SCP-4999-JP


評価: +198+x
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サイト-333 — 部門間交流ログ:
2025/08/29 — 10:36 am
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • トニー・カタラーノ、経理・観光部門
  • レオノーラ・モラレス、野生動物スペシャリスト
  • ノア・パテル、未確認動物学者 兼 博物館学芸員

ノア・パテル: やぁ、誰かいる?ちょっと展望台関連で聞きたいことあるんだけど。

レオノーラ・モラレス: 展望台にわざわざ行くのなんて、ノアぐらいじゃないですか? なのに私たちに聞くことなんて。

ノア・パテル: そのはずなんだけどさ、展望台に設置してたはずのジャージーデビル監視用の機材へのアクセスがしにくくなってて。ITに詳しい人なら分かるかなって。トニー、なんか知ってる?

トニー・カタラーノ: え? ああ……多分ヴィンセントに聞けば分かると思うぞ。

レオノーラ・モラレス: なんでそんな辿々しいんですか。そこらへんの旅行者でももうちょっとまともな話し方しますよ。

ヴィンセント・ボハート が参加しました。

ヴィンセント・ボハート: なんだ、全員揃ってんのか。なら丁度いい。

ノア・パテル: あ、ヴィンセント!ちょっと聞きたいことがあるんだけど。

ヴィンセント・ボハート: まぁ待てノア。なんのことかは大体察せるし、その話なら後でするから一旦こっちに主導権を渡せ。

ヴィンセント・ボハート: 新しいアノマリーとやらの報告が上がった。しかも、他サイトの奴らが書いた報告書だ。

トニー・カタラーノ: 随分久しぶりだな、他から上がってきた報告書を読むだなんて。もう無理な話だと思ってたが。

ヴィンセント・ボハート: 奇跡は信じれば叶うんだよ。誰が言った言葉かは知らないが。

ヴィンセント・ボハート: SCP-4999-JP あった、このリンクだ。見つけにくい場所に保存されやがって、クソ。


アイテム番号: 4999-JP
レベル2
収容クラス:
euclid
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

IMG_5889.jpeg

監視カメラを通じて記録された、平常時のアトランティックシティ近辺の海。


特別収容プロトコル: ノア・パテル学芸員によって無断でサイト-333の展望台に設置されていた複数台の監視カメラを転用し、近辺の海域の監視が行われます。SCP-4999-JPの出現が確認され次第、 状況に見合ったカバーストーリーが流布されます。

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SCP-4999-JP外観。

説明: SCP-4999-JPはニュージャージー州アトランティックシティ(ネクサス-36)近辺の海上に不定期に出現する海賊船と思しき形態の船舶です。

SCP-4999-JPは17世紀ごろの記録にて散見される海賊船と同様の様相をしており、特徴が多く一致しています。なお、一部において、実在した海賊の行動記録と大きな乖離が生じていることも確認されています。瞬発的な発生と消滅を主な例として、付近の船舶を襲撃しない、貿易品などの強奪を試みないなどが他に挙げられます。

遠方から撮影された映像記録によれば、SCP-4999-JPの甲板には乗組員と思しき人型実体が同時に最大で15体確認されています。当該実体らはサイト-333に派遣された2名のエージェントより、SCP-4999-JPと同様に17世紀ごろの海賊のような様相をしていたとの報告がなされています。当該実体らはSCP-4999-JP-1に指定されています。

SCP-4999-JPは出現から少なくとも30分以上の間、出現地点の付近を約6ノットで旋回しています。この挙動は周辺の海域が無風状態であっても機能することや、SCP-4999-JPと同型の船舶においては困難、あるいは不可能な挙動であることから、なんらかの別の動力源が存在すると見られています。


サイト-333 — 部門間交流ログ:
2025/08/29 — 11:14 am
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • トニー・カタラーノ、経理・観光部門
  • レオノーラ・モラレス、野生動物スペシャリスト
  • ノア・パテル、未確認動物学者 兼 博物館学芸員

ヴィンセント・ボハート: 読み終えたか?

ノア・パテル: 私がジャージーデビルの決定的な証拠を記録するために設置したカメラこんなことに使われてたのか!?

トニー・カタラーノ: 無断で、しかもサイトの予算を使って設置したのが悪かったんだろ、ノア。ただでさえカツカツな予算を無駄なことに使ってどうする。あの金があったら今頃ここにはクーラーがあったはずだってのに。

ヴィンセント・ボハート: 予算についてなら経理・観光のオフィスで口論か殴り合いでもして決めてくれ。殴り合いなら他サイトの奴らとの賭けに使えるから俺からすれば大歓迎だぞ。

レオノーラ・モラレス: この間賭けで大損したのをもう忘れたんですか? というか、どうしてこんな報告書を読ませたんですか? 一応最近ナンバリングされたアイテムのようですが。

ヴィンセント・ボハート: ああ、まぁな。ところでレオノーラ、なにかこのアイテムに関して気づいたことはあるか?

レオノーラ・モラレス: え、もしかしてこのアイテムの乗組員ってカモメ風の鳥人類だったりするんですか?ただ私のクリアランスが低くてその情報が閲覧できていないのならすぐさま特殊クリアランスの付与を  

ヴィンセント・ボハート: オーケイ。ストップ、ストップだ。お前に聞いた俺が悪かった。落ち着いてくれ。

ヴィンセント・ボハート: こいつはただ急にここら辺の海に現れては、てきとうにぶらついて消えてくのを繰り返す穏やかな海賊どもだ。鳥人だとかなんだとかでは、多分ない。

トニー・カタラーノ: じゃあ放置しててもあまり問題ないだろ。それともなんだ? あいつをこの街の観光名所の一つにして金でも取るか?

