T -99m, 55s
«記録開始»
サイト-19/ブライト: もしもし?もしもし?応答してー!?クレフの野郎、無線までぶっ壊しやがっ…
サイト-19司令室: うわっまさか…トム?君なのか?
サイト-19/ブライト: ブライトだよ。この間抜け。
サイト-19司令室: 貴方の声が恐ろしいほどトムにそっくりでして。
サイト-19/ブライト: そうかそうかどうして君はそう思ったのかな?
[4秒間の沈黙。]
サイト-19司令室: あっ…!
サイト-19/ブライト: ご明察。心配ご無用、彼の身体は私が今までよりも有効に使ってみせるからね。まったくだらしのない。
監視司令室: 通信接続、そちらはどうなっている?通信が急に切れたのは何故だ?
サイト-19/ブライト: クレフが私を撃ち殺そうとしやがったんだ。マジでヤバくなって、引き落としの瞬間までに預金しとかないとって思った刹那だよ、撃たれてさ。まさしくブチ抜かれたね、見事だったよ。脱帽だね。
サイト-19司令室: あの、痛かったり…しないんですか?撃たれたん、ですよね?
サイト-19/ブライト: 不死とはいっても、傷を食らわない訳じゃないからね。銃撃はやっぱり痛いよ。まあどうでもいいからさ、君らで私をここから引っ張り出して貰わないといけない訳だ。ベンの奴が怒りで我を忘れちゃってさ。「ホスの戦い」に倣った、こいつを今すぐ止める方法ってのを伝授してくれてたんだけどね。何言ってるか全然分かんなかったけど!
監視司令室: 了解、彼は一体…
サイト-19司令室: え、スターウォーズ観た事無いんすか?マジで?
サイト-19/ブライト: 信じられないだろうけど、私には陳腐なSFを観るよりもやるべきことがあってね。
監視司令室: 分かったから。今それは全然重要じゃないのでね。ブライト君、今何処に居るか教えて貰えるか?
サイト-19/ブライト: 休憩室に居ます。
監視司令室: そうじゃなくて地理的な意味の…ん、何故君は今休憩室に?
サイト-19/ブライト: 私は一体どうするべきかな?皆はそれぞれアジトを構えてそこに居るんだけど。
監視司令室: 何だって?良し、最初から説明してくれ。
サイト-19/ブライト: クレフのクソ野郎が私を撃った後、誰かさんが私を新しい身体の所へ連れて行ってくれている間に、コンドラキがこの地獄に拍車をかけたんだ。まあ結局、その誰かさんが新しい体を見つけるより先に、私がその誰かさんの中に入っちゃったんだけどね。で、私が現場に戻ると、クロウがこう言ってきたんだ。居合わせた研究員の内半数がベンと結託させられて事務室の区画に立て篭もり、もう半分はクレフを支持してるって。私が思うに、そいつらの中でベンに対する嫌悪感の方がアルトへの恐怖を上回ったからじゃないかな。
サイト-19司令室: もう1時間経ってる、畜生。そっちの皆さんはどうして「蠅の王」の道筋をなぞっちまったんですか?
サイト-19/ブライト: あの連中は気がおかしくなってたね。そういえば誰かが生贄に捧げられかけてた気がするなあ。
サイト-19司令室: うわ、まるで「ジェダイの帰還」のルークですね。おっと失礼、スターウォーズを観てないと分からないネタでした。
サイト-19/ブライト: へえそうなの。
監視司令室: クロウ君と連絡は取れるのか?君たち2人は何処に?
サイト-19/ブライト: えー、うん。あいつもすぐそこに居ますよ。私たちは力学研究棟に居て、あいつが今やろうとしてるのが…っておいてめえ!
背後から:
サイト-19/クロウ: ああバレたか。
サイト-19/ブライト: こっちへ戻って来やがれこの駄犬野郎、こんなイカれた所に俺を置いていくんじゃ…
サイト-19/クロウ: あー、悪いな。これは1人用なんだ!ちゃんと戻って来てやるから。多分な!
[爆発音が聞こえ、続いて遠ざかっていくエンジン音が届く。]
監視司令室: 一体そこで何が?
サイト-19/ブライト: 奴はついに完成させたんだよ。
サイト-19司令室: 何をです?
サイト-19/ブライト: クソったれたエッグ・ウォーカーさ。
«記録終了»
後記: この直後、SCP-4852の外壁に風穴を空けるほどの爆発によって、その進行は一瞬停止した。何らかの物体がその穴から高速で飛び出し、付近の雑木林の中へ墜落した。エージェント達が発見したのは、自作のタイプ-2楕円形歩行装置の改良版に乗り、軽傷を負ったクロウ博士だった。装置の残骸から救い出され、駆け付けた救急救命士に向かって嘔吐した後、彼はサイト-19主要部内の医療施設に送還された。