SCP-5164

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by Cydhra

アイテム番号: 5164
レベル1
収容クラス:
kušum
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
notice

特別収容プロトコル

カイロの周辺地域で活動する財団職員は、SCP-5164の収容プロトコルに精通している必要があります。SCP-5164それ自体は特筆すべき点が無く凡庸であるため、他に優先事項のある職員は、収容プロトコル以降の内容を読み飛ばすことが推奨されます。収容プロトコルの理解はこの措置における唯一の重要事項です。

SCP-5164の物理的な収容は無期限に放棄されています。1 SCP-5164の異常性は未だ活性状態ですが、その影響はSCP-5164の不合理な思考に左右されます。SCP-5164は既に成人であり、そのような幼稚な現実逃避は相応しい態度ではないので、自らの異常性から派生した発想に基づいて行動することはありません。

人口密集地や財団の活動が盛んな地域へのSCP-5164の移動は阻止されるべきです。SCP-5164は素朴なライフスタイルに満足しており、前回の都会生活ではメンタルヘルスに深刻な打撃を受けたため、自らの意志でそのような変化を検討することはありません。SCP-5164の生活環境は重大なストレス要因を伴なうものであってはならず、またSCP-5164の業績や人生経験は、ストレスを誘発し得る野心や世間の注目が生じるのを避けるために、ごく単調なものへと導く必要があります。

SCP-5164が野心を抱き始めた、または現在のライフスタイルの現状維持を脅かすような夢を追求し始めた場合は、財団エージェントがSCP-5164の居住地域に潜入します。滞在中、エージェントは毎日、SCP-5164の夢がいかに非現実的かつ幼稚であるかを語り合う必要があります。その他の作業は必要とされないため、この任務はより重要な職務の合間や休暇中でも実行可能です。SCP-5164が自発的に抱く野心は概して低俗なものであるため、この措置に大規模な財団資産を割く必要は無いと推測されます。

説明

SCP-5164はエジプト、カイロ都市圏の郊外に居住している20代後半の男性です。SCP-5164は仕事と友人を持ちながら質素な生活を送っており、現時点では恋愛関係を築いていません。特に際立った特徴はないものの、その生活は品行方正かつ健康的なものであり、劇的な変化を必要としません。

SCP-5164は自らの周辺社会の集合潜在意識及び共有知識への異常なアクセス能力を有します。この能力の及ぶ範囲は不明ですが、カイロ都市圏を包括していると推測されています。SCP-5164はこのプロセスを自覚せず、この形式で取得した知識の出所を疑問視しません。このようにしてSCP-5164が得た概念、発想、知識は、それについて思考する被影響領域の人数が多いほどに、SCP-5164から強く重要視されます。

補遺

発見

部門: 誤伝達部門
日付: 2023/08/29

SCP-5164は当初、通学していたカイロ市内の大学キャンパスで、妖魔界の亜空間に通じるポータルを開通させようと試みた際に発見されました。SCP-5164はキャンパス内の建設現場に放置されていたショベルカーを強奪し、そのショベルをタイプ3ヒッタイト召喚儀式の鉄源として使おうと試みていました。

民間人から“若者がショベルカーを盗もうとしている”と通報を受けた現地法執行機関によって、儀式は中断されました。SCP-5164の動機を巡る若干の混乱の後、財団エージェントたちは最終的にエジプト国内の別な地域にいる潜入エージェントから連絡を受け、SCP-5164へのインタビューを行いました。

SCP-5164が儀式の実行に至るまでの思考過程は依然として曖昧です。インタビューによると、SCP-5164は試験期間中に経験した極度のストレスから逃避する目的で、低位妖魔界へ移動しようとしていました。この主張は数人の知人、とりわけ同じ音楽プロジェクトに取り組むバンドメンバーによって裏付けられました。彼らは、SCP-5164はソーシャルメディアで最近成果を上げているにも拘らず、バンドの活動を頻繁に欠席していたと証言しました。しかしながら、SCP-5164は数種類の妖魔界を混同しており、ヒッタイト儀式については明らかにごく表層的な知識しか持たなかったため2、儀式の正確な目標は不明確なままです。SCP-5164の知識は、人類学関係の大学の講義で学んだと思しき世俗的な神話と混ざり合っていました。

