アイテム番号: SCP-4861
オブジェクトクラス: Uncontained
特別収容プロトコル: SCP-4861はまだ存在しないため、現時点では収容下にありません。GoI-2378 ("楽園パラディスス") との交渉後、可能であれば予備収容プロトコルが設けられる予定です。
説明: SCP-4861は人間の神経系に類似した実体であり、2030年11月12日にヨーロッパの都市 (詳細な場所は未だ不明) の上空に出現します。最初の出現から30秒後、SCP-4861は敵対的なサイオニック波を放出し、5 km圏内のあらゆる知的生命体を脳死させます。その後、SCP-4861はこの行動を30秒毎に無期限に繰り返します。
財団に提供された情報では、これによって計11,752名の死傷者と、部分的な壊された虚構シナリオが発生することが示されています。
SCP-4861に関する機密情報は、2100年に起源を持つ財団であるGoI-2378 ("楽園パラディスス") とのランバート和平協定の一環で財団に渡されました。両財団間の最終休戦を経て、出現前に収容プロトコルを設けられるように、SCP-4861の全機密情報の交換に関する交渉が正式に開始されました。(補遺4861-1参照)
以下は財団とGoI-2378 ("楽園パラディスス") の代表者間で行われた、SCP-4861の情報交換の条件に関する交渉の記録です。パラディススが交渉で当該記録を用いて不当な優位性を得ることを防止するため、当該記録は2030年11月12日に財団の記録から全て削除されます。
財団側の利益代表はニューマン博士とエージェント・クラウスが務め、パラディスス側はサミュエルソン大博士とファインエージェント・シーを代表に選出しました。
交渉ログ4861-1:
<ログ開始>
(ニューマン博士は記録装置を設置しており、エージェント・クラウスはドアの側で待機している。サミュエルソン大博士とファインエージェント・シーは既にテーブルに着いている。)
サミュエルソン大博士: (シーに向かって) 見えるか? 子どもの頃、ああいう記録装置を博物館で見た記憶が確かにある。
ファインエージェント・シー: とても興味深いですね。
サミュエルソン大博士: そうだね。ありがとう。
(ニューマン博士とエージェント・クラウスが椅子を引き、席に着く。)
サミュエルソン大博士: おや、ようやく終わったのかな?
ニューマン博士: (頷く) 始められますよ。
サミュエルソン大博士: 素晴らしい。それで、既にSCP-4861のファイルを読んでいるとありがたいのだがね?
エージェント・クラウス: もし読んでなかったらわざわざ貴方がたと話なんてしませんよ。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: 何だか敵意を感じるな。和平協定を忘れないように頼むよ、クラウス君。
(沈黙。)
エージェント・クラウス: 言われなくとも。
サミュエルソン大博士: 大変ありがたいね。ニューマンさんは?
ニューマン博士: 博士とお呼びください。
サミュエルソン大博士: 許してくれ。
ニューマン博士: そちらが送ったファイルにはこうあります。2030年にこのアノマリーがヨーロッパの何処かの都市の上空に出現し、1万人を殺害して — ヴェールを壊すと。
サミュエルソン大博士: 部分的にヴェールを壊すんだ。どうにか回復させようとしているが — 幾らか時間が掛かっている。
ニューマン博士: サイオニック部門は測定値に一通り目を通しました。そちらが渡した、SCP-4861が恐らく出現する日以降のものです。測定値は妥当であるそうで。
サミュエルソン大博士: 恐らくだって? 心外だな。
ニューマン博士: ううむ。我々が懸念しているのは、そちらがSCP-4861の正確な出現地点を明確にしていないことなのですが。
サミュエルソン大博士: そうだな、条件次第ではもっと情報を提供してもいいのだがね。
(沈黙。)
ニューマン博士: 条件とは……?
サミュエルソン大博士: こちらの要求を呑むことだ。
エージェント・クラウス: それで、もし我々が断ったら1万人死のうが構わないと?
サミュエルソン大博士: ふむ。我々からすると、その人たちが死んでから70年以上は経過しているな。仮に誰かが最終的にその死の責任を持つのだとしても、それは我々ではない。
ニューマン博士: もうよしなさい、クラウス。
(沈黙。)
ニューマン博士: (ため息) 要求は何ですか?
サミュエルソン大博士: そちらの管理下に2つのアノマリーがあるだろう。SCP-737とSCP-1018だ。それらのアイテムの管理を引き渡してもらいたい。
(沈黙。)
エージェント ・クラウス: おもちゃの列車と先鋭異常芸術家アナーティスト集団の迷惑アイデアか。奇妙な要求ですね。
ニューマン博士: どうしてそれらが欲しいのですか?
