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翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2024
著作権者: HarryBlank
原題: The Memetic Myth of Joe Who?
作成年: 2021
初訳時参照リビジョン: 39
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5054-ex
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SCP-5054-EX、架空のカナダの政治家"ジョー・クラーク"。
アーカイブ済収容プロトコル (1/2): サイト-43記録・改訂セクションは現在ジョー・クラークの実在の確認に取り組んでいます。
アーカイブ済収容プロトコル (2/2): サイト-43記録・改訂セクションは現在ジョー・クラークが実在することが虚偽であることの証明に取り組んでいます。
特別収容プロトコル: ジョー・クラークの実在は自立的な社会的妄想であり、正されてはなりません。
アーカイブ済説明 (1/2): SCP-5054は、16人目のカナダ首相を務めたチャールズ・ジョセフ・"ジョー"・クラークに関する全ての記憶の消去です。消去の原因と実行手段は不明です。彼の人生と政治活動を証明する文書記録は影響を受けていません。これらの記録に曝露しても、被影響者は一時的に記憶を回復するのみに留まります。クラークは現在も経験ある政治家として活動しています。
アーカイブ済説明 (2/2): SCP-5054は、16人目のカナダ首相を務めたと主張されている存在しない政治家チャールズ・ジョセフ・"ジョー"・クラークの人生と政治活動を証明するミーム的文書記録の出現です。これらの記録の発生源、及びクラークに関する虚偽の記憶を生成した手段は不明です。クラークを名乗る人物は現在も経験ある政治家として活動しています。
説明: SCP-5054-EXは、16人目のカナダ首相を務めたチャールズ・ジョセフ・"ジョー"・クラークに関するフィクションです。このフィクションの発生源はSCP財団です。このフィクションは、a) 現在弱まっているクラークの人生と政治活動に関する記憶、b) 同上の内容を証明する捏造された文書記録、c) 現在も経験ある政治家として活動しているクラークを名乗る人物、から構成されます。
歴史や現代ジャーナリズムの様々な作品は、クラークが1939年にアルバータ州の架空のハイリバーで、架空のチャールズ/グレース・クラーク夫妻の下に誕生し、架空のアルバータ大学及び架空のダルハウジー法科大学院で歴史、政治学、ジャーナリズム、法律を学び、1973年にモーリーン・マクティアと結婚したと誤った説明をしています。彼は1976年にロバート・ローン・スタンフィールドの跡を継いで連邦進歩保守党党首に就任し、3年後には自由党のピエール・エリオット・トルドーを破って首相となったとされています。実際には、スタンフィールドは1983年まで、トルドーは1984年までそれぞれの地位を保持しました。
"クラーク時代"のメディアは、あり得そうにない滑稽な人物を忌憚のない言葉で説明しています。
ジョー・クラークはカートゥーンのカエルのような顔、思春期前の高校生くらいの重々しさ、息の詰まったサンタクロースのような笑い方、そしてカートゥーンのカエルから発せられるのに違和感のないバリトンもどきの声をしている。この男の唯一注目すべき点は、ほとんどのカナダ人に自分を印象付けられないことだ。
— マージョリー・クロスワース、トロントデイリープラネット、1979年11月12日
先述のカナダ人の大多数は、ジョー・クラークの"存在"に直面すると混乱、不安、フラストレーションを表明します。「ジョー・誰?」はよく使われる表現であり、SCP-5054-EX影響下のカナダ人は多くの場合これを皮肉めかした思考の放棄と解釈し、彼らの政治的信念に応じてそれを採用するか非難します。
補遺5054-EX-1、発見: SCP-5054-EXは2019年5月22日のサイト-43記録・改訂セクションの職員会議で初めて財団の注目を引きました。
記録・改訂セクション日例ブリーフィング
日付: 2019年5月22日
出席者: セクション主席ハロルド・ブランク博士、上級研究員イグナツ・アフテルベルク博士、次席研究員ジュヌヴィエーヴ・ヴォクラン博士、他
[抜粋開始。]
ブランク博士: よし、他に何か?
ヴォクラン博士: もう一度マルルーニーのことについて持ち出したいのですが。
ブランク博士: マルルーニーのことは持ち出すな。
ヴォクラン博士: ほらハリー、ここに決定的な証拠が—
ブランク博士: 調査書類一式持ってようが何だろうが、カナダの17人目の首相が取り替え子だったとかいう狂気じみた説を追求する気はない。お前がレイシストだからそいつを嫌ってるってだけだ。
ヴォクラン博士: 人種とどう関係が?
ブランク博士: マルルーニーはアイルランド人で、お前はフランス人だ。
ヴォクラン博士: それこそレイシストですよ。
アフテルベルク博士: 18人目。
ヴォクラン博士: それにあなた首相を番号で覚えてるのも変な話ですよ。
ブランク博士: 私はカナダの歴史家だぞ、当然だろ。
アフテルベルク博士: 18人目!
記録上に沈黙。
ブランク博士: 頭でも打ったか、イギー?
アフテルベルク博士: マルルーニーは18人目の首相です。
ブランク博士: 何を言ってる。
ヴォクラン博士: ちょっと、また彼にああさせる気ですか……
ブランク博士は指を折って数え始める。
ブランク博士: マクドナルド、マッケンジー、アボット、トンプソン、タッパー、ローリエ—
ヴォクラン博士: ボーウェルを忘れてますよ。
ブランク博士: ボーウェル、タッパー、ローリエ、ボーデン、ミーエン、キング、ベネット、サンローラン、ピアソン、ディーフェンベーカー、トルドー、ターナー—
アフテルベルク博士: クラークを忘れてます。
ブランク博士: 何?
アフテルベルク博士: クラーク。ジョー・クラークを忘れてます。
ヴォクラン博士: ジョー・誰?
アフテルベルク博士: ジョー・クラーク!
記録上に沈黙。
ブランク博士: ジョー・クラークとはいったい誰だ?
[抜粋終了]
会議は直ちに中断され、アフテルベルク博士はジョー・クラーク首相の存在に関する新たに形成された記憶に関して尋問されました。彼は昨夜研究していた政治学の成果を発表し、これは彼の主張を裏付けているように思われました。更なる調査により、このこれまで知られていなかった歴史的人物の存在を証明する広範な公的文書が発見されました。43NETは競合するデータセットを提供しました。1980年以降に作成されたファイルには必要に応じてクラークが言及されていましたが、それ以前に作成されたファイルには、ピエール・エリオット・トルドー首相率いる4期連続の政権の3期目における財団の介入が記述されています。サイト-43職員全員が2019年5月22日までジョー・クラークの存在を信じていたことが判明していましたが、この時点でこの信念は文書証拠により補強された場合を除いて弱体化していました。カナダの他の財団サイトとの協議により、この現象が国全体で発生していることが判明しました。
43NETの徹底的な調査により、2003年の収容違反インシデント以降永久昏睡状態にある元職員エドウィン・フォルカーク博士に帰属する暗号化されたファイルが発見され、これが解読されると問題に大きな光が投じられました。1979年以降秘密保持を誓っていたクラークの側近は、機密がもはや必要ないと伝えられると更なる詳細を提供しました。以下の一連の出来事の綿密な再構築の後、記録・改訂セクションは正式にSCP-5054をExplainedに再分類しました。
補遺5054-EX-2、1979年カナダ連邦議会選挙インシデント: 1967年から1980年にかけて、カナダ連邦政府、特に首相と閣僚、及び野党指導者の評判を落とそうとする悪意ある行為の予想外の急増に見舞われました。これらの行為の背景にある理由、及び実行に使用された異常な資材の起源は不明です。悪意あるミーム強制効果に頻繁に曝露したため、厳粛な威厳を持った進歩保守党党首ロバート・ローン・スタンフィールドはスーツのズボンの上に長い下着を着用して1967年の議会に出席して「下着男」というあだ名が付けられ、ジョン・ジョージ・ディーフェンベーカー元首相は度重なる認識災害への曝露により臨床パラノイアに近い状態となりました。以下の報告書は監督司令部のために1979年4月に作成された、サイト-43に駐留しているピエール・エリオット・トルドー首相の側近が直面した問題の要約です。
オペレーションTRUDEAUMANIA
最終報告書(仮)
オペレーションTRUDEAUMANIAの期待されていた結末を10年来に報告できて嬉しく思います。