ヴィンセント・ボハート: ああ、それも考えたんだけどな。俺より上からのご命令だ、そいつを調査しに行くぞ。

レオノーラ・モラレス: 私はパスで。まだ車に轢かれたひよこの脚観察してる方が有意義な時間になりそうですし。

トニー・カタラーノ: なら俺もパス。

ヴィンセント・ボハート: 待て待て待て、落ち着け。あとノア、どさくさに紛れて逃げようとするな。

ノア・パテル: い、いやぁそんな、逃げるだなんて。ただコーヒーでも取りに行こうかなって思っただけですよ。

ヴィンセント・ボハート: お前のデスク上にあるマグカップはコーヒーで満たされてるが。まあ、別に俺は構わないけどな。送り込むやつはクジで決める予定だったが、もし“コーヒーを取りに行く”ってんならお前で決定だ。

トニー・カタラーノ: クジは別として、いい案じゃないかヴィンセント。ノア、俺にもコーヒー淹れてくれないか?

レオノーラ・モラレス: ほんと、ごくたまに良い案出しますよね、ヴィンセント。ノア、私にはクッキーを、コーヒーはもうあるから。

ノア・パテル: ……卑怯ってもんじゃないですか、ヴィンセント?

ヴィンセント・ボハート: 俺は卑怯じゃないぞ、ノア。ただ選択肢を与えてるんだ。コーヒーを取りに行ったその足のままあの海賊船に突撃するか、大人しくコーヒーを我慢して俺が用意したクジを1つ引くか。

ノア・パテル: ……

トニー・カタラーノ: コーヒーの配達は中断か。まぁいい、クジでアタリを引いて自分の足で取りに行けばいいだけだものな。

ヴィンセント・ボハート: んじゃ、この箱から飛び出てる4本の紐のうち一本を引くんだ。イカサマは無しだぞ。

レオノーラ・モラレス: ちょっとノア、そんな悩まないでください。

ノア・パテル: もうちょっと、もうちょっと考えさせてくれ。

トニー・カタラーノ: 去年のクリスマスにやったババ抜きでも同じこと言って遅延させてたよな。

レオノーラ・モラレス: ああ、あのノアがババ引いた時に大声出して近所からの苦情で数日身動きが取れなくなった。

トニー・カタラーノ: いや、苦情が来たのはヴィンセントが酒に酔ってマジックを披露しようとした時に起きた爆発が原因じゃないか?

ヴィンセント・ボハート: ちょっと待て、聞き捨てならないな。俺がそんなことやらかした記憶は一片もないぞ。

レオノーラ・モラレス: ヴィンセント、何度も言ってますけどあの日はひどく酔い潰れて3日後までずっとトイレに篭りっきりでしたからね。そりゃ記憶も飛びますよ。トイレに篭ってる間にヴィンセントの住所をトイレの便座に変えようって議題が本気で話し合われるぐらいにはあのやらかしは大きいですよ。

ヴィンセント・ボハート: 嘘だろお前ら、俺がトイレで苦しんでる間にそんなことを。

トニー・カタラーノ: というかノア、まだ引いてなかったのか。

ノア・パテル: 後ちょっと、後ちょっとで分かるはずなんだ!

ヴィンセント・ボハート: ああ、焦ったい。ノア、お前のクジはこれだ。俺が良いって言うまで開くなよ。

ノア・パテル: ああっ、そんな。

レオノーラ・モラレス: じゃあ私はこれを。

トニー・カタラーノ: なら俺はこれだな。

ヴィンセント・ボハート: 最後に残ったのが俺のクジだ。さぁ、もういいぞ、開け。

トニー・カタラーノ: 良し!アタリだ!!さぁ、誰がハズレを引いたんだ? 俺はそいつの勇姿を優雅にコーヒーでも啜りながら眺めるとしよう。

レオノーラ・モラレス: 私のはハズレってありますね。

ノア・パテル: 私もハズレなんだけど。

ヴィンセント・ボハート: 奇遇だな、俺もハズレだ。

トニー・カタラーノ: なんだ? 3人で乗り込むってのか?

ヴィンセント・ボハート: おいおい察しが悪いなトニー。今うちにある使えるゴムボートの定員は1名だ。それに俺はハズレを引いた奴が海賊船に乗り込むだなんて一言も言ってないぞ。

ヴィンセント・ボハート: んで……なぁ、ノア。お前が観光客に貸し出すとか言って倉庫から引っ張り出した一点物のライフジャケットはどうした?

ノア・パテル: え、あれなら返された後、あの猫にずたぼろに引き裂かれたから捨てたけれど。


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トニー・カタラーノに支給されたゴムボート。これを梱包していたビニール袋には「プール用」と書かれていた。


補遺4999-JP.01:

サイト-333内部における厳粛な部門間会議の結果、SCP-4999-JPへの突入作戦の実働班員は経理・観光部門トニー・カタラーノに決定しました。トニー・カタラーノには非常食、10種の調味料セット、サバイバル用品、私物のスマートフォン、自決用のナイフが入れられたGPS内蔵のバックパックが渡されており、万が一の際はそれを用いての生存活動を行うことが指示されていました。以下はサイト-333通信司令本部と突入班の間で行われた通話記録の書き起こしです。

作戦通信記録 — 2025/08/29


IMG_3993.jpeg

作戦実行日の海。

ヴィンセント・ボハート: あー、マイクテスト。聞こえるか、トニー? こちら通信司令本部だ。

トニー・カタラーノ: ジーザス。お願いだ、今日は4月1日だと言ってくれ。さもなくばあの高波も、このクソッタレな詐欺電話も現実になっちまう。

レオノーラ・モラレス: 残念でしょうが、今日はエイプリルフールではありません、トニー。

トニー・カタラーノ: 事前に通信司令本部が来るって言われたらそりゃ期待するだろ!

