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特別収容プロトコル: 80人体制の研究者グループが、ユーコン川河口で内臓の無いマスノスケを捜索する任務に就いています。財団ウェブクローラは報道記事、釣り関連フォーラム、チャットサイトなどを走査し、生まれつき内臓が欠落したサケの報告がないかを探ります。
説明: SCP-4927はユーコン川で毎月発生する異常現象です。
毎月18日の朝、ユーコン川河口1のマスノスケの個体数が突然増加し、クロンダイク川2に向かって移動し始めます。目的地に到達すると、これらのマスノスケは次回のSCP-4927事象まで消失します。
SCP-4927の結果として出現するマスノスケ (SCP-4927-1) は、筋肉組織と呼吸器系以外の内臓や体内器官を有しません。更に通常よりも速く泳ぐことが可能であり、ユーコン河口からクロンダイク川までの移動に想定される日数は、平均が3ヶ月であるのに対し、17~25日です。
特筆すべき点として、全てのSCP-4927-1個体の血液はモーターオイルに置換されています。
補遺 4927.1: 発見
SCP-4927は2022年7月26日、財団の研究員2名3が、アラスカ州のサイト-94から22km南方、ユーコン川沿岸のある地点を訪れて釣りをした際、初めてアノマリーに分類されました。
問題の地域におけるマスノスケの野生個体数は2015年以降減少していることが知られていたにも拘らず、研究員2名は7時間で82匹を釣り上げました。しかしながら、魚を切り開く段階になるまでは、異常性は注目されませんでした。
この後、異常現象の兆候を見つけ出すために、機動部隊ベータ-94 (“北極星”) がこの地域の長期的な調査任務を課せられました。本稿執筆時点では、ベータ-94は何らアノマリーを発見できていません。
補遺 4927.2: 更新 2022/09/17
2022年9月17日の朝、SCP-4927事象が報告されました。この際、2匹の生きた魚 (SCP-4927-1個体1匹、キタカワヒメマス1匹) にGPSマイクロチップが移植され、ユーコン川に放流されました。
当初は如何なる異常も報告されませんでした。しかしながら、3日と2時間が経過した後、キタカワヒメマスが泳ぐのを止めたと報告があり、SCP-4927-1個体は通常の遡上コースを泳ぎ続けました。キタカワヒメマスは、アラスカ州西部の小集落、ピトカス・ポイントの南東31kmにある不特定の場所で移動を停止していました。
この後、MTF ベータ-94所属の研究チームが現地調査に派遣されました。続く4時間32分にわたって、チームは川岸でアノマリーを捜索しました。しかしながら、近隣で異常事象が発生した形跡はなく、決定的な結果を得るには至りませんでした。
その代わりに、キタカワヒメマスが止まったと推定される地点の3km西方で、魚の鱗、肺、内臓の塊がマイクロチップと共に発見されました。鱗と内臓の中からは、オイルに塗れている鋼鉄製の錆びたナイフが発見されました。サンプル調査の結果、これらはSCP-4927-1個体とキタカワヒメマスの鱗であり、ナイフは完全に非異常だと確認されました。
補遺 4927.3: 事案記録 / SCP-4927-A
2022年10月18日、ピトカス・ポイント近隣の砂漠地帯を探検していたハイカーの集団から、メンバーの1人であるディラン・ラミレスが離れ、数枚の風景写真を撮りに行きました。5分後、チームの隊長であるロバート・キーズは、ラミレスが突然18匹の生きたマスノスケに変化し、不明な場所に向かって跳ねていったと報告しました。
当該事案に危機感を抱いたチームはクーパー・ベイの町に戻り、ラミレスが“不可解な”状況で死亡したと報告しました。このため、町に派遣されたMTF ベータ-94がハイカーたちを尋問し、記憶処理を施しました。キーズは尋問中、周辺の木々に悪臭を放つ未知の油性物質がこびりついており、彼自身もチームも重々しい足音や何かの摩擦音を聞いたと述べました。
これを受けて、後日SCP-4927-Aと指定される事案発生地点の探査が行われました。
SCP-4927-Aはピトカス・ポイントの南東22kmに位置する狭い領域の名称です。毎月18日、SCP-4927-Aの領域内にある全ての物体4は突然SCP-4927-1個体群に変化し、最も近場の汀線に向かって跳ねていきます。
SCP-4927-1個体がSCP-4927-A内に24時間留められた場合、その期間が満了するまでは変化した状態を維持します。また、SCP-4927-A内にある既知の物体は、地面に埋没して動かすことができない長さ10mの真鍮製の長杖、以下SCP-4927-Bのみです。SCP-4927-Bの起源や用途は不明ですが、SCP-4927-Bと接触した者はSCP-4927-1個体群に変身することが判明しています。
SCP-4927-Aの発見に続いて、近くの木から、以下の文言を記した真鍮製のプラカードが見つかりました。
私は悔い改めます、これこそ私の壊れた生命の泉であるが故に。引き裂かれ、打ち砕かれているが故に。
それは肉と、血と、裂けた皮膚で鋳造されています。
それでも尚、木立の美しさの下で、平穏に在り続けています。
そして、私は涙します、これらは私の滑石の心を受け入れる真鍮の翼であるが故に。
澄んだ水が流れる貴方の川が、我が身を油で彩ってくださると信じるが故に。
そして、私は貴方の緑豊かな王座の名に於いて飲みます、我が鉄甲の君主よ。
このプラカードについて問い質されたハイカーたちは、“クマの毛皮を羽織った男”がそこに残したものだと述べました。
補遺 4927.4: 事案記録
2022年11月18日の朝、SCP-4927関連現象を検出する2回目の試みとして、5匹のSCP-4927-1個体にGPSマイクロチップが取り付けられ、ユーコン川河口に放流されました。
放流から2時間後、全ての個体は通常通りに移動を停止しましたが、今回はSCP-4927-Aの南東2km地点の岸辺で動かなくなっていました。これを受けて、MTF ベーター94に所属する3名のエージェントから成るチームが領域の調査に派遣されました。
調査開始から43分間、エージェントたちは特段の異常を報告しませんでした。しかしながら、川沿いに歩いていた彼らは、厚手の衣服で身体を覆った1体のオートマトンを発見しました。エージェントたちの報告によると、このオートマトンは槍と木製のソリを所持しており、魚を捕まえようとしていました5。特筆すべき事に、オートマトンは魚を捕まえる度に切り開き、オイルを絞り出しては幾つかの銅製の水筒に詰め、革製のバッグに収納しました。
オートマトンの衣服には複数のシンボルが描かれていましたが、魚を数匹捕まえた時点でその場を離れたため、エージェントたちは大半のシンボルを撮影できませんでした。エージェントたちはこの際、当該オートマトンが放流された全てのSCP-4927-1個体を持ち運んでおり、その所在地は既に財団データベースに捕捉されているため、敢えて追跡しないように指示されました。
以下は、サイト-94の財団職員が再現したシンボルの1つです。
20分後、2体のオートマトンが過去に目撃例の無い“金属質な”カヌーを押しながら現れ、最初のオートマトンが漁をしていた岸辺に接近しました。これに続いて、最初のオートマトンは漁を止め、モーターオイルをカヌーと交換すると、槍を持ってカヌーに乗り込み、川を下って去りました。
残された2体組のオートマトンは、モーターオイルの水筒を開け、服を脱ぎ、オイルを身体の細部に注ぎ込む様子が観察されました。その後間もなく、2体組は来た道を通ってその場を去りました。
更なる調査が進行中です。