探査ログ5093-1
日付: 2020/06/12
担当職員:
- エリック・トレントン博士
- アンジェラ・スタース次席研究員
- D-128
備考: SCP-5093への最初の進入。1人のDクラス職員 (D-128) に記録装置、トランシーバー、緊急時のレーションを備えさせた。D-128は管理室との通信を保ちながらSCP-5093を調査するよう指示を受けている。
<ログ開始>
D-128がSCP-5093に入室する。
トレントン博士: 準備はいいか?
D-128: うん。
スタース研究員: 準備はいい?
D-128: いい。
トレントン博士: やめてくれないかな?
スタース研究員: (笑い) ごめん。キャス、大丈夫?
D-128が嫌々ながら前進し、SCP-5093を調査する。
D-128: ええ。それで、あー、これから私はどうなるんで?
トレントン博士: まだ分からない。君の手で解き明かすんだ。君ならできる。
D-128: ああ、えーっと…… 見た感じ普通かな。(身振りをして) 目ぼしい物は何もないし、脳味噌が頭蓋骨から飛び出そうともしてない、ただの部屋だと思う。これで終わり?
トレントン博士: いいや。気分は大丈夫か?
D-128: 完璧。
トレントン博士: 窓を確認してくれ。
D-128が窓に近づく。
D-128: 窓ね。青みがかってて、そこら中に建物がある。何となくこの講習所と似てる感じ。
スタース研究員: (トレントンの方を向いて) 次は…… ええ。建物はどれも全く同じ?
D-128が部屋の反対側へと歩いて窓を覗く。
D-128: 全部一緒。
トレントン博士: ドアを開けてみてくれ。
D-128が右上の角のドアへと向かい、開けようとする。
D-128: 閉まってる。
D-128がSCP-5093内に見られる他3つのドアを開けようとするが、続けて失敗する。
D-128: もしかしたらピッキングできるかも。よくあるレバーハンドルみたいだし。
トレントン博士: (間を置いて) あー、うむ。そうしてもらっても構わない。
D-128: アホでしょ、何使えっていうの? プラスチックのフォークで?
トレントン博士: 分かった、落ち着いて。(スタース研究員の方を向いて) アン、彼女に何か渡してくれないか?
スタース研究員: ペーパークリップでいい?
D-128がドアのハンドルを調べる。
D-128: ん、それで良さそう。
スタース研究員が管理室の装置から離れる。トレントン博士とD-128は会話を交わしている。余分な会話は削除済。
スタース研究員: (叫んで) エリック、こっち来て! 箱に手が届かない。
トレントン博士: (画面に身振りをして) 待っててくれ。(叫んで) 今行く!
トレントン博士が管理室の装置から目を離して立ち上がる。トレントン博士が角を曲がった所にいるスタース研究員のほうに顔を出す。その瞬間、ビデオ映像が途切れてSCP-5093が消失する。SCP-5093に通じるドアからは普段の暫定サイト-5093の外が見える。トレントン博士が目に見えて困惑し、備え付けられた無線機に触れる。D-128の声が聞こえる。
D-128: 博士?
トレントン博士: あー、もしもし?
D-128: 博士、さっきドアが消失した。あの、入ってきた所の。もう無くなってる。
トレントン博士: 何? 誰だ?
D-128: 冗談きついでしょ。ねえホント、もう無いんだって。私にどうしろと?
スタース研究員が管理室に入る。
スタース研究員: キャスの準備は?
トレントン博士: ちょっと…… 考える時間をくれ。私は誰と通信している?
D-128: (叫んで) キャスだって! D-128! そっちで何が起こってるのか教えてくれない?
スタース研究員: キャスの声。彼女はあなたと一緒じゃなかった?
トレントン博士: (間を置いて) 私もそう思っていた。
スタース研究員: キャス、どこなの? もうすぐ実験を始めるから、管理室に戻ってきて。
D-128: (叫んで) もう始めてる! 既にこの部屋にいるんだって。
トレントン博士: 私は…… そうは思わない。まだアノマリーを出現させてないぞ。2分前にいた部屋に来てくれないか?
D-128: ねえ、聞いて。あなたはもう部屋を出現させた。何回かかかったけど、とにかく出した。私は準備をして、あなたは私を送り込んだ。コンピュータを見て。私が見えない?
トレントン博士がSCP-5093を出現させたドアを見つめる。スタース研究員がコンピュータ端末の席に着く。トレントン博士が部屋に散らばっている様々な機器を調べ始める。
スタース研究員: 真っ暗。
トレントン博士: 機器も無くなっている。そんな馬鹿な。我々は君をそこに送り込んだというのか。
D-128: これってもしかして…… そういうやつかも。
トレントン博士: どういうのだ?
D-128: あなたたちなら絶対それに呼び名を付けてる。記憶処理のようだけど、形あるもの。見ても忘れてしまう。
トレントン博士: 反ミーム?
D-128: 多分。
スタース研究員: そういうのに関わるのは初めて。
トレントン博士: 恐らくそうではないのだろう。とにかく、君がそこにいてから何があった?
D-128: ドアを開けようとした。できなかった。アンがペーパークリップを持ってくるって言った。できなかった。あなたはアンのヘルプに向かった。
トレントン博士: (間を置いて) 2人とも離れたのか。
D-128: ええ。そして今、私は出られないでいる。
スタース研究員: 待ってて、また部屋を出現させるから。
トレントン博士がコンピュータ端末の席に着く。
トレントン博士: 待て。ビデオ映像は自動でアーカイブを取っている。(間を置いて) これだ、映すぞ。
トレントン博士が途絶前のアーカイブ記録の取得に成功する。
D-128: 私が見える?
トレントン博士: (首を横に振って) 古い映像だ。アン、来てくれ。
スタース研究員: えっ、おかしい。これがその部屋?
トレントン博士: 目を離して、私がいいと言うまで振り返るな。
スタース研究員が端末から目を離す。トレントン博士が画面を向いたまま指でカウントを始める。10秒後、スタース研究員が目に見えて困惑した様子を見せ、促されていないにもかかわらずトレントン博士の方を見る。
トレントン博士: 部屋の様子はどうだった?
スタース研究員: 私…… まだ部屋は見てない。
<ログ終了>