レオノーラ・モラレス: 忘れないでくださいよ、サイト-333にそんな“貴重な人員”を割くわけがないでしょう。ああ、ノア。クッキーどうも。

ノア・パテル: あれっ、まだコーヒー飲んでなかったの? トニー。いくら波で流されるからって、その服にこぼれたらけっこう大きなシミになると思うんだけど。

トニー・カタラーノ: 俺が懸念してるのはそんなちっぽけなシミじゃなくて、お前らをこの拳でぶん殴るために必要なこの命を亡くさないまま帰って来れるかなんだけどな。

トニー・カタラーノ: というか、このコーヒーを飲めずにそのまま持ってきたのは元はお前らが原因だからな。あの後、精神を鎮めるためにコーヒー淹れてたら、突然に膨らませてないゴムボートを頭部に被せられて、半分誘拐的な手順で連れてこられたんだ。だから飲めずにそのまま入ってんだよ。

レオノーラ・モラレス: 言われてますよ、ヴィンセント。というか、よくコーヒーこぼさずに持っていけましたね。トニーも暴れたでしょうに。

ヴィンセント・ボハート: いや? コーヒーならトニーをトランクに投げ込んだ時に全部ぶち撒けられたが。今トニーが持ってるコーヒーは運転席のドリンクホルダーに置いてあったいつから放置されてんのかわかんねぇやつだ。

トニー・カタラーノが口に含んでいたコーヒーを吐き出し、咽せる

ノア・パテル: 大丈夫かい?

トニー・カタラーノ: 大丈夫なわけあるか!大体な  

以後、約48分間に渡って不要な会話が続けられるため省略。

トニー・カタラーノ: おいヴィンセント、やっと海賊船に乗り込めるぐらいのところまで来れたぞ。

トニー・カタラーノ: ヴィンセント?

ノア・パテル: ヴィンセント!着いたらしいよ!

レオノーラ・モラレス: ちょっと私、コーヒー淹れてくるついでに仮眠室寄って起こしてきますね。

トニー・カタラーノ: あいつにもコーヒー入れてやれ。

レオノーラ・モラレス: ええ、もちろんです。

5分間の静寂の後、ヴィンセント・ボハートの悲鳴が響く。

ノア・パテル: ヴィンセント!?

ヴィンセント・ボハート: ああ、クソ。レオノーラの奴、寝てるってのに俺の顔面にコーヒーぶち撒けやがった。

トニー・カタラーノ: お前を“仮眠”から叩き起こすには最適な選択だろ? まぁそれはどうでもいいとして。これから乗り込むぞ、ヴィンセント。しっかり通信司令本部として働いてくれ。

ヴィンセント・ボハート: おお、まさか本当に辿り着くとはな。よし、上手くやれ。俺から言えるのはそれだけだ。

トニー・カタラーノ: ファック。毎度毎度帳簿の誤魔化ししてんのはどこの誰だと思ってんだ。俺が居なかったらお前らの予算は  

ノア・パテル: (小声で)ヴィンセント、もしかしてこの通話記録、RAISAに提出すること言ってないんですか?

ヴィンセント・ボハート: (小声で)どうやらトニーは今日をエイプリルフールだと勘違いしてるらしい。だからどうせあれも嘘さ、何も問題はない。

ヴィンセント・ボハート: オーケイ、トニー。お前の言い分はよくわかった。さあ、それの続きはこの任務を無事終わらせてからにしよう。だから早く乗り込むんだ。

トニー・カタラーノ: クソ、仕方ねえな。

トニー・カタラーノが背負っていたリュックサックから縄梯子を取り出し、SCP-4999-JP側部の突起部に引っ掛ける。縄梯子はところどころちぎれながらも、トニー・カタラーノは甲板へと到達する。

トニー・カタラーノ: おいヴィンセント。サイト-333にヘリコプターはあるか?

ヴィンセント・ボハート: ヘリポートならあるから4ブロック先の警察署から権限行使して奪えば  

トニー・カタラーノ: ヴィンセント、もうやめろ。ノア、レオノーラ、そっちはどうだ?

レオノーラ・モラレス: カメラ付きのならありますよ、全長650mmですけど。

ノア・パテル: 私は持ってないけれど、どうしてヘリなんか求めてるんだい?

トニー・カタラーノ: ただでさえ豆粒みてぇなゴムボートが今俺の視線の先でこの大海に飲まれたっていえば分かるか?

SCP-4999-JP-1: (ケルト語)誰だ!

トニー・カタラーノ: よ、よう!ハロー。なんだ? 歓迎してくれてんのか?

ノア・パテル: そうなんじゃない? 私には言葉がわからないから真偽は不明だけど。

トニー・カタラーノ: なぁ、そこのイケてる船乗りさんよ。お前さんの言葉が分からねえんだが、英語は通じるか?

