クレジット
タイトル: SCP-4871-JP - 洗脳様
著者: signalism
作成年: 2025
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安瀬紬研究員を捜しています。
当該人物は行方不明者捜索会により、アノマリー関連重要行方不明者に指定されています。
行方不明者捜索会の概要: 当会はアノマリーの影響などにより、行方不明となった財団職員を捜索する機関です。柿下英治氏、喜多川陽子氏、来島重信氏、建藤匠海氏、甲田洋二氏の発起により、結成されました。
当会はSCP財団内の組織であり、部門等はあまり関係ありません。しかし、皆様の協力により救われる人々が存在することを念頭に置いていただけると助かります。
現在、23名が発見、11名が行方不明の状態です。
安瀬紬研究員の詳細
安瀬紬研究員(要注意団体への情報漏洩防止の為、似顔絵)
特徴
名前: 安瀬紬
年齢: 27歳 (現在35歳)
性別: 女性
詳細: 福岡県のサイト-81WAにて勤務していた女性の研究員です。一時期エージェントとしても勤務していたため、体躯は少し筋肉質であり、左目の目尻付近にほくろがあります。血液型はB型です。
誘拐事件発生後、石川花音氏(PoI-4871-JP-2)が映されている監視カメラを回収しています。後述の事案により、石川花音氏を重要参考人として行方を追跡しています。
石川花音氏の詳細
石川花音氏
名前: 石川花音
年齢: 26歳 (現在34歳)
性別: 女性
詳細: 眼球の破損している右目を前髪で覆い隠しています。身長は小柄であり、体躯はかなり薄いです。また、精神的にもやや幼稚である事が確認されており、敬語を用いません。また、SCP-4871-JPを所持していると推測されており、PoI-4871-JP-2としても登録されています。血液型はO型です。
事件詳細
平成29年(2017年)12月28日(木)に、安瀬紬研究員が石川花音氏によって誘拐される事件が発生しました。
以下は、安瀬紬研究員の誘拐当日のタイムテーブルです。
7:30〜12:00: 勤務。
12:00〜12:25: エージェント・浮田と会話。
12:30: 旧友の佐川研究員に昼食を誘われるも、断る。
12:35: 外出。
12:50: 誘拐地点に到着。
13:00: 石川花音氏と合流し、付近の飲食店に入店。
13:30: 石川花音氏に連れられ、誘拐地点にて車に乗車する。
15:40: 百貨店の監視カメラに、石川花音氏と共に映る。安瀬紬研究員は買い物したと思われるビニール袋を所持している。この際、スマートフォンを故意に落下させている。
以降の記録が判明していません。
誘拐地点(正面から)
誘拐地点(右方面から)
誘拐地点(左方面から)
また、安瀬紬研究員と石川花音氏の肉体差から、安瀬紬研究員が無抵抗で誘拐されたとは考えられにくく、SCP-4871-JPの関与が疑われています。更に、安瀬紬研究員はSCP-4871-JPに関する知識を保持していた為、第三の関係者がいる事も推測されています。
安瀬紬研究員を目撃していませんか?
回収資料から、安瀬紬研究員と石川花音氏が以前から数回ほど出会っていた可能性が示唆されています。
貴方の行きつけの喫茶店で見かけませんでしたか?
貴方が仕事休憩の合間に入ったコンビニで姿を見かけませんでしたか?
落下したスマートフォンに記録された、誘拐後の画像
上記の写真で記録された場所に、見覚えはありませんか?
この写真は安瀬紬研究員が故意に落下させたスマートフォンに記録されている場所です。SCP-4871-JP及び安瀬紬研究員の発見に最も重大な進展に繋がります。
貴方の連絡がSCP-4871-JP及び安瀬紬研究員の発見に繋がります。
捜査進捗
奈良県奈良市のファミリーマート猿沢池店にて、黒色のUSBメモリが発見されました。USBメモリ内部の動画から、SCP-4871-JPを使用している石川花音氏と安瀬紬研究員が記録されていました。
現在、USBメモリを設置した石川花音氏の詳細、及び石川花音氏による下記地点以降のルートを追っています。
設置地点(遠景) 赤い丸が設置地点。
設置地点(近景)
石川花音氏を見失った地点付近のマンション
石川花音氏を最後に記録した監視カメラ
安瀬紬研究員と石川花音氏は通常の捜査方法によって発見する事が不可能と推定されています。
勿論、行方不明者捜索会は全力をもって、安瀬紬研究員を搜索しています。しかし、安瀬紬研究員による妨害工作により、現在に至るまで、多くの手法による発見手段は全て乏しい結果に終わっています。
SCP-4871-JPについて
下記を参照してください。
特別定義: オブジェクトの存在及び所有者は確認できていますが、行方が判明していません。
特別収容プロトコル: SCP-4871-JPは現在、間接的に存在が確認されている状況です。現在は、石川花音氏(PoI-4871-JP-2)の捜索が継続されています。
SCP-4871-JP
説明: SCP-4871-JPは、女性を従属化させる聖観音像です。素材は木材であり、サイズは40cm程度と推測されています。
下記の手順を用いることで、女性は実行者に従属します。
- SCP-4871-JPを手順終了まで女性に視認させる
- 実行者が跪く
- 実行者が10秒程度沈黙する
- 要求を述べる
実行者による従属状態の解放を希望する事で、女性は従属状態から解放されます。また、他にも複数の解放条件を有すると推測されています。
更に、女性は従属中にも嫌悪感や抵抗感などの意識を有します。しかしこの報告は1例のみであり、現在は、
- 催眠回数につれ、忘却効果が薄れる
- 催眠時間に反比例して意識を有し始める
の2つの仮説が有力視されています。
SCP-4871-JPは、複数人に対して使用できる事が分かっています。実際に、PoI-4871-JP-1(以降、''大西竹二氏''と呼称)は約500名の女性に最低15回以上使用していたと確認されています。
大西竹二氏が対象として使用した、約500名の女性が誰も通報しなかった原因として、SCP-4871-JPはY-9091と同様の効果を有している、と仮定されています。
また、SCP-4871-JPは破壊耐性を有していたものの、製造から1300年以上の経過により、破壊耐性が劣化していると推測されています。
発見経緯: 2001年に、福岡県北九州市にて当時10歳の石川花音氏を誘拐・監禁した事件が発生しました。その後、2017年に当事件を不審に考えた財団職員により発見されました。当事件のより詳細な情報は大西竹二氏の陳述書全文を閲覧して下さい。
補遺1: 下記は、財団がSCP-4871-JPの確保作戦に至るまでの経過です。
録画記録-1
下記は、財団製の監視カメラ2台に、偶然記録されていた大西竹二氏が石川花音氏を誘拐した際の音声録画記録を編集したものです。当初は非異常の誘拐監禁事件と判断され、財団の管轄外でした。
<録画開始>
大西竹二: お嬢ちゃん。これ、君のハンカチかい?
石川花音: 違うよ。おじちゃん誰?
大西竹二: おじちゃんは正岡って言うんだ。これから、このハンカチを警察の人に持っていくんだけど、一緒についてきてくれるかい?
石川花音: 嫌だよ。なんで一緒に行かないといけないの?
大西竹二: 実はね、落とし物って、半年間拾い主が現れないと見つけた人の物になるんだ。だからね、他人から引ったくった物を落とし物として持っていった後、半年後に合法的に自分の物にする人がいっぱい出てきちゃったんだ。だからおじちゃんがこのまま持っていくと、逮捕されるかもしれないんだよ。
石川花音: そうなの?
大西竹二: うん。だからね、おじちゃんを助ける為だと思って、一緒に交番に付いてきてくれるかい? お嬢ちゃ…[大西竹二氏が名札を覗き見る]花音ちゃん。
石川花音: うん。分かった。
[二人が、大西氏の車に乗り込む]
大西竹二: おや。ガソリンが足りないね。[ポケットを叩く音]花音ちゃん、財布が無いからガソリンスタンドに寄れないや。家に向かっても良いかい?
石川花音: うん。良いよ。
大西竹二: ありがとうね。
[二人が大西氏の住むマンションに到着する。大西氏がマンションに入って約二十分後、再び大西氏が車に向かう]
大西竹二: 花音ちゃん。ごめんね、財布が見つからなくて。一緒に協力してくれないかな?
石川花音: うん。良いよ。
<録画終了>
後記: その後、大西竹二氏はSCP-4871-JPを使用したと考えられていました。
約3時間後、石川花音氏の両親から「娘がまだ帰らない」という通報を受け、警察が捜査を行いました。しかし、石川花音氏の特定に繋がる情報は見つかりませんでした。
石川花音氏の誘拐地点付近
2017年に当該記録は破棄する事が決定されました。理由として、財団が介入する必要性は極めて薄いことや、当該事件の記録保存による容量の圧迫からでした。
しかし安瀬研究員によって、SCP-4871-JPの関与が判明、大西竹二氏をPoI-4871-JP-1として登録しました。
音声記録-2
下記は、安瀬研究員と須田上席研究員による音声記録です。
<録音開始>
安瀬研究員: なんですか? こんな白木のテーブルのある寿司屋に連れてきて。値段表もありませんし。
須田上席研究員: いやほら、いつもお世話になってるじゃんか。お礼っていうかさ、最近忙しそうだし、そういうのが必要かな、っていう。今日も朝昼は軽食だったじゃん。
安瀬研究員: ではまあ、いただきますが。[寿司を食べる]えっすご、こんなに脂乗って、旨みも詰まって…笑いましたね?
須田上席研究員: いや、何でもないって。ほら、じゃんじゃん食べなよ。
安瀬研究員: [溜め息]良いですよ。さっさと話してください。憂いながら食べるご飯は不味いので。
須田上席研究員: ああ、じゃあ早速話すけど、北九州誘拐事件のビデオって知ってる?
