アイテム番号: SCP-4912-JP
レベル-
収容クラス: KETER
撹乱クラス: WARNING
アイテム番号: SCP-4912-JP
レベル-
収容クラス: KETER
撹乱クラス: WARNING
特別収容プロトコル: SCP-4912-JPの諸情報隠蔽のため、各地の天文機関に記録されている20██/██/██の観測データを全て偽のものへと置換します。地球外探査研究部門は外宇宙支部と協力し、SCP-4912-JP-2実体に関する調査を行ってください。
説明: SCP-4912-JPは██歳の成人女性です。異常性、及び精神的傾向を除けば、常人とあらゆる面で差異はないと推測されています。
SCP-4912-JPの特異性は、天体を消滅させ、同時に宝石に分類される物体(以下SCP-4912-JP-1と呼称)を出現させる能力です。SCP-4912-JPの視野内に対象天体が存在し1、ガラス窓などの遮蔽物がないことが前提条件であり、以下のようなプロセスを経て発現します。
1. SCP-4912-JPが対象天体に向かって手を伸ばし、摘むような仕草をする。SCP-4912-JPの挙動解析によると、人差し指と親指の間に対象天体が挟まれて見えるように位置取りしていることが判明。
2. SCP-4912-JPが摘んだ対象天体を自身に引き寄せるような仕草をする。
3. 対象天体が消滅、同時にSCP-4912-JPの人差し指と親指の間にSCP-4912-JP-1が出現。
特異性による対象天体の消滅には、光速度による観測のタイムラグが発生せず、地球上からほぼリアルタイムで確認できます。同様の異常性を過去に保持していたSCP-912-JP(通称"もう星は盗まない")の前例を踏まえ、対象天体の消滅/再出現は現実の事象であると推測されています。
補遺1: 異常性発現経緯
SCP-4912-JPは元は財団サイト-8181周辺に居住していた民間人であり、同じく近隣に居住していた財団職員である星崎博士(サイト-8181██研究室所属。同研究室所属の星崎研究員と結婚し、異常性を喪失したSCP-912-JPを養子として保護している。女性。)によって発見されました。SCP-4912-JPは窃盗癖を持っており、普段から星崎博士を筆頭に交流のあった複数の近隣住民から多数の物品を窃盗していたことが調査によって判明しています。以下は複数の監視カメラやボディカム等から回収されたSCP-4912-JPの映像です。
映像記録4912-JP-001
SCP-4912-JP: [鼻歌を歌いながら]いい天気ねぇ。こんな日は何か綺麗なものでも見たくなるわ。…そうだわ、裏山にでも登ろうかしら。あの山は空がよく見えるのよね。きっとそろそろ木々の葉っぱも緑に色づいてるでしょうし、何本か頂いてうちの庭に植えてもいいわね…
不明な女性: 助けて!おばさん!
SCP-4912-JP: あたし?
[道の端で、若い女性と複数の男性がもみ合っている。]
SCP-4912-JP: 助けてもいいけど、私はまだおばさんと呼ばれる年じゃないわよ。
不明な女性: じゃあ、助けてお姉さん!
SCP-4912-JP: よしきた!あんたたち、その子を放しなさい!
不明な男性-1: そんなこと言われたって、こっちは仕事なんですよ。
不明な男性-2: ただ収容場所を移動するだけなんですから。
SCP-4912-JP: そんなの知らないわよ!
[SCP-4912-JPが集団から女性を引き離し、逃走する。]
不明な男性-1: あっ!待ちなさい!
SCP-4912-JP: や~なこった!あたしが盗みに失敗したことは一回もないの!あんたたちなんかに捕まるもんですか!
[集団がSCP-4912-JPを追跡するが、SCP-4912-JPは驚異的な速度で走り去る。]
[SCP-4912-JPは███山の山頂に到達する。]
不明な女性: あの、ありがとうございます。助けてくださって。
SCP-4912-JP: 良いのよそんな。咄嗟にさらってきたけど、あなたどこの子?名前は?