SCP-4999-JP-1: (ケルト語)何言ってるんだお前。とりあえずこっちに来い、吐くまで帰さないからな。

トニー・カタラーノ: 待った待った!とりあえず言葉はわからんがキレてるのは流石に分かる!一旦話し合おうじゃ  

約13秒間のノイズが流れ、トニー・カタラーノのマイクが切れる。

レオノーラ・モラレス: あ、GPS信号途切れました。

ノア・パテル: 監視カメラ映像にもSCP-4999-JPは写ってないね。

3秒間の沈黙と、ヴィンセント・ボハートの小銭入れが揺れる音。

ヴィンセント・ボハート: なあ、この中に5ドルで依頼できる葬儀屋知ってる奴はいるか?

上記の通信が記録されたその日のうちに、サイト-333ボハート管理官によってトニー・カタラーノは作戦行動中行方不明(MIA)であると指定されました。この処理はボハート管理官が申請に必要なクリアランスを有していない事から、サイト-333を部分的に管轄範囲とするサイト-███の人事部門によって撤回、2週間後までの再申請不可がボハート管理官に通告されました。

サイト-333 監視映像:

従業員休憩室


ヴィンセント・ボハートが従業員休憩室の入り口を蹴り開けて入ってくる。ヴィンセントの両手はノートPCなどが詰め込まれたダンボール箱を抱えているせいで塞がっている。

ヴィンセント・ボハート: これであいつの私物は全部か。けど、バザーで売るには勿体無いものも多いな。このノートPCだって、もっと高く捌けるんじゃないか?

ノア・パテル: ヴィンセント、多分あと2時間後にはゴミ収集車来るから早いとこまとめようよ。

ヴィンセント・ボハート: ゴミ収集車って言うな。実質あいつの葬儀みたいなもんだし、移動式火葬場とでも呼ぶのが良いだろ。

レオノーラ・モラレス: 遺体と一緒に時計や花を燃やすのは結構メジャーですけど、私物を燃やして火葬って言うのは新しいですね。

ヴィンセント・ボハート: さあ、お前らも手伝え。あいつの私物の中に金目のものがあったら俺に渡せ、まとめて売ってくる。

3人が雑談をしながらトニー・カタラーノの私物を分別していると、通路側から足音が響いてくる。足音は荒くも、どこか安定しないものである。

足音はドアの前で止まり、次の瞬間ドアは蹴破られて地に伏せる。数刻前まではドアがあったはずの縦に長い四角形のスペースからは、トニー・カタラーノが立っているのが確認できる。

ヴィンセント・ボハート: おい誰だ? 死体のない葬儀が寂しいからってあいつそっくりのマネキン注文しやがったやつは。

トニー・カタラーノ: 死んでねえしマネキンでもねえよ!クソッ、頭痛てぇ……。

レオノーラ・モラレス: 生きてたんですか、トニー? たとえ拷問を耐え抜いても、あの海を泳いで帰ってくるだなんて無理だと思ってましたが。

トニー・カタラーノ: ジーザス。誰か俺が生きてたと信じてた奴はいないのか?

トニー・カタラーノの問いに答える者はいない。

トニー・カタラーノ: お前らに期待した俺が馬鹿だった。とにかく、俺は拷問されてないしこの海に放り出されてもいねぇ。

ノア・パテル: それならこの3日間、何処にいたのさ。

トニー・カタラーノ: 何処って、決まってるだろ。あのクソッタレなアノマリー船だ。ああいや、船員どもはマトモだったか。

レオノーラ・モラレス: けどトニー、あの船員の言葉分かってなかったですよね?

トニー・カタラーノ: そこはあれだ、パッションだ。とりあえず非常食と調味料差し出して命乞いしたら案外すっかり受け入れてくれたさ。特に塩と胡椒が好きみたいだったな、俺と好みが合いそうだ。

トニー・カタラーノ: そんで、下っ端みたいなやつが見るからに船長のやつを呼んで、俺の前に連れてきたんだ。そしたらその船長が俺の前に立ってなんか笑顔で俺の背中を叩いてきてな。何言ってんのかは相変わらずわかんなかったが、多分ありゃ歓迎の意思だ。

ヴィンセント・ボハート: 案外良い関係じゃないか、お前も海賊団の仲間入りすれば良かったのに。

トニー・カタラーノ: で、背中叩かれた拍子に吐いた。

ヴィンセント・ボハート: は?

レオノーラ・モラレス: それが原因で追い出されたんですか?

トニー・カタラーノ: だから追い出されてねぇって。酷い船酔いで乗り込む前から込み上げてきてはいたんだが、背中叩かれたせいで、ちとダムが決壊してな。けど船乗りにとって船酔いで吐くのは日常茶飯事らしい、介抱してくれたよ。

ノア・パテル: でも、話聞いた限りだとその船長っぽい人にぶっかけたようにしか聞こえないんだけど……。

トニー・カタラーノ: むしろそれ以外に何かあるなら教えて欲しいほどだが。

レオノーラ・モラレス: もしあいつらと敵対することになったらトニー、貴方を贄にしますからね。

トニー・カタラーノ: あーうるさいうるさい黙れ。とにかく、なんかよくわかんねえ薬飲まされたら酔いも治って、数時間ベッドに寝かされてたんだよ。そしたら、下っ端の野郎に叩き起こされて、連れてかれた先で宴会してだな。

ヴィンセント・ボハート: 本当にもうお前海賊団に入っとけばよかったじゃねえか。

トニー・カタラーノ: んで、宴会では何言ってんのかわかんねえからGoogle翻訳に頼ってやっと言語を特定したんだ。ありゃケルト語らしい、どうだ? かなりの成果だろ。

ノア・パテル: あなたの“素晴らしい成果”を発表してるところ悪いけど、それもう私たち知ってるんだよね。RAISAの人が書き起こした音声記録にケルト語って書いてあったから。

トニー・カタラーノ: シット。まぁいい、翻訳機能を使って調味料をどこで調達したかだとか話したり、スマホを自慢したりとかして。まぁネタがなくなってからは酒飲んでバカ笑いして、そんで、あー……悪い、それ以降の記憶飛んだわ。とりあえず宴会の席で吐いたのは覚えてる。

レオノーラ・モラレス: 何回吐いたら気が済むんですか?

