
SCP-4964のDVDケース。
アイテム番号: SCP-4964
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 実験に使用していない時、SCP-4964は標準的なオブジェクト保管ロッカーに収容されます。毎日1回、レベル3研究者1名がSCP-4964を最後まで視聴し、現時点で判明している最新のプロットからのいかなる逸脱も直ちに報告しなければいけません。
説明: SCP-4964は2006年の映画 “シャギー・ドッグ” の複製を称する異常なDVDです。ディスクに収録されている映画は、後半15分頃までは“シャギー・ドッグ”の通常のプロットに従いますが、それ以降の展開は根本的に異なる結末へと至ります。これらの結末の性質は多種多様ですが、いずれも唐突かつあっけないものであり、映画の他の部分とは全く調和しません。“シャギー・ドッグ”製作関係者へのインタビューで、これらの場面は撮影されておらず、映画製作中のいかなる時点でも構想すらされていなかったことが確証されました。
SCP-4964は常に結末を変更するわけではなく、複数回の再生で特定のプロットに従い続けた後、何の前触れもなく抜本的に異なるものへと変化します。これらの変化を引き起こす具体的な刺激は判明していませんが、現時点では、その根底にある異常性の調査を進めることで変化するという仮説が立てられています (詳細は補遺4964-aを参照) 。更に、記録された結末の中には、未来のある時点における現実世界の地震活動と一致する内容の激しい地震をテーマとするものが少なからずあります。SCP-4964がこれらの地震を引き起こしているのか、単純に予知しているのかは現在不明です。
補遺4964-a: 部分的イベントログSCP-4964の変化 | 提示された結末 | 注記/対応 |
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N/A - オリジナル | 主人公のデイヴィッド・ダグラス (演: ティム・アレン) — チベット僧院由来の神秘的なコリー犬に噛まれ、犬に変身する制御不可能な能力を得ている — は悪役のコザック博士 (演: ロバート・ダウニー・ジュニア) に犬の姿で拉致される。コザックはミュータント動物が多数存在する研究室にデイヴィッドを取り残して法廷へ向かうが、デイヴィッドは脱出して法廷へ向かい、また人間の姿に戻る。デイヴィッドは廷吏の警棒を使ってコザックを犬に変身させることで、コザックの悪事を暴くことに成功し、裁判ではデイヴィッドに有利な判決が下される。 | これは参考として用意された、“シャギー・ドッグ”の実際の非異常な結末である。 |
2006/05/03 | デイヴィッドを研究室に置き去りにする代わりに、コザックは注射器で薬物を注射し、デイヴィッドは倒れ込む。映画の視点はその後10分、生気のないデイヴィッドの死体へとズームインした後、暗転して終了する。 | 財団は映画の“悪ふざけ海賊版”に関する報告を調査した際、SCP-4964の存在を認知した。所有者はSCP-4964を露天商から購入しており、出所に関してそれ以上の情報を提供できなかった。SCP-4964は潜在的Anomalousアイテムとして記録・保管された。 |
2008/09/01 | オリジナルの映画と同様、コザックはデイヴィッドを置き去りにするが、その直後、白衣と黒いフードを着た男性が画面内に入ってくる。男性はデイヴィッドとミュータント動物たちをアノマリーと呼び、他数名の人物に、デイヴィッドたちを収容して“安全な場所”へ移送するように指示する。他の人物たちはいずれも白衣を着ているが、フードは被っていない。フード付きの男性とは異なり、これらの人物全員の白衣に財団の記章が描かれている。顔を分析したところ、いずれも財団所属の研究員と一致した。 | この変化はAnomalousアイテムの定期的な棚卸し調査中に発見され、正式にSCP分類を割り当てられた。出演した研究員たちは尋問されたが、いずれも自分が映画に登場した理由を説明できず、彼らの間にも明らかな繋がりは無かった。 |
