SCP-5322
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アイテム番号: SCP-5322

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-5322がある敷地は財団によって購入され、一般人からは封鎖されています。SCP-5322にアクセスしようとする人物は現場の警備員に取り押さえられて、尋問され、必要に応じて記憶処理を施されます。

説明: SCP-5322はジョージア州ハケットの小さな農家から始まり、50m先にある異常性の無い森林地帯の更地へと続く短い一方通行の道路です。この道路の始まりの横にある手描きの標識には'ルート108'と書かれています。

SCP-5322の異常性は、自動車に乗車している人物がその全長を走行して初めて明らかになります。前述の人物が道路の終わりで周囲を視認している場合、異常現象は発生しません。一方、目を閉じていたり視界が遮られている場合、その人物と自動車は完全に消滅します。

現在までのところ、このようにして消滅した後に、再び出現した個人はいません。


実験記録5322-1

SCP-5322の性質をよりよく理解するため、財団職員が3週間に渡って3つの実験を実施しました。Dクラス職員が行った最初の2回の実験では、車両は例によって消滅し、回収されませんでした。

3回目の実験では、志願者のエージェント・シメオン・ウッズが外装にカメラとセンサーを備えた専用車両を配備し、機器の故障時に備えて携帯型音声録音装置を装備しました。

以下の記録は、前述した音声録音装置からの回収データです:

概算時間: 13/04/2019、14:26。車両の消滅から30秒後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

確認しました、えーと、交差 — ある種の交差が発生しました。

現在位置は不明ですが、10~20秒ほど乱気流のようなものがありました。正しい表現方法かどうかは分かりません。いずれにせよ、明るいライトと車両の揺れが確認できます。外装… 外装機器がまだ機能しているかどうかは分かりません。何かが折れる音がしました。

音声録音装置はまだ機能しています。安全であれば迅速な外装検査を行います。

[録音終了]

概算時間: 13/04/2019、14:30。前回のメッセージから4分後
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

はい、えっと、分かりました。

外装は大半が完全に欠けていて機能していません。向こう側に取り残されたのかどうかは分かりませんが。これからも出来る限り音声録音装置を使用して、えー、体験を記録していきたいと思います。

私の周囲。えーと、ここには道路があって、まだ道路です。今はずっと長く、見渡す限り伸びています。多分、地平線よりも遠くまで続いています。ここに来た時は周りに森があったのに、今は野原だけです。普通の草、普通… 多いこと以外は普通です。時間帯は変わっていないと思います — 少なくとも太陽の位置は同じです。同じ太陽だったらの話ですけど。

指示通りに運転を続行します。

[録音終了]

概算時間: 13/04/2019、19:21。前回の録音から約5時間後
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

話し中です。

5時間程運転しています。その間、風景的には何も報告することはありませんでした。ただ… ただ両側に野原があって道路が続いています。かなり滑らかな道路です — 凸凹はあまりありません。道路の脇に草以外の植物が生えているのは確認していません。既に気付いているかもしれませんが、私は何か報告できることがないか必死に探しています。ラジオから流れている音楽には感謝しています。

ちょっと曇ってる?

あ — ああ!はい。勿論、運転しながら燃料を確認していますが、燃料計の位置は変わっていないようです。何らかの機器の不具合なのか、それとも実際に燃料を使っていないだけなのかは不明です。機会があれば、点検して確認します。

暗くなってきました。運転に集中します。

[録音終了]

概算時間: 14/04/2019、11:42。前回の録音から約4時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

簡単に今どういうことになっているか報告します。

まだ運転中です — ここに来てからずっと止まっていません。すごく、えーと、退屈ですが、肉体的な疲労は感じません。肉体的な疲労は — ここに来た時と同じように目が覚めています。腹も減らないし、喉も乾きません。そういう状況の1つなんだと思います。