トルドー首相、ミーム的強制効果の影響下にある。
機動部隊ベータ-43("コン・トローラーズ")の元隊員として、私の専門分野はミームの停止です。1969年にトルドー首相がその地位に選出されて以降、私は異常な干渉から彼を最前線で防護する役割を果たしてきました。私の主な任務は数多くの要注意団体の攻撃から彼を守ることです。西側世界で特に人口が少なく力も弱い国の指導者としての知名度は低いにも拘らず、彼は生命と評判を脅かす数十ものミーム効果に曝されてきました。私が妨害できなかった物たちは、彼に公衆の面前で以下を始めとした突飛な行動を強要させました。
- 自分のネクタイで首を絞めようとする。
- 手すりを滑り降りる。
- ピルエットする。
- 庶民院で罵る。
- 報道陣に卑猥なジェスチャーをする。
- 30歳年下の女性と結婚する。
- カナダ国民に彼を「ただ見守る」よう要求する。
これらの行動は彼の貴族的、独裁的、権威主義的、非社交的な性格に大きく反するものだったため、ミームの存在が公に発見されるのを防ぐようオペレーションTRUDEAMANIAが策定されました。トルドーの奇怪なおどけた仕草は、彼をより「現実的」なものにして一般的な投票者にアピールするための自由党の広報キャンペーンであると設定されました。
財団選挙監視委員会はトルドーが1979年に敗北すると予想しており、したがって我々の保護活動は新首相に移行することになります。
— エージェント・C.スクリヴンズ、サイト-43
1978年、政治学者オフィーリア・ライティングによって設立された保守系シンクタンクであるライティング歴史学会は、カナダの連邦議会選挙は改竄されやすいと主張しました。ライティング歴史学会は、トルドーが不正投票による無期限の在任を企んでいると主張し、議会の小委員会に不正がないか調査を要求しました。国会議員を対象とした顕著に効果的なビラキャンペーンにより、前例のない民間部門の協議が実施されました。ケベック州モントリオールに本拠を置く営利政治サービス企業のゲシェンク・グループは、連邦選挙管理局と協同して改竄防止投票用紙を開発しました。
ゲシェンク・グループ。
ゲシェンク・グループは、1979年連邦議会選挙の全ての投票器具を提供しました。5月22日に投票が集計されると、SCP財団選挙監視委員会は危機的状況を監督司令部に報告しました。投票の100パーセントがピエール・トルドーの自由党に投じられていました。出口調査によると、カナダ人の35パーセントはロバート・スタンフィールドに投票する予定でしたが、投票用紙を確認した際にトルドーに支持が変わったということでした。投票所に潜入していたエージェントはこの現象の原因を特定するために出口インタビューを実施しました。インタビュー対象の多くは個人の信念を述べた後、完全に反対の行動を矛盾している意識もなく説明し、それを認識すると苦痛のうちにインタビューを終了しました。以下がその例です。
- 「私は毎回保守党に投票しています。自由党に投票することはありません。今回を除いては。今日は自由党に投票しました。自由党に投票しました?」
- 「俺はあの傲慢なカス野郎が大っ嫌いだ。あいつは自分が間違ったことするはずないと考えてる。前の選挙で王冠でも授けられた気になってるんだろうな。結果が出たときにあいつの顔を見るのが待ちきれねぇよ! でも俺はあいつに投票した。はぁ?」
- 「自分の選挙区では結局自由党候補が勝ちがちなんですけどね、今回はトルドーに教えてやるんですよ。カナダはまだ自由党で行くでしょうけど、そこまでではないです。例えば、私は自由党に投票しました。それでは意味がないです。それでは…… 待って、今私なんて言った?」
- 「スタンフィールドの選挙スローガンをご存じですか? 『変革の時だ』? 全くもってその通りです。カナダが彼に投票することを願います。私は彼に投票してません」
暫定的な計算では、この突然の意見転換がなければスタンフィールドは少数政権を獲得していたと示唆されています。.カナダ議会では最多の議席を獲得した政党が政権を樹立しますが、有効議席の過半数を獲得しない限り、法案可決は小規模政党との連携によります。投票用紙はサイト-43のミーム・対抗ミームセクションによって調査され、長期間継続する強制効果に感染していることが判明しました。研究者らは、カナダ国籍を有しているかどうかや投票済みかどうかに関係なく、ピエール・トルドーに投票する願望を直ちに表明しました。心理学・超心理学セクションの緊急会議は、監督司令部以下の決議を提出しました。
オペレーションSHADOWPLAY
論拠及び暫定的提案
ミーム的強制効果がカナダ連邦議会選挙を劇的に覆しました。極度のミーム強制力の場合、対象は精神異常とほぼ同程度の認知的不協和を頻繁に経験します。もし現職のピエール・トルドーがこのような状況下でその地位を維持した場合、カナダ人の35パーセントは自身の行動と信念を一致させることに失敗することで、潜在的に暴力的な反社会的行動を取る可能性が高いです。したがって、SCP財団が1979年連邦議会選挙の結果を直接改竄し、ロバート・スタンフィールドを16人目の首相と宣言することを提案します。
サイト-43のV.L.スカウト管理官はこれらの出来事について説明し来たる首相就任に備えさせるため、ストーノーウェイ、陛下の野党.訳注: 2番目に大きい議席を庶民院に有する政党。党首であるロバート・スタンフィールドの邸宅にエージェントを派遣しました。ストーノーウェイの職員は、スタンフィールドの所在を尋ねられると疑惑を表明しました。複数の人物がそのような名前の人物を聞いたことがないと主張しました。スタンフィールドの大まかな身体的特徴と一致する人物が彼のオフィスを歩き回り、ミーム的手段で誘発された苦痛の兆候を示しているのが発見されました。最近機動部隊ベータ-43に復帰したエージェント C・スクリヴンズが最初に現場に到着しました。
調査ログ転写
日付: 1979年5月23日
調査エージェント: C・スクリヴンズ
[ログ開始。]
エージェント・スクリヴンズ: よし、モーはスタンフィールドの書斎を調べていて、俺は彼の寝室の外に立っています。正直言うと…… 彼に意識を集中することが難しいし、もうその身体的特徴をほぼ忘れかけてます。
ストーノーウェイ。
司令部: 待った、スカウト博士を連れてくる。
スカウト博士: エージェント、そちらはミーム効果の経験はあるだろう。彼…… スタンフィールド、はミーム的なもので記憶しにくくなっていると思うか? こちらは彼の名前を思い出すのに苦労している。
エージェント・スクリヴンズ: えぇ、彼のことは数回調べましたが100パーセント彼だと確信はできません。確かにミーム的な感じはします。でも俺は最初から保守党に投票するつもりだったんで、わかりませんが。
スカウト博士: まぁ、いずれにせよ進んでくれ。頑張ってほしい。
エージェント・スクリヴンズ: 言われずとも、サー。
エージェント・スクリヴンズは寝室に入る。
エージェント・スクリヴンズ: その…… スタンフィールドさんですか?
スタンフィールド: 何だ?
エージェント・スクリヴンズ: ロバート…… スタンフィールドさん? 野党党首の?
スタンフィールド: それは正しそうですが。はい。そう思います。
エージェント・スクリヴンズ: 連邦選挙管理局の者です。投票用紙に外部からの干渉がありました。
スタンフィールド: おやそれは。犯人はわかりますか?
エージェント・スクリヴンズ: いえ、しかしカナダ人が真実を知ったら我慢できないのは確かでしょう。正気でなくなってしまうでしょう。
スタンフィールド: まあこちらも受け入れられる話ではないですな。それでどうしろと?
エージェント・スクリヴンズ: ピエール・トルドーがカナダ首相に留まることはできません。
スタンフィールド: 当然ですな。それこそ私が何か月も言ってきたことです! 私は彼に投票しましたが。
エージェント・スクリヴンズ: 代わりにあなたに就任していただきたいのです。
スタンフィールド: 私は彼に投票しました。
エージェント・スクリヴンズ: スタンフィールドさん?
スタンフィールド: 私は彼に投票しました。自分の選挙でピエール・トルドーに入れたんです。自分の議席を失いました。
エージェント・スクリヴンズ: すみません、お聞きください。そのようなことは起こっていません。あれは……
エージェント・スクリヴンズはため息をつく。
エージェント・スクリヴンズ: 共産主義の工作員が連邦選挙管理局に侵入して投票用紙を改竄したのです。彼らは保守派の有権者が自由党に投票するよう潜行性の催眠術を使用しました。
スタンフィールド: 馬鹿なことを。不合理だ。何かのジョークですか?
エージェント・スクリヴンズ: あなたが次のカナダ首相です。もしあなたが就任されなければすぐに問題が起こるでしょう。
スタンフィールド: どうして私が就任できるんです? 政治家ですらないのに。
エージェント・スクリヴンズ: 何ですって?