不明な女性: どこの子でもない。皆からはSCP-███って呼ばれてる。2
SCP-4912-JP: じゃあSCPちゃんって呼ぶわ。でも、SCPさんなんてこの辺にはいないわよ。
SCP-███: 私アメリカから来たの。大きな建物に閉じ込められて、研究されてた。
SCP-4912-JP: もしかして…秘密結社?
SCP-███: 多分そうだと思う。移動の時以外は外に出してもらえなかったから。
SCP-4912-JP: 大変だったのね…。帰ったらパソコンで調べてみるわ。それにしてもSCPちゃん、あなた日本語上手ね。
SCP-███: 前は日本の養護施設にいたの。その時良くしてくれた子がいて、その子に会いたくて、それで…
SCP-4912-JP: あらそうなの。その子はどんな子?
SCP-███: 分かんない。私目が見えないから。
SCP-4912-JP: 嘘よ。さっき近くを通っただけの私を呼んだじゃない。
SCP-███: だっておばさん大声で独り言言ってたから。
SCP-4912-JP: お姉さんだって言ってるでしょ。
SCP-███: でもおばさんみたいな声だよ?
SCP-4912-JP: うるさいわね。
SCP-███から情報を得たSCP-4912-JPは財団に関する調査を開始しました。この時期に発生した不正アクセス事案の96%はSCP-4912-JPのコンピュータからのものであることが判明しています。またこの時期にSCP-4912-JPは星崎夫妻及びその養子であるSCP-912-JPに関する疑念を抱いていたと推測されます。
映像記録4912-JP-002
SCP-4912-JP: よーし、今日は財団のサイトに侵入するわよ!
SCP-███: そ、そんなことしていいの?
SCP-4912-JP: SCPちゃんの異常性を詳しく知るためにはそうしないといけないのよ。ちょっと近所のサイトに行くだけなんだから着いてきなさい。それに、ご近所の星崎さんいるじゃない?あの家がどうもきな臭いのよね。こないだの夜、あの家の下見してたら「財団」「912-JP」って言ってるのが聞こえたのよ。あの家はきっとSCPちゃんみたいな子を監禁してるのよ…
SCP-███: でも星崎さんのとこの子、普通に外に出てるよ?あの子、日本にいたとき良くしてくれた██君だと思うな。
SCP-4912-JP: あ、あらそう。じゃあその子が酷い目に合ってないかを調べるためにも行くわよ!
SCP-███: え~。
[SCP-4912-JPとSCP-███がサイト-8181内に現れる。サイトの警報システムは反応していない。]
SCP-4912-JP: よし、誰もいなそうね。こっちよ。
SCP-███: ねえ、ほんとに大丈夫なの?
SCP-4912-JP: 大丈夫よ。SCPちゃんは怖がりなんだから…
SCP-███: 目が見えないのに知らない建物に忍び込むの、誰だって怖いよ!
SCP-4912-JP: そういえばそうだったわね。その目、本当に何も見えないの?
SCP-███: ううん、そんなことはないよ。私の目は星が見えるの。
SCP-4912-JP: [キーロックを解除しながら]星が?
SCP-███: そう。天の川の中を船で進んでいく感じ。目の前に洪水みたいに星が流れてくるの。すっごい光ってきれいなんだけど、最近その光が空虚だって気づいた。
SCP-4912-JP: [配電盤を操作しながら]空虚?でも、星の光はいつも綺麗じゃない。
SCP-███: うん、そうなんだけど… そこに命が感じられないっていうか。星に近づいてみても、まるで何か恐ろしい存在が輝けるものすべてを消し去ってしまったみたいに空虚なの。
SCP-4912-JP: [スマートフォンを操作して]それはそうよ。宇宙人はいないんだから、命の輝きなんてないのが普通なんじゃないの?安心していいわよ。
SCP-███: 宇宙人はいるよ?