外は、えーと、真っ暗です。ここには街灯が無いことを言い忘れていたと思います。あったとも言ってませんでしたが、今はっきりと無いと言いたかったんです。月の光が僅かに照らしているだけです。月だと思いますが、それが私の知っているものかどうかは知る由もありません。ああ、それと — 車のヘッドライト。来た時に壊れなくて良かったです。

何というか… 穏やかな感じなんですよね。エンジンの音だけが聞こえてきます。虫と鳥の声も一切聞こえません。エンジン音が響いているだけです。心配してたんです — 夜だけ何か恐ろしいものが出てくるんじゃないかって。何かが車に乗り込もうとしたり、暗闇で何かを垣間見たりするんじゃないかと。

つきを悪くしようとしているわけではありませんが、そんなことはないようです。私が見た限りでは、外には何もありません。私と闇と道だけです。

案外悪くないですね。

[録音終了]

概算時間: 14/04/2019、11:45。前回の録音から約3分後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

言い忘れていました — 夜が明けたら直ぐに燃料を確認するため車検します。

それだけです。

[録音終了]

概算時間: 15/04/2019、10:02。前回の録音から約10時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

さて、ここで一括報告をしたいと思います。10秒の録音で渋滞させたくなかったので。

重要事項から最初に: 先程言った燃料の点検をしました。まだ確実に満タンです — なので、不測の事態が起きない限り運転を続行しても大丈夫だと思います。事故に遭いそうにもないですし… 言ってみただけです。実は、これは2つ目のことに繋がっています。

日の出から数時間後に、道端に家があるのを発見しました。小さなコテージのようなもので、殆ど木で出来ていました。居心地の良さそうな… クリスマスカードに描かれているような?理想的、と言うのが一番いい表現だと思います。兎に角、車を停めて辺りを見回しました — 原住民や他の人がいるかどうか見てみたかったんです。

言うまでもなく、いませんでした。廃墟のようでした。2階のベッドには明らかに誰かが眠った痕跡があって、食器が置いてありました。ああ、流し台がありました — しかし、冷蔵庫の中の食べ物は暫く腐敗していたように見えました。かつて住んでいた人がいたとしても、それは暫く前の話でしょう。捜索を終えて車に入り、道に戻りました。

ああ、左側にありましたよ、重要かどうかは分かりませんが。多分違うと思いますけどね。

[録音終了]

概算時間: 15/04/2019、15:09。前回の録音から約5時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

やっとどこかに辿り着いた感じです。

先程報告したような家が増えてきました — まあ、家というよりは物件の方が近いですが。デザインや大きさが違って、どれも個性的です。居心地の良さそうなコテージには近代的な金属ガラスが貼られていて、その横には小さなお城のようなものが続いていました。統一されたテーマ的なものはあまりありませんでした。勿論全部調べてみましたが、小屋と同様に放置されていました。食べ物が保管されている場所で腐敗していたので、暫く放置されていたのは間違いありません。

これらは群がって出来ているようです。野原を1時間程走ったところで、一斉にこれらが出現しました。乗り物はありませんでした — 家だけです。ある家には車道がありましたが、車は入っていませんでした。それに何か意味があるのかどうかは分かりませんが。

燃料計はまだ動きません — それは恐らく直ぐには変わらないでしょう。運転を続行する以外にすることがなさそうなので — ちょっと待ってください。

[録音終了]

概算時間: 15/04/2019、15:28。前回の録音から約20分後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ、ブレンダ・キャロウェイ1


[録音開始]

ブレンダ・キャロウェイ: 話すだけでいいの?

エージェント・ウッズ: 話すだけでいいです。やっぱ、恐らく — 最初に紹介した方が良さそうですね。ちょっと待っててください。

(エージェント・ウッズが咳払いをする。)

エージェント・ウッズ: 私は、えーと、ダイナーに座っていて、道端のダイナーの名前は… "ブレンダズ・スポット"?合ってますか?