2008/09/15 | オリジナルの映画と同様、デイヴィッドは法廷に辿り着くが、演説中に足元の地面が突然裂け、法廷全体が呑み込まれる。また、陪審員の1人が白衣と黒フードを着た人物に置き換えられている。 | この変化が最初に確認された3日後、マグニチュード4.7の地震で、“シャギー・ドッグ”の撮影現場となったカリフォルニア州サンバーナディーノの小さな裁判所が倒壊した。財団の調査では、悪意的犯行の明白な痕跡は発見されなかった。 |
2008/12/23 | 映画はデイヴィッドが廷吏の警棒を投げる場面まで進むが、そこでデイヴィッドは「待てよ。これは… これは違う…」と言い、神秘的なチベットコリー犬が昼寝から目覚める場面へと切り替わる。コリー犬はあくびをした後、ティム・アレンの声で「なんて奇妙な夢だろう」と言い、起き上がって、石造りのアーチ道に立つ白衣・フード姿の人物の下へ小走りに近付く。カメラはアーチ道にズームインして、その側面に彫られた蛇の手の記章を映した後、大きくズームアウトして広大な山脈を映す。この映像を基に、撮影場所はヒマラヤ山脈にあるカンチェンジュンガの山頂だと特定された。カメラが視点を維持している間に、山の1つが真っ二つに割れる。 | この新しい映像を受けて、財団はカンチェンジュンガへの事実確認遠征を実施した。同地域における激しい地震活動のため、登山には危険が伴い、エージェント1名が死亡した。山頂に到達すると、山腹に建造された基地の跡地が発見された — この基地を蛇の手が建造・使用したことを疑う余地なく示す十分な証拠が発見されたものの、その使用目的や放棄された理由は依然として不明である。 |
2009/01/10 | コザックがデイヴィッドを研究室に置き去りにした後、白衣・フード姿の人物が一人きりで入室する。対象はデイヴィッドを鎮静し、持参した輸送ケージに収める。その後、対象がデイヴィッドを車で浜辺へ運び、待機していたボートに乗せ、海へと船出するまでがリアルタイムで追跡される。中断無しで27時間の映像が流れた後 — この間、飲食を行う様子は見られない — 対象はボートを止めてデイヴィッドを海に沈めようとするが、その時点で大波がボートを呑み込んで映画が終了する。 | 財団が海流、針路、時間帯、一部の場面に映り込んだ夜空などを綿密に分析した結果、ボートが止まったのは太平洋上の一見何も無い場所であると正確に突き止められた。遠隔操作の潜水艇が当該海域のマッピングに展開されたが、特定された場所へ近付いた際に、激しい海底地震でその海域が航行不可能になり、ほとんどの探査機は全く回収できなくなった。 |
2009/02/22 | 法廷の場面で、廷吏が白衣・黒フードの人物に置き換えられた。デイヴィッドが警棒を奪おうとした際、対象は容易にそれを取り返し、フードを脱いでカメラに直接向き合う。明らかになった対象の顔は、蛇の手の高位工作員として知られるアントン・フォレスター博士と一致する。フォレスターはティム・アレンの声で次のように述べる: 「止めたまえ。諸君の無能なお節介は、誰にとっても事態を悪化させている。我々は正しい事をやっているのだよ、もしそれが分からなくても… まぁ、直に分かるさ。彼らは自由であるべきだ。彼ら全員がね。必要とあらば、我々は地球を割ってでも彼らを解放するよ」。その後、映画が終了する。 | 長期間に及ぶ一連の襲撃・反撃の末に (完全版の任務詳細と死傷者報告は作戦ログ4964-27-3を参照) 、財団はフォレスター博士を捕縛し、蛇の手の計画について詳細にインタビューを実施した。フォレスターは現在進行中の地震活動について一切の知識を否定し、また“シャギー・ドッグ”を視聴したことは一度も無いと主張した。多数の強化尋問を受けながらも主張を堅持しているため、現時点では、この件に関してフォレスターは事実を述べていると考えられている。 |
2010/04/01 | 法廷の場面で、デイヴィッドは廷吏の警棒を投げてコザックの変身を促すが、代わりに裁判官が1羽のAnser anser (ハイイロガン、もしくは“野生種”ガチョウ) に変身する。全ての登場人物がそれまでの活動を放棄し、このガチョウを追いかけて捕獲しようと必死かつ無益に試みる1。これが単一の長回し映像で36分続いた後、ゆっくりと暗転して終了する。その後、次のような文章が表示される: “時として脈絡の無い物語シャギー・ドッグは便利なスケープゴートとなる。Are we cool yet?” | これが現在のSCP-4964の内容である。今日まで新たな変化は確認されていない。 |