当時、財団エージェントたちは、SCP-5164は固有の異常な能力を帯びておらず、実際のオカルト実践儀式を偶然に発見しただけだと仮定していました。SCP-5164は実行しようとしていた儀式を明らかに理解しておらず、隠秘学オカルティズムと神話を区別できませんでした。かなり後になってから、SCP-5164は近隣の財団サイトで開催されたヒッタイト儀式に関するセミナーから必要な知識を得た可能性が高いと判明しました - このセミナーによってヒッタイトに関する知識が集合潜在意識における存在感を増し、SCP-5164にとって有用となる閾値を超えたと考えられます。しかしながら、当時のインタビューを担当した財団エージェントはこの関連性に気付きませんでした。

なぜSCP-5164が勉強に起因する心理的ストレスの緩和にあたって、広く有効性の認められているストレス解消法ではなく、オカルト儀式の実行を試みたかは今日に至るまで不明です。しかしながら、SCP-5164は当時、学業不振に陥っていたと推測されています。加えて、試験期間が大学キャンパス全体の潜在意識に深刻な負荷を与えたため、SCP-5164が経験するストレスは更に高まっていました。恐らく、これがパニック発作を引き起こし、SCP-5164の論理的な思考能力を著しく減退させたと考えられます。

異常性が発見されなかったため、SCP-5164はその後間もなく記憶処理を施され、解放されました。

収容試行

部門: サイト-107
日付: 2023/10/01

上記の事件から数週間後、SCP-5164は高位妖魔界実体との交信を試みている最中に再び逮捕されました。SCP-5164は自らの頭部に、古代エジプトの埋葬儀式における防腐処理手順の一部を施すことに成功していました。インタビューにおいて、SCP-5164は複雑な一連の儀式を通して、頭部だけを一時的に来世に送り、アヌビスと対話するつもりだったと主張しました。この儀式の目標は、SCP-5164によると、当時退学に直面していたため3、学業に役立つ知識を得ることでした。これは一般的な儀式ではないため、今回も正確な思考過程は不明確です。しかしながら、隠秘学部門の専門家は、幾つかのオカルト分野の儀式を組み合わせればこの手順は実現可能かもしれないと考えています。

今回、財団エージェントたちは、SCP-5164が非常に強力なオカルト儀式を偶然実行した可能性は極めて低いと考え、SCP-5164の知識の出所について調査を開始しました。その結果、事件の数日前に、無関係な収容違反のため、数名の高位職員がサイト-107でエジプト隠秘学についての会合を開いたことが判明しました。当初、どのようにSCP-5164がこの会議から知識を得たかは不明確でしたが、予備的な収容プロトコルが制定され、SCP-5164は数日間サイトに拘留されました。

その後間もなく、SCP-5164はサイト-107と自らの収容室の構造上の脆弱性を突き、収容違反を試みました。当時、どのようにSCP-5164がこれらの脆弱性を把握したかは不明でしたが、後日、サイト-107の職員は多かれ少なかれサイトの欠点を認識していたことが明らかになりました。4 これをきっかけに、SCP-5164の異常性に関する最初の理論が提唱されました。

続く6日間に、SCP-5164は更に5回収容違反し、うち4回において他の収容室の生体アノマリーを解放して集団脱走に発展させました。当時行われたインタビューは、SCP-5164がアノマリーの救い手としての英雄願望を抱いていた可能性が高いことを明らかにしています。5

転居

部門: サイト-107
日付: 2023/10/09

6回に及ぶ収容違反の後、SCP-5164の異常性に関する理論が確立されました。新たな収容戦略が提唱され、収容違反頻度の高さに鑑みて速やかに試験されました。財団施設での収容は、SCP-5164がいずれその能力によって財団施設内のあらゆる奇跡術とオカルトの知識を併せ持つ結果に繋がるため、現実的な対策ではないと判断されました。

SCP-5164は完全な記憶処理を施され、彼の退学を織り交ぜたカバーストーリーの下に、人口密度の低い地域へと転居させられました。現行の特別収容プロトコルが導入され、サイト-107職員、並びに数名の外部エージェントが新たな収容プロトコルの説明を受けました。エージェントたちはSCP-5164の新たなアパートの近隣に潜入し、毎日会議を開いて、SCP-5164が抱く夢の不合理さと幼稚さについて議論しました。このようにして、カイロ市内への再転居、大学への再入学、ストレスの多い別な活動への挑戦といった願望は、財団エージェントの集合潜在意識に、そのような夢はSCP-5164には達成不可能であるという観念を植え付けることによって抑制されました。