トニー・カタラーノ: そんなこんなで、目が覚めた時にはまたベッドの上でよ。これがまた、バカみてえに頭が痛えときたもんだ。生卵でも飲もうかとも思ったが、どうも昨夜に胡椒は全部使っちまってたみたいで鞄には瓶すら入ってねえし、そもそも海の上だから卵なんて貴重だしで、一日中苦しむ羽目になっちまった。

ヴィンセント・ボハート: 1日に2度も初対面の相手の前で吐いた天罰だろ。

トニー・カタラーノ: 流石に次の日には、つっても今日なんだが二日酔いも落ち着いてな、あいつらに礼を言うとともに帰る手段を聞き出そうと部屋から出たら、だ。もぬけの殻ときたもんだこれが。甲板に出ても乗組員はいねぇどころか、海岸に座礁してるもんでよ。

トニー・カタラーノ:ああ、でも少し気になることがあるんだよな。船酔いには弱いはずなんだが、寝てる時とか宴会の時とかとにかく連れて行かれてからは揺れてなかったんだよな、あの船。窓の外も、海には見えなかったし。だからか、座礁にも気づかなかったらしい。

ヴィンセント・ボハート: ん、待ておいノア!お前監視カメラ見てたんじゃないのか!?なんで座礁のこと報告しなかった!

ノア・パテル: い、いや!これに関しては弁明させて欲しいんだ。実は私、4ドルで頼める葬儀屋を見つけたから電話してたんだ。だから、気づかなくて……。

レオノーラ・モラレス: はい? そんな怪しいところに連絡して本当に大丈夫  

レオノーラ・モラレスの言葉を遮るような形で、通路側から壁をノックする音が響く。通路にはよれたツナギを着た男が、地に伏せたドアと言い争うサイト-333の面々を交互に見比べながら、困惑したような表情で立っている。

ツナギの男: あ、あの、こちらにノア・パテルさんは。

ノア・パテル: 私だ、時間ちょうどに来てくれて助かるよ。

ツナギの男: それは、どうも。それより、回収のご依頼をなさった粗大ゴミはどちらに? 確か、その粗大ゴミの名前は“トニー・カタラーノ”だとお伺いしてるのですが。随分と人のような名前ですけれど、人形か何かですか?


補遺4999-JP.02:

トニー・カタラーノの証言を基にアトランティックシティビーチにおいてSCP-4999-JPの捜索活動が行われた結果、開始から5分時点でノア・パテルによって発見されました。SCP-4999-JPは岩場を避けた砂場に座礁していた上、碇が下されていたことから意図的に地上へと至った可能性が示唆されましたが、本稿執筆時点でその真偽は不明です。

発見報告を受けた本部は機動部隊カッパ-42(“報奨金稼ぎ”)を派遣し、内部の探索を実行しました。結果としてSCP-4999-JP内部にSCP-4999-JP-1実体が残存していないことが確認されました。またトニー・カタラーノが宿泊した部屋の机には、ケルト語で書かれたメモ用紙が発見されました。以下はそれを翻訳したものの転写です。

ありがとう、吐瀉男1よ。

君のおかげで私たちはまた新たな旅路へと歩みを進めることができそうだ。代表して、礼を言わせてもらう。

きっと君の功績は後世にも語り継がれるだろう。もしまた会う機会があれば、その時は“卵のショット”とやらを共に嗜もうではないか。部下たちにも、君のことを優遇するように言っておこう。君はそれだけ素晴らしい貢献をしてくれたのだよ、吐瀉男。

以降、SCP-4999-JPと推測される船舶の出現は確認されておらず、近日中に当アイテムのNeutralized分類が申請される予定です。


現在閲覧している報告書は旧版です、最新版に更新しますか?(y/n)

SCP-4999-JPスロットの更新を開始します。

……

サイト-333からのアクセスが制限されています。更新には所定の手順を通しての申請、あるいは特殊クリアランスの提示が必要です。

特殊クリアランスの提示が確認されました、更新を再開します。

……

………

更新が正常に完了しました。

ようこそ、ヴィンセント・ボハート管理官。



アイテム番号: 4999-JP
レベル4
収容クラス:
keter
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
warning

特別収容プロトコル: ニュージャージー州アトランティックシティ(ネクサス-36)におけるスーパーマーケット、およびコンビニエンスストアの入り口には通常の監視カメラに偽装された財団の自動通報装置が設置されます。SCP-4999-JPが出現した際は店舗前の自動通報装置が発動し、付近の機動部隊員および当該店舗に潜入しているエージェントに通達が行き渡ります。

通達を受け取ったエージェントは速やかな民間人の避難経路の確保とカバーストーリー「迷惑系動画配信者」の流布を行なってください。所定の場合においては、支給品の散布型クラスA記憶処理薬の使用が許可されます。また、SCP-4999-JP実体には干渉せず、対応は事後の店舗側への補填のみで完結させることが推奨されます。