サミュエルソン大博士: 未来のある時点で — まあ、いつかは言わんが — その2つのアノマリーが収容違反で破壊されるんだ。先人のずさんな仕事を思い出すのは辛い。まるで子ども時代の恥ずかしい記憶のようにね。我々はそれらのアノマリーや、我々の研究でそれらから解き明かせる見込みのある秘密を守りたいのだよ、その運命から。
(沈黙。)
ニューマン博士: この件につきましてはこちらで監督者と議論を行う必要があります。ご理解ください。
ファインエージェント・シー: もちろんです。時間をかけても構いませんよ。
サミュエルソン大博士: ああ、そうだな、時間をかけても構わないさ。なんと言ってもそちらには10年あるのだから。
<ログ終了>
交渉ログ4861-2:
<ログ開始>
(関係者が全員席に着く。)
ニューマン博士: 恐れ入りますが、こちらには時間軸が同期化しているか確かめる必要があります。現在の財団時間は2020年1月7日の18時21分です。そちらは?
サミュエルソン大博士: 構わないよ。そちらと同じくらいランバート協定に徹しているのでね。現在のパラディスス時間は2100年1月7日の18時21分…… 今22分になった。
ファインエージェント ・シー: そしてこの会議後、我々は現在の財団時間に相当する適切な時間帯に帰還します。
ニューマン博士: ご丁寧にどうも。それで、そちらが送付したSCP-4861の追加資料を — ああ、追加資料の件については感謝しています — それらを一読しましたが、少々質問があります。
サミュエルソン大博士: 遠慮しないでくれ。そちらの誰もがとても困惑しているに違いないだろうから。
(沈黙。)
ニューマン博士: 分かりました。ありがとうございます。それでは — 貴方がたの話から推測するに、SCP-4861の出現はそちらにとって歴史的な出来事であるのではないでしょうか?
サミュエルソン大博士: その通りだ。
ニューマン博士: そして、その出来事はそちらの現在に重大な影響を及ぼした?
(サミュエルソン大博士が頷く。)
ニューマン博士: ならば普通に考えると、こちらにSCP-4861への準備をさせてしまっては、そちらの時間が大きく改変されるのではないでしょうか? 見る影もなくなる可能性もありますよ?
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: (笑い) ご心配感謝するよ。でもね、覚えているだろう、両財団のちょっとした小競り合いの最中にこちらを書き換えようとした時のことを。あの時のようにね、我々の意識を別の時間軸に移すのはこちらにとってそう難しいことじゃないのさ。
エージェント ・クラウス: 551人。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: 何だって?
エージェント ・クラウス: 551人。そのちょっとした小競り合いとやらの最中にそちらが殺した人数ですよ。
サミュエルソン大博士: ……そうか。そいつは気の毒だ。誰か知っている人でも?
エージェント・クラウス: (SCP-4861の写真を取り出す) 我々はそちらが送ったSCP-4861の画像を念入りに調べているところです。本物であるように見えますよ、たとえそちらが画像のほぼ全体を検閲してくれたとしてもね。
サミュエルソン大博士: 我々が星の読み取りから場所を特定させるはずがないよ、分かるだろう。
エージェント・クラウス: ではコイツが現れるのは夜なんですね?
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: あー、その……
ファインエージェント・シー: (咳払い) ニューマン博士。もう少し質問があるのでしたよね?
ニューマン博士: その通りです。ファイルの詳細によると、出現後のSCP-4861は30秒毎にサイオニック波を放出するのみ。他のものが動かさなければ元々の位置から動きもしない。他に何か知っておいた方がいいことはありますか? そもそも生きているので?
サミュエルソン大博士: 我々はそう思ってはいない — 現段階の仮説では、ソイツは何千ものサイオニック信号が適切かつ同時に衝突して生まれた突発的な副産物だということになっているよ。しかしだ、我々に言わせればそんなのは重要じゃない。そちらが重要だと考えるべきなのは、SCP-4861が何処に出現するのか、そして出現した時に被害を最小限に抑えるには何が最善なのかということさ。SCP-737とSCP-1018はいつ期待していいんだい?
(沈黙。)
ニューマン博士: その…… まだ議論中なのです。
サミュエルソン大博士: ……そうか。これだけは言っておこうか、ニューマンさん。私は時間を無駄にさせられるのが好きではない。次の会議で必ずそれらのアノマリーを持ってくるんだ、さもないと努力を費やす価値が無いと判断してしまう。2つのThaumielクラスのアノマリーにそれなりの考慮が必要であることは理解しているが —
ファインエージェント・シー: (咳)
ニューマン博士: 今何と?
