クレジット
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SCP-5024の内部。現在既に無名となったエージェントによって、探索中に撮影された写真。
アイテム番号: SCP-5024
オブジェクトクラス: Keter Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-5024は異次元空間に存在し、アクセスポイントが一時的にしか接続されないため、物理的収容は不可能です。全ての取り組みは、SCP-5024への一貫した入場手段を発見し、被害者となり得る人々がSCP-5024の一時的入場口にアクセスするのを防ぐことを重視します。
これらの予備収容プロトコルの一環として、機動部隊サンピ-6 (“虚数”)は、GoI-α-019 (“蛇の手”)の事前承認を受けた構成員たちと協力することを認められています。
上述のプロトコルは現在、無力化に続く更新待ちです。
説明: SCP-5024は奇跡論術コミュニティの構成員を標的とする異次元の情報食性実体です。SCP-5024は通常の実存的枠組みの外側に位置するため、SCP-5024自らがハイジャックしたローゼン-フォーチュン橋1を経由しなければアクセスできません。本来ならば、これらのローゼン-フォーチュン橋は特定の行動を実行した使用者を様々な場所へと移動させます。しかしながら、ハイジャックされた橋が活性化すると、使用者は即座にSCP-5024の内部空間へと転送されます。ハイジャックされる橋の選択パターンはまだ確立されておらず、橋がハイジャックされている期間も同じく定まっていないようです。
物理的には、SCP-5024は主に石材と木材で構築された不明確な規模の廃墟です。SCP-5024の内装は表面上、広大な図書館に類似します。しかしながら、SCP-5024の内部に存在する全ての書架は空であり、回収された本のページは白紙だけだと確認されています。全ての窓の外には暗い虚空だけが見える(SCP-5024の他の区画が見えると論理的に想定できる位置の窓を含む)ため、建造物としてのSCP-5024の外観は特定されていません。被害者の転送に使用された橋を使ってもSCP-5024からは退出できませんが、他の瞬間移動手段は有効だと証明されています。
SCP-5024の内部に長時間留まり続けると、段階的に情報が消化されます。これは、被害者の名前や最近の記憶といった表面的な詳細の喪失から始まりますが、最終的には被害者の実存性が他者や被害者自身にすら認識できなくなるまで緩やかに進行します2。
通常、このプロセスによる情報喪失は直接の被害者にだけ影響しますが、被害者がより栄養価の高い情報3を保有している、またはそのような情報の主要情報源である際には当て嵌まりません。このような場合、SCP-5024は標的とする情報への直接リンクとして被害者を利用し、消費された情報は人間の記憶を含む全ての記録から抹消されます。

1875年に撮影されたシャルル・デュピュイの写真だと考えられている。
留意点として、上記のプロセスで消費された情報の記録は全て消去されますが、その他の形式による証拠は依然として残されるため、過去に起こった出来事そのものは全く改変されないことが確認されています。
ローゼン-フォーチュン橋の利用者のみを標的とするSCP-5024の性質上、GoI-α-019 (“蛇の手”)の一部構成員が証拠文献の提供と支援要請のために接触を図るまで、財団はSCP-5024の存在を認知していませんでした。
補遺5024-1 (アーカイブ文書)
以下は、SCP-5024の本来の製作者であるフランス人オカルティストのシャルル・デュピュイが、現在まだ未特定の人物に宛てた書簡の抜粋だと想定されます。過去のある時点で、シャルル・デュピュイに関する全ての情報はSCP-5024に消費されたと考えられています。しかしながら、財団に提供された記録は反次元アーカイブ4に保存されていたため、その後も存続していました。
真実を追い求める我が同志へ。
放浪者の図書館を徘徊する俗衆を見るにつけて、私は君の意見への同意を益々強めている。あの学舎が陥った真の恥辱であろう。知識がそれを適切に利用する能力を持たない者たちの手に渡る時、いったい惨事以外の何が起こり得るだろうか。大いに悩ましい。