安瀬研究員: はい、知ってますよ。一時期とても話題になったそうじゃないですか。ここまではっきり録られた犯罪記録はないとかで。私はまだ勤務してなかったので知りませんけれど。
須田上席研究員: じゃあ話は早いね。あれさ、俺散々研究したけど、詳細な情報も、成果も無くて、異常性無かったです、って提出したのよ。
安瀬研究員: それも知ってます。なんですか、偶然置いてあった仏像が実存未確定文書2にあったとかですか?
須田上席研究員: 話早いねー。そうそう、そうなんよ。なんかね、仏像がまだ怪しいとかで。
安瀬研究員: 何回聞いたと思ってるんですか。それよりも、須田さんが調べたなら、異常性は無かったのではないですか?
須田上席研究員: いや、仏像に関しては完全に調べきれてないんだよね。で、16年以上経過した誘拐事件は少ないから、また不審になって来てるんだよ。
安瀬研究員: 拉致の可能性を排除出来ない事案も含め、約30件以上存在しますよね。ちなみに、録音資料って調べてます?
須田上席研究員: 調べたんだけどね…。ああ、いや。完全には出来てないかな。
安瀬研究員: 何やってるんですか?
須田上席研究員: いや、もう1台見ようとした時に、複数件収容違反起きてね。今と違って、そこまで収容体制も完全に整備されてなかったし。で、事案が終わる頃には異常性の有無を判断しないといけなくて、上にどやされたから、推測でね。
安瀬研究員: 代わりにやれ、ってことですか? ああ、いえ。私の何倍も多忙なのはわかってます。そんな懇願しなくて良いですって。分かりましたよ。やりますって。
須田上席研究員: いや本当、ごめんね。時間あれば調べようと思ってたんだけど。
<録音終了>
2025年
2017年
下記は、安瀬研究員により発見された、実存未確定文書です。可読性の為、現代語訳されていること、虚偽が含まれている可能性に注意して下さい。
観音様蒐集物覚書帳目録第四八七一番
七七〇年捕捉。 研儀官藤原永手3により発見。「観音様」は女を一時的に従属させる効果を持つ。
儀式手順の閲覧は朝廷の許可が必須である。また、皇諸逸脱の傾向が見られた際は如何なる状況に関係なく、儀式手順の公開と使用許可が発令される。
宇佐八幡宮にて、習宜阿曾麻呂の使用が事案の始である。
習宜阿曾麻呂が「道鏡のみ治せぬ病の罹患」を行うよう、称徳天皇に発動。一般的な病であったものの、汎ゆる妖術や仙術、薬を用いようと治癒する事は無かった。
また、神託と偽り、「道鏡に皇位を継承すること」を行うよう、称徳天皇に発動。これは、和気清麻呂と和気広虫により阻止された。
道鏡氏
ここで、道鏡の詳細を話す。道鏡は弓削家の長兄であったものの、弟の浄人が優秀であった為か、地方豪族の身でありながら、大学寮の退学を命じられた。
路豊永は後年、道鏡を「才能は皆無だが、誰よりも背中を追いかけていた。不諦が才能だったのなら、最も報われない者であろう」と指摘している。実際、大学寮では一番勉学に励み、色恋沙汰に振り切る事なども無かった。だが、毎度の如く彼は落第の印を押されていた。
その後、道鏡は若隠居を行っていたようである。隠居時代は語る事が少ないが、浄人が従八位上に就いたと拝聴した際、飯も食えぬ程の衝撃を受けたようである。4
父母の死から、穀潰しの自分が疎まれていると悟った道鏡は、弓削家による暗殺から逃れるべく、逃走した。そこから、出家までは判明していない。
現在、道鏡の思念により「観音様」が誕生したと考え、調査を継続している。
七七一年捕捉。 偶然にも、下野薬師寺に左遷後の道鏡の話を筆記することが出来たため、ここに記す。
出家まで、ですか。いえ、包み隠さず話します。ご覧の通り、私はもう伽藍堂の身です。(下野薬師寺を指し示す)
どこから話しましょうか。成る程、分かりました。まず、私はろくでなしでありました。弟に家督は譲る、と聞いた時にとっとと出家していれば良かったのです。
弓削家から逃げた私は、山賊をやっておりました。河内国の弓削から、少し離れた所に、関所が無いにも関わらず、かなり人通りの多い──今思えば、夜逃げする夫婦や無一文で逃げる農民が多かった気がします──道がありましたので、そこで刀を持ち、着物や金を奪っておりました。
気づけば、何人もの部下を召し抱えていました。いやはや、農民が頭を下げるのです、「俺は何も持たねえ、アンタの言う事なら何でも聞く。どうか、部下にしてくれ」と。これは私の始めての部下である乃助の言葉ですね。私はここまで頼まれるともう駄目で、断れませんでした。今思えば、この性分が災厄を引き起こしたのでしょう。
ある時、異変が起きました。多くの部下が倒れました。牧介──末端の部下です──も倒れました。さらに、私は牧介と忠義を果たすため、酒を交換しておりました。
騒然となりました。誰だ! 誰が酒に毒を入れた! と。私は叫びました。今でも、悪鬼の如き発想でした。「誰が毒を盛ったか、貴様らで決めろ。そして、指定された者は自分の酒を飲め。死んだら、無実だ。生きていたら殺す。これでわかる筈だ」と。
まず、以蔵──八人目の部下で、腹黒いと言われていました──が飲み、死にました。由柴──十三人目の部下で、嫌味を言っておりました──が喚き散らしましたが、無理やり飲ませ、死にました。何人も何人も飲みました。
尽く死に、八人程になった時でしょうか。もしかしたら集団で計画したのではないか、私を殺す為に、毒を盛ったのではないか。その時口から、「分かったぞ。お前らが私を殺そうとしたのだな。到底許せぬ。皆、私が殺してやろう」そう叫び、一番近くにいた部下を殺していました。腕も口も、私であるという実感すらありませんでした。あったのは、激昂しているという意識と、首を斬った際の感覚のみです。
部下は、私に刀を抜きました。それにさらに激昂し、気付けば皆殺しにしておりました。軽傷はありましたが、私も地方豪族の端くれです。乃助以外容易く殺しました。あいつは、刀の才に優れていたのです。本気で立ち向かっていれば、私は死んだでしょう。あいつはただ笑い、「満足した」と言って、私の酒を飲み、死にました。あいつが犯人なのかは分かりません。乃助の酒を私は飲みませんでしたから。
(永手が山の精による気まぐれで、酒が毒になることがあり、それを防ぐために、山で酒を飲む際は、薬草を入れる事があると話す)
そうですか。(道鏡が少し上を向き、目を瞑る)すいません。私は、骸の前で泣きました。ここにも私の居場所が無いのだ、と。絶叫し、山を駆けました。金を奪い、金のないやつは殺すのです。(笑う)私は、業魔へと成り果てたのです。
ある日の事です。僧侶が歩いておりました。殺す。漠然と思いました。なぜ殺すのか、今でも分かりません。刀を抜きました。目を見開き、忍び足で近づき、隙だらけの後方に立ちました。刀を振り上げ、猿叫しました。その時です。「喝!」強く聞こえました。刀を振り落としました。
「お前は魍魎だ」開口一番、そう放ちました。面食らってる私を、僧侶は思いっきり殴りました。「黙れ。殺す。殺す。殺す」そう叫んだ時、「無慚無愧を望み、懺悔を行え!」と僧侶が叫び、何かが抜け落ちました。
僧侶は、義淵と名乗られました。私はこの方に一生を尽くそう、そう思いました。いえ、過言ではないです。そう思いました。頭を下げました。出家させて下さい、そう呟いて居ました。
それから、龍蓋寺にて行基様や良弁和尚のもとで修行に励みました。無論、末端の末端でした。私は出家する事に励み、数十年後出家しました。
ある時、行基様が民を救う事が最良である、と言い放ちあの方は出ていかれました。あの方は、あの大きな仏像を作られた。私は嬉しかったです。どうか、あれが永劫残存する事がせめてもの願いです。すいません、関係ない事を話し過ぎました。
(永手が再び話を聞いても良いか、と聞く。)
ええ、構いません。協力致します。
行基の思想に影響してか、道鏡は良弁と共に、東大寺建立に立ち会っている。だが、龍蓋寺に訪れてから、出家までかなり長い間を省いていた為、再び道鏡に話を聞いた。
龍蓋寺に訪れてから、ですか。義淵和尚は私が会った直後、床に伏されました。
ある日の事です。床に伏していた義淵和尚が「道鏡。来い」と言い、私は義淵和尚の元へ参りました。その時、義淵和尚が私にこう語りかけました。「お前は、日本を揺るがす悪人となるだろう。だが、貴様はこうなっては、何者も調伏できぬ魍魎となる。善く生き続けよ。痴態を晒してもなお、善く生き続けるのだ」と。首肯すると、義淵和尚は満足そうに微笑み、死にました。
そこから、私は悩みました。和尚に、日本を揺るがす悪人になる、と言われたのです。今となっては、十二分にわかりますが、あの時はいっそ、悪人になる前に死のうと思いました。ですが、和尚の言葉を支えに何とか生き続けました。
東大寺建立後、私は漸く僧侶となりました。阿羅尼真言を暗誦し、めっぽう努力致しました。さすれば、良弁和尚がその努力を認めて下さり、葛城山にて禅の機会も得られました。俄には信じ難いと思われますが、私は荘子の無の思想を強く信奉し、無を探求しておりました。
(永手が、称徳天皇の寵愛、及びそれ以降も詳しく話せるか尋ねる。)