ブレンダ・キャロウェイ: ええ。

エージェント・ウッズ: 分かりました。はい。私は今そこにいて、店主のブレンダ・キャロウェイさんと会話しています。あなたの特徴を説明してもいいですか?音 — 音声だけなので…

ブレンダ・キャロウェイ: まあ、礼儀正しければいいわよ。

エージェント・ウッズ: 分かりました。キャロウェイさんは、えーと、若い女性で — 20代?20代ですよね?頷いています。白人のブルネットで、えーと、翠眼です。ウェイトレスの制服を着ていて — 名刺に名前が書かれています。失礼しました — あとコーヒーをくださりありがとうございます。

ブレンダ・キャロウェイ: 問題ないわ。もう終わった?

エージェント・ウッズ: はい。はい、終わりました。言いたいことがあるのですが — あなたは私を見てあまり驚きませんでしたね。

(沈黙。)

ブレンダ・キャロウェイ: まあ、君は久しぶりだけど、ここには偶に人が来るんだ。最後に来た奴らはオレンジ色のスーツを着た囚人で、礼儀知らずだったけど、直ぐに帰って行ったわ。

エージェント・ウッズ: 分かりました。それで、えーと、あなた自身はいつ頃から… ここにいるのか聞いてもいいですか?

(沈黙。)

ブレンダ・キャロウェイ: それは… 結構前だと思うわ。もし君が正確な日付を知りたくても、分からないわ。ある日仕事の帰りで、道を間違えて、ここに辿り着いたの。

エージェント・ウッズ: このダイナーに?

ブレンダ・キャロウェイ: いやいや、道路の上ね。運転し続けたんだけど、道はずっと続いていたの。暗くて暫く気付かなかったけどね。気付いた後も、走り続ける以外に出来ることは無かった。そして私は運転を続けた。

エージェント・ウッズ: 入ってきた時に車に気付きませんでしたが。

ブレンダ・キャロウェイ: (溜息を吐く) まあ… いつまでも運転し続けられる訳じゃないでしょ?最終的には、どこにも辿り着けないことを受け入れるしかないの。どこまで運転しても、行き止まりが待ち受けてたかもしれない。だから、まあ、止まったの。

(沈黙。)

エージェント・ウッズ: それで…?

ブレンダ・キャロウェイ: 車を停めて、外に出て — 安全のために銃を持ってね — そしたらダイナーを見つけたの。何年も前からあったかのように、私の目前に。ブレンダズ・ストップ。以前はウェイトレスだったんだけど、その話したっけ?私の唯一得意なことだったし — だから'やってみよう'って考えたの。そして店を構えた: 必要な物は全て揃ってて、今も昔も勝手に補充されるの。

(沈黙。)

ブレンダ・キャロウェイ: (肩を竦める)手に入るものは手に入れるだけよ。

エージェント・ウッズ: ここにいて… 満足なのですか?永遠に?

ブレンダ・キャロウェイ: 永遠にではないけどね。その気になれば野原を渡って歩いて行ける… そんな気がする。でもここはそこまで悪くないわよ。常に忙しくしているからね。

エージェント・ウッズ: そうですか。

(沈黙。)

ブレンダ・キャロウェイ: ねえ… 今って何年?教えてくれる?

エージェント・ウッズ: 今は、えーと…

ブレンダ・キャロウェイ: もう70年代じゃないでしょ?

エージェント・ウッズ: はい。

(沈黙。微かにクンクンと嗅ぐ音。)

ブレンダ・キャロウェイ: 出… 出来る?

エージェント・ウッズ: 勿論です。

[録音終了]

概算時間: 15/04/2019、17:22。前回の録音から約2時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

一緒に来たいか聞いて、喜んで乗せてあげようと思いましたが… ダメでした。彼女は今いる場所で幸せみたいです。まあ、幸せではないですけど、言いたいことは分かるでしょう。より悪魔なら理解できるってことですかね。まあそんな感じです。

車に入って、道路に戻りました。少し飽きてきました — あなた達がくれた曲に。長旅になることを、えーと、考慮しておくべきでしたね。まあ、旅行になるとも思ってなかったので、これでいいんだと思います。私は大丈夫です。

また曇っています。

[録音終了]

概算時間: 16/04/2019、05:11。前回の録音から約12時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

(歌っている)

ココナッツにライムを入れて… おっと、くそっ。

[録音終了]

概算時間: 22/04/2019、12:22。前回の録音から約6日後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ、"ハーヴェイ・プレストン"2


[録音開始]

エージェント・ウッズ: - 普通?