スタンフィールド: 何でこの件で私のもとに来たのかわかりません。私は重要でもなんでもないです。信じて…… 信じてほしいんですが、今私が誰なのかも思い出せないんです。
エージェント・スクリヴンズはこめかみをこする。
エージェント・スクリヴンズ: サー、私と来てください。国はあなたを必要としています。
スタンフィールド: どこからこんなナンセンスな陰謀論を拾ってきたか知らないですけど、みんな言ってますよ。相手が誰だか知りませんが、運がなかったんでしょう。カナダ人はまだトルドーを愛してる、神よ彼らを救いたまえ。
エージェント・スクリヴンズ: でもその100パーセントがですよ?
スタンフィールド: まあ、彼はいいスーツを着ていますからね。
[ログ終了。]
3人のロバート・スタンフィールド候補。
スクリヴンズがスタンフィールドと疑われる人物と会話している間、そのパートナーは野党党首とゲシェンク・グループとの間の異常な書簡を回収しました。分析の結果、首相としてのロバート・スタンフィールドの概念形成、スタンフィールドとしてのスタンフィールドの認識、及び「スタンフィールド」と言う名前の認識をまだ発明されていないコンピュータ技術の助けなしには個人的特徴の適切な調査が不可能なほどに妨げるミーム効果が判明しました。
エージェント・スクリヴンズが会話した人物は一時的に拘留されましたが、選挙で正当に敗北したという考えを払拭させることは一切不可能でした。追加で複数のスタンフィールド候補も拘留され検査されましたが、無為に終わりました。
この検査が行われている間、エージェント・スクリヴンズは保守派の有権者が実際にはトルドーではなくスタンフィールドに投票していたと納得させられるか判断するためインタビューを実施しました。結果は期待に沿わないものでした。エージェント・スクリヴンズは、スタンフィールドを下支えした場合認知的不協和を緩和するどころか悪化させると結論付けました。回答には以下が含まれます。
- 「それは捏造の名前だ」
- 「誰それ?」
- 「下着男!?」
- 「誰かは知らないけど葬儀屋みたいな見た目してんな」
記録・改訂セクションはゲシェンク・グループとライティング学会の広範な調査を開始しました。それらはカナダの首都オタワに住むオーストリア移民によって資金提供されていたことが判明しました。機動部隊ベータ-43はそこに記載されている住所が既存の建造物に対応していないと判断しました。更に、1979年以前の双方の団体の活動を証明する文書が偽造されていたことが判明しました。勧告案を用意するためにセクション会議が招集されました。
記録・改訂セクション日例ブリーフィング
日付: 1979年5月23日
出席者: セクション主席/サイト管理官V・L・スカウト博士、全セクション主席エドウィン・フォルカーク博士、次席研究員イグナツ・アフテルベルク博士、他
[抜粋開始。]
スカウト博士: よし、最初の質問。明らかなことだが、誰が投票用紙を改竄した?
フォルカーク博士: ゲシェンク・グループ。
アフテルベルク博士: 間違いなく。
スカウト博士: 何の間違いもなく。よし。では彼らについて何を知ってる?
フォルカーク博士: 何も。
スカウト博士: 何もということはないだろう。
アフテルベルク博士: えっと、名前の意味なら知ってます。
スカウト博士: どういう意味だ?
アフテルベルク博士: "Geschenkゲシェンク"はドイツ語で"gift贈り物"という意味です。
記録上に沈黙。
スカウト博士: もう一度頼む。
アフテルベルク博士: え? "Geschenk"はドイツ語で"gift"という意味です。
スカウト博士: おぉ、これは。
アフテルベルク博士: 何です?
スカウト博士: "gift"はドイツ語で"poison毒"という意味だ。
記録上に沈黙。
フォルカーク博士: それで?
スカウト博士: ゲシェンク・グループは、ギフトシュライバーの偽のフロントに違いない。
フォルカーク博士: それが何なのか知らないんですが。
スカウト博士: 私はそれについて博士論文を書いた。ギフトシュライバー、"毒筆家"は1645年に鎮圧されるまで17世紀に数多くの暴力行為を働いたオーストリアのミーム主義団体。
アフテルベルク博士: そういえば…..
ゲシェンク・グループ。
スカウト博士: 何だ、イギー?
アフテルベルク博士: そいつらのロゴにあの国旗が。
フォルカーク博士: これはまあ。
スカウト博士: どうした?
アフテルベルク博士: これはカナダ国旗を回転させたものじゃありません。
記録上に沈黙。
フォルカーク博士: これはオーストリアこ—
スカウト博士: あぁエドウィン、見てみよう。
アフテルベルク博士: その、そもそもこれを見てもよ—
スカウト博士: クソ。それを覆い隠して、すぐにミームセクションを連れてこい。
[抜粋終了。]
ゲシェンク・グループのロゴには解離性のミーム効果があると断定されました。曝露した人物はグループとそれが行っていた活動とを論理的に結びつけることが不可能となります。これは連邦選挙管理局が民間セクターの協議に60年間抵抗してきたにも拘らずグループが選挙システムに参入できたこと、及びその名前に埋め込まれた起源の厚かましい手掛かりへの説明となっています。
繰り返しの説明にはなるものの、ほぼ知覚不能な副次効果により、観測者はすでに結果が出ている先の選挙でのピエール・トルドーへの投票が強制されました。
スカウト博士は対応計画を考案するため、エージェント・スクリヴンズとPoI-382(ティロ・ツウィスト)との会談を手配しました。PoI-382は厳密に言えば確保対象であったため、この会談は1980年にO5評議会によって遡及的に承認されるまで公式記録には残されていませんでした。ツウィストとスクリヴンズはオンタリオ州トロントの放棄されたと思われる長屋で邂逅しました。
インタビュー転写
日付: 1979年5月24日
調査エージェント: C・スクリヴンズ
[ログ開始。]
ツウィストは長屋の玄関前の階段に座っている。エージェント・スクリヴンズは彼に接近する。
PoI-382、ティロ・ツウィスト。
エージェント・スクリヴンズ: 急なお願いでお越しくださりありがとうございます、ドクター。
ツウィスト: 私はドクターではないよ。座ってくれ。
エージェント・スクリヴンズは階段のツウィストの横に座る。
エージェント・スクリヴンズ: でも博士ではあったでしょう。名前ならいくつか。ドクター・スコフィールド、ドクター・ブロマイド、ドクター・ブラウン。そして薬を売ります。5382のファイルなら読みました。
ツウィスト: ふむ、君が速読をしすぎたか、そのファイルは更新が必要だろう。私の仕事は薬とは何の関係もない。私は作家だよ。
エージェント・スクリヴンズ: ええ、知っています。病気を治すミームを作るんですよね。英語が媒介する病気を。
ツウィスト: 別に英語だけではないけれど、そうだね。昔私が偶然作ってしまった病気。若い頃に。無知がゆえに。
エージェント・スクリヴンズ: それがスカウト博士が私に、あなたに会ってほしいと思った理由ですか? あなたは選挙と何か関係があったんですか? あなたは…… 他の病気も作ったんですか?
ツウィスト: いや、投票先を変える病気は作っていない。これはずっとシンプルで、なおかつずっとひどいものだ。正すのがずっと難しい。ギフトシュライバーについては何を知ってるかな?
エージェント・スクリヴンズ: 多くはありません。それに関するスカウト博士の論文なら読みました。彼らは百年戦争でドイツ軍のために兵器化したミームを作り、全員死んだと。
ツウィスト: 三十年戦争で、全員は死んでいない。全員ではない。理解してほしいが、彼らの持つ力、私の持つ力は本質的に…… 間違っている。不道徳だ。私たちは人に意志に反した行為を強制させる。他の全員の意志に反して私たちの意志を設定し、常にこちらが勝つ。そのような技術がどんな実践者を引き付ける?
エージェント・スクリヴンズ: では彼らは悪い作家なのですね。
ツウィスト: 大変面白い。そう、彼らは悪い作家なんだ、その言葉のあらゆる意味において。私の側のシュリフトステラーと比べれば、ギフトシュライバーはまだ発明されていないキーボードを叩いているサルのようなものだ。私が望めば、恋愛や商業、あるいは呼吸のようなシンプルなプロセスでさえも、君のそこに対するアプローチ全体を再考させるような詩だって作れる。彼らは人々に火をつけるバナーを作った。彼らはいつも私たちを数で上回っていた。そういう能力は自然と間違ったタイプの人間を引き寄せるからね。唯一の救いは、利己的で、日和見主義で、サディスティックな人々は大抵上手く協力し合えないということだ。彼らは一匹狼で、ヨーロッパ全土で曖昧な破壊的な大義を、曖昧でバラバラなジェスチャーで示していた。バイエルン軍がそのほとんどを終結させるまではね。
エージェント・スクリヴンズ: しかし全員ではない。
ツウィスト: そう。ごく一部は生き残って、彼らは徒弟を育成した。自分の技術に磨きをかけた。
エージェント・スクリヴンズ: あなたは徒弟を育成したことはありますか?
