SCP-4935
評価: +6+x
監督評議会命令
以下のファイルはクラスB時間異常を説明しており、
レベル4/4935機密です。
許可のないアクセスは禁止されています。
4935
アイテム番号: 4935
レベル4
収容クラス:
euclid
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
caution

header.png

SCP-4935。


location.png

サンクル自然保護区、南アフリカ、コンゴ民主共和国。

特別収容プロトコル: SCP-4935へのアクセスポイントは、利用時を除き封鎖、監視されます。許可のない限りSCP-4935へのアクセスは禁止されます。許可は、サイト-77の収容管理者1によってのみ、またSCP-4935の性質の継続的な研究を目的としてのみ与えられます。

説明: SCP-4935は2つの現象の総称です。第一に、SCP-4935-αと呼称されるコンゴ民主共和国のサンクル自然保護区内に存在する時間異常です。異常は視覚的に識別でき、観察者がそれに接近すると、異常から離れた光が赤方偏移して見えます。逆に、異常とその周辺領域は外部の観察者には青方偏移して見え、異常に接近する存在はその中心の不明瞭な点に向かい青方偏移して消滅するように見えます。同じことは反対に異常から離脱した存在にも当てはまり、引き返した対象は標準的な時空の流れと波長が一致するまで赤方偏移して見えます。

SCP-4935-α-PRIME(以下、単にSCP-4935と呼称)は、SCP-4935-αの異常を通過した先の地点です。SCP-4935内の空に見える星の分析から、SCP-4935は現在からおよそ13万年後の地球であることが判明しました。地球の大気組成の変化により、SCP-4935内の空気には現在よりも著しく多量の酸素が含まれており、結果として多数の巨大植物が存在します。SCP-4935におけるSCP-4935-αの周辺エリアは木立であり、樹木の多くは高さが200mを超えています。

SCP-4935には一見したところ、2つの重要な例外を除き、知的生命体が存在しません。第一の例外は、音声学的に「アコット」2と自己認識する、秘密主義で高度な擬似ヒューマノイド実体の民族です。これら実体は、地球上の暗く、林冠に覆われた森林に少数で、大抵は地下のアーチ型天井の部屋、またはその他同様に保護された構造に居住しています。彼らは概ね現代人に類似しており、細長い頭蓋骨、大きく、深く埋められた目、小さい口と鼻、人よりも頑強でない胸と腹部、長く痩せた腕と脚を有しています。

アコット3は自らを、アフリカ大陸の中心近くに存在する巨大な機械複合体の上に位置する、同様に巨大な4浮遊する黒い立方体の保護者および守護者であると説明しています。この立方体は主にシリカと炭素で構成され、全体に微量の有機化合物が含まれており、「コレカラHereafter」と呼ばれ、アコットにとって宗教的に重要な存在です。アコットによればコレカラは、建造当時地球上に住んでいた約930億人の人々の安息の地として建造され、その全員が生物学的に死亡することが不可能となっていました。時が経ち、これらの人々が絶え間なく歳を取り続けるにつれて、いくつかの大規模な戦争が勃発し、種族全体が狂気に陥っていきました。コレカラは、地球の人々が死亡する能力が種に復活するまで、停止状態に入る手段として設計されました。アコットはコレカラを維持し、地球が経験した生物学的変化の性質を研究し続けることを委ねられた存在でした。この出来事は恐らく仮説上のΩK-クラス("死の終焉")シナリオであったと考えられますが、そのような出来事の生物学的トリガーは未だ不明です。

アコットは全体として、時間の経過とともに身体が劣化する衰弱遺伝性疾患に罹患しています。これを相殺するためにこれら実体は大抵、低下した機能を強化するように設計された技術で身体を増強しています。しかし、この遺伝性疾患の最も重大な影響は、アコットと三次元空間との繋がりが希薄となったことです。過去のある時点での出来事5により、アコットは2つの空間次元内に同時に存在します。高度な技術の使用により、彼らは基底次元に自身を「固定」することができましたが、この状態は依然として身体に相当な負担となっており、固定が失敗した場合は暴力的で苦痛を伴う次元移動に依然としてさらされています。アコットはこの代替次元を「ハゲシイキョウフHigh Horror」と呼び、この次元についての議論は厳格にタブー視されています。

第二の例外は巨大な6サソリ型実体(SCP-4935-β)で、現在コレカラに絡み合い、その外壁を貫こうとしています7。 SCP-4935-βは本質的に生物学的であり、アコットによって「シタイノチチCorpse-Father」と呼ばれ、およそ600年間8地球上に存在しています。この実体の起源は不明です。この実体は、キチン質の表皮を通して自身の幼虫としての転生体を大規模な群体で産卵することが可能です。これらの幼虫実体は攻撃的で多数集まると危険ですが、寿命は短いです9

アコットは、SCP-4935-αは種としてSCP-4935-β実体と戦闘するために必要な身体能力や技術的優位性をもはや持たないため、管理区域内の直線的な時間の流れを破壊するよう設計された一連の実験試行機械により存在していると主張しています。現在まで、これらの実験は失敗していると考えられています [付記: 更なる情報は補遺4935.6を参照]