これを念頭に置き、前回の会議で君が出した意見を踏まえて、私はこの問題をどのように解決するのが最善かを考えている。今となっては図書館を放棄するのも止むを得ない - あの知識の井戸は値しない者たちの手によって毒された。しかし、模式図としての有用性は否定できない。
放浪者の図書館は無論、既に無価値だ。だからと言って、また別の図書館もそうあらねばならないのだろうか? もし仮に我々が似た空間を作り出し、それ自らの意思で書架を満たすように設定すれば、必ずや同等の価値がある資源を、それも短期間で得ることが可能だろう。
私は既に準備に着手している。次回会う際、この件について君の意見を聞かせてほしい。
シャルル・デュピュイ
GoI-α-019から提供された追加資料には、自己維持型異次元空間の創造を目的とする多数の奇跡論的な設計図と、過去にハイジャックされたローゼン-フォーチュン橋のリストが含まれていました。
この情報の分析結果と、SCP-5024の存続は歴史の一貫性に対する容認し難い脅威であるという司令部職員間の総意に基づいて、SCP-5024の無力化指令が承認されました。より多くの情報を得てこの任務を迅速に遂行するため、情報提供者となったGoI-α-019構成員たちとの協力が認められました。
オカルトコミュニティへの熟知と、過去に奇跡論的な脅威に対処した経験から、この任務は機動部隊サンピ-6 (“虚数”)に割り当てられました。
補遺2 (交渉ログ)
2020/03/02、情報共有と協力交渉のために、機動部隊サンピ-6隊員たちとGoI-α-019構成員たちはローマのカッフェ・デラ・ペースCaffè della Paceに隣接する超常空間、スーペ・ラデ・ェフッカEcap alled Èffacにて面会しました。
参加者 (MTF-サンピ-6) | 参加者 (GoI-α-019) |
---|---|
MTF サンピ-6-1、マイケル・フラミア。MTF サンピ-6隊長。青年期に幅広いオカルティスト団体で活動していた経験がある。 | PoI-2232 (“ジャック”)。現実改変実体であり、その能力の範囲は未知数。世界各国で多数の軽犯罪を犯し、複数の名前で指名手配されている。容姿は不定だが、一般的に鮮やかな赤毛の青年男性として現れる。 |
MTF サンピ-6-2、サラ・ロック。様々な奇跡論の分野における輸送技術の専門家。必要に応じてMTF サンピ-6を現在地から脱出させるのが主な役割。 | PoI-2233 (“花嫁”ザ・ブライド)。次元間旅行者と推定される。外見上は人間であるものの、心理と体内生理は大幅に異なると考えられる。 |
MTF サンピ-6-3、アビオラ・ビューレ。ピタゴラス式分解法や多数のガイギャックス派生式攻撃テクニックなど、攻撃的な奇跡論術の訓練を受けている。従来の戦闘技能に耐性を有する脅威の無力化を担当。 | PoI-2234 (“レッド-832”)。PoI-299 (“レッド”)の多数存在するレプリカ・ホムンクルスの1体。創造後、アテネ流炎占いパイロマンシー戦闘術の習得に割り当てられていた。禿頭、赤い肌のヒト型実体。 |
MTF サンピ-6-4、タイラ・ヤンソン。土占いジオマンシー、水占いハイドロマンシー、大気占いエアロマンシー、手相占いカイロマンシー、肩甲骨占いスパチュラマンシーなどの幅広い易断技法の訓練を受けている。現地での偵察を担当。 | PoI-2235 (“ジョー・スミス”)。元々は偶然ローゼン-フォーチュン橋を抜けて放浪者の図書館に迷い込んだと考えられている、アマチュアの奇跡術師。諜報活動によると、本職は数学教師であり、2人の子供がいる。眼鏡をかけ、口髭を生やした中年男性。 |
<記録開始>
(参加者全員が着席する。)
フラミア: 割と居心地の良い場所を構えたようだな。
ジャック: そうだろう? ラテン人の働きもそう捨てたもんじゃない。
フラミア: それに、ここでは並んで待たなくとも済みそうだ。
ジャック: (笑い) 確かにそれもメリットだね。もう来られないのが残念だ。
フラミア: 何故ダメなんだ?
レッド-832: 話し合いが終わり次第、アンタら看守ども5がハゲタカみてぇに此処に降りてくるからだよ。
ザ・ブライド: (不明瞭)
ジャック: まぁ、今のは直截に過ぎたかもしれないけど、確かにそれは懸念してる。
(沈黙。)
ジョー・スミス: いやぁ、ここのコーヒーは絶品ですね!