サミュエルソン大博士: その — そちらには努力を費やす価値があると信じているんだ。そろそろ失礼するよ。
<ログ終了>
交渉ログ4861-3:
<ログ開始>
(関係者が全員席に着く。)
ニューマン博士: 現在の財団時間、2020年1月9日の17時53分。
サミュエルソン大博士: 現在のパラディスス時間、2100年1月9日の17時53分。737と1018は何処だい?
ニューマン博士: その話は数分後に触れますよ、サミュエルソンさん。
サミュエルソン大博士: 今何と言ったかな?
エージェント・クラウス: いいでしょう。 知っての通り、俺たちは話をしてきました。そして前回の会議の終わりで貴方が言ったことから、そちらの方で実際に何が起きてるのかを恐らく理解したんですよ。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: それは…… どういう意味だい?
ニューマン博士: そうですね、私はとても珍しいことだと思っていました。そちらの時間軸が丸々書き換えられる可能性について、貴方がたがどれほど関心を持っていなかったのかを。戦時中は満面の笑みを隠そうともしていないであろう貴方がたの姿が思い浮かびましたが、平時ではどうでしょうね? 2つのSafeクラスアノマリー相手には?
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: ……Safe?
ニューマン博士: ええ、Safeですよ。推測ですが、そもそもそちらにとってこの手のやり取りが必要になったのが2053年の情報の消失以降であり、それらのアノマリーの一部に関する正確な詳細を失っているのではないでしょうか — だから貴方がたは自分がそれらをThaumielと見なしただけで、我々が同じように見なすと思い込んだのです。
サミュエルソン大博士: (立ち上がる) ちょっと待て! ランバート協定の条項下では —
ニューマン博士: デタラメを大声で言うのは許されていないと? (笑い) おやおや、サミュエルソンさん、私はその協定を一から十まで読みましたが、幸いにも大いに許されていましたよ。ですので、私の考えを言わせてくださいね。
(沈黙。サミュエルソン大博士が席に着く。)
ニューマン博士: 誠にありがとうございます。それで、そちらの時間では、とあるアノマリーが貴方がたを脅かしていた — それか少なくとも、貴方がたのプライドを傷つけた。そして理由はともかく、その収容に必要なのが動くおもちゃの列車と屋内に雨を降らせる彫像だった。正直に言うと、そのアノマリーはそちらがずっと閉じ込めようとしている不気味な物には違いないでしょうが、そのアノマリーが何であるかの詳細にはあまり興味はありません。どのみちいずれ分かることです。
サミュエルソン大博士: 君の…… 君の提案する理論は興味深いね。だが結局のところ、それは我々がそれらのアノマリーを必要とする理由とは無関係だ。
ニューマン博士: 最後まで言わせてください。そのような状況にあったとしても、そのアノマリーを閉じ込めるために世界が丸ごと改変されるリスクを冒すというのは、私には到底考えられません。ですが、そちらの組織の現状は — えー、そもそもそちらが我々を攻撃するようになった問題は — 壊された虚構シナリオの結果なのでしょう。貴方がたは自らをより強力なものとするべくそれを取り消したがっている。もしかすると、今の貴方がたは何者かと戦うには力不足であるのかもしれませんね。自分の組織の弱体化版を除いては。
(沈黙。)
ニューマン博士: サミュエルソンさん?
(沈黙。)
ニューマン博士: 大丈夫ですか? 何も仰らないようですが。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: (静かに) 何が望みだ?
エージェント・クラウス: そちらが欲しい物をあげる準備が整いましたよ。SCP-737とSCP-1018をね。
サミュエルソン大博士: 準備が…… 整った?
ニューマン博士: ええ。
サミュエルソン大博士: おやおや、そうかい。それで何処にあるんだい? 交換開始といこうじゃないか!
ニューマン博士: いえ、それが問題なのですよ。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: どういう意味だ?
ニューマン博士: それらはここには無いのです。何処にあるのかも知りません。
サミュエルソン大博士: 収容違反か?!
ニューマン博士: (笑い) いえいえ、とんでもない! こちらがとても几帳面なだけですよ。つまりですね、それらのアノマリーを渡すには別の方法が最善だと判断したのです — ですので我々はそれらを自動収容チャンバーに移し、ドローンに監視させ、それらのチャンバーの場所を我々の記録から全て消去しました — 記憶も含めてね。財団全体の中で、SCP-737の場所を知っているのは私ともう一人しかいません。そしてSCP-1018の場所を知っているのはそのもう一人だけです。
サミュエルソン大博士: なら交換はいつ行われるんだ?!