SCP-4912-JP: 宇宙人はいるのね。
SCP-███: なんか、兎みたいな姿をした宇宙人をたまに見かけるよ?アメリカにいたときは、ずっとその子と宙を旅する光景を見てた。
SCP-4912-JP: [配電盤にスマートフォンを接続しながら]そんなことがあったのね。その子は今どこにいるの?
SCP-███: わかんない。急にいなくなっちゃったから。
[SCP-4912-JPがスマートフォンを配電盤から取り外す。]
SCP-4912-JP: よし、マップを手に入れたわ。データセンターは…あっちね。
[二名が連れ立って歩く。]
[重要度が低いため省略]
[二名がデータセンターへ侵入し、端末の操作を開始する。]
SCP-4912-JP: あったあった。これがSCPちゃんの報告書ね。SCP-134 - "星眼児" …?
SCP-███: そう、それ!懐かしいな。
SCP-4912-JP: そしてこっちが星崎さんとこの子ね。SCP-912-JP - "もう星は盗まない" 。あの子星を盗んでたの!? 泥棒は私の専売特許なのに!
SCP-███: そうかどうかは別として、あの子も星を取れる手を持ってるって言ってたよ。
SCP-4912-JP: そうだったのね。報告書によれば、あの子は星崎さんとこに養子に来たらしいわ。あの子を従えることが出来れば、私も星を盗めるかしら。…あら、下の方に機密文書があるわね。ちょっと覗いてみましょう。
SCP-███: 余計なことする必要ないと思うけどな。
[SCP-4912-JPがSCP-912-JP報告書の機密指定された部分へのアクセスを試みる。]
SCP-███: すごい警告音なってるけど大丈夫?
SCP-4912-JP: 大丈夫、何とかなるはずよ…
[サイトのシステムが反応し、侵入者警報を発する。]
機動部隊: 手を挙げろ!
SCP-███: 早くない?
SCP-4912-JP: [SCP-███の手を掴んで]逃げるわよ!
機動部隊: 止まれ!さもなくば発砲するぞ!
SCP-4912-JP: 銃持ってるの!?
SCP-███: 銃を持ってない秘密組織なんてないでしょ!
[二名がデータセンターを退出し、逃走する。SCP-4912-JPは度々スマートフォンで位置情報を確認している。]
[二名は食堂に進入する。食堂の隅にはSCP-294が設置されており、SCP-4912-JPがそれを操作すると不明な酸性物質が供給される。]
SCP-4912-JP: これで少しは足止めできるはず。行くわよ!
[二名は正門前の廊下に到達する。]
警備員: やあ、見ない顔だな。調子はどうだい?
[SCP-4912-JPが警備員を蹴り飛ばすが、この際SCP-███から手が離れる。]
SCP-███: あっ!
警備員: そうか、さっきの侵入警報はお前らだな。ここから記憶処理なしに帰れると思うなよ!
[警備員がSCP-███を捕縛する。]
SCP-███: 助けてお姉さん!
SCP-4912-JP: 今助けるわ!あんた、その手を放しなさい!
[SCP-4912-JPがSCP-███を解放しようと試みるが、追いついた機動部隊による発砲で阻止される]
SCP-███: お姉さん!
[警備員がネットランチャーを発射する。SCP-4912-JPはそれを踏みつけて転倒し、銃弾を回避する。]
機動部隊: 警備員!余計なことをするな!
[機動部隊の発砲が継続する。SCP-4912-JPはサイト正門へと退却する。]
SCP-4912-JP: 私がこのままで終わると思ったら大間違いよ!必ず戻ってくるから覚悟して待ってなさい!
