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発見当初のSCP-4941を撮影した動画の静止映像。
特別収容プロトコル: SCP-4941収容チームのメンバー1名が、全ての活性化事象中にロングダウン島のポイント・ブラボーでSCP-4941と会い、交流中の挙動を記録に残します。どのような時でも、SCP-4941が苦痛の兆候を示した場合、収容職員は対象を宥めるためのあらゆる努力を行うべきです。これは通常、チャーリー・メイソンが間もなく帰還することを改めて保証し、島で発見されたクリスタルオルゴールを再生することによって達成されます。
ロングダウン島は主要な航路から外れているため、船舶が確立された侵入禁止区域へ意図せず接近することはほぼ無いと思われます。しかしながら、現地の保安職員は1kmの侵入禁止区域を維持し、活性化期間中に領域内へ侵入したあらゆる無許可船舶を拿捕するものとします。
説明: SCP-4941は巨大な、物理肉体を持たない雌のMegaptera novaeangliae、通称ザトウクジラです。
SCP-4941は満月の夜の日没時に発生するSCP-4941活性化事象中にのみ出現します。この事象の最中、SCP-4941はロングダウン島の最東端(高さ約24mの切り立った崖)の近辺に現れ、空中を浮揚して崖の突端の正面へと移動します。SCP-4941は日の出と共に消失するまでその場に留まります。
活性化期間中に放置されると、SCP-4941はイギリス本土でも聞き取れるほど大きな低音を発します。これは典型的には、収容スタッフの1人が活性化期間中のSCP-4941の傍に留まり、島に唯一存在する建造物から発見されたクリスタルオルゴールの音で慰めれば阻止できます。収容職員がオルゴールを再生する時、SCP-4941は常に音楽全体に合わせて歌います。
補遺4941.1: 発見
SCP-4941は1995年、当該海域を巡回していた財団資産が思いがけず進行中の活性化事象に遭遇したことで発見されました。その後行われた島の調査で、1件の廃屋が見つかりました。椅子、テーブル、ベッド、ごく小規模な本の集まりを除いて、この建造物は空であり、暫く前から放棄されている様子でした。
加えて、数枚の手紙と1個のクリスタルオルゴールがベッド下から発見されました。多くの手紙は判読できないほどに風雨被害を受けていましたが、床板の隙間に落ちていた手紙は殆ど傷付いていませんでした。これらの手紙の文章は以下で閲覧可能です。
補遺4941.2: 手紙
愛しいイーファ、
一日たりとも君の事を考えずに過ごしたことはない。戦況は日々悪化するばかりで、毎日のように強くあれと説教される。君がいない今、果たして僕にどんな強さが残っているだろう。最悪の時には、僕は君の顔を、君の髪の香りを、君の手の柔らかさを、僕らの背後の海鳴りを思い描く。すると家に帰ったような気持ちになる。
待っていてくれ、愛しい君。すぐ家に帰るよ。
永久に君の、
チャーリー
愛しいイーファ、
僕らはまた動いている。基地の連中が君からの手紙を持ってきてくれた、彼らには感謝しなきゃならない。君の言葉は僕の胸を吹き渡る風だ、読み終えたすぐ後にまた読み返している。遠く離れた場所に君の声を聞いていると、ずっと昔に聞いて忘れてしまった歌と同じように、君の声を失ってしまうんじゃないかと時々怖くなる。銃は僕から沢山奪い取ったが、君の歌声だけは最後まで渡さないぞ。
元気でやっているかい。戦いが僕らの小さな島まで及んでいないことを祈る。
待っていてくれ、可愛い子。そう長くは待たせない。
永久に君の、
チャーリー
愛しいイーファ、
ジョフルがフランス軍をヴェルダンに移動させているという噂だ。そこに住むジャネット叔母さんを訪ねたことを覚えているかい? 川は美しく、太陽の下でそこに立つ君を見た時には胸がはち切れそうだった。世界中のあらゆる美が僕だけのために一ヶ所に集まったように思えた。
あそこが今でも美しい場所だとは想像しにくい。戦争が長い間のさばって、風景を変えている。僕を変えている。僕がまだ君から離れた時と同じ男であることを願う。君を愛していた僕の一部がまだ消えていないことを、砲弾と煙と泥に打ち砕かれていないことを願う。嗚呼、僕の心が既に塹壕で死んでいないことを願う。
待っていてくれ、僕の星明り。すぐにまた君と一緒だ。
永久に君の、
チャーリー
愛しいイーファ、
世界は変わってしまった。人間はこの新世界で高貴ではいられない。ここから離れて、また君の隣に立つこと以外を僕は望まない。毎晩、君の下へ連れ戻してほしい、もう一度僕たちに月明りの下で踊る鯨たちを見る機会を与えてほしいと神に祈っている。あの日々は何もかも遠い夢のように感じられて、殆ど現実味が無い。君と共に過ごした時間の多くは既に消え去って、残っているのは君の顔の記憶だけだ。それとも、本当に僕が思い描くのは君の顔なんだろうか? 泥と血と鉄条網しか見えないこの戦場で、どうして僕に分かるだろう?
中尉はこれが住んだら家に帰れると言う。例えただ一度だけだとしても、また君に会い、君の声を聞き、君の顔に触れることができたなら、もうそれで十分だ。
永久に君の、
チャーリー
補遺4941.3: 送られなかった書簡
1枚の別な手紙が後日、本棚に入った2冊の本の間から発見されました。宛先を“チャーリーへ”とのみ表記しているこの手紙は損傷していませんでした。この手紙の文章は以下の通りです。
私のチャーリーへ、
水兵たちは戦争が終わったと言いますが、最後にあなたの手紙を受け取ってから長い時間が経ちました。手紙は保管して毎日読んでいます。私たちのベッドの、あなたが居た場所は空です。途方もなくあなたが恋しい。
私は歳を取りました、チャーリー。海と太陽が私を通り過ぎてゆき、かつてあなたが知っていた少女は共に消えました。自分が変わったかもしれないという手紙を見た時はあなたを案じましたが、歌が語るように、変化はどういう形であれ私たち皆に訪れるものなのだと思います。今の私の中に、あの少女の面影はごく僅かしか残っていません。あなたを愛していた部分だけが残っています。
間もなく、私が海へ帰らなければならない日が来ます。私はあの崖の傍へ向かうでしょう。ずっと昔、星の明るい夜にあなたが私を見つけ、鯨たちが闇の中から私たちに歌っていたあの場所へ。例え千の生涯を耐えなければならないとしても、あなたを待ちます。あなたが家に戻って来るのを私は知っています。

チャーリー・メイソン。
愛しています、チャーリー。私の下へ帰って来てください。
永久にあなたの
イーファ
この手紙には、後にイギリス第4軍の兵士 チャーリー・メイソンと特定された若い男性の写真が共に封入されていました。記録によると、メイソンは1916年7月に発生したソンムの戦いで初日に戦死しており、現在は恐らくフランス北部の集団墓地に埋葬されています。