2025/12/23更新:
プロトコル・パブリックドメインが滞りなく継続されていることに伴い、上記の特別収容プロトコルは近日中に改定される予定です。プロトコル・パブリックドメインに関する詳細な情報は、本報告書下部を参照してください。

説明: SCP-4999-JPはネクサス-36内部において発生が確認されている、特異な強盗犯の総称です。SCP-4999-JPは常に3〜5人の集団で活動しており、その共通点としては17世紀ごろの海賊のような服装をしている点が挙げられます。SCP-4999-JPの持つ特異な性質としてテレポーテーションか、それに類する移動能力の存在が確認されています。

主な行動例として、SCP-4999-JPは対象として指定した店舗前に出現後、腰部付近に付けられたカットラス2やブランダーバス3を手に店舗内へ進入、内部の民間人に対して脅迫的な行動を開始します。使用する言語がケルト語であるという問題から、ほとんどの民間人はその言葉の意味を理解出来ずにいますが、SCP-4999-JPの所有する武器に恐怖心を抱き、自然とSCP-4999-JPから離れた位置へと避難します。

基本的にSCP-4999-JPは直接的な妨害工作が取られない限り、店舗内の民間人に対する対応は脅迫程度にとどめられています。民間人が退避し次第、SCP-4999-JPは食料品類コーナーに直行し、スパイス類、特に胡椒を可能な限り強奪した後、店舗外へと逃走し全ての個体が外部に脱出すると同時に消滅します。

SCP-4999-JPは当初、海賊のコスプレをした奇妙な強盗団としてサイト-333にマークされており、それへの対処を口実としてサイト-333は他アノマリーへの対処を後回しにしていました。そのような活動は現版のSCP-4999-JP発見とほぼ同時に開始しており、旧版報告書におけるSCP-4999-JP(旧SCP-4999-JP)が正式にNeutralized指定された翌日からのことでした。

当アノマリーは報告された当初から旧SCP-4999-JPとの関連性が疑われており、その裏付けが試みられていました。

以下はその考察の強い後押しとなった映像記録の書き起こしです。

ボディカメラ映像:

ウォルマート アトランティックシティ店


トニー・カタラーノ、ノア・パテルの2名がウォルマートの食料品エリアにて商品を見繕っている。なお、当映像が記録された当時、トニーおよびノアの両名はサイト-333の予算を用いて警備システムの修復に必要なドライバー等の道具を購入するように命令が与えられていた。

ノア・パテル: バレた時の口実はどうするんだい、トニー?

トニー・カタラーノ: おいノア、今になってそんなことの心配してんのか? 問題ないさ、どうせヴィンセントも俺らがマトモに買ってくるだなんて思ってない。ましてや、警備システムの修復に必要ときたもんだ。あのクソッタレな目覚まし時計がウチに入ってくる空き巣を追っ払えた事があるか? せいぜいやれることと言えば、誤作動して俺らの睡眠を妨害する程度だ。

ノア・パテル: それもそっか、ホントに目覚まし時計をぶら下げてるだけだものね。いっそあれを盗っ人の頭に落とした方が効果ありそう。

トニー・カタラーノ: いや、それは昔うちの監査に来た内部保安部門エージェントサマのドタマにクリティカルヒットさせたことがあるから、今の平穏が惜しいならやめといた方がいい。

2名は雑談をしながら、調味料品の置かれた棚の前に立つ。

トニー・カタラーノ: ノア、なんか調味料不足してたりしたか?

ノア・パテル: 私が記憶してる限りでは無いけど、もう少ししたらハロウィーンで宴会するだろうし、プレーリー・オイスターの材料は調達しておいた方がいいんじゃない?

トニー・カタラーノ: そうだな、そうしよう。去年のハロウィーンやらクリスマスやらでは地獄だったからな。もうクソと一緒に流されるゲロを見るのは御免だ。

店舗の入り口付近から民間人の悲鳴が聞こえ始めるが、2名は気づく様子を見せない。

トニー・カタラーノ: そういや、どっかの東洋の国には迎え酒ってもんがあるらしい、それで二日酔いを解消するんだとよ。

悲鳴が2名の近くまで来る、しかし気づく兆候はない。

ノア・パテル: それ逆に悪化するんじゃない?

トニー・カタラーノ: そりゃぁな、だからヴィンセントに迎え酒させて今度こそはあいつの住所をトイレにだな  

SCP-4999-JP: (ケルト語)そこを退け!

SCP-4999-JPが2名に向けてマスケット銃を構える。ノアは状況が分からず混乱し、トニーは呆れたように両手をあげる。

トニー・カタラーノ: ほら、噂をすれば迎え酒の必要そうな酔っ払いが。

ノア・パテル: 酔った勢いで海賊のコスプレして強盗働くなんて悪酔いがすぎないか?

SCP-4999-JPがマスケット銃の銃口をトニーの頭部に向けるが、直後マスケット銃は下に向けられる。SCP-4999-JPはトニーを指で指しながら、驚いているように見える。

SCP-4999-JP: (ケルト語)なんだ、お前吐瀉男じゃないか。

ノア・パテル: なんて?

トニー・カタラーノ: 俺に分かるわけないだろ。ああ、でも、馬鹿にされてんのは分かる。

SCP-4999-JP: (ケルト語)おいお前ら!ここに吐瀉男がいるぞ!