[SCP-4912-JPが逃走する。]
補遺2: 失踪
20██/██/██、SCP-4912-JPは星崎研究員に対し「星を独り占めするなんてずるい!私にもよこしなさいよ!」3という要求を行いました。困惑した星崎研究員が説明を求めると、SCP-4912-JPは上記のインシデントの際に財団内データベースからSCP-912-JPの報告書を奪取し、同オブジェクトが現在星崎博士のもとに保護されていることを知ったと説明しました。この際その場にいたSCP-912-JPが「星を取れる手はもう神様に返しちゃったんだ。だから、もう星は取れないよ」と説得したところ、SCP-4912-JPは「じゃあ私がもらう!」と述べ、「見てなさいよ、きっと今にその神様とやらを見つけ出して、星を盗りまくって大儲けしてやるんだからね!そしてSCPちゃんを財団から買い取るんだから!」と一方的に宣言した後に失踪しました。星崎博士からの通報を受けた財団エージェントが現場に到着した時にはもう既にSCP-4912-JPは行方不明となっており、記憶処理を行うことが出来ませんでした。SCP-4912-JPが再度財団に侵入する可能性があるという星崎博士の進言により注意措置が取られましたが、その後SCP-4912-JPが財団へ干渉することはありませんでした。
補遺3: 帰還
この事案の発生からおよそ1か月後の20██/██/██、星崎博士の自宅に突然白衣を着て丸眼鏡をかけたSCP-4912-JPが侵入しました。以下は星崎博士宅のスマートスピーカーから回収された、その際の音声記録です。
音声記録4912-JP-001
SCP-912-JP: 行ってきます!
星崎博士: 気をつけて行くのよ。
SCP-912-JP: はーい。
[SCP-912-JPが扉を開ける音。]
SCP-912-JP: あ、おばさん。
SCP-4912-JP: おばさんじゃなくて、お、ね、え、さ、ん、よ。お久しぶりね、星崎さん。██君、SCPちゃんと知り合いだったりしないかしら?
星崎博士: ██さん4!?お久しぶり… 行方不明になったって聞いてたんだけど、何してたの?
SCP-4912-JP: そう!それを言いたくて来たのよ!
SCP-4912-JP: 長い道のりだったわ… 星を盗ると決めたあの日、私は正直どうしていいかわからなかった。でも、超常研究機関パタゴン研究所の人たちの助けを借りて、私はとうとうインジェニオニクス5を完全に理解したのよ!これで全ての星は私の手の内に!
星崎博士: はあ、そんなの聞いたことないですけど。本当に大丈夫なの?
SCP-4912-JP: 大丈夫大丈夫!ほら!これとか見てみて、凄いのよ。ISA-68っていって、ラボの人たちが作り上げた装置なの!今から実演するから、よく見てるなさい!
星崎博士: ええ?あっちょっと!勝手に二階に上がらないで!
[SCP-4912-JPのものと思われる足音が遠ざかり、しばらくして戻ってくる。]
[ボタンの押下音と、それに続く不明な電子音。]
[布同士が勢いよく擦り合わさる音。]
星崎博士: 勝手に人の家の布団を持ってこないでください!
SCP-4912-JP: (星崎博士を遮るように)夢を通じて神様に接触して、バレないように手だけ貰ってくるわ!この装置はその補助用なの!じゃあおやすみなさい!
星崎博士: ちょっと!██さん!██さん?…何なの!?とりあえず財団に通報を…
[SCP-4912-JPが呻き声を発する。だんだん苦しげなものへと変化していく。]
星崎博士: ██さん?大丈夫?
[SCP-4912-JPの呻き声はますます大きくなる。]
星崎博士: ちょっと、██さん…
SCP-4912-JP: わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
星崎博士: きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
[SCP-4912-JPが急に起き上がる音。続いて、機器の操作音と電子音。]
[星崎博士が、抗議の音を発するも言葉になっていない。]
SCP-4912-JP: (星崎博士を遮って)ちょっと、これ見なさいよ星崎さん!私のアウラがもうこんな!この様子ならきっとカウフォームの変質にも成功したわね!私の魂にアドゥラフローが流れ込んでくるのを感じるわ!