ツウィスト: 1、2度だが、それは例外さ。でも基本的には、私のような能力が存在しなくなったら世界はずっと良くなると思う。ここ数世紀私がこだわってきたのは、ただ自分の尻拭いをするのと、ギフトシュライバーが未だに人類の脅威となっていないか確かめるためだ。正直なところ、これが起こるまで脅威になっているとは思っていなかった。これまでは彼らは組織ではなかったから、破壊することもできなかった……
エージェント・スクリヴンズ: ……今になるまでは。
ツウィスト: すまないがそうじゃない。話の流れ的にそうなりそうだったのは気付いているが、しかし。
エージェント・スクリヴンズ: それで、スカウト博士はギフトシュライバーが選挙を不正操作したと考えています。
ツウィスト: ヴィヴィアンの考えることはほぼ毎回正しい。間違いなく彼らが選挙を不正操作した。信じてほしいが、私自身選挙に干渉したことはある。いずれにせよ私も投票用紙は見たが、その効果に辛うじて抵抗できるくらいだった。
エージェント・スクリヴンズ: では、あなたは保守党に投票したのですか?
ツウィストは笑う。
ツウィスト: あまりにも長く生きてきたからね、そんなに後ろ向きではないよ。私は良心に投票した。たまたま投票用紙側の希望と合致していたんだ。
エージェント・スクリヴンズ: ほう、私だったら新民主党に投票していたでしょうが、その時は張り込みをしていたので。.新民主党はカナダの主要政党の中でも最も外面的に社会主義である。では何故何世紀も経ってからこれほど組織化されたのでしょう?
ツウィスト: 学んだんだよ。過去40年間が人類に何を教えてくれたかといえば、組織的な悪の方がずっと効果的だということだ。意見の相違は置いておいて、一つか二つの本当に非難すべきことに全員が合意できれば、多くのことを達成できる。ファシズムの大きな勝利点は、利己的な人々に共通の大義というものの効率性を見せたことだよ。
エージェント・スクリヴンズ: 彼らの共通の大義が「くたばれカナダ」だなどとは到底信じがたいですが。ここがそこまで重要ということもないでしょう。
ツウィスト: 彼らはここから得るものがある。でも短期的には、それは真の問題じゃない。
エージェント・スクリヴンズ: 理由がどうあれ必ず酷いことになるので、彼らを止めないといけません。どうしましょう?
ツウィスト: まず始めに、この選挙災害を収めよう。ただ君は私の解決策を気に入らないと思う。
[ログ終了。]
エージェント・スクリヴンズは、避けられない事態を食い止めるための応急処置提案の詳細なリストを持ってスカウト博士の下に帰還しました。スカウト博士は提案を検討し、記録・改訂セクションで合議し、5月24日に改訂・完成された以下の文書を監督司令部に提出しました。
オペレーションSHADOWPLAY
状況の概要とアクションアイテム
序文:
一方では、敵対的な要注意団体が1979年カナダ連邦議会選挙に干渉し;
一方では、この干渉がカナダ政治形態の完全な崩壊を招く可能性が高く;
一方では、研究収容サイト-43はこの崩壊を改善する責任を負うことになり;
一方では、研究収容サイト-43は既にK-クラスシナリオを引き起こしうる2つのSCPオブジェクトの管理を担当しており;
したがって、財団の日常業務とヴェールを維持するために、対象を絞った効果的な方法でこの干渉による影響に対処する行動計画を直ちに実行せねばならない。
提案:
オペレーションSHADOWPLAYでは、架空の政治家を作成し、彼を1979年連邦議会選挙の勝者と宣言する。この政治家は名目上首相として第31回カナダ議会を率いることとなる。実際にはトルドー現首相と第30回カナダ議会は全ての関連任務を水面下で実行するために残置される。a) 1979年投票用紙のミーム効果を覆す、b) 架空の首相の存在と活動の証拠となる広範な映像と写真を作成する、c) ミーム的な手段で彼及び前述の資料をカナダ人の精神に少しずつ植え付けて彼ら及びその子孫が現実との乖離を認識しないようにする、手段が発見されるまでこの策略が発見されることを報道管制によって防止する。
O5の承認に先立ち、記録・改訂セクションは他セクションを訪ね回って提案を求め、架空の首相の性格、外見、背景についてのブレインストーミングを開始しました。最終決定は翌日に行われました。
記録・改訂セクション日例ブリーフィング
日付: 1979年5月25日
出席者: セクション主席/サイト管理官V・L・スカウト博士、全セクション主席エドウィン・フォルカーク博士、次席研究員イグナツ・アフテルベルク博士、エージェント チャールズ・スクリヴンズ、他
[抜粋開始。]
スカウト博士: 提案をいくつか見てみるか。
アフテルベルク博士: 少なくとも数人は悪気はないでしょうが。
スカウト博士: 例えば、1979年に女性首相誕生。
エージェント・スクリヴンズ: 割と良くないですかね。
フォルカーク博士: いや。何を? 良くないに決まってるだろう。
スカウト博士: エドウィン。
アフテルベルク博士: その、今回は彼は間違っていません。人々の先入観と上手くはまるコンセプトが必要なんです。彼らの偏見に従う必要があって、そうしないと心が拒絶してしまいます。
エージェント・スクリヴンズ: トルドーとか保守党よりは何でもいいでしょ。
フォルカーク博士: これを見てください。「前首相の息子」。どこの国だと思ってるんです? こりゃ駄目です。
アフテルベルク博士: 確かはっきりと……
アフテルベルク博士は紙の上を探す。
アフテルベルク博士: ……うん、提案用紙のここに書いてあります。「ジョーク/悪ふざけjoke/lark禁止。」
エージェント・スクリヴンズ: でもある程度の馬鹿さは結構役立つ。心理・超心理は特定のへんてこな真実味があれば人は嘘を信じやすくなると言ってるし。
アフテルベルク博士: ジョーク・スラッシュ・ラーク。
スカウト博士: では我々は道化をデザインするということか。誰かが裏でアフレコしてるのかもしれない。ズボンをかなり上まで上げて履いているかもしれない。
フォルカーク博士: 失っても何とかなる馬鹿な見た目の職員なら何人か知ってます。
アフテルベルク博士: ジョークラーク。
エージェント・スクリヴンズ: そいつの名前を教えてほしい。
アフテルベルク博士: 提案があります。
[抜粋終了。]
5月25日遅く、O5評議会から最終指示が与えられました。オペレーションSHADOWPLAYは承認され、以下の措置が直ちに実行されることとなりました。
- 議会の開会を10月まで延期する。
- 注意深く政治分析を行ってミーム攻撃が発生しなかった場合に1979年議会の構成がどのようになるかを判断し、定期的なブリーフィングと記憶処理を通じて想定される議員の協力を確保する。
- この議会は毎日庶民院で複雑な脚本劇を撮影し、それをカナダ広報チャンネル(CPAC)で放送して、進歩保守党政府が機能しているように見せる。
- この政府の行動を証明する文書記録を作成し、適切なアーカイブリポジトリに保管する。
上院議場。
- ピエール・トルドーの自由党率いる既存の連邦政府は、異常な環境.庶民院は大きく、緑色のカーペットを敷かれる。上院は小さく、赤色のカーペットが敷かれる。や職務の重複を認識することを防ぐように見当識障害や赤緑色覚異常を誘発する特殊なミームエージェントに曝露させられてから上院議場で行政任務を継続する。
- カナダ上院が重要な目的を果たすことはないため、一時的に解散される。
- エージェント・スクリヴンズは政治哲学及び政治手続きの指導を受け、新首相の代理を務める。適切な後任が見つかりPoI-382によってそのイメージがミーム的に大衆の意識に浸透するまで、彼が定期的に公の場に姿を現す。
架空のジョー・クラークによる見せかけの政府は、影の政府が実際の統治活動を実行する一方で1979年の選挙災害を鎮静することに成功しました。しかし議会の正式な開会が近づく中で、スカウト博士は監督司令部と今後の計画について話し合うためサイト-01に召集されました。
サイト-01閉回路記録
日付: 1979年7月17日
出席者: O5-8、サイト管理官V・L・スカウト博士
[抜粋開始。]
スカウト博士: 本日は今後の予定が埋まっておりまして、ですから……
O5-8: 当然、私も同じだ。1分もかからない。そうしたらいつもの仕事に戻れる。
O5-8は書類の束をざっとめくる。
O5-8: 君には他のカナダのサイトと連携してもらいたい。オペレーションSHADOWPLAYを無期限に延長するには完全な兵站分析が必要だ。
スカウト博士: 無期限……?これは緊急時対応計画では? 私がここに来たのはどのように政府の崩壊に対応し、新しく選挙を実施してオペレーションSHADOWPLAYから手を引くか議論するためだと考えておりました。
O5-8: 我々は手を引く気はない。
記録上に沈黙。
スカウト博士: 理解しかねます。
O5-8: 我々の不可思議な友人たちが絶好の機会を与えてくれた。人数で正当化できることはめったにないのでこれまで我々は政府の交代をほとんど気にしてこなかったが、彼らは口実を与えてくれて、君たちがそれを機能させてくれた。必要な要素がすべてそろっている。これを放棄するのは愚かなことだ。
スカウト博士: 我々が民主主義の存在を許しているのが人数の問題だとは知りませんでした。
O5-8: 民主主義はいつだって人数ゲームだ。我々が今制御を手放す実用的な理由はない。振り返ってみれば、最初からカナダには自身の政府など必要なかった。僅か数百万人で。
スカウト博士: 2,400万人です、そして敬意を持ったうえで申しますと、これは間違った策だと考えます。
O5-8: 連邦の介入にいつも不満を述べていたのは君ではなかったか? もう連邦の介入はない、ヴィヴィアン。我々が連邦政府だ。
スカウト博士: あくまで応急処置としてのみです。我々は正常性を侵害せず、維持します。
O5-8: 些事にこだわるようだな。これは新しいアイデアというわけでもない。これまでは難しすぎるというだけで拒否していた。より大きな政府をコントロールしたり実際の大国で選挙を改竄することは不可能だろうが、カナダはごく小さい。誰が知りうる? これが上手くいけば、将来のより野心的なことへの入口となるかもしれない。
O5-8はスカウト博士に書類を手渡す。
O5-8: その財務報告書を見てほしい。カナダ政府を影絵人形にした方が我々の活動を彼らから隠蔽するよりも安上がりだ!
