌悪などにもつながる事例が確認されています。これらは関係性の消極化や恋愛対象の変化へとつながり、最終的に両者間の恋愛関係の破綻が発生する場合がほとんどです。なお、これらの心理変化は全てオキシトシン分泌量の急激な低下が起因として発生した非異常のものであることに留意してください。


第Ⅵ期: 発生期

定着後のSCP-4808-JPはやがて通常のイヌワラビのものと外見上同一の前葉体を形成します。その後、前葉体上に次世代の個体が形成され、成長に伴い前葉体から独立します。しかしながら、本来前葉体が持つ造精器および造卵器は生殖細胞の生成機能を喪失しており、結果として受精が前葉体で行われることはありません。この状態でも次世代の個体が形成される理由として、胎内における精子様単細胞体と卵子様単細胞体の結合が関与していると推察されていますが、詳細な原因は不明です。

また、通常のイヌワラビにおける前葉体の形状は受精の成功率を上げる効果があると考えられていますが、前葉体で受精が行われないSCP-4808-JPでも同様の形状が維持されている理由は判明していません。

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SCP-4808-JPの前葉体。


第Ⅵ期終了後のSCP-4808-JPは通常のイヌワラビと同様に成長し、夏季に第Ⅰ期へと移行することで生活環を一巡します。この際のSCP-4808-JPには非異常のイヌワラビと一切の差異が存在せず、判別は不可能です。

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