SCP-4912-JP: ついに星の手を盗んだわ!星崎さん、夜になったら裏山の頂上にいらっしゃい!この手の力を見せてあげる!財団の人は誰も呼ばないでね。邪魔されちゃ困るのよ。
[SCP-4912-JPが走り去る音。音声記録を行っているスマートスピーカーが星崎家から持ち出されたため、音量減衰が無い。]
[SCP-4912-JPの鼻歌。Evolution of scienceという楽曲であると特定された。]
星崎博士: あの!うちのスマートスピーカー勝手に持ってかないでくれます?
SCP-4912-JP: ちっ。
[スマートスピーカーの落下に伴う衝撃音。]
SCP-4912-JP: じゃあまた夜会いましょうね!くれぐれも誰も連れてこないようにするのよ~~~!
[SCP-4912-JPが去る。]
星崎博士: 本当に何なの?
付記: 事案終了後、星崎博士は財団へ通報し、機動部隊とともに███山へと向かう旨の進言を行って承認されました。
補遺4: 接触
同日の22:00、星崎博士及び機動部隊η-7("ボン・クレプスキュール")が███山頂へと向かいました。星崎博士が先行してSCP-4912-JPと接触し、対象を油断させた後に機動部隊員が確保を行う手筈です。
映像記録4912-JP-003
星崎博士: 記録開始。現在███山の頂上に接近しています。
機動部隊員: なるべく早くお願いします。本部によれば、もう既に複数の星が消失しているとのことです。
星崎博士: 了解。
[星崎博士が山を登る。しばらくすると山頂に到着し、視界が開ける。SCP-4912-JPが椅子を二脚並べて座っており、星崎博士に気づくと手を振って迎える。]
SCP-4912-JP: おーい星崎さん!こっちよ!
星崎博士: 今行きます!
[星崎博士がSCP-4912-JPの隣の椅子に腰かける。]
SCP-4912-JP: 何してたのよ、遅いじゃない!ちゃんと一人で来たんでしょうね?
星崎博士: すみません。もちろん、私だけですよ。
SCP-4912-JP: そう、ならいいのよ。それよりこれ見てちょうだい!ほら、星がもうこんなに!これだけ盗めれば、一つ一つはもう文字通り星屑みたいなものね!
[SCP-4912-JPの持つバケツに、色とりどりの宝石が入っている]
星崎博士: うわあ、綺麗ですね。でも、こんなに取っちゃって大丈夫なんですか?
SCP-4912-JP: そんな心配しなくても大丈夫よ。こんな満点の夜空なんだから、星がいくつか消えても誰も気づきやしないわよ。昔っから、「星は万戸に臨みて動き」6っていうじゃない?そもそも星なんて瞬くものなんだから、見えなくなったところでなのよ。
SCP-4912-JP: この星たちもね、それぞれ個性があって面白いのよ!例えばこれとか見て、かに座のあたりの星雲なんだけど、このセンサー近づけると鳴動してるのが分かるのよ!
[SCP-4912-JPがバケツから取り出した猫目石に不明な機器を近づけると、パルス信号が検出される。その間隔はSOS信号と一致している。]
SCP-4912-JP: ね、凄いでしょ?宇宙ってロマンなのよ!これは高く売れるわ!
星崎博士: でも、戻さないと宇宙の重力関係とか崩れてしまうんじゃ…
SCP-4912-JP: 心配しすぎよ。もしそうなったとしても、宇宙はここからすっごい遠いのよ?大丈夫大丈夫、別に困ることはないわ。
星崎博士: そうでしょうか。…そういえば、以前言っていた「SCPちゃん」ですが。
SCP-4912-JP: あなたあの子のこと知ってるの?
星崎博士: うちのサイトに収容されたとは聞いてますが、それだけです。でも、うちの子が少し気になることを言っていて。
SCP-4912-JP: 何よ?