(沈黙。)
フラミア: 理解した。ロック?
ロック: はい。 (咳払いする) この件に関するあなた方の協力と引き換えに、財団にはこのような正常性に影響を及ぼさない会合地点への更なる余裕を提供する意思があります。
レッド-832: なんかカンペ読んでるか?
ロック: いえ、読んでいません。
ビューレ: 暗記してるだけだよ。 (笑い) ここに来るまでずっと読んでた!
ヤンソン: (含み笑い)
ロック: せめてもう少しプロ意識を持ってください。そう難しくないでしょう。
(沈黙。)
ジャック: 余裕。それはちょっと、うーん、トリッキーな言葉だね。僕には分かるよ、自分でもこの手の言葉はよく使う。具体的に僕らはどの程度の、えーと、余裕を貰えるんだい?
フラミア: 一般人が気付き始めない限り、財団からは全く干渉しない。
ジャック: そりゃ随分と寛容なことだ。
ザ・ブライド: (不明瞭)
ジャック: はいはい、訊くよ。不躾な話だけど、僕らの - 組織の、とはちょっと言えないけれど - とにかく、結構な数の仲間が捕まっているはずだ。彼らを自由の身にはしてくれないかな?
(沈黙。)
フラミア: 誰の話をしているかによる。
ジャック: ネオ・オーディンとか。
フラミア: 絶対に無理だな。
ジャック: (肩をすくめる) ま、そうだろうと思った。嫌いだから別にいいけど。
ジョー・スミス: 誰でしたっけ?
レッド-832: ロボットだ。
ジョー・スミス: ああ。ああ。 私も彼は好きになれませんでした - あの人はウチの面汚しですよ、本当に。
ロック: 話を元に戻して宜しいでしょうか。皆さんはSCP-5024に精通しているので-
(ジャックが立ち上がり、ロックを指差す。)
ジャック: おぉう! おぉう! 聞いたかい君たち? 財団はあれに番号を振ったらしいぞ! 実に公式って感じ!
ザ・ブライド: (不明瞭)
(沈黙。ジャックが改めて着席する。)
ジャック: (咳払いする) あー、続けて。
(沈黙。)
ロック: 皆さんはSCP-5024に精通しているので、財団は皆さんの協力を得て、問題の異常空間に立ち入り、無力化するための合同作戦を実行したいと考えています。
レッド-832: どうやって?
ビューレ: こっちにもそれなりの手段があるのさ。心配しなくていい。
ヤンソン: うぅ。
レッド-832: どういう手段だ?
フラミア: 君たちの了解を得られない限り、その情報は明かせない。保安上の理由だ。
(沈黙。)
ジャック: 話に乗る前に、1つ質問がある。
フラミア: どうぞ。
ジャック: これに同意すれば、僕らは少しの間だけ、事実上の財団職員になるよね? コードネーム貰える? どういうコードネームになるかな?