スカウト博士: 財政的には安上がりかもしれませんね。
O5-8: その考えを終わらせてしまえば君の時間も私の時間も無駄になってしまう、ヴィヴィアン。我々は決定したんだ。
記録上に沈黙。
スカウト博士: 理解いたしました。
[抜粋終了。]
PoI-382、ティロ・ツウィスト。
ツウィスト博士は再度エージェント・スクリヴンズと接触し、ギフトシュライバーによる困難の解決策を見つけるにはカナダ文化のより詳細な理解が必要だと示しました。記録・改訂セクションによる短期集中教育コースの後、エージェント・スクリヴンズはツウィストに同行してオンタリオ美術館、ロイヤルオンタリオ博物館、カナダ歴史博物館、ビーバーブルックギャラリーを訪れました。彼はツウィストにカナダの風景芸術を教え、先住民の長老と相談させ、カナダの7つの大学で建築から食品、政治学に至るまでのテーマに関する講義を一緒に受講しました。スクリヴンズは後任が間に合わなかった場合に備えて、ジョー・クラークとしての映像撮影を継続しました。
8月、ツウィストは行動計画を発案したことを明らかにしました。彼は具体内容について議論するため、安全な隠れ家でエージェント・スクリヴンズと邂逅しました。
インタビュー転写
日付: 1979年8月12日
調査エージェント: C・スクリヴンズ
[ログ開始。]
エージェント・スクリヴンズとPoI-382はまばらに家具が配置された部屋の中で、金属のテーブルを挟んで向かい合って座っている。
エージェント・スクリヴンズ: それで、俺の理解が正しければゲシェンク・グループは投票用紙そのものを改竄したわけじゃありません。奴らは投票用紙の上の連邦選挙管理局のロゴを改竄したんです。
ツウィスト: その通り。彼らはカナダのシンボルを取って彼らのシンボルにしたんだ。とてもシンプル。はっきり言うとそれ未満だ。1630年代に選挙があれば私ならずっとまともな仕事ができたろうに。
ツウィストは首を振る。
エージェント・スクリヴンズ: それでどうします。連邦選挙管理局が今すぐロゴを変更しないといけないと?
ツウィスト: いや、効果はもう薄れている。
エージェント・スクリヴンズ: なるほど、でもダメージは既に負ってしまいました。どうやって収めるつもりですか? 同じことをします? ロゴをミームに染めて選挙後アンケートを送って、みんなにまた見せつけるとか。
ツウィスト: 何だそれは、素人かい? 恐ろしく非効果的だよ。攻撃は雑だったかもしれないけれど、全国の全投票者に影響を与えた。逆にアンケートなんて誰も答えない。
エージェント・スクリヴンズ: そうです、だからもっと大きく考えてます。あなたはこういうのの一種の魔術師ですよね。では…… 遠くのシンボルに、それぞれ1つずつではなく全て一遍にミーム効果を与えることはできますか? 例えば、カナダ国旗を武器化して、見た全員に前回の選挙を忘れさせるみたいな。
ツウィスト: それでも十分じゃない。そういう類のものは前にもやってみたけれど、上手く機能しなかった。有権者も非有権者も含めて、100パーセントの捕捉率が必要だ。いや、悪いことを言った後にいいことをぶつける気はないけどね。私はワンランク上のミームをお見せしようとしている。
エージェント・スクリヴンズは頷き、動きを止める。
エージェント・スクリヴンズ: 説明を。
ツウィスト: とてもシンプルだ。何世紀も前に間違って私のやったことを、より壮大で的を絞った規模で実験的に再現しようとしている。カナダの時代精神に想像上のリーダーの概念を吹き込んで、カナダ人であるということがどういうものか理解している者ならだれでもそれが事実とわかるようにする。
記録上に沈黙。
エージェント・スクリヴンズ: あなたはジョー・クラークを…… カナダの概念にはめ込もうとしている。
ツウィスト: そんなところ。
エージェント・スクリヴンズ: それは上手くいくんですか? 無期限に。
ツウィスト: 無期限に続くものなんてないよ。これに自分をあんまり注ぎ込むリスクを冒す気はない。これ以上言語疾患には作りたくないし、やっていない仕事を残したまま往生するリスクは取れない。でも短期間の効果、半世紀くらいなら…… それくらいならどうにかできると思う。
エージェント・スクリヴンズ: それで短期間、ですか? そう思うのはあなたぐらいかと。
ツウィスト: かなり強い効果で、しかも全員に作用する。それと同時にもう少し余分に一息魔術に込めて、ギフトシュライバーにカナダから焦点を失わせる。残念ながら君たちも全員話がちんぷんかんぷんになるが…… 君たちは影の政府と情報交換するスタッフを選択しておいて、その記憶を完全に保たせる必要がある。それから出来事の真の経過を完全に記録する人を指名したいし、更にもう一人架空の彼を監視する人もいる。ジョー・クラークが存在しなかったことは皆忘れるだろうし、最早問題でなくなるであろう2000年代になるまで思い出すことはないだろう。4、50年も信じていれば、それは機能的に真実だ。
エージェント・スクリヴンズ: そんな馬鹿馬鹿しい。
ツウィスト: 状況は悪化している。ジョー・クラークという人物が過去も今も首相だと納得させるにはまだ十分じゃない。普通の方法で選挙に勝って党内で昇進したことを。納得させるには。現実世界の現実の人物、現実のある一人の人がジョー・クラークだと信じさせる必要がある。このコンセプトには頼みの綱がいる。
エージェント・スクリヴンズ: なるほど……
ツウィスト: そのキャラクターを理解している人でないとならない。そのキャラクターが造られた大義に身を捧げる人でないとならない。そして私がよく知る人でなければならない。とても、とてもよく。そうでないとこれを成すことはできない。
エージェント・スクリヴンズは頷く。メモを見下ろす。ツウィスト博士を見上げる。再びゆっくりと頷く。口を開く。再びメモを見下ろして口を閉じる。
エージェント・スクリヴンズ: ふざけてんのか?
ツウィスト: それは質問かい?
エージェント・スクリヴンズ: ふざけてんのか!