補遺4935.1: モナッカー博士のメモ

SCP-4935に関する覚書
イザヤ・モナッカー博士


私たちは先週の木曜日、現地時刻07時25分頃、アノマリー内の人型実体との接触を確立した。彼らの文化全体が人目を避けて築かれているように見えるように、彼らは信じ難いほど秘密主義だ。最初の交流の最中、やり取りをしていない数人は周囲で一切動かずに立っていて、まだそこにいることを積極的に思い出そうとしないと見逃しかねないほどだった。極めて奇妙な感覚だ。

言語については、想定に反し結局問題ではなかった。彼らの住む世界は我々の10万年を優に超える先の未来で、口頭言語を必要としないほどに進化している一方、キューブの中の誰とでも交流する必要に備えて、口頭での発話を再現するのに必要な技術を見たところ持ち続けているようだった。「英語」や「スペイン語」を再現するのではなく、聴者が最も馴染み深い言語での音声的返答を作り出す一種のデルタ波だ。彼らは研究用にいくつかのユニットをくれた。これをリバースエンジニアリングできたらどれだけ役に立つことか、想像もできない。

彼らは自分自身の名前を持っているが、何らかの理由で適切に翻訳されない。我々は「アコット」という語を用いているが、これはそれが我々の理解できる中で最も近い発音だからだ。彼らはそれを「墓を掘る人」の意だと言うが、この言葉にはかなりスピリチュアルな強調があり、文脈がないと我々にとって何の意味も持たなくなる。彼らの言語はこのようなものだ - 我々は隣接した(恐ろしく遅れてはいるが)神経生理学を有しているため彼らとコミュニケーションできるが、彼らの発言の多くはこの根深い、翻訳されると意味を失う神秘主義に基づいている。コミュニケーションは上手く取れるようになってきているが、彼らの文化の真の理解にはどこかでそのギャップを埋める必要がある。

しかし、私はますます前に進んでいる。キューブ。彼らはそれを「コレカラ」と呼び、彼らにとって深い宗教的重要性を持つ。それについて彼らが知ることのほとんどは伝説を通して伝えられたものだが、私たちはその要点を掴めたように思う。

遥か昔のどこかの点で(もしかしたら10万年以上前、現代に危険なほど近い)、種としての人間は突然、生物学的に死ぬ能力を失った。アコットはこれらの人々をセンジンForerunnersと呼ぶ - 不死性を獲得し、社会を根本的に変えた人類を。その地球上の大都市の多くはその後500年程度で建設されたが、それは今や全て地球の上の廃墟に過ぎない。アコットはまた、手に入れたばかりの不死性と共に星々に向けて出港した航海者たちのことも話すが、彼らについてそれ以外のことはほとんど語られていない。

人々はもはや死ねなくなってしまったため、人口は制御を超えて爆発的に増加した。彼らはどうにか早い段階で制御することができたが、ある時点から出生率は維持できなくなった。資源は酷く不足し、人々は飢え始めた。それでもやはり死ねなかったので、実質的にその後の数千年はただ苦しんだようだ。さらに多くの人々が地球を去ったが、最終的にはロケットを製造するための材料を使い切ってしまった。彼らの技術は劇的に進歩したが、その苦闘は彼らの息を詰まらせた。社会は崩壊し始め、資源戦争が勃発した。これらの戦争で死者は一切出ず、ただ意識が付いたぐちゃぐちゃの体が増えていくだけだという事実は、事態をさらに悪化させた。彼らは最終的に、誰かを爆破しても死ぬわけではなく、ただその意識を支離滅裂な地獄へと散らすだけだと気付いた。彼らが究極の苦痛と考える運命だ。

ところで、これはアコットが造られたのと同じ頃だった。フラビウス博士が次に報告書を提出する予定だが、それについてのより詳しい情報が含まれているはずだ。言うまでもなく彼らもまた死ぬ方法を探していたが、彼らの実験はかなりはっきりと裏目に出た。

いずれにせよ、戦争が全人類の自由を奪った後は、しばらく世界はある種の沈黙に入った。私が話したアコットのアーキビストは、中世暗黒時代の方がまだこの期間よりもちゃんと記録があると言った。もし動き続けていた計時装置がなければ、その時間は全く存在しなかったかのようになっていただろう。

また、キューブを誰が創ったのか、どこから来たのかについての記録もあまりないが、それが地球外のものであることは間違いない。眠りの中で人生から逃避しようと世界に提案した13人のグループがいた。キューブは彼らに食事を与え、掃除し、眠らせ続け、道のどこかでまた死ぬことができる時があれば、キューブは彼らを殺すだろう。キューブに招かれなかったのは最初のアコットだけだった。彼らはキューブに入るにはあまりにも脆弱で、彼らのかつての行いのために既に社会から排斥されていた。彼らは世界を浄化し、キューブを見守るために取り残され、アコットの世代は10万年以上にわたりその仕事をしてきた。

あなたがこれら実体と対話することになった場合に備えてはっきりさせておくと、彼らは相当に歳を取っている。彼らも死ねないので、次元変化で身体がひどく破壊され、崩壊して動き続けられなくなるまで彼らは本質的に生き続けるだけだ。注意しておきたいのは、彼らはまだ意識を持っているが、もはや機能していないということだ。彼らは人口をアクティブな状態に保てるのに十分な数しか繁殖しないが、その社会の最高齢のメンバーには20,000歳を超える者もいる。彼らは時間の感覚が違う。そしてそれに話しかけるのは難しい。私たちが話しかけた通訳のほとんどはほんの数百、数千歳だった。

いずれにせよ彼らは長い、長い間そのようなことを続けてきた。つまり、シタイノチチが現れるまでは。

補遺4935.2: 探査試行EX.4935.03転写

付記: 以下の探査試行は、アコットらとの接触から間もなく、アコットにより「コレカラ」と命名された機械の性質が判断された際に実施されました。この探査を実施したのは機動部隊イプシロン-45("ベースジャンパーズ")でした。

この試行には以下のエージェントが配属されました。

  • E-45 マーフィー - チームリーダー / 火力支援
  • E-45 サントス - 火力支援
  • E-45 リー - 火力支援
  • E-45 ジャクソン - 兵站支援
  • E-45 アイレス - 通信

E-45 マーフィー: マイクを付けよう。全員挿したか?