ハーヴェイ・プレストン: ああ、期待通りさ。勿論俺も最初は少し警戒してたけど、分かるだろ、でも普通だよ。結構いけるぜ。試してみるか…?

エージェント・ウッズ: ああ、いえ、大丈夫です。さっきから言ってたように、私が出て行ってから誰かに伝えてほしいこととかありますか?

(笑い声。)

ハーヴェイ・プレストン: 言っただろう。連絡できる場所なんてねぇんだ。運転をやめようと思っても、道があるだけさ。ある時点で現実的にならねぇと。

エージェント・ウッズ: 全部同じですか。

ハーヴェイ・プレストン: お… 俺はバカじゃねぇ。おめえが連絡できる相手なんてここにはいねぇんだ。俺はここで十分満足してる — 放っておいてくれよ。

エージェント・ウッズ: いいんですか?車中に席があるから…

ハーヴェイ・プレストン: とっとと俺の土地から出て行ってくれ。

(沈黙。)

[録音終了]

概算時間: 22/04/19、12:49。前回の録音から約30分。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

あの人は、えーと、ハーヴェイ・プレストンです。彼は私が出くわした農場にいました — 巨大な場所で、草以外のものが辺り一面に広がっていました。色々な果物や作物などです。複式収穫機もありました。あれを利用して道路を走ることが出来ますかね。多分無理でしょう。

外は気持ちいですね。もし — もし雑音が聞こえてきたら、それは窓を開けているからです。

兎に角、彼はただ — ところで、報告が少なくて申し訳ないと思っていますが、あまり報告することがないんです。習慣を失いました。彼はただ自分のやりたいことをしていただけです。ここでは食べる必要がありませんが、彼は仕事を楽しんでいるのでしょう。"楽しむ"という言葉が正しいかどうかは分かりませんが。忙しくなれるもの… と言ったほうが正しいかもしれません。何かに時間を費やさないと頭がおかしくなりそうですからね。

また野原だけです。

ダムデダム。

[録音終了]

概算時間: 14/05/19、21:43。前回の録音から約22日後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

言わないといけません、えーと…

これが告白なのかどうかは分かりませんが — 何か悪いことをしたというわけではないです。言わなければいけないような気がして、あなた達は囚われの聴衆のようなものだと思います。囚われの聴衆になります。願わくばですけど。

最初の2人が戻ってこなかったので志望しました。周りからは自殺行為に見えたでしょうね。そうかもしれませんが — 私はそうは思いません。何か… これをすることで影響があるような気がしたんです。自分ではない何かへの貢献 — 大事なもののような。言葉にするのは難しいです。

親父は30で死んで、親父の親父も、爺ちゃんの親父も、ってそれが続いていきます。お袋から聞きました。私は迷信家ではないですけど、何かがあるのは確かです。あなた達も何かがあると認めざるを得ません。それで — 私は今28なので — 恐怖心があるんです。そしたら自分が後世に何を残せるのか考え始めるんです。それが何か意味があるのかないのかは分かりません。

(沈黙)

悩みたいって気持ちがずっとあって、気付いた時には悩むことで時間を無駄にしているんです。そして、私には時間がないんです。刻一刻と尽きていくんです。そう考えているうちにもです。どうしようもないほど酷いことです。何も意味がないんです。

(沈黙。エージェント・ウッズが溜息を吐くのが聞こえる。)