構いません。私はあの時、保良宮におりました。少し体調を崩していて、休養していたのです。その時、東大寺建立の際に親しくなった習宜阿曾麻呂に孝謙上皇を治療しに行け、と言われました。
面食らいました。私など、あの時は僧侶の道半ばでした。天皇の謁見も許されぬ立場の者が、上皇を治療するなど言語道断です。しかし、習宜阿曾麻呂は「お前は人を救う力がある」と言い放ち、何度も懇願された私はとうとう、ご存知のように病を治し、召し抱えられました。
(永手が、それが「観音様」である、と話す。)
なるほど。あれがですか。私が保管しております。勝福寺の──
(永手が、二度目の使用状況を先に語るように言う。)
分かりました。これには、法王の地位が関連するので、そこからお話致します。恵美押勝の乱が気付けば終わり、私の元に基真と言う人物が転がって来ました。基真はとにかくゴマすりの上手い僧侶でした。私はあいつの習性にまんまとやられたのです。
その乱による影響で淳仁天皇は廃され、称徳天皇が即位して数日後でしょうか。太政大臣になるように任ぜられました。すかさず断りました。あの時、少僧都、いえ、出世していたので大僧都でしょうか。その役職ですら、力不足を感じていたのです。私は、高官の俗務は煩悩の元である、と辞退しました。
後日、任命の催促がやって参りました。幾度も来る催促に私は応じてしまいました。私のような身分が、天皇に何度も催促を煩わせた以上応じなければならない、という認識でした。
神護景雲二年の事です。基真が仏舎利──五重塔の屋根についているものです──が出たと宣いました。無論これは嘘ですが、称徳天皇は私を法王に任じました。この時、私は俗世に飲まれる覚悟をしておりました。
その後、とある陰謀が渦巻きました。私が、天皇の座を狙っている、と。断りを入れますが、そのような事はありません。そして、宇佐八幡宮神託事件が発生したのです。
覚えております。習宜阿曾麻呂が突如、天皇に謁見させてくれ、と話しました。私は、彼のおかげでつけた地位ですので、全く構わないと言い、謁見させたのです。奇妙でした。跪いた習宜阿曾麻呂と石像を持った巫女。何を始める気だ、と考えていると、こう言い放ちました。「次期天皇は道鏡である、と神託が出た」と。呆然としました。狂気を感じました。そして、怒りが起こりました。
何を言ってるんだ、貴様は! そう声を荒げようと口を大きく開けたその時です。称徳天皇は微笑み、首肯しました。何故かなど、分かりません。分かりたくもありません。そこからは、良いでしょう。第二の神託で、私は虚構を暴かれ、今はこの身です。
(永手が、何故宇佐八幡宮は神道にも関わらず、仏像を出したのか、尋ねる。)
はっきり申し上げますが、宇佐八幡宮は伊勢神宮等とは違い、欲にまみれた神官共がいる場所です。一番星になりたい二番星が集まるところ、と申しましょうか。故に、聖武天皇が高めた仏教という地位にもつれ込み、権威を高めたかったのです。天皇を生み出した八幡宮というのは、伊勢神宮と同等に高尚ですからね。私に皇族の血が流れていると言ったのも彼らでしょう。そんな事実はありません。
(永手が、何処に「観音様」を安置しているか尋ねる。)
ここに来るまでの道中に立ち寄った、勝福寺にて十一面観世音菩薩と共に安置しました。どうぞ持って行ってください。蒐集院の方々が守るべきものです。
(永手が、貴方は今後どうするつもりか尋ねる。)
私ですか。ただただ生き続けます。義淵和尚の言う通り、痴態を晒してもなお、生きるでしょう。ですが、
(道鏡が言い淀み、下を向く。)
私は良弁和尚の話す、「善く生きよ」にも従ったつもりでした。私は天皇に従い、天皇の忠義を基に生きて参りました。その結果がこの始末なのであるならば、
(道鏡の声が小さくなる。)
──私は一体、どうすれば良かったのでしょうか。
現在は宇佐八幡宮及び配流された習宜阿曾麻呂と「観音様」の関係について調査を続けている。
音声記録-3
下記は、安瀬研究員による音声記録です。
<録音開始>
安瀬研究員: つまり、この「観音様」が関与している可能性がある、ってことですか。
[溜め息を吐く]
安瀬研究員: 可能性が薄いですね。もう少し、確定的な証拠があれば良いんですが…。録音資料はまだ破棄済みじゃないはず…。
[大量に散乱した資料室に入る]
安瀬研究員: そりゃ監視カメラの録音資料の整理とか、誰もやりませんよね。クリアランスの影響で、清掃員にさせることもありませんし。
安瀬研究員: [溜め息]現場付近に行ってみますか。財団製なら、20年くらいは内蔵できているはずですし、うまく記録出来ませんかね。あと、大家さんの話も聞く必要がありますからね。
安瀬研究員: マンションは、片野駅付近でしょうか。[キーボード音]ここですね。明日向かいますか。
<録音終了>
2025年
2017年
片野駅
音声記録-4
下記は、安瀬研究員による音声記録が発見された経緯です。なお、カバーストーリーとして、「行方不明者を捜そうコラム」が適用されており、事前に取材許可を取っています。
<録音開始>
安瀬研究員: A棟の先にある、こちらのB棟ですね。
[安瀬研究員が見上げる]
安瀬研究員: B棟の附属駐車場に財団管理の監視カメラがありますね。距離から考えれば、録音は出来ていない、と考えるのが妥当でしょうか。ひとまず、管理人室へ行ってみますか。
[安瀬研究員が記者を装い、管理人室に入室する]
[重要性の低い会話の為、省略]
大家: 大西竹二さんですよね。えっと、2005年に引っ越してました。あの人は、少し奇妙な人でしたね。嫁が居たらしいんですけど、何度も2001年の誘拐事件を話題に出したり。「別れた嫁が引き取った子供が心配だ」みたいな。
大家: それと、女の子が喜ぶような玩具をいっぱい買ってきたりしましたね。それは、「復縁の為です」って説明していましたけど。
大家: 後は、うーん。そのくらいですかねー。殆ど喋った事無いんで。はい。他何かありますかね?
安瀬研究員: では引っ越された後、何か変な物を見つけませんでしたか? 変な特徴などは。
大家: 無かったですね。大西さんは結構寡黙でしたし。ちょっと分かんない…いや、3つだけあります。
安瀬研究員: それは何でしょうか?
大家: 木片みたいなのがあったんですよ。で、あと2つが重大で。壁に小学生が書いたような落書きがあったんですよ。消したんですけど、気味悪くて。これ写したやつなんですけど、こんな感じの絵で。それと、こんな感じの文章がよく読めないんですけど、あったんです。
[絵を見せる]
安瀬研究員: ありがとうございます。では、木片の詳細って分かりますかね?
大家: いや、分かんないです。本当、ザラザラってしてるな〜って感じで。すいません、抽象的で。
安瀬研究員: いえ、大丈夫です。ありがとうございます。
大家: あ、今思い出した。引っ越した直前にね、手伝おうか、って言ったんですよ。僕がね。そしたら、構いませんって言うんですよ。でね、良いじゃんか、別にって入ろうとしたら、やめろ! 近づくな! って。僕ね、初めて大西さんの大声聞きましたよ。
安瀬研究員: 他に何か思い出せませんか? 何でも構いませんので。
大家: いや、ちょっと思いつかないですね。本当。ごめんなさいね。
安瀬研究員: ありがとうございます。とても参考になりました。
大家: いえいえ、とんでもないです。
[安瀬研究員が管理人室を後にする]
安瀬研究員: 「観音様」とこの誘拐事件の繋がりですが、かなり希薄ですね。もっと確証的な根拠が必要です。
[電話をかける]
安瀬研究員: あ、妹尾さん。調査なんですけど、大西竹二氏がどこに引っ越したかの内容って分かりますかね? いえ、確証はまだ取れてなくて。あー。ストーカー事案が発生しているから、嫌疑があっても、確証がないと出来ない。分かりました。
[電話を切る]
安瀬研究員: 大家さんに直接、大西竹二氏が仏像を所持している証言を求めるために、インタビューを行ったんですが、一般的な誘拐事件による事実のみでしたし。
安瀬研究員: [数秒の沈黙]A棟の監視カメラに記録が残存している可能性はありませんかね。それか、この文書の解読でしょうか。
<録音終了>
後記: その後監視カメラの音声より、大西竹二氏と石川花音氏の音声が確認された。
音声記録-5
下記は、大西竹二氏と石川花音氏による音声記録です。
<録音開始>
大西竹二: うーん。財布見つからないなあ。
石川花音: おじちゃん、もう行こうよ。歩いて警察署に行くのでも良いじゃん。
大西竹二: 花音ちゃん待ってよ。財布消えたら、おじちゃん生きていけないよ。分かった、財布が見つかったら、すごいマジックをしてあげるからね。
石川花音: 分かった。ショボいマジックだったら許さないよ。
大西竹二: お嬢ちゃんありがとう。
[暫く、財布を探していると思われる音声]
大西竹二: あ、財布見つけた! それじゃあ、花音ちゃん。凄いマジックを見せてあげるね。
石川花音: 分かった。
大西竹二: まず、この仏像さんをじーっと見ていてね。
[10秒程度の沈黙]
石川花音: おじちゃん、どうなるの?
大西竹二: 花音ちゃん、大西竹二に従順になってくれるかい?