E-45 リー: 入れました。

E-45 ジャクソン: チェック。

E-45 サントス: マイクチェック。

E-45 マーフィー: 通信の聞こえ方はどうだ?

E-45 アイレス: 全員グリーンです。行って大丈夫です。

E-45 マーフィー: よし。記録のために、俺たちはメインの立方体構造体の下の複合体に取り掛かっている。ここに住む者たちはそれを「ハコブネArk」と呼ぶ。俺たちはそこに入り、偵察し、いくつかサンプルを掴んでくるなどせねばならない。

E-45 リー: いつも通りですね。

E-45 マーフィー: そう。いつも通り。離れるな、そしてここから無事に抜け出そう、なあ?

チームは丘を下り、付近の森を離れる。彼らの前、「コレカラ」の下には構造体がある。それは小都市ほどの大きさがある機械の上部構造である。長い金属の伸展部が、上空の立方体に向かって伸びている。生命の兆候はない。

E-45 サントス: 本当にありゃ10クソデカいな。

E-45 マーフィー: そうだな。既に、チームをそこに集めてあれをもう少し詳しく調べてみる計画だって出てる。

遠方で、立方体の背後の空から何か重いものが落下し、下方の上部構造のどこかに着地する。

E-45 アイレス: あれは何でしょう?

E-45 マーフィー: ここから、あー、ここからじゃ見えないが、立方体の反対側にはこの大きくて醜悪なやつがいる。巨大なサソリか何かだ。立方体に入ろうとしている。数百年ぶり、だそうだ。落ちてくる破片に当たらないよう、俺たちはハコブネのこっち側にいるよう努めよう。

チームは上部構造に接近する。金属の塔の高い防御線が構造体の外層周囲に広がっている。

E-45 ジャクソン: よし、メクラネズミ11の技術でどうできるか見てみよう。

E-45 ジャクソンは地面に弾筒を設置し、空中に銛を放つ。銛は障壁の向こう側の地面に突き刺さる。E-45チームメンバーは電動ハーネスをケーブルに取り付け、ケーブルを障壁の上部に引き上げる。そこに到達した後は、向こう側へと登り、ハーネスを使って滑り降りる。

E-45 サントス: こりゃかなりいいな。

E-45 ジャクソン: ああ、かなり感動してるよ。機動部隊としてネズミが段階的に廃止され始めてから、このすごい装備がいきなり全部自由に使えるようになった。ワイルドだ。

E-45 マーフィー: よし、ここで見てみよう。今俺たちは南東の端にいて、ここから大体…… 300メートルのところに期待できそうな構造がある。そっちに向かってみよう。

チームは付近で最も高い構造体に進む。

E-45 マーフィー: これが実際古くて助かった。当時は建物にまだドアを付けていたからな。今じゃこいつらはある種壁を通り抜けられてしまう。彼らは本当に非物し-

E-45 リー: 待って、聞いてください。

構造内部で金属同士がぶつかる独特な音がする。音は周期的で、大きくない。

E-45 サントス: ここで誰かに出くわすことなんて期待してるか?

E-45 マーフィー: いや。そのドアを開けよう。

チームは構造体に進入するために付近のドアの錆を取り除く。すると、ドアは大きな音を立てて地面に倒れる。

E-45 アイレス: 向こうにも聞こえました。

E-45 リー: 音がしなくなった。

E-45 マーフィー: 中に入ろう。ついてこい。

チームは構造体に入る。内部には、換気塔らしき一連の背の高い空地がある。その底部は見えない。それらを、壁に取り付けられた支持材から吊り下げられた狭い高架通路が横切っている。

E-45 ジャクソン: これは何のために建てられたんだ?

E-45 マーフィー: 終末装置だ。彼らを殺すために造られたが、上手くいかなかった。彼らはその原因についてあらゆる形の理論を持っている。最も一般的なのは、彼らは元々の制作者の意図か何かを理解できるほど賢くはなかった、というものだ。彼らにとってそれは一大事だ - 誇りでもあり、恥ずべきことでもある。

E-45 アイレス: 薄気味悪いですね。

E-45 リー: ねえ、聞いて。またあの音。

再度金属が当たる音がして、今度ははっきりと聞こえるほど近くなっている。

E-45 ジャクソン: あそこ、見て。通路の上。

チームは通路をライトで照らす。およそ20メートル先に、付近の壁から半分突き出た人影が見える。人影は片手を伸ばし、金属管の短い一部分を掴んでいる。この人影は管をゆっくりと壁にぶつけている。

E-45 マーフィー: ハロー? そこにいるのは誰だ?