この道… 誰も最後まで辿り着いていないような気がします。多分そうだと思います。それは何か意味がありますよね?そこに何があるのか分かったら?そこに辿り着けたら?絶対そうです。私に出来ることは運転を続行することだけです。世界一簡単なことです。

道路が永遠に続くなら… もっと悪いことがあるかもしれません。私に残ってるのは時間だけです。

[録音終了]

概算時間: 11/07/2019、14:22。前回の録音から約2ヶ月後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

報告することは何もありません。

[録音終了]

概算時間: 26/10/2019、17:49。前回の録音から約3ヶ月後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ、"ルーシー・カーソン"3


[録音開始]

エージェント・ウッズ: こちらは、えーと、ルーシー・カーソンさんです。彼女は[編集済]に住んでいます。どうぞ。

(沈黙。)

ルーシー・カーソン: ハリー、あなたがそこにいるかどうか分からないけど — 愛してるわ。とても愛してるわ。そして — 子供達も。もし — もしあなた達も聞いてるなら、ママはあなた達を愛しているわ。嗚呼、もうあなた達もこんなこと聞くには歳取りすぎてるわよね?凄い歳取った。あなた達は、私がいなくても歩み続けてね。いい?愛してるわ。私 — 私 — 凄く。本当に — 私…

(沈黙。)

エージェント・ウッズ: もう大丈夫です。よくやりましたね。

[録音終了]

続く62回の録音も同様に行われ、エージェント・ウッズは出会った様々な人物に、友人や愛する人に向けたメッセージの録音を許可しています。これらのメッセージを、秘密を漏らさずに意図された受信者に届ける方法については現在検討が進められています。

これらの録音の完全なアーカイブは、ご要望に応じてご利用いただけます。この記録は前述の期間に続きます:

概算時間: 11/09/2020、13:39。前回の録音から約1年後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

今は房が枯れ始めています。ここ1週間ほど、グレイのところに行ってから何も起きていません。巨大な城を通り過ぎたところで、誕生日ドライブをしていたことに気付きました。今日は晴れています。肌の温もりがいいです。何か… 気持ちいいです。窓を開けています。

もうすぐ雨が降るかもしれませんね。偶に雨が降るんですよ。その話しましたっけ?滑りやすくはなりませんが、窓を叩く心地良い音が聞こえてきます。指がガラスをトントンと叩いているような、しかし、えーと…

(笑い声。)

… それよりは不気味じゃないですね。

[録音終了]

概算時間: 24/12/2020、19:22。前回の録音から約3ヶ月後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ、D-92214


[録音開始]

D-9921: でも感謝はしているぜ。

エージェント・ウッズ: いいですよ。あの小屋には本当にうんざりしてたんですね?

(沈黙。)

D-9921: ああ。

エージェント・ウッズ: そのバッグと一緒に送られましたっけ?

D-9921: だろうね。

エージェント・ウッズ: ファイルを読みましたが — そんなことが記述されていた記憶がありません。

D-9921: 車が事故った時に車内に入ってたんだろ。大したことじゃない。

エージェント・ウッズ: 大したことだなんて一言も言ってません。

D-9921: そうかい。

(沈黙。)

エージェント・ウッズ: これからも一緒にいるなら、仲良くした方がいいかもしれませんね。あなたはどこに -

D-9921: 録音してるのか?

エージェント・ウッズ: ええ。

(沈黙。)

D-9921: 俺が運転したい。

(沈黙。)

エージェント・ウッズ: 了解です。車を停めさせてください。

[録音終了]

概算時間: 24/12/2020、23:57。前回の録音から約4時間後。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

彼を置いてけぼりにせざるを得ませんでした。

雰囲気が最悪でした。バッグのことで臆病になってたのが気に入りませんでした。何でもなかったかもしれませんが… 何でもないなら何故あんなに身構えていたのでしょうか?凶器だった?ナイフだったかもしれません。彼がそれで何をしようとしていたのかは分かりません。ここに放り込まれたことを恨んでいたのかもしれません。彼を責めるつもりはありませんけどね。