店舗内の別所に存在していたと推測される他SCP-4999-JP個体が呼び声に応えるように2名の前に出現する。全個体は武装しているものの、2名への攻撃的な行動や兆候は見られない。

SCP-4999-JP: (ケルト語)お前が色々教えてくれたおかげでほら、こんなにも多くの胡椒を手に入れられるようになったんだ。お前さんには感謝してもしきれねえよ。この倉はお前さんも使ってんなら、ここを襲うのはよそうか。その次も、このまた次もまた会った時は見逃すとしよう。お前さんのような恩人に迷惑かけるわけにはいかねぇ。

SCP-4999-JP群が店舗外へと退店し、消滅する。

トニー・カタラーノ: ほらな、酔っ払いってのは何言ってんのかわかんねえから雑に受け流すのが1番なんだ。特にああやって群れてる奴らはな。

トニー・カタラーノ: というか、なんか見覚えある気がするんだよな、あいつら。

ノア・パテル: トニー行きつけのバーにでも居たんじゃない?

トニー・カタラーノ: 否定しきれないのが悲しいな。

補遺4999-JP.01:

2025/10/11、サイト-333 ボハート管理官によってプロトコル・パブリックドメインの提案がなされました。以下は、それに至るまでの部門間交流ログの転写です。

サイト-333 — 部門間交流ログ:
2025/10/09 — 08:32 pm
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • トニー・カタラーノ、経理・観光部門
  • レオノーラ・モラレス、野生動物スペシャリスト
  • ノア・パテル、未確認動物学者 兼 博物館学芸員

ヴィンセント・ボハート: よう、お前ら。よく来たな。

レオノーラ・モラレス: 確かに、ヴィンセントの急な呼び出しなんて2,3人来なくてもおかしく無いと思ってましたが。

ノア・パテル: 同意。

ヴィンセント・ボハート: ファック、お前らの俺に対する“お気持ち”はよーく伝わった。後悔すんじゃねえぞお前ら。

ノア・パテル: 後悔するのはトニーじゃないかい?

トニー・カタラーノ が参加しました。

トニー・カタラーノ: よう、遅れた。

レオノーラ・モラレス: なんだ、来たんですかあなた。

トニー・カタラーノ: なんだとはなんだ。

トニー・カタラーノ: おい待てノア、今ログを見返したら俺が後悔するって書いてあるがどういうことだ。

ノア・パテル: そのまんまの意味だよ、詳しくはヴィンセントから聞いてくれ。私はただ少し手伝わされただけで、何をするかは聞いてないんだ。

レオノーラ・モラレス: ああ、もしかして倉庫の鍵壊したのも貴方ですか? ヴィンセントの手伝いとやらで。

ヴィンセント・ボハート: いや、おれはそんな指示出した覚えないぞ、ノアの独断じゃないか?

ノア・パテル: いや? 倉庫には確かに行ったけど、その時にはもう鍵壊されてたよ。倉庫の鍵、下水道に落としてたから助かったけど。

トニー・カタラーノ: もう残った選択肢をわざわざ口にするまでもねぇな、クソッタレ。

ヴィンセント・ボハート: ほらな、やっぱり警報装置の修復するべきだったんだ。

ノア・パテル: なんでヴィンセントが自慢げになるのさ。元は寝る時うるさいって他の従業員からの苦情が相次いだから渋々買い出しに行かせたんでしょ。

トニー・カタラーノ: で、なんで俺が後悔するってんだ。

レオノーラ・モラレス: シット。とっととめんどくさい話題終わらせられると思ったってのに。

トニー・カタラーノ: そうはさせねえから覚悟しろよ。

ヴィンセント・ボハート: ああ、クソ。せっかくレオノーラの意図がわかったから乗ろうと思ったのに。仕方ねえな。

ヴィンセント・ボハート: トニー、今お前のDMに4999-JPのファイルを送ったから開け。

トニー・カタラーノ: サイト-333のインターネットからアクセスできねえようになってんだが。

ヴィンセント・ボハート: ああ、チキショウ。

ノア・パテル: ねえ、なんか私の部屋のFAX動いてるんだけど、ヴィンセント何かした?

レオノーラ・モラレス: 私のもですね。なんですかこれ、私が知ってる4999-JPスロットとは少し違いますが。

ヴィンセント・ボハート: なんだよ、トニーの所だけに送るつもりだったってのにこのポンコツPCが。はぁ、今一斉送信したそいつは最近更新されたばかりの新しい4999-JPスロットだ。

トニー・カタラーノ: なぁ、俺の見間違いなら良いんだが、この報告書の必要クリアランス4じゃないか?

ヴィンセント・ボハート: ああ、こんなちっぽけな異常如きに4も要るかとは思うが、登録されたばかりってのもあって少し高めらしい。あと数週間経てば2ぐらいに落ち着くだろ。

レオノーラ・モラレス: シット、ファッキンシット。なんて事してくれるんですかヴィンセント!ああ、クソ。3分以内にゴミ箱にぶち込めば本部の野郎どもも駆けつけてきたりやしませんよね。

ノア・パテル: 私は取ろうとしたら風に飛ばされて窓から出て行ったから問題ないよね?