人影は動きを止める。現存する一つの目が開き、もう一方の目は壁に埋まっている。目は乳白色をしている。チームが接近すると、人影がアコットであることが明らかになるが、時間の経過でその特徴は甚だしく変化してしまっているようである。

E-45 マーフィー: こちらの声が聞こえるか?

不明なアコット:かろうじて声が聞こえる)夢だ。夢だ。別の夢だ。こちらの声が聞こえるか? 誰がこんな夢を見てる?

E-45 マーフィー: 私の名はキャプテン・マーフィー、私たちは探検家のグループだ。わかるか?

不明なアコット: あなた- あなたたちは本物なのか? 私が見えて私の声が聞こえるのか?(休止)あなたたちは私と同じ種族ではない。あなたたちの姿は見えないが、感じられる。誰だ?

E-45 マーフィー: 私たちは旅する者だ。遥か遠くから来た。このエリアを探索中だが - この場所は何だ?

不明なアコット: 私を- 殺せるか?

E-45 マーフィー: 何だって?

不明なアコット: お願い - 手段は持っているか? 私を殺しに来たのか? 私の身体が機能しなくなってきたとき、私はキョウフに落ちたんだ。私はゲリュオンのような勇気はなかった。ゲリュオンは今地獄にいるが、私は怖かったんだ。私はここに、機械の中に来た、自分を保つために、でも余計酷かった。孤独。暗闇。私は独りだ。私は独りだ。私を殺してくれるか?

E-45 マーフィー: それはできない、申し訳ない。私たちはただ探索しているだけだ。この場所について教えてくれるか?

不明なアコット:息切れ)多分、この時間を過ごした後にはわかるだろうと考えてたんだ…… 私はハウシンと呼ばれていた、その名前は聞いたことがあるか? 今もその話をしているか?(沈黙)いや。いや。ここに来てから六千年経ったんだ。今私のことを覚えてる奴なんていない。

E-45 マーフィー: ここはどこなんだ?

不明なアコット: ここが最後の砦だった。私たちは、気高きイリセスとその一行は、シタイのヌシに対抗するためにここに来た。たくさんの人々がいたが、暗闇の中に散ってしまった。私は怖かった。ここに来て隠れて、待ったんだ。

E-45 マーフィー: 六千年 - その生物は六百年前に来たと聞いたのだが。

不明なアコット: 誰がそんなことを言った? 臆病王のベルランか? 彼も間違いなく影の中に消えた。彼らは嘘をつく。嘘つきだ - 私は見たんだ。海が開き、それが深みから這い出てきたその日、私はそこにいたんだ。六千年、知っている。そこにいた。何故彼らは嘘をつく? 彼らはあなたたちに何を求めた - 自分を守るために? 助けを与える? 助けなどない。シタイノチチは必然だ。ゲリュオンは私たちを見捨てた。何が残ってる? 何が残された? 恐らく彼らはその傲慢さで、自分たちがあらゆる選択肢を使い果たした訳ではないとあなたたちが騙されるだろうと考えたんだ。

E-45 アイレス: 何が言いたいんですか?

不明なアコット: 彼らは今必死なことだろう。わかっている。私はそれを、何年も夢見てきたんだ。彼らが最後の努力を費やし、私たちが何らかの形で救われる日を。(休止)死にたい。死にたい。なんで死ねないんだ? なんでこんな単純な慈悲が私たちを避けてしまうんだ?

E-45 マーフィー: この機械には - コントロールエリアはあるか? どうやって操作してるんだ?

不明なアコット: 中央部 - ゲリュオンのハコブネ。そこにある。でも - ハコブネにはもう仕事をさせられない。力を使い果たしてしまった。もう使い道はない。ここに救いはない。

E-45 マーフィー: 理解した。(チームに向かって)前に進もう。

不明なアコット: 待って!どうか、待って。行かないでくれ、お願いだ。とても長かったんだ、この暗闇で - みんなは私のことを忘れてしまった。私はここにおいてかれていつまでも腐っていくだけなんだ、頼む。シタイノチチが私を貫いていくかもしれない、そしたら私はここに独りで、星々が消え去るまでいることになる。何年かかる? 何万? 何億? そんなの- そんなの無理だ。お願い、どうか!

チームはアコットから離れる。対象はチームが通路のさらに奥に進むまで懇願し続ける。少しすると対象は声を出すのをやめ、金属を当てる音が続く。

チームはしばらくの間、テレメトリーを確認したりサンプルを採取したりするために時折一時停止しながらも、機械の内部構造の調査を継続する。この機械は非常に複雑だが完全に不活性であり、チーム以外の音は聞こえない。無関係な対話はこのログから省略済み。

最終的に、チームは一連の照らされた廊下に到達する。彼らは廊下を中央部に向かって進む。廊下はやがて大きな円形の空間に出る。広い空間の中心には、数百メートルの長さがある螺旋状の鋼管でできた、照らされた柱がある。柱の頂点には青鈍色の金属の輪があり、時折薄暗い光を拍動している。この柱の頂点の遥か上方に、上空の黒い立方体の最下部の頂点がある。

E-45 サントス: 恐らくこれがあいつが話してたやつだよな? 壁の中に埋まってた哀れな野郎が。(休止)ありゃ何だと思う?