エージェント・スクリヴンズはテーブルからメモを叩き落す。彼は立ち上がってツウィストを指さす。
エージェント・スクリヴンズ: こいつは全部そういうことだったのか? 遠足とかアートとか高3の研究課題とかは全部こんなののために? あんたは俺のことを知っていったんだ。あんたは俺のプロフィールを作成してた。エージェント チャールズ・スクリヴンズ、糞馬鹿のカナダ人馬鹿間抜け野郎、使い捨てできる生きた粗大ゴミ。ハナっから計画してやがったな。
ツウィストは悲しげに首を振る。
ツウィスト: 遠足は重要だった。時代精神のような根本的なものを変えるなら、国家の魂に何が通じているにせよそれを骨の髄に真に感じる必要があった。
エージェント・スクリヴンズ: あぁ、そこが難しい部分だったんだろ? 俺をジョークに変えることは楽勝だった。あんたは俺にこの先一生デカいズボンをはいたチビ子供みたいに話すことを強制させたいと。
ツウィスト: エージェント・スク—
エージェント・スクリヴンズ: 俺にだって人生があんだよ、この糞が! 俺には家があって、猫がいて、俺は…… 訊こうとしてたんだが…… でも何一つあんたにゃ関係ない、だろ? 最初っから俺をこう仕向けてたんだ。
ツウィスト: 私のすることは単純じゃないんだ、エージェント・スクリヴンズ。考えをまとめるのに長い時間がかかる。間違いも犯す。確実になるまでは計画を話すつもりじゃ—
エージェント・スクリヴンズは壁を蹴り、漆喰に大きな傷を残す。
エージェント・スクリヴンズ: こん畜生。あんたはわざと俺をここに丸め込んだんだ。スカウトと計画したんだな。俺は全員分のつまらん仕事をやらされて、トルドーみたいな野郎の代わりに手榴弾を受けて、この茶番劇の最後の1ピースを埋めるためにせかせか動かされて、そしてもうよくなって使い切られたら、俺はクソッタレな風刺画に変えられるんだ。
ツウィスト:キャラクターというのは風刺画だよ、エージェント・スクリヴンズ。君は彼に命を吹き込むアーティストだ。私たち全員に息吹を吹き込んでくれる。
エージェント・スクリヴンズは自分の椅子をつかみ取ってツウィストの横の床に叩きつける。彼は座る。
エージェント・スクリヴンズ: 説明してみろよ。カナダ、カナダ、カナダがぶっ壊れないことがなんでそんだけ大事なのか説明してみろ。
ツウィスト: 私には疑念があるだけだ。
エージェント・スクリヴンズ: ならそれを聞かせてくれよ! 教えろよ。俺にも疑わさせてくれよ。できる限り疑うのが俺の仕事だ。
エージェント・スクリヴンズは自分の髪を引っ張る。
エージェント・スクリヴンズ: もっと疑ってればこんなのに巻き込まれなかったのに。
ツウィスト: シュリフトステラーはずっと昔に技術を教わった。我らの最初の教師は残酷だった。気まぐれだった。危険だった。我らは彼と決別し、もっといいことに使った。ギフトシュライバーはそうしなかった。彼らは犠牲を払って利益を得た。
エージェント・スクリヴンズ: また遠回しな言い方しやがって。何が言いたい?
ツウィスト: 彼らはその主人が君たちのサイトの下に埋められていると信じている。
記録上に沈黙。
エージェント・スクリヴンズ: それで? そいつが?
ツウィスト: わからない。ヴィヴィアンは教えてくれないし、当然自分で見に行くこともできない。だが問題は、彼らがそれを真実だと思っていることだ。彼らは君たちを完全に破壊することはできないが、国をバラバラにして、君たちの住む土地を居住不可能にして、戦火を起こさせている間に進軍して、そこにあるなら、掘り返すことはできる。
記録上に沈黙。
エージェント・スクリヴンズ: そんなの言い訳だ。あんたは俺に上手い話を持ち掛けて、俺が全部飲み込むことを期待して…… そして…… 俺がボケる前にクソ保守派になることを期待したんだ。嘘つきめ。嘘つきめ。
ツウィスト: あぁそうだ。君に信じてもらおうなど烏滸がましいほどに、私は長い間、多くの人に嘘をついてきた。そして5人生分の時間をかけて巨石を丘の上に持ち上げておいて、君に一つだけの人生をかけて世界を良くしてくれとは言えない。ヴィヴィアンだってそうは命じられないだろう。あなたの監督者ですら、命令はできないだろう。
ツウィストは立ち上がる。
ツウィスト: 私は私の選択をした。彼らは彼らの選択をした。
ツウィストはドアに向かって歩く。
ツウィスト: 君は君の選択をしてほしい。
ツウィストは立ち去る。エージェント・スクリヴンズは約30分間留まり、メモをかき集めてから退出する。
[ログ終了。]
オペラにいるエージェント・スクリヴンズ。
短い休止期間の後、エージェント・スクリヴンズとPoI-382は遠征を再開し、カナダ中の会場で音楽コンサートや演劇パフォーマンスを複数回観賞したり、地方の文化イベントを体験したりしました。
1979年9月初め、PoI-382は直近に選択した国への理解が実用的なレベルに接近しているものの頭打ちになっていることを示しました。期限が迫る中、エージェント・スクリヴンズは彼をカナダ最大の都市の最大の展示会である、トロントのカナダ国立博覧会に連れていき、プロセスを完了させました。
インタビュー転写
日付: 1979年9月2日
調査エージェント: C・スクリヴンズ
[ログ開始。]
夕方、展示場は群衆でにぎわっている。ツウィストはちょうど二度目のウィンナーシュウェッツェルを食べ終えたところである。彼はゲス・フーの"Share the Land"のメロディをハミングしている。
ツウィスト: これは壮観だ。
カナダ国立博覧会。
彼らは円形の広場のベンチに囲まれた、博覧会の中心の噴水に近付く。
エージェント・スクリヴンズ: ここに来るのは何年振りか。時間がなかった。モーも俺も……
エージェント・スクリヴンズの声が次第に小さくなる。
ツウィスト: もちろん、これはこれまで行った展覧会の一つに過ぎないけどね。パリのユニヴェルセル、ロンドンの大博覧会、シカゴの万国博覧会…… それでも、かなり壮観だ。
ツウィストは群衆を眺める。
ツウィスト: これこそが君にとってのこの国なのかい?
エージェント・スクリヴンズは肩をすくめる。
エージェント・スクリヴンズ: 正直カナダにそんなめちゃくちゃ大きな意味があるかはわかりませんけど。この国がそんないいところな必要があるのかもわからない。
ツウィスト: そう信じなければならなかった人々によってたくさんの危害が加えられてきた。
ツウィストはベンチに座り、噴水とそれを囲う国旗の輪を眺める。
ツウィスト: 全部の州を訪れたことはない。
エージェント・スクリヴンズ: えぇ、まあそんなことしても役には立たないでしょう。一目でわかるカナダ人のアイデンティティといえるものもなし、ここトロントで彼らが何を考えていようと。ここは大きなバラバラの国で、愛国心はそんなにカナダ的でもない。
エージェント・スクリヴンズはフードカートに気付いて近付く。
ツウィスト: 愛国心はそんなにカナダ的でもない。
比較的静かな数分が経過する。エージェント・スクリヴンズが戻り、油に浸した、折り畳んだワックスペーパーを持ってくる。彼はツウィストにそれを手渡す。
ツウィスト: 何だいこれ?
エージェント・スクリヴンズ: ビーバーの尻尾。
ツウィストは顔をしかめる。
ツウィスト: 野蛮だな。
ツウィストが紙を開くとビーバーの尻尾が現れる。彼は一口噛む。
エージェント・スクリヴンズ: 実はただのペストリーで、茶色の砂糖とシナ—
ツウィスト: こりゃすごい。
ツウィストは立ち上がる。
ツウィスト: こりゃ何もかもすごい。ここの人たちはみんな、自分の人生を送りただ…… 享受している。それがカギなんだ。一つの文化はない、そこを間違えていたんだ。違いこそが重要なんだ。音楽、食べ物、気候、人々…… 全てが違い、全てが調和している。
エージェント・スクリヴンズ: 駐車料金が高く—
ツウィスト: 君の言うとおりだ、この人たちに愛国心は必要ない。そんなものなしに、彼らは自分に必要な全てを持っている。国らしいかを気にしない国であっても、確かに築けたんだ。
エージェント・スクリヴンズ: トイレの状況を見—
ツウィスト: 今、この場所を本当に理解していると思うんだよ。
ツウィストは胸を膨らませる。彼の目は生気を失う。
ツウィスト: 本当に…… 本当に今これができると思っているよ。
ツウィストはポールに吊るされたカナダ国旗の列を眺める。
ツウィスト: これを起こせると思う。これが君たちに何を意味するかわかる、私…… 私も君たちの一員だ、今日、今。理解できた!