石川花音: うん、良いよ。おじちゃん。
大西竹二: おじちゃんじゃなくて、パパって呼んで。
石川花音: 分かった、パパ。
<録音終了>
上記の録音より、大西竹二氏が「観音様」を所持している可能性が示唆されました。この事案により、大西竹二氏はPoI-4871-JP-1に登録されました。
管理人によって複写された落書き
下記は、発見された石川花音氏の書いた文書です。なお、かなり汚い文字かつ直接的な残虐描写が見受けられるため、可読性の向上、表現の改変、不必要内容の削除、規制の強化を行っています。
北九州市役所勤務の妹尾財団職員により、PoI-4871-JPは奈良に潜伏していると確認されました。しかし、奈良に大西竹二氏が購入した住宅にサイト-81GFのエージェントが突入したところ、既に廃墟となっていました。
大西竹二氏と石川花音氏の行方を捜索する為、安瀬研究員とエージェント・浮田氏は一時的にサイト-81GFへ移動しました。
2025年
2017年
下記は、安瀬研究員により発見された「観音様」の文書続きです。
和気清麻呂氏(右)
八幡大神(左)
七七五年三月捕捉。 道鏡氏が亡くなり、凡そ三ヵ月が経過した頃、和気清麻呂氏の話を聞くことに成功した。和気清麻呂氏は、道鏡の偽の神託を見破った人物であり、現在は正三位に就いている。
以下は、和気清麻呂氏の話の内容である。
白状します。私は大隅国にて、道鏡が天皇になると宣旨が届いた際は平城京へ獅子奮迅の如く戻り、あの悪僧の首を跳ね飛ばすつもりでございました。
なにせ、嘘八百に傲慢貪欲、悪逆無道、邪道の様相、無間地獄に堕ちるが正道、そんな破戒僧であったからでございます。(清麻呂氏が床を強く叩く。)
私が彼奴を知ったのは、第二の神託以前でございました。奴は極悪かつ偽造された神託を元に、叛逆を疑っていました。卑劣な事に、奴は神の名を騙ったのでございます。
勿論、そんな阿呆の極みのようなもの、他の名だたる大臣様が黙っておられるわけもありません。大臣様は大勢で称徳天皇に上奏致しました。私は偶然お付きの人として、その様子を眺めていました。
その際、称徳天皇は怒りに怒り、大臣様方に「神託を疑うというのか、貴様等の行いは謀反そのものであるぞ」と声を荒げられました。私は、この時、淳仁天皇等からは感じられなかった威光というものが見えました。ああ、やはりこの方が一番、天皇に相応しい。一生付いて参ります、と、あの業魔を切り裂き病巣を消し去りましょう、と、喉元まで来ておりました。
(永手が、もう少し要約するように頼む。)
お待ちを。ですが、大臣様方はここで一斉に坐しました。「我々は、あの神託を疑っております。天皇を赤の他人が受け継ぐ事に関しまして、どうか今一度、慎重になられていただきたい」と仰せられました。称徳天皇は少し身を震わし、一呼吸の後、首を縦に振られました。本来は、私の姉である法均が宇佐八幡宮に向かうのですが、姉は如何せん病弱でして、私が向かいました。
それをどこで聞きつけたのでしょうか。あのにっくき道鏡! (清麻呂氏が床を強く叩く。)
あの悪僧、何を宣ったと思いますか? あやつは「私は天皇を受け継ぐ気はないが、称徳天皇の面子を守る為、好意的な神託を受け取ってほしい。さすれば、豪華な褒賞をやろう」などと言いやがったのです。馬鹿げてやがる、神まで狼藉するつもりか。何でもありか、あの阿呆は。私は彼奴の顔をぶちのめしたいばかりでございました。
私はその後、路豊永と名乗る方に呼ばれました。その方は、私を分不相応な程に饗していただき、こう言いました。「君はどのような神託が出ても、嘘偽りなく、話さねばならん。もし、道鏡が天皇になる必要があるのであれば、私は伯夷の如く、山に籠り自死しよう」と。
私は当然と思います。やはり、我々臣下は伯夷のよう──伯夷も分からぬのですか!? あ、貴方それでも藤原家ですか? 伯夷というのは、史記に出てくる殷王朝の臣下でございます。殷王朝から周王朝になるに至り、忠義の為、亡くなりました。
全く。話を戻します。私は宇佐八幡宮に着くやいなや、異変にまみえました。神社に立ち入る事が出来ないのです。他の方々は尽く入っておられるにも関わらずです。私は天に向かい、「どうか大神よ! 私は一時を争う騒動に巻き込まれているのです! 貴方の、貴方の神託が偽られているのです! どうか、どうか真の神託をご教授下さい!」と叫びました。すると、漸く境内へ立ち入る事が出来たのです。
(永手が、再度要約するように頼む。)
ここは重要ですので。暫く社にて待機していると、巫女が参りました。そして、私が宣旨──これも、道鏡の息がかかったのか、とても穢らわしい、私を天皇と認めよ、と言っているような物でした──を読み上げようとすると、巫女はたった一言、「宣旨を読む必要はありません」そう言って、退室しました。
これでは、何のことだか分かりません。私は慌てて巫女に戻るよう命令しました。そして、もう一度読み上げようとするも、やはり拒みます。そこで私は「お願いします。どうか、この宣旨への回答をいただきたいのです!」と叫ぶと、そこに雲が漂い始めました。室内にも関わらずです。
そして、八幡大神が現れました。満月のような白い頬と、その神々しさたるや、富士や梅など足元にも及びません。そして、比喩も出来ぬ程の荘厳たる響きで「我が国は開闢以来君臣定まれり。臣を以て君と為す。未だこれあらず。天つ日嗣には必ず皇諸を立てよ。無道の人は宜しく早く掃除すべし」と仰せられました。
私はその声を聞き、頭を畳につけ「ありがとうございます」と述べました。ありがたき神託に心が満ちたのか、帰る道中、私は常に涙を零していました。
都に戻り、この神託を告げるにあたって、道鏡の顔ときたら、滑稽も嘲笑う程でした。称徳天皇が狼狽しておられるのを見て、慌てて「此奴は嘘をついておるのです! 神の言うことも聞けぬ不届き者なのです!」と、それはもう、よくその二枚舌から嘘をつけるなと、感心するほどでございました。
そして、称徳天皇は道鏡に絆されたからにございましょう、「成る程。では、神託の証拠を示せ」と、語られ、私は窮してしまいました。何せ、巫女を呼ぼうにも数ヵ月はかかります。そこで、最終手段を用いました。
実は、習宜阿曾麻呂氏から貰った石像を、私が仕えていた藤原百川様が取得していたのです。百川様曰く、これは真実を信じさせる効能があるとの事です。
(永手が、それは「観音様」の事ではないか、と尋ねる。)
成る程。ええ、恐らくそうでしょう。しかし、私は百川様が嘘をついた事は責めません。嘘も方便と言いますからね。ともかく、私は「観音様」を用いて、真実を伝えたところ、その文書にもあるように信じていただけました。
すると、道鏡は怒りに怒り、悪鬼の如く顔が赤に染まり、茹で蛸の如き風貌でございました。「貴様は契りを破りおったな! 許しはせん! 貴様は別部穢麻呂と名乗れ! 姉は還俗させてやろう! 広虫共々大隅に配流してやろう!」いやはや、今思い出してみても、心が煮え滾る思いです。いえ、称徳天皇や藤原百川様に万一でも命じられていましたら、ありがたく頂戴しました。しかし、あの穢れの権化に言われるのはいただけません。爪が食い込み、血が滲む思いでした。
その後、姉様と共に、大隅国へ向かいました。そして、姉様と暮らしはや六年程でしょうか。称徳天皇がお隠れ5になりました。私は万一の事があるかも知れぬ、と都へ刀一本引っ提げて馬を走らせ、道鏡の元へ参りました。そこにいた道鏡の顔たるや! (和気清麻呂氏が口元を覆う。)
失礼。道鏡は口を中弛みに開け、呆然としておりました。どうやら、神託は嘘と暴かれ、天皇は道鏡でなく、光仁天皇であったのです。「貴様に天誅を下してやる!」そう話すと、「待て、殺さないでくれ。何でもする、何でもやるから」その痴態たるや、私が斬り捨てた方が救われるのではないか、とすら感じました。
ですが、私は刀をおろしました。そして、道鏡から去る間際、奴は「何を望む」と言いましたので、「お前の失脚」と返し、大隅国へ戻りました。
斬り捨てなかった理由は単純でございます。姉の法均が、かつて恵美押勝の乱の残党三百七十五人を生かしたからでございました。私も殺生は望まぬのです。姉の法均は、今でも数百人を助ける、如来の如き者です。私も姉のように邁進したいものです。
(永手が、道鏡の話を書いた紙の写しを見せる。)
これで道鏡に同情しろとでも言いたいのでしょうか。そんなものは、どだい無理な話です。悪は悪でございましょう。山賊になる前に出家し、山で籠っていれば良かったのです。それか、乃助とやらと死ねば良かった。
奴は、ズルズルと自己を持たずに死んでいった愚か者でしかないでしょう。私は素晴らしき姉と共に、自らを奮い立たせます。望むべくは、姉と共に果てたいですね。
和気清麻呂から聞いた道鏡を事実確認する為、配流された習宜阿曾麻呂へ話を聞くことに成功した。下記は、取った記録である。
違います。ああいえ、和気清麻呂が正しいという意味です。あいつは天地開闢以来、最大の極悪人でございます。東大寺建立の際、あいつは私が宇佐八幡宮の神官である事を利用し、詐欺を持ちかけたのです。「俺は良い石像を持っている。この「観音様」だ。阿曾麻呂、時にこれで万金を稼がんか」と。
無論断りました。しかし。ええ、これも話しましょう。私には愛人がおりました。いずれ還俗し、結ばれようと誓いを立てたのです。ですが、あの道鏡。どこで嗅ぎつけたのか、「断るなら、俺がお前の愛人と結ばれてやる。なに。和歌でも送り、そのまま寝たら俺のものだ。俺は地方豪族だから、如何なる場合でも還俗出来るのだぞ」と。