E-45 ジャクソン: それはまあ結構なことを聞いてくるなあ。(見上げる)多分あれと関係があるんじゃないかな。

チームは構造体に向かって進む。突然、彼らの前に人影が現れる。その人物は明確に若い少年の人間であるが、現生人類とは目に見えて異なる生理機能を有する。E-45 アイレスの装備に取り付けられたセンサーはこの人物が非物質であり、恐らく光または同様のホログラフィックイメージの投影であることを示す。

E-45 リー: マジ-

投影体: ご機嫌よう、旅人さん方12。私の名はゲリュオン、この世界で見捨てられた者たちのエンジニアです。あなた方は我々の最後の安息の地にやって来たのです。我々は無情な創造主により、終わることのない存在の苦しみという名の呪いに囚われていましたが、この機械の恩寵により安らかな死へと解放されたのです。この神聖な地を踏むときは優しくされますよう。

E-45 サントス: 俺たちの声があれに聞こえると思うか?

投影体:E-45 サントスに向かって)もちろんです。当データベースは、我々の埋葬地を通る全ての方の質問に答え、返すように創られています。

E-45 マーフィー: この機械は何をするよう設計されたんだ?

投影体: 私が生まれるよりずっと昔、我々の種は、終わりなき存在の苦しみよりも死の方が望ましい、と総意として決めました。何としてもその目標に達せんと、我々は挑み、失敗しました。この機械は我々の努力の絶頂です。作動すれば、我々の魂を肉体から引き裂き、我々を生かしていると言える糸を断ち切る装置なのです。

E-45 マーフィー: この機械の動力源はどうなっているんだ?

投影体: その情報は当データベースから削除されています。

E-45 ジャクソン 削除? 何だって?

E-45 マーフィー: この装置はいつ起動されたんだ?

投影体: この装置が起動されたことはありません。

E-45 アイレス: 何ですって?

E-45 マーフィー:どうしてそれが起動されたかどうかわかるんだ?

投影体: まだこの星には生きている人がいます。このため、装置が起動された可能性はありません。

E-45 マーフィー:休止)この機械はどうやって造られた?

投影体: その情報は当データベースから削除されています。

E-45 マーフィー:休止)ゲリュオンはこの機械がどうやって造られたと思っていた?

投影体: ゲリュオンは、数世代にわたる最高の頭脳の産物でした。彼の誕生は当時最先端の科学で着想され、続いて彼の精神に刺激が与えられました。目覚めると、彼はこの世界が与えることのできた最高の知識の総集編に触れさせられました。

E-45 マーフィー: 彼はどこでその知識を手に入れた?

投影体: SCP財団が大量のアーカイブを- (休止)申し訳ございません、これ以上の情報は削除済みのようです。

E-45 マーフィー: 今のそれこそ大事な情報だ。(休止)もう一つ。この機械を起動することはできるか?

投影体: ハコブネは現在の状態では本来の目的を果たせません。別のタスクを実行するよう第三者により修正されています。

E-45 マーフィー: それはどんなタスクだ?

投影体: 申し訳ございません、その情報は利用できません。

チームはその後短時間探査を継続するが、それ以上注目すべき情報は得られなかった。アノマリー内部に短期間留まった後、チームは全員回収された。

回収後、探査チームは自分たちが経験した時間と地球上で経過した時間とに遅延があることに気付きました。この不一致のため、アノマリー周辺エリアの時間の流れに関して大規模な調査が行われました。この調査により、アノマリー周辺エリアにおいて僅かに遅延があることが判明しました。

12時00分EST13 2019/1/2 サイト-17 18時57分CAT14 -3分
12時00分EST 2019/1/9 サイト-17 18時57分CAT -3分
12時00分EST 2019/1/16 サイト-17 18時56分CAT -4分
12時00分EST 2019/1/23 サイト-17 18時56分CAT -4分

当調査は進行中です。

補遺4953.3: フラビウス博士の報告書からの抜粋 - "SCP-4935: アコットの人々"

SCP-4935: アコットの人々
ジャン・フラビウス博士


アコットは人類と共通の祖先を辿りますが、正確な日を特定するのは困難です。一般に信じられているのは、種としてのアコットは長き暗黒時代の直前に、彼らが死ねる道を模索するために組み立てた実験の一環として現れた、というものです。初期のアコットは、魂は肉体から分かたれており、(彼らの死に関わる深く根付いた宗教的信念と同様)魂の存在の高次への瞬間的な伝送が行われれば、意識は停止し、死へ「バイパス」できる手段が手に入ると信じていました。

これを達成するために造られた機械は今も残っており、現在のブラザビルにほど近いイル・メバムー島と思われる場所のコレカラの下に眠っています。それは、肉体が自身を放棄し、静かに、動くことなく、死ぬことのない人生を生きる安息の地です。興味深いことに、アコットは、祖先が生ける死者を大いなる機械の霊廟に埋葬せねばならなかったことにちなんで自分たちをそう名付けたと認めています。

この試みが成功したか否かによりませんが - 当時の主任科学者は重大な誤算を犯し、人々の魂を肉体から分離して擬死へと送るのではなく、機械はアコットの肉体と精神を引き裂き、この次元から「ハゲシイキョウフ」と呼ぶ場所へと送ったのです。そして機械は彼らを戻すのではなく、2つの現実を隔てる操り糸の端に彼らを放置したため、彼らがどちらか一方で真に落ち着けることはありませんでした。後にこれを埋め合わせるための機械が造られましたが。快適さとしてはほんの僅かなものでした。アコットは故郷の暗闇と異世界の悪夢に絶えず苦しめられています。

