SCP-510-JP
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実験記録510-JP-B-1 — 日付2010/02/11〜2010/04/13
実験対象D-460301をSCP-510-JPの格納エリアに入れ、SCP-510-JPとコミュニケーションを実施するように指示。事前にSCP-510-JPには会話能力があることだけを説明し、担当の若桑博士とヘッドセットで指示できるようにしています。


SCP-510-JPの格納エリアの映像記録 — 日付2010/02/11

SCP-510-JP: ようこそ、オレンジの服の人。

D-460301: おお、マジで喋りやがる。何だお前。

SCP-510-JP: [笑い]非礼な、開口一番それかね。

D-460301: 礼儀を学んでるような奴に見えたか?

SCP-510-JP: そちらこそ、私が人の外見をどうこう言える立場に見えるか?

D-460301: それもそうだ。 [若桑博士に向けて] なあ、こんな感じでコイツと喋ってればいいんだろ?

若桑博士: はい、それがあなたの仕事です。

D-460301: 了解、えーと、 [SCP-510-JPに向き直る] じゃあよろしくな。

SCP-510-JP: なんだ、ちゃんと挨拶できるんじゃないか。こちらこそよろしく。

《約2時間もの間、会話が行われた。D-460301にSCP-510-JPの影響が現れ始める。》

D-460301: なるほどな、じゃああんたは蚊を殺すためだけに生きてるのか。

SCP-510-JP: そうだな、蚊は間違いなく人類最大の敵だ。蚊を殺すことに捧げた我が生涯、無数の奴らを数百匹殺したところで、無名に終わるだろうが決して無駄ではない。蚊を殺すことが私の正義だ。

D-460301: すげえなあ、俺には到底真似できねぇよ。あんたのその殺虫灯みたいな姿も蚊を引き寄せるためになのか?

SCP-510-JP: それは初心者にありがちな誤解だ。蚊にそのような走光性はない、むしろ光から遠ざかる。これは所謂鎧だ。常に身を守っているのだよ。奴らはこの上なく卑怯だからな、いつ強襲を仕掛けてくるか分かったものではない。それに、奴らが引き寄せられようと遠ざかろうと、私の射撃に狂いは生じない。

D-460301: すごい。すげえや。あんた蚊のことよく調べてんだな、流石だぜ。

SCP-510-JP: [笑い]褒めても何もでんぞ。阿呆め。

《更に30分後、D-460301がSCP-510-JP-aになったと判断し、若桑博士の指示により格納エリアに一匹の蚊を放つ。》

SCP-510-JP: むむ、噂をすれば。

D-460301: うわあ、人類の敵だ。

SCP-510-JP: この鬱陶しい羽音は間違いないな。

D-460301: 待っててくれ、今叩き潰してくるぜ。見ててくれよな。

SCP-510-JP: 老兵と思って侮るな小僧、私に任せろ。

《SCP-510-JPがレーザーを照射し、6m先の飛行する蚊を焼却する。》

D-460301: [驚嘆]

SCP-510-JP: ふん。

D-460301: すげえ!なんだ今のは!?

SCP-510-JP: 大した芸ではない。ただ一匹の蚊を焼き落としたまでだ。

D-460301: いやいや!あんなブンブン飛び回ってる虫を一撃でやっつけるとか、あんた神かよ!?

SCP-510-JP: こんな神がどこにいるんだ、阿呆め。

D-460301: [少し間が空く]なあ!それ、俺にも教えてくれよ!

SCP-510-JP: なに?

D-460301: 俺もそれやってみてえんだ!蚊を撃ち落とすやつ!

SCP-510-JP: ほう、興味があるのか射撃に。よくよく見れば才があると思っていた。

D-460301: 本当か!

SCP-510-JP: 本当だとも、お前ならいい蚊殺しになるだろう。

D-460301: マジかよ!

SCP-510-JP: ああ。お前は今、武器を扱える状況ではないようだから、私からここの人たちに交渉してみよう。

D-460301: 本当ですか!ありがとうございます!

SCP-510-JP: 弟子をとるのは久しぶりだぞ。

その後、D-460301は仲間のDクラス職員等に「先生は凄い」「蚊は人類の敵」「俺はこれから射撃を学ぶんだ」などと頻繁に語っていました。SCP-510-JPは財団職員に出会う度に、D-460301に指導を行える環境を要求しました。


2010/02/16: SCP-510-JPに、実験対象D-460301への狙撃技術の指導を行うように指示。実験はサイト-8181の25m射場が用いられ、レベル3警備員2名が常に警戒に当たります。SCP-510-JPを設置するための台座が、使用する射座の隣に設けられました。この時、D-460301に配給されたのは9mmゴム弾を装填したグロック17です。

サイト-8181の小銃射撃場の映像記録 — 日付2010/02/16

D-460301: [的に向けて発砲、ゴム弾は命中せず]難しいな。やっぱり先生のようには行かねえや。

SCP-510-JP: 恥じることはない、誰にでも初歩はあるものだ。姿勢は悪くないが、ひたすら的を狙っても弾は当たらん、照星と照門のみを凝視して照準してみれば、少しはマシになるだろう。

D-460301: 照星?