私は首肯せざるを得ませんでした。あの悪人は私に偽の神託を指示させ、そして思いのままに世を牛耳ったのです。あいつは、常世最悪の嘘つきです。「観音様」を地に落とした時点でそうでしょう。私は、あいつに騙され、そしてこの僻地へ配流されました。
あいつは、私に泥を塗り、下野へ逃げたのです。今も殺してやりたい気持ちです。
下記は、宇佐八幡宮の神官に聞いた話である。
無論その通り。和気清麻呂様の仰る通りでございます。なんと、なんと清廉潔白かつ誠実で真実を愛す方でしょう。
しかし、道鏡。あれは問題児です。奴は欲に任せ、国を滅ぼそうとしたのです。彼奴は偽の神託で称徳天皇を誑かしたのでございます。そもそも、奴は称徳天皇が独身であることの心の弱さを見抜き、性的行為を幾度もしたと聞きます。
私は奴の悪事に反発し、一四〇〇封戸もの報酬を返還しました。偽の神託など望まぬと八幡大神も仰せられたのです。
無論、私は奴が失脚して誇らしく思います。日本はこの先何百年と続くでしょう。あんな悪人、永劫現れませんから。
(巫女らしき人物が襖から現れる。)
神官様、なぜそんな事を仰るのです。我々は習宜阿曾麻呂の命令通りにやった、と言えばいいではありませんか。そんな事で揺らぐ権威でございませんでしょう。
何を宣っている。宇佐八幡宮は常に火の車が──(永手の方を見る。)失礼。あれは、少し妖怪が憑いておりまして。
なぜです! 和気清麻呂様に糺されてもなお、偽の信託を伝達しようと──(巫女の手を、やって来た神官が塞ぐ。)
ともかく、我々は何も関与しておりません。習宜阿曾麻呂氏は既に断絶しております。
(永手が口を開く。)
これ以上は知りませぬ。分からぬものは分かりません。
(永手が、先ほどの巫女を蒐集院で祓いたいと申し出る。)
宇佐八幡宮の八幡大神ならば、問題なく祓えますので、問題ありません。
「観音様」の出自先は道鏡の証言から宇佐八幡宮かと思われていたが、現在、その証言があまり合致しない。彼等に本当の事を語らせるには、藤原の名はちと重すぎたかも知れぬ。
七七五年五月捕捉。 編纂中、以下の二通の手紙が筆者宛に届いた。道鏡からであった。
さて、この手紙が来る頃には、私は死んでいると思います。貴方へ何の助力も出来ず、申し訳ございません。以前、私はどうすれば良かったのでしょう、と問いかけたまま、押し黙ってしまいました。
私は、公明正大に「善く生きよ」の言葉に従ったつもりです。ですが、私は何処かで歪曲したのかもしれません。今は修行に励み、行基氏の言葉の通り、民を救い続けております。
嘘八百の人間だの、悪逆無道の破戒僧だの、良からぬ言葉を吹聴されておりますが、それ程に称徳天皇が愛されていたという事であります。誰からも愛された天皇の元で生きれた事に後悔などありません。これは嘘ではありません。
最後に、私は死の間際に悟ると、少なからず直感しております。庶民と同じように弔われますが、それを屈辱と微塵にも思いません。山賊であった私にとっては、この上ない程丁重に弔われるのですから。
貴方もどうか、生き抜いてください。
もう一通の手紙は、威信に関わる内容であるため、数多の術式をもって封印する。
補遺2: 音声記録-4から、「観音様」は存在の有無が明らかになったため、SCP-4871-JPとして登録されました。大西竹二氏はSCP-4871-JPを用いて、奈良県奈良市内に潜伏していると推定されました。
安瀬研究員とエージェント・浮田はサイト-81GFに到着後、SCP-4871-JPを使用している音声記録を取得しました。
また、石川花音氏が描いた絵と書いた文書を取得しました。
音声記録-5
下記は、大西竹二氏がSCP-4871-JPを使用している音声記録です。
<録音開始>
大西竹二: 花音ちゃん。この人が新しいママですよ〜。
遠藤巴: 遠藤巴って言うの。よろしくね。
石川花音: ママ? よろしくお願いします!
大西竹二: 一度に複数人へ使えんのね。有能だな、本当に。
石川花音: パパ? 何か言った?
大西竹二: ああ、何でもないよ。花音ちゃん、一緒にママがお仕事に行くお見送りをしようね。
石川花音: やだー。面倒臭い。一緒にテレビ見よー。
大西竹二: もう、お仕置きするよ! ごめんね、巴さん。巴さん? 何黙ってるの?
遠藤巴: ねえ。今日木曜日なのに、なんで花音ちゃん学校に行かせないの?
大西竹二: 巴さん。実は事情があって。ちょっと来てくれる?
遠藤巴: え、ええ。
[足音]
大西竹二: あ、爪割れちゃった。この仏像さんを見てて。
遠藤巴: 勿論よ。
[10秒程度の沈黙]
大西竹二: 巴は、大西竹二に文句を言わないよね?
遠藤巴: ええ。言わないに決まってるわ。
<録音終了>
石川花音氏が描いた絵の複写
下記は、発見した石川花音氏の書いた文書です。なお、かなり汚い文字かつ直接的な残虐描写が見受けられるため、可読性の向上、表現の改変、不必要内容の削除、規制の強化を行っています。
安瀬研究員は、大西竹二氏の居住していた住宅の確認及び残された記録の確認後、サイト-81GFの援助を行いつつも、一時待機しました。
サイト-81GFの入り口
映像記録-6
下記は、安瀬研究員と佐川研究員による録画記録です。
<録画開始>
[安瀬研究員が座っていると、佐川研究員がやって来る。近くにある自販機から、缶コーヒーを購入し、安瀬研究員に近づく]
安瀬研究員: どうしましたか? 佐川さん。
佐川研究員: 奈良なんて来たくなかったでしょ。その、私がいろいろやっちゃったし。
安瀬研究員: 別に気にしてませんよ。私があなたの接し方を分からなかっただけですから。
佐川研究員: 本当? 別に本音で良いんだよ。気兼ねなんてする気もないでしょ。
安瀬研究員: 本当ですって。勝手に不貞腐れないで下さいよ。
佐川研究員: ふーん。じゃあ、SCP-4871-JPだっけ? 確保したなら、こっちに来なよ。私でもまあまあ良いところだからさ、このサイトに安瀬姉が来たら、一気にサイト管理官だよ。
安瀬研究員: まあ、程々に考えておきます。
佐川研究員: て言っても、安瀬姉なら、こっち来ちゃうからなあ。断れないでしょ。
安瀬研究員: [苦笑]これも、上席研究員に頼み込まれた仕事ですからね。
佐川研究員: 良くないよー、その癖。オブジェクト確保の仕事にどんだけ苦しむか分かってるでしょ?
安瀬研究員: 蒐集物覚書帳目録の記述内容だけでなく、詳細な条件・リスクなどの調査、記憶処理剤の使用本数及び使用者の氏名の届け出、報告書の執筆、定期収容確認の周期、異常性喪失可能性の為の定期実験の周期等。これらを全て立案し、提出する、ですよね。
佐川研究員: だから、オブジェクトの発見なんてボランティア職みたいなもんなのにさー、安瀬姉ったら。
安瀬研究員: そのお陰で私結構昇給してますからね。時価の寿司屋で頼み込まれたんですけど、最悪、私払えましたから。
[佐川研究員が隣に座る]
佐川研究員: やり方汚いなー。財団なら、序の口なんだろうけど。嫌だったでしょ?
安瀬研究員: そんな事ありません。私もSCP-4871-JPは興味がありますから。奈良時代の認識災害オブジェクトなんてかなり珍しいですからね。起源も未定ですし、非破壊検査の結果も全く分かりません。更に、ほぼ同様の特徴を保持するアノマリーがあります。すると、2つのアノマリーの制作者や制作時期が判明するかもしれません。今まで、認識災害を有するアノマリーがExplainedに至った経緯はありませんし、認識災害のプロセスは中々判明していませんが、制作者の発見から、記憶処理ミームなども生成出来るかもしれません。更に、入手経緯の判明によって、歴史学の発展や更なるアノマリーに至るかもしれません。どうです? 興味深くありませんか?
佐川研究員: う、うん。
安瀬研究員: そうですよね! まだありま[咳払い]。すいません、取り乱しました。今日は片野の方から奈良まで来たので少し疲れているかも知れません。先に休んでいますね。
佐川研究員: 了解。なんも頼まれてないよね? 明日には、確保作戦が始まるから、ちゃんとね。
安瀬研究員: お気遣いありがとうございます。佐川さんの方も少しは休んでくださいね。
<録音終了>
音声記録-7
下記は、翌朝8時付近の安瀬研究員と佐川研究員による音声記録です。
<録音開始>
[安瀬研究員の電話先の相手が、大西竹二氏の移動を報告する]
安瀬研究員: 了解。すぐにJR奈良駅へ向かいます。
[安瀬研究員が乗車する]
安瀬研究員: 分かりました。近鉄奈良駅の方に向かいます。確保を祈ります。
[佐川研究員が乗車する]
安瀬研究員: 佐川さん?
佐川研究員: あそこ、駐車場と駅がちょっと離れてるでしょ。私が運転するわよ。
安瀬研究員: ありがとうございます。では、出発してもらってもよいですか?
佐川研究員: 逃がしちゃったか。浮見まだ新人だしね。安瀬姉、映像見ときなよ。
[エージェント・浮見がJR奈良駅東口から進入する]
[みどりの窓口から、大西竹二氏が現れる]
[大西竹二氏が改札を通過する。遅れて約数秒後、エージェント・浮見が通過する]
[大西竹二氏が多くの人を突き飛ばしつつ、京都駅行の電車に乗り込む]
[エージェント・浮見がホームに到着した瞬間、電車が出発する]
エージェント・浮見: [荒い息遣い]
[エージェント・浮見が京都へ向かう電車を映し出す]
安瀬研究員: なるほど、京都へ行ったみたいですね。
佐川研究員: じゃあ、多分間に合うかな。
安瀬研究員: そうですね。13分速く着くかと。
佐川研究員: ちゃんと京都で合ってる? 他の駅経由で新大阪駅とかに行ったりしない?
安瀬研究員: 大丈夫ですよ。「京都→」って切符を改札に入れてるところ見つけましたから。
佐川研究員: そりゃ京都ね。
安瀬研究員: 佐川さんも向かいます?