(沈黙。)
ジャック: 因みに、これはイエスって意味だよ。
<記録終了>
補遺3 (無力化ログ)
以下は2020/02/27、機動部隊サンピ-6 (“虚数”)とGoI-α-019構成員によって、SCP-5024無力化のために実施された作戦の記録です。SCP-5024への入場に際し、グループには次の装備が提供されました。
- 防御情報層。重複する点検記録や重要でない会議の議事録といった大量のジャンクデータを、MTF サンピ-6の各隊員を取り巻く概念的な防壁へと変換することによって作成されました。同様の防御層がGoI-α-019構成員たちにも作成されました。これらは、SCP-5024は個人の関連情報を直接消費し始める前に、大量のジャンクデータを消化しなければならないという前提で構築されました。
- 事前に記述された分解定理 10点。人間サイズの脅威を原子まで分解できます。これらを使用するには、そこに含まれる数理への理解が必要なため、MTF サンピ-6-3に配備されました。
- アブラメリンの規則に沿って設計された魔術語方陣 8点。SCP-5024からの即時転送を可能とする文言が刻印されています。MTF サンピ-6の各隊員とGoI-α-019の各構成員に、魔術語方陣が1点ずつ配備されました。
- MTF サンピ-6-4が現地で易断を行うための資材。作戦前の易断は許容範囲の成功率を示しました。
- 既存の用語を精密に組み替えて作られた有毒成句トキシフレーズが密封されているコンテナ。SCP-5024がトキシフレーズを消費した場合、有害な反応を引き起こし、不安定化による形而上学的な崩落を招くという想定で構築されました。
SCP-5024への入場は、ローゼン-フォーチュン橋の入口でモリス・ダンスを踊ることによって行われました。
<記録開始>
(全員がSCP-5024内の広い部屋に転送される。部屋は図書館のメインホールとして設計されているようだが、本や書架は全く存在しない。光源は、室内にある4脚の大きなテーブルにそれぞれ配置されたランプのみである。)
(ジャックが室内に一歩踏み出し、腕を大きく振るいながら笑う。)
ジャック: なかなかどうして、君たちもやるじゃないか。
フラミア: 点呼。
ロック: 了解です、隊長。
ビューレ: 了解。
ヤンソン: うぅ-ううぅ。
(沈黙。)
ジョー・スミス: あの、ええと、私も返事すべきなんですか?
レッド-832: お前がしたいなら、そうすりゃいいだろ。
ザ・ブライド: (不明瞭)
(機動部隊サンピ-6は武器を正面に向けたまま、室内で散開する。)
フラミア: ジャック?
ジャック: 何かな、我が君主様?
フラミア: トキシフレーズを循環させるには、この建物の心臓部で使用しなきゃならない。こいつが俺たちの防御層から食っている情報 - それが何処へ流れているか分かるか?
ジャック: まぁ、僕自身が物語の塊みたいな男だから、そう難しくないはずだ。 (指を舐め、宙に突き出す) ふむ… こっちだね。 (隣接する廊下を指差す)
フラミア: 分かった。行くぞ!
(一同は廊下へ移動する。フラミアとロックが正面を、ビューレとヤンソンが後ろをそれぞれ警護している。GoI-α-019構成員たちは、MTF サンピ-6隊員たちの間を歩いている。)
ジャック: この場所は実に全く興味深くて仕方ない。目に見えない根っこが情報を吸い上げ、蹴り飛ばしたり叫んだりしながら廊下を引きずっていく。血管のように… 勿論これは、心臓が存在することを示している。僕は本当に楽しんでいるよ、君たち。
ジョー・スミス: あの、えー、ジャック?
ジャック: 何だい、長年の同志よ?
ジョー・スミス: ちょっと思うんですが… いや、私がここにいてどれだけ役に立ちますかね? つまりその - 子供たちを3時までに迎えに行く必要が…
(ロックがGoI-α-019構成員たちを振り向く。)
ロック: あなたには戦闘への即応性があると聞いていましたが。
ジャック: そうとも、そうとも! 君たちおチビさんは心配しなくていい! (声をひそめ、ジョー・スミスに向かって) 大丈夫だから。心配するな。僕がしっかり見てるよ。
(ジャックが突然立ち止まる。)
ジャック: 何かが近付いてくる。
(一同が立ち止まり、MTF サンピ-6隊員たちはジャックが見ている方角に武器の狙いを付ける。曲がり角の向こう側から、何かが床を這い進む音が聞こえる。)
ビューレ: 今まで財団が人を派遣した時、ここはいつも無人だった。毎回そうだった。
ジャック: 今まではこいつを殺そうとしてなかったんだね。
(湿った奇形の手が曲がり角から現れ、続けて本体が自らを引きずるようにして視界に入って来る。フォード・モデルMの技術仕様がよろめきながら角を曲がり、カチカチ、ゴボゴボと音を立てる。フォード・モデルMの技術仕様はもう片方の腕を一同に向かって伸ばす。)
ビューレ: (目を擦る) 俺が今見てるあれは何だ?