同じように、エージェントたちは、SCP-5164の現在のライフスタイルは充実しており、SCP-5164自身もその境遇に満足しているという観念をも定着させました。駐留する財団エージェントの人数は徐々に削減されており、サイト-107職員が有する収容プロトコルの知識は、導入された観念を集合潜在意識内に留め続けるのに十分だと考えられています。

この収容戦略は功を奏し、SCP-5164は学業での成功や立身出世を目指す代わりに、音楽プロジェクトに注力し始めました。バンドメンバーの1人に対する偽装インタビューで、SCP-5164は以前の情熱を取り戻し、バンド活動に多大な労力を費やしていると確認されました。SCP-5164が期待に応えようとして儀式に頼る可能性が低かったことから、機動部隊は当時、これを大成功と見做していました。

事件5164-09

部門: サイト-107
日付: 2024/03/26

2024年3月23日 (土) 、SCP-5164の音楽バンド “ザ・セット・アップ” が、ナイル河畔の広場でライブ演奏を披露しました。ライブの最中に、SCP-5164は無作為な観客の音楽の好みやリクエスト曲をほぼ完璧な精度で言い当て始め、バンドの能力が及ぶ範囲でそれらのリクエストに応えようと試みました。このパフォーマンスは恐らく、観客が事前にバンドの演奏可能曲を予習していたことや、SCP-5164自身のカリスマ的な振る舞いによって実現したと思われます。パフォーマンスはより多くの通行人の注目を集め、程なくして、観客たちは様々なソーシャルメディア・プラットフォームに演奏をライブ配信し始めました。

観客が増えるにつれて、SCP-5164は自らの能力を誇示するようになり、観客やライブ配信者の間で楽曲のリクエストを共有させてから、カメラの前でそれを言い当て始めました。SCP-5164の予測能力の正確性は、答えが観客の共有知識となることによって増幅されました。数時間にわたって続いたこのパフォーマンスは、大々的な収容違反イベントとなり、抑制のために多大なリソースがつぎ込まれました。

事件の再発を防止するため、機動部隊オメガ-20 (“思考警察”) に、SCP-5164を尾行して徐々にバンドから引き離す任務が課せられました。機動部隊は直接的にはSCP-5164と交流しませんでしたが、SCP-5164のささやかなマジックショーがいかに見苦しく未熟であったか、また実際にバンドの楽曲を聞くために立ち寄った観客がいかに少なかったかを定期的に隊員間で話し合いました。数週間かけて、MTF オメガ-20はSCP-5164の自信喪失を捏造し、バンドメンバーとの交流を避けて音楽活動への野心を捨てるように促しました。

SCP-5164とバンドメンバーとの間で交わされた数回の通話が傍受され、両者を恒久的に分断する新たな戦略を策定するために利用されました。しかしながら、バンドメンバーは財団が誘発したSCP-5164の不安に対して協力的に振る舞い、最近のバンドの成功はプロジェクトの放棄という観念の定着を困難にしました。最終的に、MTF オメガ-20は搾取されている意識をSCP-5164に植え付けることを決定し、有望な成果が得られました。精巧に作り込んだ物語を隊員間で頻繁に話し合って強化することで、MTF オメガ-20は“バンドメンバーはそのカリスマ性とソーシャルメディアでの影響力を目当てにSCP-5164を引き留めており、彼自身や彼の楽曲には実は関心がない”という観念を創作しました。SCP-5164はその後数週間アパートを離れようとせず、バンドメンバー、バンド活動、及び音楽全般との関わりを控えました。また、SCP-5164は幾つかのソーシャルメディアのプロフィールと、バンドのオンライン・ディスコグラフィーを削除しました。SCP-5164が数ヶ月間にわたって社会的な交流を最小限に抑えたことを受けて、MTF オメガ-20は収容違反を成功裏に阻止できたと結論付けました。

特別収容プロトコルが更新されて以降、更なる事件は発生していません。

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