アコットは、長い時が過ぎた後でさえ、その技術が救ってくれると信じ続けています。彼らは、静かに人目につかないように世界を移動し、心だけで互いにコミュニケーションし、人間が一切意図していなかった方法で動くことのできる途方もない機械を造り上げました。しかし彼らは虚弱で、機械は劣化しています。シタイノチチの存在は、既に悲惨な状況を余計に悪化させるだけでした。機械を維持できるほどに健康体のアコットがいなくなり、不死の身体がハゲシイキョウフに全て堕ちる時が(彼らの寿命に比して)間もなくやってきます。

それこそが、SCP-4935-αに分類される時間異常を彼らが作り出した理由と我々は理解しています。彼らは時間がないと知っており、そしてシタイノチチは自分たちを破滅させるだけでなく、コレカラの中で眠っている者たちをも破滅させると知っているのです。どう考えても、それは彼らの種族の破滅を齎すでしょう。だから彼らは、自分たちの祖先がこの脅威から助け出せる方法を持っていないか確認するために、時を超えて呼び戻したのです。

少なくとも、それが彼らの伝えていることです。

補遺4935.4: タナー博士の報告書からの抜粋 - "SCP-4935-β: シタイノチチ"

SCP-4935-β: シタイノチチ
バーナード・タナー博士


以前、SCP-4935-βのような実体を見たことがあります。具体的には、SCP-4812-K実体は類似するサソリ型実体ですが、SCP-4935-βよりも劇的に小さいです。他にも、より大きな外骨格プレート、主尾の端にあるより幅広な返しなど、いくつかの大きな生理学的差異があります。しかし類似点を考慮すると、SCP-4935-βがその世界の将来のある時点で同一の実体である可能性を除外することは困難です。

アコットは、「シタイノチチ」と呼ぶSCP-4935-βについて、それが彼らに差し込んだ楔についての説明以外にほとんど話しません。始める前に、アコットが「死体」と聞こえる言葉を使う時、それは我々の考える意味とは違うことを注意しておきます。我々の知る限り、彼らが「死体」というときそれはスリーパーを指します。コレカラの中にいる人と、地球上であまりに長い間生きてきたために狂気を通り越して一種の覚醒しながらの緊張病に入ってしまったアコットの両方です。これらは「生きて」いますが、アコットは真に彼らが機能しているとは考えておらず、したがって死体と呼びます。

SCP-4935-βは地球外のものではありません。それどころか、アコットはそれが約600年前に「海から這い出てきた」と説明していますが、アコットはそれがありうる話だとは知らなかったようです15。最初のアコットはSCP-4935-βを「千の目を持つ殲滅者」と呼び、実体の頭部は多数の顔が結合したものだと説明しました。私が受けた説明は、SCP-4935-βは人間や動物などの生き物を捕食し、その顔と、どうやらその意識を自身の顔に追加するらしいというものでした。

ここで分断が生じました。SCP-4935-βの調査は、2つの異なる陣営に分かちました。一派は、シタイノチチに取り込まれることは遥か昔の戦争で引き裂かれた者たちよりも一層悪い運命だと信じたアコットでした。彼らはSCP-4935-βの頭部で悶え、叫ぶ顔を見て恐れました。もう一派は自分たちを「シタイノコラCorpse-Children」と呼び、SCP-4935-βこそが救済だと信じていました。彼らは、SCP-4935-βは確かに顔を奪うが、彼らの魂を消し去り、空蝉の束縛から解放してくれると主張しました。

この対立は小さなものではなく、すでに脆弱であったアコットの社会をばらばらにしました。これは、2万5千人のアコット(当時の総人口のおよそ40%)がSCP-4935-βに会うために海へ行進した際に集結しました。予想通りシタイノチチは彼らを捕食しましたが、実体の頭部に彼らの顔が現れると、それらは苦悶し、同胞たちに、助けてくれ、許してくれと叫びました。

残りのアコットはSCP-4935-βを殺そうとし、そのために用いた率直に言って気の遠くなるほど高度な兵器について説明しました。その身体を塵に変えるナノマシン、空からその上に降り注ぐプラズマのロッド、今の我々では不可能だと考えるような核兵器やその他のより恐ろしい策謀。空が晴れて塵が落ちたとき、アコットは貯蔵武器を使い果たし、SCP-4935-βはびくともしていませんでした。やがてそれはコレカラに到達して噛み砕き始め、中の人々にまでたどり着くように思われます。アコットへの冒涜であるどころか、コレカラの中のスリーパーを守れないことは彼らの最も神聖な使命に背くことであり、そのまま事を起こらせるかなど議論の対象にもなりません。

それを頭に入れておくと、アコットの絶望の全体像がはっきりとします。彼らはハゲシイキョウフと呼ぶ場所、機械の劣化、コレカラの魂を見守る重責、そして現時点で殺すことのできないシタイノチチの間に囚われています。彼らは既にこの最新の脅威の眼前に立たされていましたが、彼らの状況は計り知れないほど深刻なものとなっています。