レッド-832: 緩く固められた情報だ。この空間が情報を一緒くたに混ぜ合わせて、俺たちの後を追わせてやがる。
フラミア: 見えてるのは敵だ、ビューレ。目を逸らすな。
(フォード・モデルMの技術仕様は叫びながら一同に飛び掛かる。MTF サンピ-6の全隊員が発砲し、技術仕様は床に倒れて暗緑色の液体を漏らす。)
ジャック: 君たちの予想ほど簡単には終わりそうにないな。
フラミア: マーフィーの法則というやつだ。マーフィーの法則。この手のハプニングは想定しておくのが最善なんだ。
ロック: 少なくとも銃弾は効きますね。
ザ・ブライド: (不明瞭)
ジャック: いや、まだだ。 (顔を上げる) もっといる。
(ヤンソンが首輪のボタンを押し、首輪から甲高い音が発せられる。全員がヤンソンの方角を振り向く。彼女が面している側の廊下から、ヤコブ・ホルトの名前、生年月日、幼少期の思い出が大きく身震いし、笑いながら突進してくる。)
フラミア: 撃て!
(MTF サンピ-6の全隊員が攻撃者たちに発砲するが、弾丸への耐性が著しく高く、倒れるまでに数秒かかる。同時に、一同の横の壁が勢いよく内側に崩れ、ウィリアム・ヘンリー・ハリソンの大統領命令が、自らの巨体と拳を握った体肢のうち2本を隙間から強引に押し出し始める。)
ビューレ: ふざけんな!
(レッド-832がジャケットのポケットから蝋燭を取り出し、着火して手を振る。蝋燭の炎は即座に消え、代わりにウィリアム・ヘンリー・ハリソンの大統領命令が炎上して、数秒以内に灰に変わる。やや遅れて、レッド-832の蝋燭もまた崩れて灰になる。)
(更に多くの敵 - 少なくとも10体 - がヤコブ・ホルトの名前、生年月日、幼少期の思い出の死骸の後ろから廊下に入るのが見える。)
フラミア: 奴らはここに留まる限り押し寄せてくるだろう。ジャック、先導を頼んだ。できる限り早急にこいつをぶっ殺して脱出しなきゃいかん。
ジャック: 了解、了解!
(ジャックは廊下の反対側へと向かい、他の面々は彼の後を追う。一同が移動している間、ビューレとヤンソンが援護射撃を行う。)
(スティーヴン・スピルバーグ作“ E.T. II: 夜に蠢く恐怖 ”が咆哮しながら、ジャックに向かって2本の巨大な腕で廊下を突進してくる。)
(ジャックは何らかの種子のように見える物体を吐き出し、地面に落とす。即座に巨大な植物が床から飛び出し、ツタが“ E.T. II ”の周囲に収束して締め潰す。“ E.T. II ”の死骸が床に倒れる。)
(“ クラシック・オブ・ミュージック ”と“ 預言者ヒエラリアスの第七宇宙 ”が“ E.T. II ”の死骸から飛び出す。“ 預言者ヒエラリアスの第七宇宙 ”は速やかに銃撃で鎮圧されるが、“ クラシック・オブ・ミュージック ”は装甲板で覆われているため、耐久性が顕著に高い。)
フラミア: (叫び声) ロック、ビューレと位置を替われ!
(ロックが指令に応じる。ビューレは前進し、パックから定理を取り出して読み始める - “ クラシック・オブ・ミュージック ”は鎌のような両腕を振り上げて突進してくる。ビューレが定理を完了すると、“ クラシック・オブ・ミュージック ”は硬直し、数秒後に崩れて霧に変わる。)
ビューレ: このクソ廊下は何処まで続いてるんだ?!
ヤンソン: (頷く)
ジョー・スミス: あぁ、もう無理… 気分が悪くなってきた…
ロック: 皆さん、少しだけ私を守ってください!
(ロックがホログラム奇跡術陣をセットしている間、一同が彼女を防衛する。ジャックは唐突に手の中に出現した斧で“ 恋の骨折り甲斐 ”を斬り倒し、ザ・ブライドのベールの裏から繰り出されたウナギのような触手が“ 魔法の竪琴 ”の頭部の1つを引き裂く。)
(間もなく、一同の周囲に魔法陣が浮かび上がり、対応する障壁が境界線に展開される。様々な実体が体肢で障壁を殴打し、破ろうとしているが効果は無い。)
ロック: (フラミアに) 前進ですか、後退ですか?