星崎博士: [SCP-912-JPの口調を真似ながら]「その目が見えない子って、█姉ちゃんのこと?█姉ちゃんの目なら、星の女神さまがいつか返してくれるよ。」と。
SCP-4912-JP: 星の女神様… なら、今度会ったときはそれも盗まないとね。
星崎博士: また何か盗む気なんですか?一応うちの子がその神様にお世話になったので、もう少し平和に解決してほしいんですけど…
SCP-4912-JP: わがまま言わないの。[星崎博士の抗議を静止して]ほら、もっと星を盗むわよ。
[SCP-4912-JPが星空に手を伸ばし、何かまさぐるようなしぐさを見せる。]
SCP-4912-JP: あら?何かしらこれ。なにかとてつもないパワーを感じるわ…
[SCP-4912-JPの手に、黒々とした石が握られている。]
SCP-4912-JP: なによこれ、ただの石じゃない!でも私の感覚に間違いはないはず。このアウラ、きっと秘めている力は本物だわ!
星崎博士: お気楽でいいですね。
SCP-4912-JP: 何か言った?
星崎博士: いえ、何も。今取った星はどこの何なんですか?
SCP-4912-JP: ああ、それなら調べられるわよ。星座票のアプリを開いて、星のあった方に向けるだけ!
[SCP-4912-JPが自身のスマートフォンを夜空に向ける。]
SCP-4912-JP: あら?おかしいわね、何もない。
星崎博士: 何もない?(スマートフォンを覗き込んで)…本当ですね。ぽっかり穴が開いたみたい。
SCP-███による遠宇宙観察記録:
どこか遠くの宇宙で、恒星の紅き冠 ニハルの名を冠するものらは困惑していた。
彼らの光、そのウサギのような純白の体から生ずる光をもってしても倒せぬ怪物、大いなる黄昏をもたらした宇宙の闇の根源たるセクドの取り巻きが、突如として消失したからである。
かつて宇宙のほとんど全ての命を滅ぼしたセクドは、遥か長い年月を経てもなおその力を衰えさせることなく存在していた。
その力はあまりにも強く、例え取り巻きであっても近づいたものは生きては帰れないだろう。
彼らの前哨、オリオン腕のブラックホール密集地帯で、ニハルの信者たる戦士がその拡大を辛うじて食い止めていた。
しかし、彼らは、天の星から光を奪い、永遠の孤独を齎した闇の子らは一瞬にして消え去ってしまった。
…いったい何処へ?
SCP-4912-JP: まあ別に何だっていいじゃない。バレないわよ!
星崎博士: 本当にそうでしょうか?
[周囲の木々の間から機動部隊が姿を現す。SCP-4912-JPはすでに包囲されている。]
SCP-4912-JP: 星崎さん、騙したのね!
[星崎博士がSCP-4912-JPから離れ、代わりに機動部隊長が接近する。]
部隊長: ご同行を。
SCP-4912-JP: 嫌よ!せっかくこんなに星を盗んだんだから!
SCP-4912-JP: そっちがその気なら、こっちにだってやりようはあるのよ!この最強の石のパワーを食らいなさい!
[SCP-4912-JPが先程取得した黒い石を取り出すと、それは突如として黒色に発光を始める。]
[黒い光は強さを増し、SCP-4912-JPの姿を覆い隠す。SCP-4912-JPが苦痛の叫び声をあげるが、それに混じって起源の不明な呻き声が聞こえる。]
SCP-4912-JP: (しわがれた声で)忌まわしい者どもめ。
部隊長: 誰だお前は!
SCP-4912-JP: 我は宇宙の反逆者。この星に大いなる黄昏を齎す者。そしていつか再び君臨なさる根源たる闇、セクド様に仕えるものである。(以降SCP-4912-JP-2と呼称)
部隊長: よぉく分かった。総員攻撃開始!