佐川研究員: 仕事。まあ、迎えくらいなら出来ると思う。
安瀬研究員: まあ、そうですよね。
[近鉄奈良駅に到着する]
佐川研究員: じゃ、行ってらっしゃい。
安瀬研究員: はい、行ってきます。
[安瀬研究員が下車する]
<録音終了>
補遺3: サイト-81GFのフィールドエージェントが大西竹二氏の元住居に侵入した際、SCP-4871-JP及び石川花音氏は確認されませんでした。また、JR奈良駅付近の防犯カメラから、大西竹二氏がSCP-4871-JPを保持している様子は確定できませんでした。
その為、SCP-4871-JPの所在は大西竹二氏、石川花音氏のどちらかが所有していると推測し、石川花音氏はPoI-4871-JP-2に指定されました。
音声記録-8
下記は、大西竹二氏の住居から発見された、大西竹二氏と石川花音氏による音声記録です。
<録音開始>
大西竹二: クソ! クソ! クソ! クソ![机を何度も叩き続ける]
石川花音: どうしたの? パパ。お、怒ってるの?
大西竹二: 遠藤め、クソッ。何故逃げた? あいつは俺の忠実な下僕だったろうが。
石川花音: マ、ママに何かあったの?
大西竹二: [数秒間の沈黙]なあ、花音。お前今、幾つだ。
石川花音: え、えーっと。[テレビが歌唱番組に切り替わる]このアイドルさんと同じ年齢! 可愛いな〜。
大西竹二: ああ。花音、お前可愛いの好きだもんな。
石川花音: うん! あ、このアイドルさん、前にお家来てたよね!
大西竹二: ああ、そうだな。なあ、花音。いつも、一人で寝かしつけてたよな。
石川花音: う、うん。どうしたの? パパ。私別に、一人で寝れるよ。幽霊さんは怖いけど。
大西竹二: これから、パパと一緒に寝ようか。とっても楽しくしてあげるし、いっぱい可愛いのを見せてあげるからな。
石川花音: パパったらしょうがないなー。良いよ!
<録音終了>
後記: 遠藤巴氏を確保後、尋問しました。遠藤氏には目立った異常性は見受けられず、この事案での逃走は非異常的なものであったと断定されています。
しかし、大西竹二氏は遠藤巴氏に逃走しない事をSCP-4871-JPを用いて命令していた事から、現在は、遠藤巴氏がSCP-4871-JPの異常性から解放された理由を調査しています。
発見された落書きの複写
2025年
2017年
下記は、石川花音氏の書いた文書です。なお、かなり汚い文字かつ直接的な残虐描写が見受けられるため、可読性の向上、表現の改変、不必要内容の削除、規制の強化を行っています。
2025年
2017年
音声記録-9
下記は、安瀬研究員とエージェント・浮見による音声記録です。
<録音開始>
安瀬研究員: 私は、ホームの方へ向かいます。
エージェント・浮見 了解です。
[安瀬研究員が博多・鹿児島中央駅行のホームへ向かう]
[エージェント・浮見へ連絡する]
安瀬研究員: 居ました。念のため、こちらへ来ていただけますか?
[安瀬研究員が大西竹二氏へ接近する]
安瀬研究員: すいません、大西竹二様でしょうか?
大西竹二: 違います。
安瀬研究員: では、免許証などを提示していただけますか?
大西竹二: 持ってません。
安瀬研究員: それでは、少々時間がかかりますが、駅員室の方へ来ていただいてもよろしいでしょうか?
[大西竹二氏がホーム内で逃走する]
安瀬研究員: ちょっと、待ちな…。[首を傾げる様子]先に浮見さんを待ちましょうか。
エージェント・浮見: 安瀬さん、何処に大西さんがいるんですか?
安瀬研究員: 奥です。それでは、確保しましょうか。
エージェント・浮見: ここから奥なら、出口は無いですし、袋のネズミですね。良かったです。
安瀬研究員: 両サイドから行きましょうか。浮見さん、結構小柄ですけど、行けますか?
エージェント・浮見: 問題ないです。それでは、左の方から向かいますね。
安瀬研究員: 了解しました。右から向かいます。
<録音終了>
下記は、藤原永手宛に届いた文書を復元したものです。なお、復元による攪乱術式が発生したため、大西竹二氏の陳述書によって意図的に分割されていることに注意して下さい。
手に入れたのは、ブローカーってやつがPAMWACに居て、そいつから買ったんですよ。で、その縁でPAMWACにSOS送ったんですけど、全然効果なくて。釣りとかバンバン言われて、荒れたんすよ。
いや、画像出したいのは山々なんすけど、俺は持ってないし、持ってても「洗脳様」は画像越しでも効果持つんで。30万をばらまくバカはいないでしょ。
んで、Dクラス職員直下やな、って言われて、Dクラス職員ってなにするんや? って聞いたら、めっちゃ笑われて。聞いてみたら、めっちゃ死ぬやつらしいじゃないっすか。嫌ですよ、そんなんは。だから、死にたくないんで、逃げましたよね。
めっちゃ萎えましたよ。荒らしばっかで、しかも馬鹿にしてくるんで。やっぱ女の方が利口っすよ。ああ、洗脳してたらなんすけどね。
政界というのは、本題と無関係な所で蔑み合い、罵り合いの魔窟のようでした。関係者内で通じるような話を用いたり、私の無知を嘲笑っていたりなど、百八煩悩の総本山でありました。
そのせいか、宇佐八幡宮の神託に関しては、有名でございます。もはや、話す必要も無いため申し上げません。しかし、一つ申し上げなければならぬ事がある故、お話しさせていただきます。
あれは、秋の終わる夜頃であったと思います。私は法王となってからは多忙に多忙を極め、睡眠に効くという薬を用いて眠っておりました。しかし、その日は称徳天皇が参った日でありました。称徳天皇の希望により、薬を捨て、今日は夜を更かそうと、部屋で経でも唱えておりました。
唱える声がどんどん弱まり、まさか暗誦も出来なくなったか、と推察しておりますと、目から涙が零れました。
ああ、自分は経さえあれば良かったのだと、自分は玄昉のように政界に入る事なく、僧として死ねば良かったのだと、そう気付いた時、私は「観音様」に頭を下げておりました。
「洗脳様」っす。呼ぶ理由は、ブローカーが「洗脳様」って言ったからっす。「観音様」? ああ、そう言ってたんだ。あいつ信じられねえくらいなまるんすよ。でも、「洗脳様」のほうが良くない? ああ、そういう話してないね。ごめんごめん。
まずブローカーね。ブローカーは愛媛の新居浜で会ったっす。ほら、これ写真。エグいでしょ。すげえ真っ暗な中で会ったんすよ。
大西竹二氏が提示した写真
で、30万持ち逃げされんのも嫌だから、金とその「観音様」? もう「洗脳様」って言うわ、めんどいし。金と「洗脳様」の2つを同じ場所に置いて、んで、いっせーので交換したみたいな。そりゃ、後払いだったら俺は払わねえし、先払いだったらあいつ渡さないでしょ。ガキなん?
あー、ブローカー探すのは辞めた方が良いっすよ。2014年に死んだんで。ジジイだったもん。
その時、亡くなられた義淵和尚が見えました。「駄目だ、お前はその座を退けられぬ」と語られました。
私は、何故だ、何故自分だけが仏教とかけ離れた世界で生き続けなければならぬ、そんなの苦行でも何でもない、一切皆苦をも超える人生を何故生きなければならぬのか、荘子の無の生も突き放し、有だけを持って生きる生活の何が楽しいのだ、どうか、全て捨てさせて下さい、どんな高僧をも持てぬ苦しみを四年も持ち続けているのです、未知で満ち満ちた世界を無知の私は漂い続けたのです、充分でしょう、と嘆くように、喉から何とか絞り出すように話しておりました。
「違う、道鏡。お前は本質を理解しておらぬ。お前は──」その得、襖が開きました。そこには、大隅国に配流したはずの和気清麻呂がおりました。
和気清麻呂は、私に会うや否や、拳を一発おみまいし、「悪僧、貴様を討ち取る!」と声高々に叫びました。私は先程までなら死んだでしょう。ですが、今は、今だけは。義淵和尚の言葉を聞くまでは、死ねないのです。「待て、殺さないでくれ。何でもする、何でもやるから」そう私は乞いました。彼はフッ、と息を漏らし一言、「何だその馬鹿みたいな声は。私が斬った方が良いようだ」と呟き、刀を抜きました。私は慌てて逃げました。和気清麻呂は笑いながら追いかけてきました。
実は、以前にも何回か追いかけ回してたんすよ。女の子ね。そのー、俺母居なくて、ずっと捨て子って親父にどやされて。ロリママって知ってます? キャラのジャンルなんすけど。俺あれが欲しかったんすよ。幼少期とか青年期にね。
まあ、33か。誘拐したのは。あの時にはね、子供が欲しかった。無償の愛っていうのかな。あれが欲しかった。一切無いからね。風俗なら金払えばヤラせてくれるけど、それは有償の愛じゃん。[笑い声]パパ活もないじゃん、あの時代。俺の容姿だと、ナンパも上手くいかねえし。今の時代なら、トー横全員孕ませてやりますよ。「洗脳様」一つで億万長者になれるしね。女の金奪って、FXだっけ? ポチポチーって。あーあ。生まれる時代ミスったなあ。
あー分かってる、分かってるよ。誘拐した時はね、バレても良かった。取り敢えず女子と居たかった。最初は生意気なガキだけどね、分かるでしょ? もう。んでねー、性欲って30過ぎても出るんすよ。あーヤッてないヤッてない。別の女でヤッた。ただ、漏れた精液を花音に拭かせるとね、もう一回出来た。そのうち、シチューって言って舌で──分かった。割愛ね。
なんで引っ越したか? バレたんだよ、管理人に。そんだけ。500人くらいかな? 合計で。福岡で300。デリヘルに装わせたんすけどね、無理でしたね。
私は誤ってしまいました。この話は他言無用でお願いします。手紙を渡した小僧にも、この封を切れば、百鬼夜行の呪いをかけると脅しております。
私は、称徳天皇の眠る部屋へ逃げてしまいました。そして、(和気清麻呂? と辛うじて判読可能な字)は「何たる穢れか、この(上様? と辛うじて判読可能な字)は! ふざけるでない! 私はこの(穢れ? と辛うじて判読可能な字)の為に大隅国へ唇を噛み締め(向かった? と辛うじて判読可能な字)のではない!」と叫び、称徳天皇に(判読不可。)私の。私の、目の前に居るのは、「禍」そのものでありました。この穢れは殺さねばならない、殺さねば日本は滅ぶ、そう思いました。
殴りました。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も殴りました。拳に感じた痛みは既になく、代わりに、穢れた血が拳をまといました。
告白します。もしかしたら、私は称徳天皇を愛していたのでしょう。何時かは分かりません。出会った時かも知れません。とにかく、私は称徳天皇に死ねと言われたら死ねたのです。
和気清麻呂は私を突き飛ばし、逃げました。私は、彼の置いた刀を持ち、追いかけました。あの穢れは捕縛せねばならぬ。それが、生きた理由なのかも知れないと感じました。あの時、悟ったと感じました。いえ、実際は全く異なる類でしたが。何故私は生きるのか、痴態を晒しても生き続けねばならぬのか。
それは、私が、和気清麻呂を「穢」に落とした極悪人だからです。今死ねば、私は何者にも祓われぬ魍魎となったでしょう。故に、禍を殺さねばなりませんでした。あの和気清麻呂、いえ。別部穢麻呂を殺し、私は生を終えるのだ、これが義淵和尚の話された生きる意味です。義淵和尚は死の間際、公案を出されたのです。そして、私は気付けば領解に至ったのです。
「観音様」は微笑んだ気がしました。
映像記録-10
下記は、京都駅の監視カメラの映像です。なお、安瀬研究員及びエージェント・浮見は、PoI-4871-JP-1への本名流出を防ぐ為、名前を呼んでいないことに注意して下さい。
<録音開始>
[大西竹二氏がエージェント・浮見へ走る]
エージェント・浮田: 来ました!