ヴィンセント・ボハート: 多分捨てるだけじゃ不十分だから燃やしとけ、レオノーラ。お前が今いる部屋のゴミ箱って鉄製だったよな。

レオノーラ・モラレス: プラスチック製ですしもうライター投げ込みました。手遅れです、色々と。

トニー・カタラーノ: さっきから鳴ってたこの警報そこが元だったのか。

ヴィンセント・ボハート: とりあえずレオノーラはPCを燃やさないように死守しろ。壊れたら自腹で買い替えろよ。んでノア、お前はそのままでいい。どうせ飛んでったのはカモメが食ったり路地裏でゲロまみれになったりするだろうから、誰かに拾われる心配なんぞ要らねぇ。

トニー・カタラーノ: ざっと斜め読みしたが、なんだ。俺たちが雑務から逃げるために異常だってでっち上げた“少し早めの頭ハッピーハロウィーン野郎ども”が本当に異常で、前に俺が乗り込んだ4999-JPスロットの奴らと同一だってのか?

ヴィンセント・ボハート: 上手く咀嚼したなトニー。その通りだ、んでそいつらを追っ払う免疫を持ってんのがお前ってこと。

トニー・カタラーノ: ふざけんな。

ヴィンセント・ボハート: ふざけちゃいねぇさ。おいノア、あれ出せ。

ノア・パテル: え、何? 見てなかった。

ヴィンセント・ボハート: 今日ガススタンドのプリンターで印刷させた書類あるだろ? それをトニーに見せろってんだ。

ノア・パテル: ああ、オーケイ。

トニー・カタラーノ: ん、なんだこれ。“プロトコル・パブリックドメイン”? っておい、著者お前じゃねえかヴィンセント。

ヴィンセント・ボハート: どうだ、我ながら良いネーミングセンスだろ。

トニー・カタラーノ: ダサい。

ノア・パテル: うん、ダサいね。

レオノーラ・モラレス: 上2人と同意見。

ヴィンセント・ボハート: クソ、こういうの考えたこともないくせに偉そうに。こっちにも転写するからごちゃごちゃ言ってねえでとりあえず読め。

プロトコル・パブリックドメイン

民間人と財団双方の安全を優先した上での、クリエイティブな発想に基づくSCP-4999-JP抑止計画。

サイト-333、管理官、ヴィンセント・ボハート 著


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要旨:

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本プロトコルが決行された場合のイメージ画像。KFCおよびカーネル・サンダースは本稿に関係しない。

本稿は、近頃になって現れた現在のSCP-4999-JPスロットに分類される超常的な人形実体群を民間人、および財団が維持を推し進めるヴェール政策への多大なるダメージ無しに安易に抑止することが可能になると見込まれるプロトコルの提案書である。本プロトコルを提案するに当たって4件の検証、および7件の即座に実行可能な地点を確保している。本プロトコルの提案に至るまでに、多大なる協力をしてくれたトニー・カタラーノの献身が実ることを、そしてあわよくばSCP-4999-JPの破壊とはいかない抑止を願うことをここに記す。



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トニー・カタラーノ: で、このプロトコルは要はどういうことなんだ?

ヴィンセント・ボハート: ちゃんと読んでそれか?

トニー・カタラーノ: 逆に聞くがお前は買った電子機器の説明書をしっかり読んだ経験があるかってんだ。

ヴィンセント・ボハート: 俺は何もガキの読書感想文を再現しろって言ってるわけじゃねえんだ、クソ。

ヴィンセント・ボハート: 要するにだな、お前の等身大パネルをこの街の至る所に置きまくってあいつらが現れても速攻帰るようにしようぜってことだ。

トニー・カタラーノ: おい待てテメェふざけ  

ヴィンセント・ボハート トニー・カタラーノ を退出させました。

ヴィンセント・ボハート: こうなると後がめんどくせえから説明したくなかったんだ。


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倉庫でトニー・カタラーノの等身大パネルを探すサイト-333従業員。


補遺4999-JP.02:

ボハート管理官によって提案されたプロトコル・パブリックドメインは申請から3日後の2025/10/15に受諾、実行されました。範囲はネクサス-36内の過去にSCP-4999-JP対象となった店舗、およびその可能性が高い食料品店にて実行されました。本プロトコルは予算が比較的安価で纏まることから半ば実験的な形での承諾でした。

プロトコル・パブリックドメインはトニー・カタラーノの等身大パネルを対象店舗の入り口に設置するという過去に類を見ない特殊なプロトコルであったことから、その効果には疑念が抱かれていました。しかし、ボハート管理官によって提出されたボディカメラ映像、および複数の実例から承諾へと至りました。提出された実例では、サイト-333従業員の手によって未だ対象となっていなかった4つのスーパーマーケットを対象に実施されました。

実施店舗のうち、3店舗がSCP-4999-JPの対象に指定、実体群の出現が確認されました。観測された実体群はいずれもケルト語で、設置された等身大パネルに一方的に話しかけ、その後一連の手順を踏まずにそのまま消滅しました。またその発言の中で“吐瀉男”という名称が全ての実例において出されており、SCP-4999-JP実体がトニー・カタラーノのことを“吐瀉男”という共通名称で呼称していることが判明しました。

ボハート管理官の提案したプロトコルは確かな実用性が確立されていますが、その問題点としては店舗側の意思で等身大パネルの撤去が行われる危険性が高いというものが挙げられます。その危険性を解消するための提案がO4評議会にて求められ、『トニー・カタラーノの肖像権をネクサス-36内部のみの範囲で放棄、および民間人への浸透』が提案されました。本提案は評議会の投票で却下されましたが、ボハート管理官の独断によって本提案の実行が促進されています。

本稿更新時点(2026/01/04)で、プロトコル・パブリックドメインは73件のSCP-4999-JP事前対応に成功しています。またトニー・カタラーノは59件の苦情およびプロトコル改正の提案を提出、全件が棄却されています。

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