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水平にスライスされたSCP-5133-1の一個体。
特別収容プロトコル: 部分的に不透明なガラスパネルを備えた小さな温室がSCP-5133の側に建造されました。温室には財団のパートタイム世話係を滞在させるための標準的な居住設備が設置され、必要な衛生用品が備蓄されます。温室を利用するには、現任のプロジェクト管理官による承認とレベル2クリアランスが必要です。
SCP-5133は4時間ごとに新しいSCP-5133-1が存在するかを確認されます。池の近傍を離れた全てのSCP-5133-1個体は捕獲され、温室内にある標準的な野生動物観察容器に保管されます。それ以外の池の手入れやカエルの世話はSCP-5133-2に委任することができます。
SCP-5133-2は現住居に住んでいる間は現地収容されているものと見做され、財団の保護拘留下に置かれています。SCP-5133-2に割り当てられたパートタイムの世話係は、毎週 1 回SCP-5133-2へのインタビューを行い、SCP-5133に新たな変化があったかを確認します。民間人から質問を受けた場合、財団の世話係は高齢であるSCP-5133-2専属のパートタイム介護者だというカバーストーリーを提供します。
SCP-5133の近接撮影写真。
説明: SCP-5133は小さな池で、表面積は約4.5m2、最も低い位置の深さは1.9mです。SCP-5133の主な異常性はSCP-5133-1の生成にあります。
SCP-5133-1はアメガエル属のサザンブラウンツリーフロッグ (Litoria ewingii) のように見えますが、SCP-5133-1個体の皮膚の下にある“肉”は様々な種の果実のみで構成されています。SCP-5133-1個体内部の果実の種類には、熱帯地方由来だという共通点以外のパターンがありません。化学分析の結果、これらの果実に含まれるビタミンは、同種の非異常な果実が通常含む量の3倍以上であることが確認されています。SCP-5133-1の果実を消費した被験者は、同種の通常の果物より“遥かに美味”で、特に老齢で死亡したSCP-5133-1個体に由来する果実が最も美味しいと報告しています。
SCP-5133-1は自発的にSCP-5133の3m以内に留まっているようですが、持ち出したり、誘い出したりする試みには抵抗しません。SCP-5133-1個体は非常に大人しく、危害を加えても行動変化の兆候は見られません。SCP-5133-1個体は、SCP-5133から除去された後も、自然生息環境における普通のサザンブラウンツリーフロッグのように振る舞います。SCP-5133-1個体は機会があれば、サザンブラウンツリーフロッグが通常餌とする類の昆虫を定期的に捕食しますが、活動し続けるために如何なる栄養も必要としないようです。それにも拘らず、SCP-5133-1個体は非異常なカエルと同じ速度で老化します。また、SCP-5133-1個体はごく稀に中年女性の鼻歌に似た声で鳴くことが指摘されています。
補遺 5133-A: SCP-5133は、地元の警察署に配属された潜入フィールドエージェントが、動物管理局の出動を要請する奇妙な通報を傍受した際に初めて財団の注意を集めました。通報者は“肉の代わりに果物が詰まったカエルでいっぱいの池”について報告し、池の所有者が"見た目は果物だけど本当は汚いカエルで出来た偽のグルメ食品”を非倫理的に調達して、毎週開催される町のファーマーズマーケットで詐欺を働いていると主張しました。財団職員は後ほど、通報者へのインタビューと記憶処理を行い、SCP-5133の調査に向かいました。
SCP-5133の所有者 (SCP-5133-2と指定) は“グエン”という姓でのみ知られている高齢のベトナム系男性です。カエルについて質問されたSCP-5133-2は、池は彼とお気に入りの孫娘の共同プロジェクトとして作られたものであり、孫娘は彼に何らかの堅実な収入手段を持たせたがっていたとだけ述べました1。SCP-5133-2にインタビューした職員は、今後の協力的姿勢を確保するため、財団がSCP-5133-2及びSCP-5133-1個体群の世話を請け負い、かつSCP-5133を近隣住民の注目から遠ざけるという取引を提案しました。毎週のファーマーズマーケットで引き続きフルーツアレンジメントを販売する許可と引き換えに、SCP-5133-2はこの取引に同意しました。
以下は財団職員がSCP-5133-2に行った最初の公式インタビューの抜粋です。SCP-5133-2の発言の信憑性はまだ検証されていません。
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SCP-5133-2によって彫刻加工されたSCP-5133-1個体。
回答者: SCP-5133-2
質問者: W・バクスター博士
序: SCP-5133に隣接する温室の建造開始後間もなく実施されたインタビュー。SCP-5133-2とバクスター博士は、SCP-5133-2の住居の縁側に腰掛けている。SCP-5133-2は小さなナイフでSCP-5133-1の果肉を装飾的な形状に切り出し、花の形をしたフルーツアレンジメントを制作している。インタビューは夜遅くに行われたため、光源はバクスター博士のタブレット端末の画面と、SCP-5133の近くを飛ぶホタルのみであることに留意。SCP-5133-2の視力はこの影響を受けていないようである。バクスター博士: こんばんは、グエンさん。宜しければ、SCP-5133が何なのか、そしてどのように作られたのかをできる限り説明していただけますか?