[エージェント・浮見が大西竹二氏を取り押さえる]
エージェント・浮見: 抑えました!
安瀬研究員: 大丈夫ですか? 竹二氏のバッグを探ります。少し耐えられますか?
エージェント・浮見: はい。問題ありません。
大西竹二: 離せ! 離せ!
[大西竹二氏が暴れる]
エージェント・浮田: 暴れないで下さい![呻き声]
[大西竹二氏が約5cm程のナイフで、4回程度突き刺す]
安瀬研究員: 大丈夫ですか? すぐに向かいます!
[大西竹二氏がエージェント・浮見を振りほどき、逃走する]
安瀬研究員: 大丈夫ですか? [シャクリ声]怪我してるじゃないですか!
エージェント・浮見: 問題ありません。それよりも…。
安瀬研究員: いえ、浮見さんの無事を優先します。[エージェント・浮見を止血する]
エージェント・浮見: ごめんなさい。逃がしたら、僕の責任です。
安瀬研究員: いえ、私が見誤ったせいです。申し訳ございません。
エージェント・浮見: 謝らないで下さい。安瀬さんは悪くありませんよ。
[安瀬研究員が微笑む]
安瀬研究員: ありがとうございます。少しだけ、ここを任せても良いですか?
エージェント・浮田: 構いませんが、どうするんです?
[安瀬研究員がGoproカメラを装着する]
安瀬研究員: 上には、カバーストーリーの「パルクール撮影」を事後申請して下さい。では、行ってきますね。
[安瀬研究員が走る]
[階段を飛び降り、踊り場に着地する]
<録音終了>
あーこれか。早かったすよね。気付けば、近くに居て。俺錯乱して、改札出たんすよ。すぐそこに迫ってきて、鬼気迫る表情で。殺されるかと思いましたよ。逃げたね。怖くって。近鉄に乗るか、西条口から出るか、少し悩んで、西条口から出て、そのままタクシー乗って、神戸にでも潜伏しようと思ったんすよね。俺を救ってくれる団体ねーかなって。
無かったけどね。あー。あいつさえ居なけりゃなー。今頃、俺は幸福だったよ。分かるかな、新幹線の出口から、西条口ってまあまあ距離あんの。近鉄の入り口付近まで行って、階段降りて、左に折り返して、まっすぐ走ったら右手に見える。
分かんない? じゃあ、降りる階段のある廊下って思って。で、ぐんぐん距離を詰めてきた。怖いよ、俺。
私は別部穢麻呂を追いかけました。奴は「道鏡の錯乱だ!」などと叫びましたが、私の屋敷で叫んだ所で、何も起きません。かつては山を一日に八つ越えたものですが、この時六十であったと思います。ぐんぐん引き離されました。ああ、神よ。どうか私に力を籠め給え! その願いは儚く散りました。
鬼に願ってたよ。神は俺なんて見向きしねえだろうから。どうか、あいつを引き離してくれって。そしたら、俺とあいつの間に外国人が割って入ったんだよ。よっしゃって、思ったけど、俺も49だからね。普通に近くまで来たよ。
そんで、あいつが「待て、悪人」って叫んだんだよ。だからね、俺は負け惜しみにこう返したの。
私は負け惜しみに、「待て、悪人」と叫びました。すると、別部穢麻呂は止まり、こう言い放ちました。
如何にも、私が悪人である。と。
如何にも、俺が悪人である。って。
まあ、すぐ近くに来てたから、一生懸命、西条口から出たけどね。
別部穢麻呂はそのまま門から出ていきました。私は、逃しました。しかし、謎の充足感がありました。天誅を下したような実感がございました。
風の噂によると、大隅国まで震えが止まらなかったようです。宇佐八幡宮の近くでは、物も持てず、食も喉を通らず、生きた心地がしなかったと聞きます。
西条口を出ると、タクシーが止まってたの。しかも、女性が「大西さん、はやく乗ってください」って言うんだよ。真っ先に乗って、一息ついた。4人くらい、女性が居たね。運転席と、助手席と、あと俺の両隣。んで、あいつの顔見て笑って、スマホ出したら、ぶっ壊されたんだよね。
音声記録-11
下記は、GOCの提出による音声記録です。
<録音開始>
中尉: 楽しかったか? 追いかけっこは。
大西竹二: なんでスマホぶっ壊してんだよ。お前みたいに洗脳してないぞ。
中尉: 仏像はどこだ。答えろ。
大西竹二: なんでそんな事言わなきゃなんねえんだ。お前らなあ、人にもの頼む時は[中尉が大西竹二氏を殴打する]ぶっ。
中尉: 言い忘れていたな。我々は、貴様のハーレムなどではない。GOCと呼ばれる団体だ。もう一度聞く。何処に仏像を置いた?
大西竹二: テメエ、人にもの聞くときは、礼儀ってものが[中尉が大西竹二氏を殴打する]ぶひっ。
中尉: 言っておくが、我々は財団よりも甘くない。言葉は選べ。
<録音終了>
おっかなかったすよ。え? 何処にやったか? って。ちゃんとアジト教えましたよ。無いじゃねえか、って何度もぶっ叩かれましたけど。
ああ、終わり? なら最後に一個だけ。眼球はやめた方がいいっすよ。汚くなるんで。
漸く、家臣が私の元へ来た時は、何もかも終わっていました。彼等には、警備の任を解き、眠るように命令しました。宝も金もすべて家臣たちに分け与えました。全て終わったのです。そう確信しました。
私は称徳天皇の元へ帰りました。顔は、華麗な尊顔でした。仏の様な表情を浮かべ、眠っておられるようでした。
「観音様」には、もう義淵和尚の面影はありませんでした。しかし仏の表情は、より柔和になっておりました。
この事実を知るのは、和気清麻呂と私と藤原永手様とごく一部の家臣のみです。私は、法王などの称号は捨てて下野薬師寺への左遷することを望み、それは叶いました。
山稜の部屋で経を唱え、でっちあげの謀反の処罰により、私は下野薬師寺に至り、果てたのです。
2025年
2017年
音声記録-12
<録音開始>
安瀬研究員: 大丈夫でしたか? 浮見さん。
エージェント・浮見: 安瀬さん! 大西さんは…。
安瀬研究員: 捕まえられませんでした。あ、語弊がありますね。私たちの代わりに、GOCが捕まえたという事です。
エージェント・浮見: あの人達なら、ある程度は協力してくれますよね。じゃあ、一件落着ですか。
安瀬研究員: いえ、ここで終わりではなく、始まりです。ただ、エージェントとしては、終わりですか。
エージェント・浮見: ずっと頼りなかったですね、僕。
安瀬研究員: そんな事ありません。まだまだ伸びますよ。
エージェント・浮見: そう、ですか?
安瀬研究員: ええ。それでは、また。あそこで佐川さんが手を振ってますから、送ってもらいます。
[佐川研究員の車に乗車する]
佐川研究員: 安瀬姉、浮見君どうだった?
安瀬研究員: 伸びますよ。ああいう人は。
佐川研究員: 惚れた?
安瀬研究員: なんでそういう話になるんです?