SCP-510-JP: [低出力レーザーを光指示具のように用いて、照星と照門を示す]これだ。照門から照星を見て照準を定める。

D-460301: なるほど、わかりました。[的に向けて発砲、ゴム弾は右方に逸れる]あれ?

SCP-510-JP: 銃には一丁一丁、人間と同じようにクセがある。何発か撃ってみて拳銃のクセと自分の手の相性を見てみることだ。あとは、クセに合わせて照準をずらしていけばいい。

D-460301: 数撃ちゃ当たるってことですか?

SCP-510-JP: 阿呆。[少し間が開く]いや、撃っている内に当たるようになるという意味では、そうかもしれんな。的を射ている。[笑い]

D-460301: なるほど。

5時間もの間、指導が行われ、D-460301は40m以内の静止している標的ならば、ほぼ確実に狙撃するようになりました。

SCP-510-JP: やはり私の目に狂いはなかった。お前には才能がある。

D-460301: そうですか?

SCP-510-JP: うむ、だが蚊共は素早い。事を成したければ訓練を怠らないことだ。今日の指導はここまでだが、気を緩めて狙撃を忘れるなよ。

D-460301: はい!先生!ありがとうございました!

映像記録終了

指導が終了した後、D-460301は収容室内でも何度も狙撃の姿勢をとって、イメージトレーニングを行っている様子を見せていました。


2010/03/08: 本来ならばD-460301はこの日に任期終了となるはずで、模範的態度を維持したため社会復帰も考慮されていましたが、D-460301はこれを自ら拒否し、SCP-510-JPの指導を受け続けることを望みました。この日の指導は、300m射場で行われました。

サイト-8181の小銃射撃場の映像記録 — 日付2010/03/08

D-460301: 俺、一個目標見っけました。[的に向けて発砲、ゴム弾は命中]

SCP-510-JP: どうした急に。

D-460301: 実は今日が釈放の日だったんですよ。でも断りました。[的に向けて発砲、ゴム弾は命中]

SCP-510-JP: なぜ。

D-460301: 先生の言うように俺は阿呆です。ここに来る前、金を狙って女の人を殺しました。いや、殺すつもりはなか[言い淀む] いや、すいません、言い訳ですね。[的に向けて発砲、ゴム弾は命中]

SCP-510-JP: その贖罪の答えが、外ではなくここにあるというのか?

D-460301: [的に向けて発砲、ゴム弾は命中]はい。確かに遺族の人たちのためにこの一生を捧げて、罪を償いたいという気持ちはあります。でも、そんなことをしても死んだ人は生き返らないし、その人たちの悲しみが消えるわけじゃないって考えたら、それはただの自己満足だなって、思いました。[的に向けて発砲、ゴム弾は命中]
 
SCP-510-JP: そうか、ではお前はここに留まり何を為す。

D-460301: 人の役に立ちます。其れ即ち、蚊を殺すことです。[的に向けて発砲、ゴム弾は命中]

SCP-510-JP: 流石我が弟子だ。

この部分での映像記録は、後に行われるD-460301の精神鑑定に大きく影響を与えたと評価されています。


D-460301は61日間に亘ってSCP-510-JPの指導を受け続けました。過去の実験により、D-460301は指導によって以下のような能力を身につけたことが認められました。

  • SR25M1を用いて、射場の移動標的を350m以内ならばほぼ確実に狙撃する。
  • SR25Mを用いて、200mの距離から一度も外すことなく、1分間に20発の射的を成功させる。
  • マクミランTAC-502を用いて、2560mの距離からの狙撃に成功する。
  • M24 SWS3を用いて、50m前を325km/hで横切る直径10cmの標的を狙撃する。
  • 財団の狙撃訓練試験Aコースにて95%以上のポイントを維持する。

2010/04/16: 慎重な狙撃訓練試験と精神鑑定の結果、D-460301は、特別職務にて非凡な成果を残す、または攻撃や捕獲に対し有用な技術を持っていると判断され、記憶処理を免れてEクラス職員E-460301としての再雇用が決定しました。

2010/04/20: SCP-510-JP-aと、優秀とされる狙撃手をメンバーに含めた、狙撃による攻撃を目的とする機動部隊る-9(”蚊遣り火カヤリビ”)が編成されました。初期編成当時、所属するSCP-510-JP-aはE-460301のみです。E-460301が機動部隊に加入したことは、SCP-510-JPには内密にされていました。

2010/04/21: E-460301の提案により、機動部隊る-9(”蚊遣り火”)の目的に「蚊の殺害」が追加されました。SCP-510-JP-a以外の隊員は、蚊を積極的に殺害していることをSCP-510-JP-aにアピールするよう指示されました。これはメンバーの関係の円滑性を維持するために必要なものです。

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