これが我々をSCP-4935-αに導くのです。我々が初めて彼らの時間と我々の時間の境界線を越えたとき、彼らは過去に助けを求めるためにアノマリーを造ったと言いましたが、当時は疑わしく考えていました。弱体化している上に数も少ない今でさえも、彼らは瞬く間に我々を破壊できうるでしょう。我々は彼らの技術成果から十万年も離れています。彼らのできなかったことの何が我々にできるというのでしょう? それから話が変わり、アノマリーはSCP-4935-βへの兵器試験の失敗の結果だと言われ、より合理的な話ではありますが、それでもなぜ最初に嘘をついたかの説明にはなりませんでした。彼らはその嘘に二度と触れることもありませんでした。

その理由がわかりました。きっとリーガル博士が報告書に書いているでしょう。

補遺4935.5: SCP-4935近傍の時間遅延レポート

対照時間 日付 場所 遅延時刻 遅延時間
12時00分 EST 2019/1/30 サイト-17 18時55分 CAT -5分
12時00分 EST 2019/2/6 サイト-17 18時53分 CAT -7分
12時00分 EST 2019/2/13 サイト-17 18時44分 CAT -16分
12時00分 EST 2019/2/20 サイト-17 18時31分 CAT -29分
12時00分 EST 2019/2/21 サイト-17 17時56分 CAT -64分
12時00分 EST 2019/2/22 サイト-17 15時25分 CAT -215分

注記: データ数値が許容差異を超過しています。

補遺4935.6: リーガル博士の報告書からの抜粋 - “SCP-4935-α”

SCP-4935-αに関する報告
ジェイミー・リーガル博士


アコットの祖先は、テクノロジーを利用して肉体と魂との束縛を断ち、甚だしく長引いた生存を終わらせようと試みた最初の人類まで遡ります。彼らはその機械を「ゲリュオンのハコブネ」と呼び、それはコレカラの真下に位置します。彼らはこの機械の発明は、彼らの文化で悪魔化されかつ神格化される一種の伝説上の神話の人物、ゲリュオンの賜物だと信じています。ゲリュオンは彼らに呪いを課した機械を造った主任科学者でしたが、彼らはその機械が救済であり、ゲリュオンの展望は最初のアコットとスリーパーにより台無しにされ、それこそがまだ彼らを機械が救っていない理由だとも信じています。ここで言及しておくべきは、アコットの伝説によると、ゲリュオンがハコブネの指名を受けて構築したとき、彼はたった8歳であり16、それがアコットをこの次元から追放した災厄と関係があるかもしれないということです。いずれにせよ、彼らは機械の正確な機能をゲリュオンの意図通り正確に推測できれば、それが救ってくれると信じています。

数日前、エンジニアリングチームの一つがいくつか憂慮すべき調査結果をもたらしました。SCP-4935-αの向こう側の探査チームは、もはや以前と同じような1対1の時間の進行を経験していませんでした。直近のチームはSCP-4935-αの向こう側で割り当てられた180分を過ごしたと報告しましたが、こちら側のチームは277分間彼らがいなかったと報告しました。言い換えれば、アノマリーの向こう側での時間の進行はこちら側に比べてかなり遅くなっているようです。

調査結果をまとめた後、我々はアコットにそれについて持ちかけました。彼らは驚くほど率直に答えました。SCP-4935-αは我々に助けを求めたり、一種の兵器試験をしたりした結果ではありませんでした。それは開いたバルブだったのです。



[記録開始]

Ti-8: 我々の発見について説明はあるか?

アーキビスト: あなたたちの気付きは正しい。恥ずかしながら、我々はあなたたちを騙していた。

Ti-8: 何が恥ずかしいと?

アーキビスト: 我々には時間がない。この説明を言い訳に帰着させるつもりはないが、どんな選択肢であれ正当化される。

Ti-8: 理解できないな。

アーキビスト: 死は、長きに渡り失われている夢だ。墓を掘る人にとって、そして墓の下のスリーパーにとって、それに出来るのは苦しみを終わらせることだけなのだ。時間こそが我々の苦しみの説明となる。少し前に、時間が終わらない限りシタイノチチの不幸のも終わりはないと決められた。

Ti-8: これが相対的に経験する直線的な時間の進行に変化が見られた理由なのか?

アーキビスト: それはゲリュオンの最後の贈り物だ。我々は苦しみから逃れることはできない。我々は苦悩から逃れることはできない。我々はシタイノチチから逃れることはできない、そしてスリーパーたちを見捨てることもできない。時間の経過と共に最後の敗北の瞬間が近付いており、その進行を止めることが最後のチャンスなのだ。ゲリュオンのハコブネは時の流れを食い止め、それと共に我々の苦しみも永遠に止まることだろう。

Ti-8: 規模はどの程度だ?

アーキビスト: 若い頃は、我々は空の星々の回転を止めることを夢見ていたかもしれないが、我々の力は衰えている。ここ、誕生の揺籃で、砂に境界線を引こう。我々の崩壊した状態の外で何が起きようと関係はない。恐らく、宇宙が寒く、暗くなり、完全に消え去るまで、我々はその状態に留まるだろう。恐らくその時我々は一時的に救われるのだろう。

Ti-8: はっきりさせておくが、これはお前たちを三次元空間から切り離したのと同じ機械、だな?

アーキビスト: そうだ。我々は太陽が昇ったり風が吹くのを責めないように、ゲリュオンを責めない。ゲリュオンは自然であり、地球の恵みの賜物たる精神なのだ。最初にハコブネに手を触れ、ゲリュオンの展望を思い描けなかった者たちは、機械を我々に向けた。それから何千年もの時が経ち、我々は成長し、学んだ。我々はゲリュオンの設計の中心を覗き込み、その威厳を目の当たりにしてきたのだ。

Ti-8: あの時間異常は何だ? 我々がここに入るときに通ったものは?