フラミア: 前進だ。何も変わらない。
ジャック: この場を借りて皆に知らせておこうか、僕は大いに楽しんでいるぞ。君たちも楽しんでるかい?
ジョー・スミス: (嘔吐する)
(ロックが魔法陣の中心に手を乗せると、障壁に覆われた領域 - 一同が立っている床の一角を含む - が非常に高速で廊下を進み始める。数秒以内に、激突した多数の実体から飛び散った体液によって障壁は不透明になる。)
ロック: あと2秒!
(移動が停止し、1秒後に障壁が消える。付着していた体液が一同の上に降り注ぐ。MTF サンピ-6の全隊員がバイザーから体液を拭き取る。多数の触手がザ・ブライドのベールの裏から現れ、彼女の衣服から体液を舐め取る。)
ジョー・スミス: (再び嘔吐する)
レッド-832: 汚ぇな、おい。
ヤンソン: うぅ。
フラミア: 生きるか死ぬかの瀬戸際だったんだ。顔を上げろ。
(一同は現在、広い部屋の中にいる - 他の多数の廊下が壁や天井にある入口と繋がっている。室内には空の書架が並んでおり、光の線が書架から部屋の中心部に浮かんでいる何らかの物体に流れているのが見える。)
ジャック: (声をひそめて) 情報はこの部屋で明確さを増している。イチゴ味だ。
(部屋の中心部の物体は、木材と石材で構築された巨大な人間の心臓に似ており、絶えず変化する言葉の印象がその表面に沿って走っている。光の線は心臓表面に無数に空いた穴の中に入っていく - 大きな咀嚼音が聞こえる。)
フラミア: あれが俺たちのターゲットだ。
ビューレ: 定理を使うか、ボス?
フラミア: 人間より大きいんだぞ、ビューレ。少なくともいきなり試すのは悪手だ。まずはトキシフレーズが効くか確認しよう。
(一同が心臓に向かって踏み出すと、心臓は激しく揺れ、低い人間の声で叫ぶ。)
心臓: レモネードの沸点は摂氏100度! ハプスブルク家は18世紀に絶えたと一般大衆は信じている! ウォルト・ディズニーは1901年12月5日に誕生した! 俺! 俺! 俺!
(天井が裂け、カンビュセス2世の失われた軍隊の所在地が、多数の頭と口で唸りながら裂け目から染み出し始める。所在地は触手を繰り出し、ザ・ブライドの左腕を引き裂く。ベールの裏側のかすかなざわめきを除いて、ザ・ブライドは目に見える反応を示さない。)
心臓: 俺! 俺! 俺!
(先端の尖った細長い体肢を使って室内に完全に侵入したカンビュセス2世の失われた軍隊の所在地に、一同が発砲する。レッド-832は蝋燭を使って青い炎を数回発射するが、炎は所在地に接触するとすぐに消える。更に、ジャックは別な植物を生成して所在地を強引に裂け目に押し戻そうとするが、耐久性が不十分だったため、所在地の前進によって植物は引き裂かれる。)
心臓: 俺! 俺! 俺! 俺の王国! 俺の家! 俺の頭脳!
ロック: 退却しましょう、隊長! この状況に対応できる装備はありません!
(装甲板がカンビュセス2世の失われた軍隊の所在地の皮膚を覆い始め、銃撃を無効化する。所在地が咆哮する。)
(ジャックがジョー・スミスに向き直る。)
ジャック: ジョセフ、例のあの隠し芸をもう一回見せてくれたら本っ当に嬉しいよ。
ジョー・スミス: えっ、あの、ですが、今やって大丈夫なんでしょうかね?!
ジャック: (芝居がかった会釈をする) 勿論だとも。始めておくれ、友よ!
(完全に室内に侵入した敵が地面に落下し、心臓の前で防御姿勢を取る。)
(ジョー・スミスが一歩踏み出し、ポケットから丸めた紙片を取り出して伸ばす。)
ジョー・スミス: さて、えー、もし記憶が正しければ発音は確か -
(敵がジョー・スミスに向かって突進する。)
ジョー・スミス: リークス・ミアネスRhyx Mianeth6?
