SCP-4854
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ロンドン、ウェストミンスター地区の“ウィルキンスのオカルト書店”に展示されていたSCP-4854-A実例の1冊。

アイテム番号: SCP-4854

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 使用していない時、SCP-4854実例群は遺物サイト-6の環境制御図書館に保管されます。各実例を一度に10冊以上財団収容下に置くことは認められません。余剰分の実例は、最も損傷の激しいものを優先して焼却処分されます。

財団職員はアメリカ合衆国、カナダ、ヨーロッパ大陸のオカルト/秘伝的書籍の取扱店舗を監視し、SCP-4854実例を捜索します。SCP-4854実例の取得手段は職員の裁量に任されており、問題の書籍が確かにSCP-4854実例であると証明された場合は金銭的補償が行われます。店舗で販売されているその他全ての商品、特にホメオパシー療法に関する物は、非異常性であると繰り返し確認されているため、購入しないでください。

説明: SCP-4854は、H.P.ラヴクラフトやクトゥルフ神話に貢献したその他の作家の著作に見られる魔術書を基にしたと主張するオカルト理論/技術の本の総称です。これらの本には例外無く幾つかの要素で欠陥があり、しばしば全く機能しません。SCP-4854に詳述されている中で実際に機能する儀式や呪文は、それらを実行した人物に危害を及ぼすだけの結果に終わるか、或いは非異常性の精神活性成分を通して異常効果を模倣します。

SCP-4854-Aは特定のSCP-4854下位群であり、クトゥルフ神話で最も知名度の高い魔術書“ネクロノミコン”に一様に似せられています。その名称が示唆するように、SCP-4854-A実例には通常、大衆文化の理解に沿った死霊術ネクロマンシーに関連する儀式が収録されています。少なくとも20種類の異なるSCP-4854-A実例の存在が知られています。

SCP-4854-A実例は例外無く、クトゥルフ神話でネクロノミコンの著者とされている架空のアラビア人、アブドル・アルハズラット(原著ママ)が著した“アル・アジフの原本”を翻訳したものだと語られています。しかしながら、一部の版には万里の長城、メソポタミア文明、アメリカ大陸、天王星や海王星、カーマ・スートラ、カンガルー、サボテンなど、西暦8世紀頃のアラビア半島の住民には知り得ないはずの単語や概念が含まれています。

全てのSCP-4854実例の起源は、“アンコモンプレイス・ブックス”の名称で知られるメリーランド州の出版社です。オカルト研究論文の露骨な剽窃、2005年の何処かの時点における“放浪者の図書館”への短期間のアクセス、クトゥルフ神話に存在する奇跡論要素と実際のオカルト理論/実践儀式の相関性、そして小規模なカルト教団の結成を通して、アンコモンプレイス・ブックスはクトゥルフ神話に登場する魔術書の真正の複製物だと主張する書籍を少なくとも50冊製造し、アメリカ合衆国、カナダ、ヨーロッパ大陸のオカルト書籍取扱店に売却しました。

補遺: あるSCP-4854-A実例の拡張研究記録: 以下はサイト-87の奇跡論学者、キャサリン・シンクレア博士の研究メモです。シンクレア博士は1冊のSCP-4854-A実例(具体的にはSCP-4854-A12)を2ヶ月間研究することを許可され、それによる発見を記録しました。

どうにも出版社の動機が理解できない。良好なオカルト理論を掲載したお粗末な本を刷って、何が起こるかを見届ける? この本には未だに価格シールが貼ったままだ — ロンドンの“ウィルキンス”書店のもの。50ポンドだなんて! 60米ドル以上!

約400ページ、ごく普通の紙に印刷されている。2ページ目で私は既に落胆している。冒頭の論説には説得力があり、想像の及ぶ範囲を超越する恐るべき力がどのように存在するか、それらをどのように食い止めるべきか、食い止めるためにどう制御すべきかを述べている — が、その後でトリカブトに言及している。この植物はアラビア半島では育たない。

長い2ヶ月になりそうだ。

50ページ目でさらなる問題を目の当たりにした。“Xau-Tak”と“Queen of Ashes”への言及がある。架空の神だ。しかも“Runescape1からの。モンティ2は私がゲームの設定資料集を見せるまで信じなかった。こんな本が2015年以前に執筆されたはずが無い!

心の何処かで、出版社がこの時点で本物らしさを出そうと試みていたかどうかさえ疑問に思っている。

例の邪悪な本のせいで、私はこの文章を口実 口述 取り消し クソ 口述筆記ソフトウェアを介して入力してる。

29ページを開いたところ、いきなり両手のあらゆる箇所から出血したわ。モンテ — 違う、モンテに クソッ レイノルズ君によれば、ページは読者に手痛い切り傷を負わせる造りになってる。何か特殊な印刷方法かしら? 彼はこれが異常現象だとは考えていない。少なくとも、血のおかげで本の外見には割と真実味が出た。

どういうわけか30ページ目はさらに酷い。余白に カッコ 手書き カッコトジ のメモがあって、“ユルゲン・レイトナー”という署名が添えられてる。モンティはこの人物名が彼の聞くポッドキャストの登場人物だと指摘したし、メモは明らかに本の一部として印刷されてる。見栄えを気にしなさ過ぎていてむしろ感心するわ。