[機動部隊が射撃を開始するが、SCP-4912-JP-2に有意な影響を与えられているようには見えない。]
SCP-4912-JP-2: そんなちんけなおもちゃで我を倒せるものか。こやつの身体が妙に馴染んでいるからな、忌まわしきVidnepaでもない限りやられんわ!
SCP-4912-JP: 助けて星崎さん!撃たないで!痛みだけ全部こっちに来てるのよ!
SCP-4912-JP-2: おお、そうだった。ダメージは全部こやつの意識に飛んでいるから、無駄な攻撃は苦しみを増すだけだ…
機動部隊長: そんなこと知るか。どうせそいつも確保対象だ、少しくらい痛めつけて従順になってもらわないと困る。攻撃続行!
[部隊は攻撃を続けるが、効果はない。絶叫が大きくなる。SCP-4912-JP-2が前進し、闇が拡大する。闇の中から細く幽かな人型の影が生じ、機動部隊員に襲い掛かる。]
機動部隊員: 星崎博士!何か打開策はありませんか!
星崎博士: さっき言ってたビドネパってのが鍵かも。正直助けたくはないけど…
[SCP-4912-JP-2が更に前進し、複数人の機動部隊員が闇に飲み込まれる。飲み込まれたものはもはや姿を現さない。人型実体が迫っている。]
機動部隊員: そんなこと言ってないで!
[星崎博士が手元の端末で財団データベースを閲覧し、地球外探査研究部門の項目に目を止める。]
星崎博士: あった!ビドネパは神秘的な地球外種族、地球のウサギと凡そ物理的に類似している、3つの主要グループに分裂していて、アルネブ、ニハル、グリーゼの3柱の最高神達によって導かれている。アルネブの墓は太陽系の青い惑星にあって、墓とそれを守るビドネパがSCP-ES-191に指定されている…
星崎博士: 司令部!スペイン支部に連絡を取ってSCP-ES-191に救援要請を!
司令部: その必要はありません。先程ES支部から連絡があり、SCP-ES-191のビドネパらがこちらに向かっていると伝えられました。衛星観測データによれば、現在韓国上空を高速で飛行中の小型実体が複数見られます。
星崎博士: 了解。機動部隊の皆さん!増援が来ます!
[機動部隊員が空を見上げると、9本の光の筋が夜空に光っている。それらは次第にこちらに近づいてくる。]
SCP-4912-JP-2: そんな馬鹿な。辺境の星に奴らがこんなに早くたどり着けるはずがない!
星崎博士: 残念だけど、この星にはアルネブとかいう神様のお墓があるんですって。
SCP-4912-JP-2: アルネブだと?あの腰抜けか?そっちこそ残念だったな。やつの信奉者は暴力には反応しない。だから…
[SCP-4912-JP-2が手を空に伸ばすと、その先から暗黒が生じる。夜空に黒い穴が開き、どこからともなく発生した稲妻が光の筋に当たる。]
[光の筋が速度を増し、SCP-4912-JP-2目掛けて接近する。その先から青色の声が生じ、SCP-4912-JP-2が苦悶する。]
星崎研究員: えっと、私の見てるファイルによれば、アルネブに属するビドネパは全ての生命の守護者であり、必要な時には自身の生命を犠牲にしてでもそれを守るらしいですよ。
SCP-4912-JP-2: そんなはずはない!先の大戦ではあんなに憶病だったのに!
[SCP-4912-JP-2がビドネパらに手を向けると、局所的な重力異常が生じる。]
[地面が変形し、ビドネパらに多大な圧力を加えている。しかし、周囲の財団職員らは影響を受けていないように見える。]
[ビドネパがSCP-4912-JP-2に向けて光と声のパターンを発する。後の解析では、認識災害の兆候が確認された。]
[SCP-4912-JPの絶え間ないしわがれた絶叫。SCP-4912-JP本来の人格の叫びは止んでいる。]
[SCP-4912-JPの身体から闇が放出される。それらは空に開いた黒い穴に昇っていき、消失する。SCP-4912-JPが地面に座り込む。]
[一体のビドネパがSCP-4912-JPに近づき、耳元で何かを囁く。SCP-4912-JPは呆けた様子で頷く。]
星崎博士: 今、何と?