アーキビストは即座に返答しない。

Ti-8: 聞いているか?

アーキビスト: ああ。

Ti-8: 何か言うことはあるか?

アーキビスト: いつだってエラーは発生する。このような絶望的な状況では、このようなエラーは不幸な犠牲者を齎す。我々の責任ではない。

Ti-8: どんなエラーだ?

アーキビストは返答しない。

Ti-8: それは何なんだ?

アーキビスト:動揺して)あまりずけずけと私に話そうと思うな。あなたやあなたの種族は、この長い年月に渡り我々の種族に課せられた苦しみの真の深さの一端さえ理解はできない。あなたたちは儚い存在の儚い生物であり、苦痛を覚えるというのが、恐怖を味わうというのがどのようなものか理解していない。あなたたちは何も知らない。(休止)先祖たちよ、私を判断しないでくれ。我々の恐怖で、我々という存在を判断しないでくれ。我々は幾千年、また幾千年と苦しみしか知らず、若い頃の勇気などとうに捨て去っていた。我々は怖くて、臆病で、死にたいんだ。我々は他の何よりも死にたいと望んでいるが、運命はそのたった一つの慈悲を与えないことにした。故にその不親切を取り除くのだ。

Ti-8: あの異常は何なんだ?

アーキビスト: 我々はゲリュオンのハコブネを自分たちに向けねばならないことを恐れていた。そしてこれがほとんどあらゆるものよりも恐ろしかったことを認めよう。だがゲリュオンは我々に猶予をお恵みになった。ハコブネは我々のためのものではない、先祖よ。ハコブネはあなたたちのためのものだ。あなたたちは永遠の生という長く悍ましい指にまだ触れていない。我々はあなたたちのタイムラインを崩壊させよう。そうすればあなたたちは苦しまなくてよい。我々が苦しみの中に生まれることもない。

Ti-8: そのようなことを我々が許さないとはわかっているだろう。

アーキビスト: あなたたちに選択の余地はない。我々はここでハコブネを起動させようとしたが、我々の意図していたものではなく、そちらの時間への道が開かれたのだ。この時我々は理解したのだ、先祖よ。これはゲリュオンの、あなたたちに向けた贈り物だったと。彼の意志は取り消せない。あなたたちは受け取らねばならない。

Ti-8: これは我々を破滅させるということだ、理解しているのか?

アーキビスト: 違う。破滅ではない。わからないのか? 救済だ。我々双方の救済なんだ。
[記録終了]

補遺4935.7: 倫理委員会覚書

倫理委員会覚書
SCP-4935

前例では、財団のチームや工作員は、たとえそのアノマリー自体が敵対的であろうとも、異常な実体、物品、場所に対し敵対的な行動を回避するためにあらゆる機会を利用すべきとされている。これらのアノマリーは破壊よりも研究と理解を通すことで人類に大きな貢献ができるとの信念の下、当委員会は多くの場合、アノマリーの殲滅に繋がりうる行動は不必要で許容できないと判断してきた。

しかしながら、アノマリーの敵対的行動が財団の行動や民間人の安全を乱す恐れがある場合は、特定の措置を講じねばならない。SCP-4935の場合は、異常な民衆が財団と我々の世界の一般大衆双方に行動を起こすと脅迫しており、当委員会はSCP-4935の主要な異常を崩壊させる可能性のある行動をとること、およびアノマリーの住民に与えるいかなる有害な影響も倫理的に許容可能と判断する。

多数決により、当委員会は我々の世界に対するSCP-4935の敵対的行動のリスクを軽減するためにリーガル博士が立案した計画を命じる。


賛成 - 7
J.ジェイレット博士 / P.ウォルターズ博士 / M.ムンバイ博士 / L.オリンジャー博士 / J.シメリアン博士 / C.カービィ博士
反対 - 2
Y.ジョンズ博士 / B.ポッター博士

補遺4935.8: SCP-4935の敵対的行動への対処

2019/1/31、ジェイミー・リーガル博士(サイト-77)の監督下で、財団技術者は2機のスクラントン-ラング通電無効化装置をSCP-4935現地に設置しました。この無効化装置は急速にSCP-4935の異常を崩壊させました。それと同時に、SCP-4935の異常の生成に使用された機械を無効化する目的で「ゲリュオンのハコブネ」装置内に設置された複数の大規模爆破装置が爆破されました。

最重要異常の崩壊直前、異常自体が半分以上縮小した際、異常の反対側に数体のアコットの姿が確認できました。彼らは狂乱してそれを通過しようとしているかのように、複数の手足やその他身体部位を異常へと押し込みました。しかしながら、異常は崩壊を続け、そこを通過しようとしている者たちを押し潰しました。異常が完全に消滅すると、異常やそこに閉じ込められた人物の痕跡は残存していませんでした。

数時間後、SCP-4935が存在していた周辺エリアの時間遅延は減少してゼロとなりました。十分な時間が経過すると無効化装置の通電は停止され、異常は再生しませんでした。

分類委員会は9-0の投票で、異常にもはや再出現のリスクがないと確証されるまで、異常をEUCLIDクラスに留めるというリーガル博士の提案を承認しました。


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