ニューマン博士: 大体80年後かそこらでしょう。すなわち、こうです — これから私がSCP-737の座標を貴方がたに教えます。その後で故郷にいるご友人にそれを探り出すよう告げても構いません。次に、貴方がたがSCP-4861に関して我々が求めているデータを渡します。2030年に収容に成功したら、そちらにSCP-1018の座標を教えましょう。
(沈黙。)
ファインエージェント・シー: 我々にあと10年待ってほしいと?
ニューマン博士: 当然違います。この件において、O5評議会はランバート協定の関連条項の一時停止に同意しました。今から5分後に、それらのアノマリーの座標を貴方がたに送信する権限が我々に与えられます。こちらにとっては10年ですが、そちらにはコーヒーを淹れる暇はあるでしょう。
ファインエージェント・シー: 分かりました。異存ありません。
(サミュエルソン大博士がファインエージェント・シーに向き直る。)
サミュエルソン大博士: シー、お前は完全に無茶苦茶だ — 正真正銘の無茶苦茶な奴だということだ、それにしたってな!
ファインエージェント・シー: 管理評議会はこの状況の解決を望んでいるのですよ、サミュエルソン。貴方のウイニングランには退屈しているところなんです。
ニューマン博士: ありがとうございます。それでは座標を送信しましょう。検索が確認されるまでお待ちを。
[無関係なデータは除去済]
サミュエルソン大博士: 信じられん……
(ファインエージェント・シーが室外から戻ってくる。)
ファインエージェント・シー: 確認しました。貴方が教えた座標で737を発見しました。こちらもSCP-4861のデータを送信しています。
ニューマン博士: 感謝いたします。
サミュエルソン大博士: 1018はどうなんだ? そのもう一人の奴もソイツの場所を伝えてくれるとは限らないじゃないか!
ニューマン博士: 心配ご無用。SCP-4861を捕らえた後でエージェント・クラウスが必ず忘れずに伝えるでしょう。
(沈黙。)
サミュエルソン大博士: 何てこった。
エージェント・クラウス: もちろん、必ずそうしますよ。(ため息) ただ問題がありましてね、O5評議会から言付かっているんですよ。お前は当面目まぐるしく予定が詰まっているし、あちこち飛び回ってもらうことになるぞってね。分かるでしょう? それでまあ、これは言うまでもないでしょうが、俺たちは同業者です — この職種は危険なんですよ。将来に何が起こるか分からないんですよねえ。
(エージェント・クラウスが身を乗り出し、満面の笑みを浮かべる。)
エージェント・クラウス: 何か俺が知っておくべきことはありますか?
<ログ終了>
2030年11月12日 19:23:06にフランス、リヨン上空に出現した直後のSCP-4861を、死傷者を出さずに収容するためには、以下の行動が取られなければなりません。この収容プロトコルの実行は、ヴェールの完全性ならびに現状の財団の継続的な運営に不可欠であると見なされています。
- 19:15: 財団所有の航空機がリヨン・サン=テグジュペリ空港から離陸します。この航空機は学習コンピュータ ゼータ-4 ("マクフライ") が遠隔操縦し、貨物倉にはSCP-4861の一時的な格納に適したサイズの収容チャンバーを備え付けます。この航空機に人間の乗組員が搭乗してはなりません。
- 19:20: 学習コンピュータ ゼータ-4が航空交通管制に臨時の技術的困難を報告し、事前に承認された飛行経路から航空機の経路を僅かにそらします。
- 19:23:06: 収容チャンバー内にSCP-4861が直接出現するように、その出現座標を航空機に通過させます。
- 19:23:07: アノマリーを取得した直後、学習コンピュータ ゼータ-4が航空機を操縦して高度を上昇させ、SCP-4861が30秒後に放出するサイオニック波をいかなる民間人とも接触させないようにします。
- 19:23:37: 安全域が保証され次第、学習コンピュータ ゼータ-4が所定の飛行経路に沿って南極大陸の収容サイト-94に移動させます。移動の際には、30秒毎に放出される後続のサイオニック波に人間を接触させないようにします。
- 02:23: 学習コンピュータ ゼータ-4が収容サイト-94に着陸させます。当該サイトは、収容ドローンが職員として勤務する、SCP-4861を格納するために特別に設計された施設です。SCP-4861をこの施設に輸送した時点で、任務は成功したものと見なされます。
- 03:00: パラディススとの交渉における条件に従い、SCP-1018の現在地の座標が代表者に提供されます。この時点におけるパラディススとの関係状態によっては、当該手順は不必要となります。