SCP-5133-2: ああ、まず率直に言うが、私の孫娘は妖精だ。人間の姿になるまでに3回転生しなければならなかった。信じようが信じまいが、好きにしろ。
バクスター博士: 妖精のお孫さん? 私が信じるかどうかはともかくとして、何故彼女はSCP-5133を作ったのですか?
SCP-5133-2: 私たちは祝福するために池を作った。そして、孫娘が祝福した。もう一度人間になれるようにと妖精の魔法を池に注いだ。ちょうどリンゴの花が花びらを落とすように、自分の力を流し込んだ。3回も死から蘇って人間になろうとするのは、余程人間たちと一緒に居たいのだろう。リンゴよりも短命だというのにな。
バクスター博士: それについてですが、何故SCP-5133-1が果物で出来ているかを教えていただけますか? あなたとお孫さんはそれと関わりがあるのですか?
SCP-5133-2: ああ、孫娘はかつてリンゴだった。私もかつてはリンゴであり、カエルだった。幾度もカエルの姿で良い生活を送ってきた。
バクスター博士: ではあなたもまた“妖精”だと仰るのですね? もしそうだとすれば、何故あなたはお孫さんと一緒に暮らさないのですか?
SCP-5133-2: 私は何度も転生した後、妖精であることを止めたくなくなった。事によると、最後の生を終えた後、二度とこの世に戻れなくなるのが恐ろしくなったのかもしれない。どう取っても構わん。孫娘は人間の夫と幸せに暮らし、夫が人生の終わりを迎えつつある時、自分の命もまた尽きつつあることに満足している。お気に入りの孫娘が幸福なら、祖父としてこれ以上望むことは無いだろう? 私は孫娘の傍で、しかし他の者たちからは遠く離れてこの地で暮らす。私にできる範囲でな。
バクスター博士: 我々がお孫さんと面会することは可能でしょうか? 彼女にも幾つかお訊きしたいことがあります。
SCP-5133-2: お前たちが孫娘と会うにはそれ相応の特権が必要になる。孫娘はもう妖精宮廷の一員ではないかもしれないが、私はまだあれの祖父だ。そして、お前たちは私の義理の娘やその悪辣な子供たちほど狡猾でないことを示したが、今は更なる秘密を明かすほど信用できない。カエルについては教えてやれるが、それ以上は駄目だ。
バクスター博士: 義理の娘さんをあまり快く思ってらっしゃらないようですね。何故ですか?
SCP-5133-2: 転生する理由が安らかな死ばかりとは限らない。時には、家族に殺されることもある。時には、幾度も死ぬのを見届けたいがために、幾度も殺しに来る者もいる。信じようが信じまいが、好きにしろ。
バクスター博士: ですが、義理の娘さんというのは、つまりお孫さんの母親ですよね?
SCP-5133-2: 義理の娘は、私の一人息子の後添いだ。私はあの女を家族や宮廷の一員だとは考えていない。可能な限り距離を置くべき継母だな。彼女の残忍なはらわたが地獄の穴で永遠に煮えられんことを。
バクスター博士: だからこんな田舎で生活することにしたのですか?
SCP-5133-2: 私たち2人、孫娘と私は去った。込み入った宮廷生活、込み入った家庭生活、もううんざりだ。私がここでカエルたちと暮らすのは、この世の嫌な事を忘れるためだ。そして、ここに居ないとはいえ、孫娘を忘れないためでもある。これからもずっと、私は孫娘が遺したものと共にここで生きていくだろう。もしかしたら、いつの日か、カエルの 1 匹が果物ではなく妖精になる日が来るかもしれないからな。
バクスター博士: 質問に答えていただき、ありがとうございました、グエンさん。他に何か話したいことはありますか?
SCP-5133-2: 私の言葉を悪意なく受け止めてくれたことに感謝すべきだろうな。そして、もう一つ頼みがある。
バクスター博士: 私たちが力になりましょう、グエンさん。
SCP-5133-2: 人間たちはいずれ、何年も果物を彫り続けている年寄りが一日も老いていないことや、手が全く震えていないことに気付くだろう。私が引退を装う日が来たら、身を隠す助けとなり、私の代わりに何かしら言い訳を考えてもらえないか?
バクスター博士: その分野では、財団はかなり経験豊富だと思いますね。私たち以外の誰にもあなたの正体を悟らせませんよ、グエンさん。
SCP-5133-2: それと、小さなスペースヒーターを貰えると助かる。冬場に足元を暖めるのが 1 台欲しいのだ。好きにしてくれ。
バクスター博士: 分かりました。このインタビューの後で要請しましょう。
補遺 5133-B: 2008/02/12時点で、SCP-5133-2は食料品の定期配送と引き換えに、財団にSCP-5133-1個体を販売することに合意しています。プロジェクト管理官はこの協定を承認し、SCP-5133-2が制作するフルーツアレンジメントと引き換えに、SCP-5133-2の住居の公共料金を負担する契約を追加しました。これらのフルーツアレンジメントは非異常であり、管理官の裁量で職員の集まりに提供されます。
現在まで、財団職員は、SCP-5133-2の孫娘がSCP-5133-2を訪問する様子を目撃していません。これについて問われたSCP-5133-2は「いつか帰ってくる日を辛抱強くカエルたちと共に待つ」とだけ回答しています。