佐川研究員: ごめんって。またさ、大学の文化祭でも行こうよ。地元に帰郷したんだし。
安瀬研究員: そうですね、行ってみましょうか。
佐川研究員: ちょっとノリ良いね。やっぱり安瀬姉はこうでなきゃ。
<録音終了>
補遺4: 安瀬研究員はサイト-81GFにて、SCP-4871-JPの追跡調査を行いましたが、SCP-4871-JP及びPoI-4871-JP-2は発見に至りませんでした。
以下は、後述するホテルにて回収した資料です。
2017年12月28日、痕跡部門への業務委託手続の最中、安瀬研究員が失踪しました。失踪地点は、現在も判明していません。
USBメモリ
その後、███████.com7にて、『コンビニ前に落ちてたUSBメモリ解析すた結果wwwww』という動画から、安瀬研究員及び石川花音氏が確認されました。
現在、上記の動画は行方不明者捜索会へ一時的に譲渡しています。
音声記録-13
下記は、動画記録の一部抜粋を書き起こしたものです。
<抜粋開始>
[ラブホテルと見られる室内で、2名が撮影される]
[安瀬研究員はテープで口を覆われ、手足を手錠で拘束されている]
石川花音: ねえ、安瀬お母さん。ちょっと話していーい? 私の身の上話。
[石川花音氏が安瀬研究員の愛撫を開始する]
石川花音: 私ね、9歳の頃から精子舐めさせられたの。飯は出さないのに、精子だけペロペロさせられたんだ。
石川花音: 奈良に引っ越した時は、近くの高校生とエッチしてた。パパは私の目の前で毎回するんだよね。
石川花音: ママも、飯も出さずに、仕事、仕事、仕事。まあ、あの人が悪いんだけどね。仕事せずに、私とテレビ見まくってたから。
石川花音: 本も何もかも与えられなかった。勉強は嫌だよねー、昼間はトランプとかで遊ぼっかーって言って、何も勉強出来なかった。だからね、私は安瀬お母さんと違って、勉強も運動もできないんだ。
石川花音: 18くらいになって、あの人にヤられたんだ。不思議なんだよね、未成年はダメで、結婚できるようになったらOKなのが。私、ずーっと嫌だったんだよ? やめてって言おうとしたんだけど、言葉に出るのは、もっとしてだったんだ。
石川花音: 最低だよね。そう、最低なんだけどね。私にはあの人は憎めないの。16年間精子舐めて、12年間他人のエッチ眺めて、6年間あの人とエッチして。人生で生きてきた年数で、性欲の掃き溜めになった年数の方が多いんだよ。
石川花音: だからもう私は人間じゃないの。あの人の性玩具なの。でもね、そんなの嫌。私は、もっと優しくて可愛い人の元で生きたい。勉強教えてくれてありがとう。だから、これは我が儘なの。
[10秒程度の沈黙]
安瀬研究員: [呻き声]
石川花音: 「ずっと、石川花音のものになって」。
[以降省略]
石川花音: 紬お母さん、可愛いね。私ね、可愛いのが大好きなの。
[安瀬研究員が倒れている]
石川花音: ずーっと、ずーっと。愛しているからね。
[石川花音氏が安瀬研究員に接吻する]
<抜粋終了>
後記: USBメモリの回収者は確保、尋問の後、記憶処理を行って解放されました。3日後、ホテルに突入したものの、上記の文書以外、発見されませんでした。現在、石川花音氏は安瀬研究員の援助により、逃走を継続していると確定付けています。
補遺5: 下記は、術式解放後、発見された藤原永手氏と法均氏の対話記録です。
日時は、宝亀五年(775年)3月6日であり、法均氏の記述と見られる部分は太字にしています。
この度は来てくださりありがとうございます。大したもてなしも出来ませんが。
いえ、構いません。それでは、貴方の弟である和気清麻呂が行ったあの行為について知っておられましたか?
はい。知っておりました。大隅国へ戻り、震えている身体を抱擁したことを覚えております。
貴方は和気清麻呂に対して、何も思わなかったのですか?
私は、何も感じませんでした。何と申しましょうか。弟は、こうでもしないと、死ぬのではないかと思ったのです。
死ぬ?
はい。私にとって、唯一の肉親である弟は日本を救いました。貴方にはあまりピンと来ないと思いますが、道鏡が天皇となっていれば、「日本」という国名は彼方に消え去っていたはずです。中華もそうでございましょう。
「日本」ですか。ああ、続けて下さい。
ここからは、私の持論として処理していただいても構いません。私は、他人の善悪を光や影として眺める事ができます。そして道鏡は、強い光で満ち満ちておりました。
貴方や、和気清麻呂ではなく?
ええ。その時、私は道鏡の苦難に気付きました。そして、病床に付きながら大隅国に配流される道中の事です。私はちら、と弟を眺めました。弟は、光と影が蠢く状態から、道鏡と同様に、満ち満ちた光へと変遷していたのでございます。滅びを救ったからでしょう。
その変遷は良い事でないのですか?
光でなく、無の境地こそが、極致であり、私が出家した理由なのです。わかるでしょうか。光は強すぎると、他人を悪へ堕とすのです。
貴方の弟のように、ですか?
ええ。きっと弟は、道鏡と対峙した際に光にのまれたのでしょう。光に満ちた人はより強大な光にのまれると、影になります。少し難しいですか?
他者の光にのまれると、自分の光が奪われ、他者の光で、自分が他者の光と自分の光を合わせた闇になるということですか?
そうでございます。教える事は、弟に任せておりましたので、申し訳ございません。ともかく、それ故に、弟が凶行へ至ったのはこれが理由でございます。
ありがとうございました。法均さん、この証言は貴重ですので、また編纂させていただきます。
編纂と言うことは、弟の行為も語り継ぐのですか? それだけは、やめていただけないでしょうか。
勿論、今の技術で持ちうる限りの、儀式を実行します。
もう一つ、持論を話してもよろしいでしょうか。午の刻までで、構いませんので。
なんでしょう?
貴方が、道鏡に魅せられたように、私も道鏡に魅せられたのです。その理由はきっと、道鏡は、光も影もない無の境地に至ったからなのです。あれはまさに、少し抽象的ですが、寝静まった幻想というか、ああそうです。あれは、悟りというものでございました。
悟りですか? 道鏡は、悟りなど無かったと申しておりましたが。
無い、のですか。失脚の恐れを抱えながら生きて、無の境地へ至って、その人生に悟りなど無かったのですか。
(法均氏はしばし沈黙する。)
善行を為し、悪を打倒し、希望を絶やさない者はそう多くありません。ですが、数多の勇気や希望や打開には、常に代償が付くのではないでしょうか。
と、言いますと?
「禍」という妖怪はご存知でしょうか?
ええ。経典に出る一つでしょう。少し省きますが、商人から鉄を食う獣を購入。鉄を食い続けた事で、国民が疲弊し、逃散。これに見かねた臣下が火をつけると、あまりの熱さに火達磨のまま街を歩き回り、国は滅んだ、という話ですよね。
細かくは違いますが、その通りです。禍の話には、商人は実は神の化身であった、というオチで終わります。つまり、生かすも殺すも、神次第なのです。
末法思想に近似していますね。だから、なんなのです?
宮中の中には、末法思想は道鏡を指していた、と考える方もおられますが、それは異なります。善行によって苦しむ、これこそが末法思想の正体です。そうなりますと、善行を実行した勇気ある人々に目を向けられず、救いがない世界というのは、「わざわい」ではないでしょうか?
それこそ、神が救うでしょう。天国で人々は報われる、貴方が信仰している仏陀が仰られている事ではありませんか。
東大寺の大仏は却って、政権の悪化を招いたではないですか。私は、悪神蔓延る末法思想は止められ無かったと考えております。
その悪神の名前は何と言うのですか? 私の権力が及ぶ範囲で、多士済々の神官、高僧集め祓いますよ。
悪神の名は──(午の刻を告げる鐘が鳴る。)どうやら、時間のようですね。持論は以上となります。長々と喋り、申し訳ございませんでした。
現在の研究により、宝亀五年(775年)3月6日のみ、午の刻の時間が約1時間程早かったことが判明しています。
SCP-4871-JPに関する情報
2023年10月21日、奈良市白毫寺町の柳生街道に設置されている首切地蔵の左隣に、50cm弱の不審な聖観音像が置かれているという通報を傍受しました。警察に扮した財団職員が駆け付けたものの、聖観音像は既に持ち去られていました。
首切地蔵
現在、この聖観音像は、
- 持ち去った人物を視認した芳山交番所に駐在していた人物に確認したところ、安瀬紬研究員と特徴が一致していたこと
- 聖観音像が映った監視カメラを大西竹二氏に視認させたところ、「かなり酷似している」と証言したこと
- SCP-4871-JPに使用されている木材と、首切地蔵付近に残されていた木片が一致していたこと
上記3点を踏まえ、SCP-4871-JPである事が確認されています。
付近の監視カメラから、下記の男女がそれぞれ異なる時間帯に首切地蔵付近を訪れていることが判明しています。
この2名の情報をお待ちしております。
男性の特徴
- 眉が太い
- ボサボサの髪
- 大股で歩く
- 中肉中背の体型
- 濃い緑色のシャツの服装
- 20代〜30代程度
- 身長170cm程度
女性の特徴
- 左右の目が異なる
- ロングヘアー
- 細めの体型
- 白いシャツの服装
- 40代〜50代程度
- 身長160cm程度
インシデント-4871-JPに関する情報
発見時のジャケット
須田隆家元上席研究員が何らかの事情を知っているという旨の匿名の通報により、須田隆家氏に事情を聞きましたが、関係性は一切ありませんでした。また、付近に不審な黒いジャケットが発見され、内蔵していたスマートフォンから須田隆家氏と不明な人物とのやり取りが確認されました。
なお、この不明な人物は財団データベース上にも確認されておらず、付近のサイトへの勤務履歴も残存していません。このやり取りを元に、須田隆家氏の住居を確認しましたが、何も見つかりませんでした。
現在、この不明な人物が何らかの情報を持っていると考えています。心当たりのある方はご連絡をお願いします。
情報提供
安瀬紬研究員及び石川花音の目撃情報を受け付けています。
- 2名の人物を知っている。
- 安瀬紬研究員か、石川花音に似た人物を目撃した。
- SCP-4871-JPと思われる仏像を見かけた。
- この誘拐事件を語っている人物を見かけた。
どんな些細な情報でも構いませんので、心当たりのある方は下記へご連絡下さい。
電話番号:
- 090-████-████(サイト-81GFの行方不明者捜索会)
- 03-████-████(行方不明者捜索会本部)
皆様の情報を心よりお待ちしております。