手は大丈夫だけど、畜生、痛い。IT部門に連絡して、このコンピュータの口述筆記ソフトウェアを修正してもらわなきゃ。

まだ口述筆記ソフトウェアを使ってるけど、使い勝手は幾らかマシになった。そして… ええと、モンティと私は開いた口が塞がらない。51ページにアノムラングanomlang3が記されている。ヴィクトリア女王の神秘カルトが発展させた、所謂“秘密文字”の亜種だと思う。多分“図書館”で学んだのでしょう。正直に言って、読むのは少し怖い。でもまぁ“オバルチン4を飲もう”程度の薄い内容だとしても驚かないけど。

オーケイ、更なる分析で、このアノムラングは正当な召喚儀式だと分かった。私たちはそれを試してみたけど… そうね、私はあれを“ショゴス”とは呼びたくない。敢えて名前を付けるなら“ショゴっちゃん”ぐらい。目玉と肉と歯を寄せ集めた、中ぐらいの大きさの塊。生きてすらいない。悪臭とビビったのとで、夕食を吐いちゃったわ。

補遺: 検死解剖結果が戻ってきた。最寄りの病院からテレポートしてきた普通の医療廃棄物。胃の1つに患者用ブレスレットが入っていたから特定できたとのこと。

まだ気分が悪い。この本は私の精神にも負担を掛けているみたい — 全うなオカルト理論を見つけ出そうと行間を睨み続けたせいか、本に関する夢を見るようになった。有り得ない角度とタコの顔があるモノリスめいた尖塔と都市。あぁぁぁぁぁ。皮肉な話。私は未だに口述筆記ソフトウェアを使ってる。

奇妙な夢だけど、そこまで奇妙ではないわね。出てくるのはクトゥルフ神話に典型的なデタラメばかりで、大して怖くない。どうにか100ページまで辿り着き、新たな真正の呪文を見つけ出した。自分自身の血液を抜き取るための呪文。全量。一気に。言うまでも無く試験してない。

キャサリン、何してるんだ?5

どういう意味?

昨夜ここでグッタリしていただろう? 自分の姿を見てみろ。食事は摂った?

私は大丈夫。

あの本はやっぱり何かおかしいよ。

あなただって私と同じ本を読んでるじゃない。私は多分、痛んだマッケンチーズのせいで食あたりを起こしただけだと思う。きっとあれのせいで機動部隊の大半は無断欠勤してるわ。

なら良いんだけど。今日は何処の研究だったっけ?

ページ… 142。炎の魔法。楽しそうね。

ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ6

ラヴクラフトの無意味な言語と混ざり合った、さらに多くの秘密文字。“いあ いあ くとぅるふ ふたぐん”。150ページから203ページまでは白紙だった。モンティに言える限りでは、何やら特殊なインクで書き込まれた不可視の文章があり、ページに血を垂らすと読めるらしい。勘弁してよね。

補遺: 血を垂らしてみた。文章は私の見る夢の中に浮かんでくる。

キャサリン、研究室にネズミがいるかい?

いえ、そうは思わないわ。どうして?

何枚かのページが噛まれたように見えるんだよ。補修担当者を呼んで、罠を仕掛けてもらおう。

即死させる罠を使わないよう伝えてちょうだい。少なくとも何匹かのネズミは、この本の儀式の生贄に必要なの。

以下のエントリのタイムスタンプは、一連の出来事が12時間以内に発生したことを示します。この間、シンクレア博士は時間感覚の延長を経験していたと考えられます。

私は都市の夢を見ている、誤った角度と有り得ない建築の都市の中にいる。部屋は宇宙の巨大さによって外よりも中の方が広い。鉢が割れて海が零れ出す。その間ずっと、夢の中で、私は目覚めていて、しかし夢を見ていて、しかし目覚めている。私は白いキツネに貪られる。それはエクスタシー。

いあ。いあ。いあ。

300ページ。もうすぐ終わり。本当に良かった。

昨日の夜、私の嘔吐物の中に紙片を見つけた。試験結果が戻ってくるまで、医療班は私の何がおかしいのか見当もつけられない。彼らは夢のことを知らない。伝えるべきかしら?

ダメ。秘密のままにしなきゃ。秘密のままにしなきゃダメ。奴の視線に苦しむのは私だけで十分。いあ。いあ。いあ。いあ。[判読不能の単語]。いあ。

ようやく顔色が良くなってきたね、キャサリン。

毒が身体から抜けたんだと思う。妙な夢を見ちゃった。私は — うあっ!

ああっ!

前回切った場所と同じだわ。クソ、この本はいったい何のつもりなの?

金庫に入れておく。さぁ、診療所に行こう。こんなに深刻な紙の切り傷を見たのは初めてだ。

[判読不能の単語] [判読不能の単語]。 いあ [判読不能の単語]! いあ ざ ぶらっく ふぁらお! [判読不能の単語] [判読不能の単語] [異常な言語が検出されました。現地機動部隊に警告中]

シンクレア博士はSCP-4854-A12を借り出した6週間後、SCP-4854-A12を消費している途中で発見されました。以前の調査で検出を免れていた有機的な精神活性物質(エルゴタミンまたは類似のアルカロイドと推定される)が本のページに混入しており、シンクレア博士に悪影響を及ぼしていたことが発覚しました。他数種類のSCP-4854-A実例からも類似の特性が発見されました。ページの化学処理でこの化合物を除去することはできず、アルカロイドが紙のパルプ化時点で既に混入していたことを示唆しています。シンクレア博士は完全な回復が見込まれています。

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