ツウィストは空の包装紙を拳の中にくしゃくしゃにして腕を伸ばす。エージェント・スクリヴンズは目を閉じる。
ツウィスト: カナダ人であることが何たるかを知っている! それはつまり—
エージェント・スクリヴンズ: ジョー・クラークがカナダの16人目の首相で、俺がそれだってこと。
ツウィスト: —ジョー・クラークがカナダの16人目の首相だということ。
ツウィストは目に見えて意気消沈し、エージェント・スクリヴンズを見つめる。
ツウィスト: そして君がそうだということ。
記録上に沈黙。
エージェント・スクリヴンズ: 上手くいきました?
記録上に沈黙。隣のベンチに二人組の観光客が座っている。一人がもう一人をつつく。
観光客1: ねぇ、あれジョー・クラークじゃない?
観光客2: ジョー・誰?
[ログ終了。]
ジョー・クラークとして振る舞うエージェント・スクリヴンズ。
1979年9月3日、オペレーションSHADOWPLAYは正式に完全な成功が宣言されました。記録・改訂セクションによる広範な実験により、PoI-382はジョー・クラークという人物を"カナダ"の概念カテゴリーに完全に統合したことが確認されました。これまで準備されてきた議会映像が大衆に公開され、ミーム効果が直ちに現れました。カナダ人は即座に過去6か月間でエージェント・スクリヴンズをジョー・クラーク役で見たという記憶を形成しました。エージェント・スクリヴンズがジョー・クラーク役をフルタイムで務めることが可能になったことから、議会議事録の生放送は通常通り10月に再開されました。
しかし1979年12月、フォルカーク博士は以下の報告書をO5評議会に提出しました。
オペレーションSHADOWPLAY
状況の概要とアクションアイテム
エージェント・スクリヴンズは計画から危険なほど外れた行動を取っており、ミーム効果が彼の活動に完全に集中したり以前の職業を思い出すことを妨げ、彼の抑制が困難となっています。割り当てられた側近は何の役にも立っておりません。彼の機動部隊の同僚から彼女を選択したのは明らかに間違いと言わざるを得ません。
我々は彼に繰り返し、茶番的ではあるが有能なパフォーマンスの重要性を強調してきましたが、スクリヴンズはしばしば党の利益に直接反するか、現状を目に余るほどに無視するか、サイト-43の提供する政治的試算に背くという行動を取ります。彼の不作法には以下が含まれますが、これに限りません。
- 同盟を拒否して自分の党を弱体化させる。
- 不可解にもイスラエルのカナダ大使館の移転を約束する。
- 政府の透明性確保のための立法を推進する。
- 保守派の有権者の要望に反して予算にガソリン税を追加する。
- 不可解にもイスラエルのカナダ大使館の移転に失敗する。
- 負けると予想される選挙に故意に参加する。
私の熟慮した上での意見といたしましては、恐らくエージェント・スクリヴンズは以前の生活を再開させるためにオペレーションSHADOWPLAYを一方的に終了しようとしているものと考えられます。スカウト管理官が行動を取ることを拒否しているため、私が独自の判断でこれらの出来事の正式な審査を要求いたします。
—エドウィン・フォルカーク博士
O5評議会はスカウト博士とフォルカーク博士に命令し、記憶補強剤で強化した上でパーラメントヒル.訳注: カナダ議会のある場所。のエージェント・スクリヴンズに接近して先月の行動の説明を要求しました。
インタビュー転写
日付: 1979年12月2日
調査エージェント: サイト管理官V・L・スカウト博士、全セクション主席E・フォルカーク博士
[ログ開始。]
スカウト博士とフォルカーク博士首相オフィスに入る。エージェント・スクリヴンズは机の前に座っている。
パーラメントヒル。
フォルカーク博士: お前が一体何をしてるのか説明をお望みか?
エージェント・スクリヴンズは肩をすくめる。
エージェント・スクリヴンズ: 私は首相をやっている。
フォルカーク博士はエージェント・スクリヴンズに接近して身を乗り出し、両手を机の上に置く。
フォルカーク博士: お前はひどい首相をやっている。多数派を獲得したみたいに統治してる! こちらの脚本家がそっちのくれるネタでやれることには限度がある。このままだと早めに次の選挙にお呼びがかかるぞ。
エージェント・スクリヴンズは肩をすくめる。
エージェント・スクリヴンズ: それならなるようになるだけだ。
フォルカーク博士: 我々はここで大層なことをやろうとしてるのに、お前が全部台無しにしてる。わざとやってるのか?
エージェント・スクリヴンズは再び肩をすくめる。
フォルカーク博士: いちいち肩をすくめるな、小僧め……! お前はO5に答えてるんだ、そして私たちはその代表者だ。
フォルカーク博士は自分とスカウト博士を指す。スカウト博士は扉の前に立って腕を組んでいる。
フォルカーク博士: お前は我々のために働くんだ。
エージェント・スクリヴンズは首を振る。
エージェント・スクリヴンズ: 私はカナダの人々のために働く。少なくとも、彼らが私にうんざりするまでは。
フォルカーク博士は机を乱暴に押してそこから離れ、エージェント・スクリヴンズの記録簿を膝に押し当てる。
フォルカーク博士: お前を取り換えなきゃならないか、エージェント?
エージェント・スクリヴンズ: その見込みはない。不可能だからな。
フォルカーク博士: 何?
エージェント・スクリヴンズ: ツウィストは単にジョー・クラークの概念を作った訳じゃない、博士。彼は私をジョー・クラークの概念としたんだ。ドッペルゲンガーには無理だ。あなたたちは私が、私こそが必要で、それだけが私を使う唯一の方法だ。
記録上に沈黙。
フォルカーク博士: 裏切者が。
フォルカーク博士はスカウト博士を勢いよく通り過ぎて退室する。
[ログ終了。]
ジョー・クラークとしてエージェント・スクリヴンズが提案した1979年予算案は議会投票で否決され、1980年2月18日に新たな連邦議会選挙が招集されました。オペレーションSHADOWPLAYは急遽修正されましたが、財団工作員が選挙工作で進歩保守党を支持させる試みは失敗に終わりました。工作員は投票用紙作成施設や投票所でのミーム攻撃により致命的でない形で無力化されました。ギフトシュライバーの関与が自然と疑われましたが、選挙はいかなる組織の干渉もなく通常通りに進行し、ピエール・トルドー首相の下で自由党政権が復権しました。最後の一連の記憶処理により、影の政府の活動痕跡は全て取り除かれました。
エージェント・スクリヴンズは選挙後正式にSCP財団との関係を断ち切りましたが、カナダ議会議員ジョー・クラークとして留まりました。彼は自ら党首解任へと動き、代わりに活動的な党員となって進歩保守党内でリベラルな理念を推進しました。彼はエチオピアへの人道救済を開始し、アパルトヘイトを非難し、カナダへの難民の移民を奨励し、2004年の引退後も党内の新保守主義分子に強く反対しました。
補遺5054-EX-3、余波: PoI-382との関係からスカウト博士の動機に不信感を抱いたO5司令部は、フォルカーク博士に恒久的スケジュールの高効果記憶補強剤で強化して命令し、SCP-5054-EXに関する全データの管理者に任命、ツウィストのミーム効果が減衰次第同僚に開示することを許可しました。フォルカーク博士の不幸な事故によりこれは行われず、効果が完全に切れたことでファイルが発見され、復号化されました。
SCP-5054-EX効果の再発見当初、記録・改訂セクションにより a) ジョー・クラークが忘却された理由を判断する、そして b) ジョー・クラークが存在しなかったと判断された場合その知識を隠蔽する、喫緊の試みがなされました。これらの活動は1979年から1980年にかけての実際の出来事が再構築されるとともに終了しました。
SCP-5054-EXファイルを完成させるため、ジョー・クラーク側近のモーリーン・マクティアはブランク博士を自宅に呼び、夫にインタビューするよう招待しました。この招待は受け入れられました。
インタビュー転写
日付: 2019年5月25日
調査エージェント: H・ブランク博士
[ログ開始。]
元エージェント・スクリヴンズ。
ブランク博士: ジョー・クラーク、神話の男。
スクリヴンズ: ジョー・誰?
記録上に沈黙。
スクリヴンズ: ただの冗談だよ。
ブランク博士は笑う。
ブランク博士: 退職後はどうですか?