SCP-4912-JP: その手は私たちの神のものだから、返してくれって
[部隊長がSCP-4912-JPに近づき、拘束する。]部隊長: SCP-4912-JPを確保。これより帰投する。
[SP-4912-JPが昏倒する。]
[機動部隊員が、SCP-4912-JPによって取得された宝石を回収しようとするが、それらは触れたとたんに崩れていく。]
[崩れた宝石は光の波となり、上昇していく。夜空に光が徐々に戻る。]
[記録終了]
補遺5: 収束
SCP-4912-JPは確保され、星崎研究員による聴取がなされました。しかしこの時点でSCP-4912-JPは異常性を失っていたため、経過観察の後に解放されることが決定しました。またこの際SCP-4912-JPの希望により、収容状態にあったSCP-███が立ち会いました。
音声記録4912-JP-002
SCP-███: お姉さん!
SCP-4912-JP: SCPちゃん!私も今はSCPだから、どっちのこと言ってるのか分かりにくいけど…
SCP-███: お姉さんも?じゃあ、名前お揃いだね。
SCP-4912-JP: ほんとね。また会えて良かったわ。財団の人に変なことされなかった?…ちょっと待って、あなた今、話してないのに私に気づかなかった?
SCP-███: うん、目がね、見えるようになったの。こないだ急に視界が暗くなってって、神様が出てきて、私に普通の目をくれて…
SCP-4912-JP: そう、良かったわ。あたしもこないだ倒れたとき神様に会ったから、その時あなたに目を返してあげるよう頼んでおいたのよ!
星崎研究員: あの、そろそろインタビューを始めてもよろしいですか?
[供述内容は本報告書ですでに記述された経緯と一致していたため省略]
[星崎研究員がインタビュー室を退室する。部屋の前で星崎博士が待っている。]
星崎研究員: やあ。
星崎博士 お疲れ様。聴取はどうだったの?
星崎研究員: いろいろ分かったよ。彼女、最後に昏倒した時に神様に手を返す夢を見たらしいんだ。恐らく異常性喪失はこれによるものだろう。
星崎博士: その神様から手を盗んだのがそもそもの原因だけど、怒られなかったのかしら。
星崎研究員: さあね。彼女自身あんまり覚えてないらしい。ただ、何となく怖かった記憶はあるそうだ。あと、今回彼女が盗んできたものがセクドの取り巻きだけで良かったよ。もしセクドが来ていたら、地球は一瞬にしてこの宇宙の空虚な暗黒の一部になってただろうから。
星崎博士: そうね。それから、ビドネパにも感謝しないと。最後に全部収めてくれたのは彼らですもの。
星崎研究員: だな。ああ、それからもう一つ。
星崎博士: 何?
星崎研究員: 彼女、もう星は盗まないってさ。
補遺6: 経過
SCP-███を財団サイトで収容した場合のSCP-4912-JPの行動が予測不能であり、また両者が異常性を喪失していることから、SCP-███はSCP-4912-JPと共に自宅での経過観察を行うこととなりました。その後SCP-4912-JPの住居の表札が"SCP"に変更されましたが、財団により修正されました。この件に関する抗議はすべて却下されます。またSCP-4912-JPは解放後、岩石や宝石に対して若干の恐怖心を感じるようになったことがカウンセラーより報告されています。また自宅で種類の不明なウサギ7の飼育を開始し、「これで星を盗んでも大丈夫よぉ〜!」と叫ぶ様子が観察されました。対応は現在協議中です。