それか本当に何もなかったのかもしれません。

少し悪い気はしますが… 思ったよりはしません。彼を餓死させたり、凍死させたり、野垂れ死にさせるようなことはしていませんからね。どうせ誰かがやってきますよ。何かが来てくれます — いずれ。ここでは起こるべくもないことが起きますからね。他の場所でも同様ですけど。ここは一方通行の道路ですからね。

今は周りに何もありません。草さえも生えていません。どこかに辿り着こうとしている気がします。

(ビープ音)

おお。メリークリスマスでしょうか。

[録音終了]

この時点以降のタイムスタンプが不明瞭なため、エントリの特定の日付は付いていません。

概算時間: 不明
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


今まで見た中で一番大きなマンションを想像してください。

ずっと田舎に住んでいたとしましょう。これを聞いているあなた — グループで聞いてるならあなた達のいずれかが共感できるかどうかは分かりませんが。私は田舎で育って、都会に行くと全てが巨大に見えました。違う意味でです。田舎では、物が広く永遠に伸びています — 都会では、物が高いです。空に向かって伸びています。

建物を想像してください — 今まで見たこともないほどの大きさのです。人が沢山います。それを何度も何度も重ねて想像してみてください。ただ積み上げられたままになっている子供の玩具みたいな感じです。

それは今、道路の両側にあるようなものです… 灰色のコンクリートのビル群がぶつかり合っていて、その積み重ねが空に向かって伸びています。隙間から太陽が差し込んでいますが、辛うじてです。

(ゴロゴロと崩れる音。)

聞こえましたか?時々、何十棟もの建物が積み重ねから滑り落ちて道路に衝突し… 消滅するんです。少し悲しいですね。かつては人々が住める場所だったのに、今は… なくなってる。永遠に。

ここにも人はいますが、今回は止まらないと思います。割れた窓から砕け散ったバルコニーを超えて覗き込んでいる彼らを発見しました。怒りに満ちた目をしています。車が欲しいんじゃなくて、ただ… 傍若無人っぷりだと思います。私はまだ進んでいるのに、彼らは全く進んでいません。

怒るのも無理ないです。彼らはもう少しで辿り着けたと思います。

[録音終了]

概算時間: 不明
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

通り抜けました。建物を通り過ぎると、後ろから彼らの声が聞こえてきました。叫んでいました、まるで — まるでコーラスのように。怒りに満ちたコーラスです。

私は振り返りませんでした。

今はまた野原ですが — 同じ野原ではありません。外に出て確認したわけではないですが — もう良いアイデアだったとは思いません — しかし、それは草じゃなくて葦だと思います。葦が草の一種なのは知ってますが、短くて緑色ではなく、長くて黄色いです。言及する価値があると思っただけです。

(沈黙。)

さっさと終わらせましょう。外は明るいです。

[録音終了]

概算時間: 不明、恐らく16/04/2020。
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

まだ運転中だと思います。エンジン音が聞こえないのは — ここが明るすぎるからだと思います。太陽に向かって車を走らせている感じです。窓の外も見えませんが — 不思議と — 目が痛くなりません。チクリともしません。優しい星のようです。

(沈黙。)

私の誕生日かもしれません。

[録音終了]

概算時間: 不明
話者: エージェント・シメオン・ウッズ


[録音開始]

エンジンが止まりました。私は… 分りました。それは…

(ガラスを叩く音。窓が下がる音。)

や - やあ。

(沈黙。)

分かった。私は… おっと… な、何てことだ、それは…

(エージェント・ウッズが笑う。)

それは凄く美しい

[録音終了]

23/05/2021、エージェント・シメオン・ウッズと彼の車がSCP-5322の端にある森林伐採地内に再び出現しました。現場の職員は直ぐに両方回収し、エージェント・ウッズは現場で死亡を確認されました。死因は日時不明の心不全と判断されました。

エージェント・ウッズは笑みを浮かべていました。

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