クレジット
タイトル: SCP-512 - 雲の上には雨が降らない
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2026
原題: SCP-512 - There's no rain above the clouds
著作権者: macro_au_micro (
HK-016原著、
Dexanote及び匿名の共同改稿作を再改稿)
作成年: 2025
初訳時参照リビジョン: 10
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-512
事件512.1以前のSCP-512。
アイテム番号: SCP-512
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: SCP-512の残骸はサイト-77の標準収容ロッカーに保管されています。
SCP-512の利用申請は全て、島人イスリアン文化・歴史研究課に提出する必要があります。
説明: SCP-512は、白い絹の傘布、真鍮の骨組み、木材と象牙で作られた柄から構成される、Nx-012 (“ユニヴェルジル王国”) 由来の傘の指定名称です。SCP-512の傘布部分には、非異常な幸運のお守り - 作物収穫量の増進に繋がるという迷信に基づいて、伝統的に島人らの農具に取り付けられてきたもの - が装着されています。
SCP-512はクラスII奇跡術封印によって閉じた状態に固定されており、あらゆる展開の試みは阻害されます。SCP-512の傘布の下にある骨組みは完全には観察できないものの、この封印を除けば、外観から見てその展開を妨げるような構造的・機械的な特異性は認められません。非異常な物質1をSCP-512の中に投入する試みは、それらが傘布の下から系統的に弾き出されるため、これまでのところ全て失敗しています。
把持すると、SCP-512は半径約8m以内の無生物を、高さ約5mまで浮上させます。被影響物は、SCP-512が使用者の手中に留まっている限りは、SCP-512が移動しても相対的な距離関係を保ち続けます。浮遊させる物体の質量が大きいほど、SCP-512は浮遊を維持するためにより多くの奇跡術エネルギーを消耗し、エネルギーは被影響物の周囲に分配されます。SCP-512に施された封印は、同じ奇跡術エネルギーを利用して活性状態を維持しているようです。
SCP-512の奇跡術エネルギーの分配は、SCP-512及び浮遊物の現実性を測定することによって数値化できます。SCP-512内に蓄積された奇跡術エネルギーは、現実性を 111 Hm 程度まで歪曲させます。
| 浮上させた物体 | 重量 | SCP-512の局所的現実性 | 浮遊物の現実性 | 現実性の合計値 |
|---|---|---|---|---|
| 無し | 0 kg | 111 Hm | 0 Hm | 111 Hm2 |
| 水 2パック | ~11 kg | 109 Hm | 2 Hm | 111 Hm |
| セメント 3袋 | ~105 kg | 98 Hm | 13 Hm | 111 Hm |
| 洗濯機 4台 | ~320 kg | 71 Hm | 40 Hm | 111 Hm |
| グランドピアノ 2台 | ~510 kg | 47 Hm | 64 Hm | 111 Hm |
| 大岩 5個 | ~820 kg | 9 Hm | 102 Hm | 111 Hm |
現在、浮遊現象はSCP-512の全体的な特性の初期段階に過ぎないと推測されています。SCP-512の真の性質は、展開されるまでは完全には解明できないと見込まれます。更なる研究が進行中です。
補遺512.1: 事件512.1
SCP-512を展開状態で研究するにあたり、大量の物体を浮上させることでその局所的現実性を 2 Hm3 まで減衰させ、奇跡術封印を無効化するという決定が下されました。これによって奇跡術エネルギーを完全に浮遊物に集中させ、封印への供給を枯渇させられるため、奇跡術的な儀式/道具によってSCP-512の異常性が変質するリスクは回避できます。
<記録開始>
[1個の岩がエレベーターを介して収容室に持ち込まれる。Dクラス職員とSCP-512が既に室内に配置されている。]
ヤンセン博士: よし。D-8975、始めようか。傘を持つことを許可する。
[D-8975がSCP-512を把持した瞬間、岩が空中に浮上する。]
ヤンセン博士: 傘に接続された計数機に表示されている数値を報告してほしい。
D-8975: 表示は 91 Hm です。
[別な岩がエレベーターを介して持ち込まれる。]
ヤンセン博士: そのまま続けてくれ。
[SCP-512の現実性が過去に例の無い数値に低下するまで、同じ手順が数回繰り返される。]
D-8975: 6 Hm。
ヤンセン博士: 7個目の岩を搬送する。これが最後だ。
[最後の岩がエレベーターを介して持ち込まれる。]
ヤンセン博士: D-8975、計数機の数値が 2 Hm 前後になったら、理論上はその傘を開くことができるはずだ。傘を開いたら、君から観察できるあらゆる変化を詳細に報告してもらいたい。
[沈黙。]
ヤンセン博士: ちなみにだが… もし仮に、岩やその他の物体を操作して収容室や職員に危害を及ぼせると気付いたら、絶対に試すなよ。アノマリーを濫用する試みは全て終了処分の対象となる。
[沈黙。]
ヤンセン博士: 私の言うことがちゃんと分かったか?
D-8975: 完璧に理解しました。
ヤンセン博士: 岩に近付いてくれ。
[岩が浮上し始める。]
D-8975: 数値は 3 Hm からゆっくり低下し続けてます。
ヤンセン博士: では、傘を開いてみてくれ。
[D-8975が傘を展開すると、浮遊していた7個の岩が落下し始め、うち1つがD-8975に向かってくる。1枚の小さな紙片がSCP-512の開いた傘布の下から落下する。]
D-8975: おっ、ちょ -
<記録終了>
事件512.1の後、SCP-512はNeutralizedに再分類されました。SCP-512の異常性は、展開していた無力化直前の短時間、無効になっていたと考えられています。
補遺512.2: 島人向け利用案内
以下は、事件512.1で展開されるまで、SCP-512の内部に留まっていた紙片の内容です。
~ 灌漑の傘 ~
| 序文 | 使用法 | 苦情 |
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由緒正しき島人農民協会は、この度、王国随一の学識ある魔術師たちの手によって術式を施された、この上なく素晴らしき傘を全ての会員に贈呈いたします。この傘の力によって、水は労せずして自然に上昇し、空中に浮かび、そして皆様の命じるがままに皆様の土地へと降り注ぎます。 雨乞い烏賊を飼育する手間も、重いバケツを持ち運ぶ労苦も必要ありません。この驚異の発明品さえあれば、あたかも雲が命令に従うかのように、皆様の畑を雨が潤します。 |
湖や池、あるいは水気を帯びた霧の溜まり場に近付き、傘を閉じたままに保ってください。すると、近場の水が独りでに空中に浮かび上がります。 望むだけの量が浮上するのをそのままお待ちください。傘が閉じられている限り、水は忠実に付き従います。 その後、耕作地へと向かい、傘を開いてください。水は再び作物の上に落下しますが、皆様は傘布の下にいるので濡れる心配はありません。 |
万が一ご不便が生じた場合は、本引換券に苦情の内容を記載の上、島人農民協会までご提出ください。 この傘は水どころか、近くの物を全部持ち上げちまう。使いにくくてたまったもんじゃねえ。どっかの馬鹿が開けて顔に物をぶつけられるんじゃねえかと気が気じゃなくて、厳重に封をした |