スクリヴンズ: やっとクローゼットに殺し屋がいないか確認するのをやめたよ。
ブランク博士は再度笑う。スクリヴンズも、ジョー・クラークのスタッカート・バリトンの声で笑う。
スクリヴンズ: 何年も経ってから思い出してもらえてうれしいよ。錠を変えた方がいいかな? 番犬を飼った方が?
ブランク博士: 必要ないと思いますよ。あなたは素晴らしい奉仕をしてくださいました。他に何をしていらっしゃろうとも過ぎた話です。
スクリヴンズ: そう信じられるものでもないけれどね。O5は簡単には許してくれない。
ブランク博士: 当時もご存じでしたでしょう。
スクリヴンズは頷く。
ブランク博士: それでも。
スクリヴンズ: それでも。
ブランク博士: あなたは恐ろしいリスクを取られて、あのように計画に反抗された。
スクリヴンズ: サイトセキュリティよりも大事なものはあるよ、博士。エージェントにとってもね。私は単に独裁者になりたいからという理由で10年もかけてミームグレネードに飛びついたわけじゃない。
ブランク博士: あなたはそれほど保守的ではなかったのではないですか?
スクリヴンズは頷く。
スクリヴンズ: 彼らを見たかい? 誰がなりたがる?
ブランク博士は頷く。
スクリヴンズ: 私はまだ新民主党に投票しているよ。
ブランク博士は笑う。
ブランク博士: それでは、ミーム効果はあなたには働いていないのですか? まだご自分がどなたかをご存じで?
スクリヴンズ: 他のみんなと同じくらいには。
ブランク博士: きっと孤独だったことでしょう。
スクリヴンズ: それほどでもない。私は妻を愛しているし、娘を愛している。ツウィストとスカウトが設定した道筋の中で十分な絵は描けた。十分だよ。
ブランク博士: エージェント・マクティアは全てオープンにすることができて安心されているようでしたよ。
スクリヴンズ: 妻にとっては奇妙な40年だったな。あいつはずっと活動的なエージェントであり、活動的な公人であり、活動的なアノマリーの妻だった。財団を辞めることも考えたそうだが…… とにかく。私たちは秘密を守っている誰かが50年の内に洩らさない限りは、妻が暴露しようと決めた。
ブランク博士: 効果が消えていなければ、何の意味もなかったでしょうね。
スクリヴンズ: その通りだ。まぁ、モーが43のみんなに誰と結婚したか話すのを楽しみにしてるのは知っている。あいつは90年代以降現場仕事をしていなくて、君たちの多くは何でデスクワーカーがそんなにたくさん記憶補強剤を飲むのか疑問に思い始めていただろう! もし妻まで私を忘れかけていたら私はどうしたかわからない。あいつは私とベータ-43との、そしてサイトとの最後のつながりだった。
ブランク博士: 彼女はあまり側近らしくはなれなかったようですね。
スクリヴンズ: まぁ、それは君たちから見たらだね。
記録上に沈黙。
ブランク博士: 犯罪の相棒って感じですか? 幸運でしたね。しかし1980年選挙のことはまだ困惑しております。あなたが敗北されたあれです。ギフトシュライバーが投票用紙作成所や投票所に侵入して我々のちょっかいを防ぐことができたなら…… 何故彼らはちょっかいをかけてこなかったのでしょう?
スクリヴンズ: あれは明らかにギフトシュライバーじゃない。彼らはカナダのことをすっかり忘れていた、忘れたか?
スクリヴンズは微笑む。
スクリヴンズ: では、彼らにそう仕向けたのは誰だったか?
記録上に沈黙。
ブランク博士: ツウィスト。
スクリヴンズ: その時はまだ財団とのつながりがあって、O5が選挙を盗もうとしてるって密告があったんだ。私はツウィストに密告した。彼はファシズムに関して非常に特別な意見を持っているんだ、知っているかい?
ブランク博士: よく存じております。あなたと財団を繋いでいたのは誰だったのでしょうか? 明らかに尋ねなければなりません。
スクリヴンズ: 本当にスカウトがこれを訊いてほしいと?
ブランク博士: スカウト博士は20年以上前に亡くなりました。
記録上に沈黙。
スクリヴンズ: 正直、彼は不老不死だと思っていた。
ブランク博士: それに近いところまでは。
スクリヴンズ: うん、ちょっと時間が欲しい。訊かねばならないことができた。
スクリヴンズは部屋を出て、ブランク博士を数分間独りで残す。彼は古いポータブルテープレコーダーを持って戻ってくる。
スクリヴンズ: 君は記録改訂の担当でいいかい?
ブランク博士: その通りです。
スクリヴンズ: じゃあファイルは全部読んだかな? スカウトとフォルカークが1979年12月に私のオフィスに来たことは知ってる?
ブランク博士: 転写を読みました。
スクリヴンズ: それで、フォルカークが記録を担当していたんだけど、彼は飛び出していった。スカウトは更に数分残った。
スクリヴンズはコーヒーテーブルに機器を置く。
スクリヴンズ: 私は優秀なエージェントだ。いつも自分の記録は録っておくんだ。
スクリヴンズは機器を起動する。
フォルカーク博士: 裏切者が。
記録上に沈黙。扉がバタンと閉まる。
スカウト博士: あいつは私を待ってくれると思うか?
エージェント・スクリヴンズ: 多分。あいつは俺たちを疑ってると思います?
スカウト博士は笑う。
スカウト博士: まさか。でも私が墓に入ったらO5に知らせてくれ。笑いにはちょうどいいだろう。
エージェント・スクリヴンズ: あなたが俺たちみんなを埋めるんですよ、ヴィヴィアン。
スカウト博士: おや、そうならないことを望むよ。
記録上に沈黙。
ブランク博士: あなたの政府を崩壊させるのがスカウトのアイデアだったと? 選挙に負けるのが?
スクリヴンズ: 私たちのアイデアだ。彼、モーリーン、そしてこの私。私たちは共通の義務感を持っていた。
ブランク博士: 財団への義務はどうなのですか?
スクリヴンズ: 我々の義務は入れ子構造になっているんだ。我々は財団に奉仕し、財団は人類に奉仕する。利益相反になるのは誰かが仕事を間違えているときだけだ。
ブランク博士: あなたはこの仕事を、自ら課した仕事を数十年もされています。疲れてしまうことはありませんか? 自分でない自分でいることに。チャールズ・スクリヴンズに戻りたいと願われたことはありませんか?
スクリヴンズは笑う。
スクリヴンズ: 人はその人のすることで決まるものだよ。私はチャールズ・スクリヴンズであったとは思わないし、彼のしたことは好きではない。私はジョー・クラークにもなりたくはなかったが、しかし……
記録上に沈黙。
スクリヴンズ: ……なんとかジョー・クラークを私らしくできたとは思う。
記録上に沈黙。
ブランク博士: では、また連絡いたします。
スクリヴンズ: ほう、どうだか。でも最後にもう一つ。
ブランク博士: はい?
スクリヴンズ: 今は、何が起こったか全部覚えているんだろう。
ブランク博士: その通りです。
スクリヴンズ: それは彼らもそうだってことさ。
[ログ終了。]
補遺5054-EX-4、現在の状況: ミームの燃え尽き症候群により、ほとんどのカナダ人はジョー・クラークの概念を保持することが困難となっています。ほとんどのカナダ人はミーム効果を受けていない首相を思い出すことも同様に困難なため、この事実はほぼ気付かれていません。
トルドー首相、ミーム強制効果の影響下にある。
ロバート・スタンフィールドのミーム的不可視性は1981年には完全に解消し、以降ミーム飽和状態となっています。多くのカナダ人は現在、スタンフィールドが過去の不特定の時点で実際に首相を務めていたと主張しています。ブランク博士の元エージェント・スクリヴンズへのインタビューに続き、2019年カナダ連邦議会選挙に影響を与え破壊しようとするギフトシュライバーによる17件の試みが財団工作員により阻止されました。
カナダ首相、現時点でのジャスティン・トルドーに対するミーム攻撃も同様に再開しました。効果により以下を始めとする非政治家的行動が誘発されています。
- 公共の文化盗用のランダムな繰り返し。
- 意図的に階段から転落する。
- 他の国家元首に猥褻なジェスチャーをする。
- 彼が説明するところの「スタートレックのあのエピソードでスポックが付けてたあごひげ」を生やす。
- 自発的な脱衣。
- カナダ国民に彼を「ただ見守る」よう要求する。
オペレーションTHAT'S JUST JUSTINの暫定的提案がO5評議会に提出され、トルドーには保護のためサイト-43からエージェントが割り当てられました。