(眩い赤色光が室内に溢れ、カンビュセス2世の失われた軍隊の所在地が後ろに吹き飛ばされて壁に激突する。所在地は倒れ込み、身震いする塊になる。)
(人面イナゴの群れであり、また同時に完全な裸体かつ首無しの異常に巨大な人間男性でもある実体7がジョー・スミスの前に立っている。直後、当該実体は部屋の反対側の塊に向かって突進し、自らの顎および/または手で裂き始める。)
(部屋と異次元空間そのものが崩れ始める。木材と石材の塊が天井から落下し、床が割れてその下にある黒い虚空が露わになる。)
(心臓が大声で叫び、シャルル・デュピュイの顔に似た外見へと変形する。心臓は歯軋りして荒々しく揺れ、部屋は崩落し続ける。)
心臓: 俺の! 俺の! 俺の!
ロック: 終わりです。脱出しましょう!
レッド-832: ダメだ、今逃げたらこの空間は自力で再建するぞ! ケリをつけなきゃいかん。
(沈黙。)
フラミア: 君たち全員脱出しろ。俺が任務を完了する。
ジャック: (前に踏み出す) あー、その、お呼びじゃなかったら申し訳ない - 僕は大抵そうなんだけどね、ハハ - だけど、図書館の住人である以上、今回の図書館業務を終わらせるのは僕が適役だと思わないかい?
(沈黙。)
フラミア: 君の言いたい事は分かるとも。だが庭は蛇の場所なんだ。
(沈黙。)
ジャック: (溜め息) あぁ。道理で見覚えのある顔だと思った。それじゃ、幸運を祈る。
(フラミアを除くMTF サンピ-6の全隊員と、GoI-α-019の全構成員が、魔術語方陣を使って脱出する。ヤンソンは少しだけその場に居残ってから脱出する。)
心臓: 俺の王国! 俺の頭脳! 俺の意思! 俺の!
(密封コンテナを抱えたフラミアが、進路上に落下してくる無数の岩屑や情報実体を躱しながら、心臓に向かって走る。)
心臓: 俺の!
(フラミアは心臓が伸ばした舌の打撃を転がって避け、拡大しつつある床の穴を飛び越える。対岸に降りたフラミアは、片手で密封コンテナを抱えたまま、もう片方の手で心臓のまぶたを掴む。心臓が苦痛の金切り声を上げる。)
心臓: 盗人! 庶民! 寄生虫!
フラミア: おい!
(心臓は喚くのを止め、瞳孔を動かしてフラミアを直視する。密封コンテナが開かれる。)
フラミア: [データ削除済]、ゲス野郎。
(映像途絶。)
<記録終了>
この直後にSCP-5024異次元空間の崩壊が確認されました。具体的な世界の外側に存在することは変化しやすく一貫性の無い結果を伴なうため、マイケル・フラミアは作戦行動中行方不明と宣言されました。彼の現状の確認は保留されています。
補遺4 (GoI-α-019とのその後の交流)
GoI-α-019構成員たちはSCP-5024からの脱出後間もなく、早急にその場を去りました。しかしながら、1週間後、財団はサイト-22に出現した数点のオブジェクトを通して彼らからの通信を受け取りました。
出現したオブジェクトは以下の通りです。
- あらゆる肉体的損傷から数秒以内に回復する、とぐろを巻いたウナギ。暫定的にSCP-████に分類。
- 点火すると、点火した人物による直接干渉が無い限り消えない蝋燭。暫定的にSCP-████に分類。
- 自らの行動範囲内の腸に影響する全ての体調不良を治癒する、クモに似た小型生物。暫定的にSCP-████に分類。
- 遺伝的に正常な乳牛。
これらは以下のメモを伴なっていました。
僕らは君たちがやってくれた全ての事に心から感謝しているけれど、何人かの仲間は今回のささやかな“同盟”をあまり好ましく見ていないらしいので、今後はもう顔を合わせない方が良いだろう。それでも、今回は楽しませてもらった。
心配しないでくれ。君たちの隊長さんはきっと見つけ出すから。
J
PoI-2232 (“ジャック”)とその部下の現在地を特定する試みは成功していません。