録音者: エージェント・████(監視カメラを設置)
録音日時: 20██/██/██
付記: サイト-81██預かりの要監視対象-8120564(現SCP-533-JP)の監視中に発生したSCP-533-JP-E-4『第4回 学級会』の音声記録です。本音声記録は映像記録533-1から抜粋したものとなります。映像記録を参照したい方は、SCP-533-JP担当収容チーム・████博士までご連絡ください。当時、SCP-533-JP-E-1の発生したクラスは退学者や休学者が続出していたため、SCP-533-JPの設置された教室は別学年のクラスが使用していました。
<再生開始>
(現代文の授業中、突如としてSCP-533-JP上の文字がすべて消失、『学級会』の文字が表示される)
教師(以下、『先生』): なにこれ。書けない……。
(次の瞬間、『被告』に指定される女子生徒以外のその場の全ての人間が同時に失神)
女子生徒(以下、『被告』): みんな、どうしちゃったの! え!?
(SCP-533-JP上にSCP-533-JP-2『被告』『学級委員』『先生』に選出された人間の氏名が現れ、教室内の人間が覚醒する)
先生: これより学級会を始めます。
(教室内の人間が座席をコの字型に並べ替え始める。同時に先生、学級委員がSCP-533-JPの前に立つ)
被告: 一体どうしたのみんな、なにこれ、冗談?
学級委員1: 被告人の勝手な発言は許可されていません。黙りなさい。
被告: [学級委員1の本名]あんた何言ってんの?
学級委員1: 被告人、黙りなさい。
被告: 先生、一体これはどういうことですか!?
先生: 被告、あなたは今自分がどういう立場が分かっていますか? 学級委員の指示に従ってください。
学級委員2: 先生、審理を開始しましょう。時間の浪費です。
(審理の開始が告げられ、人定質問、起訴状朗読が行われる)
学級委員1: 20██年██月██日、被告は路上を歩行中のオオアリ20匹を靴裏による圧殺という残忍な手段で虐殺し、その遺骸を放置しました。これは集団殺害罪に当たり、[削除済]法第46条違反です。
被告: ちょ、ちょっと待ってよ! それ何年前だと思ってるの? 覚えてないわ! だいたい、アリを20匹殺したからってこんな
先生: [発言を遮って]黙りなさい。被告人、あなたはこの学級会において、質問に答える自由があります。もちろん黙秘していていてもかまいません。被告人、あなたはこの容疑について覚えていないのですか?
被告: 覚えてるわけないでしょう? 何言ってるんですか先生!
先生: よろしい。容疑を否認するのですね。学級委員、冒頭陳述を。
学級委員2: はい。
(被告人の詳細な個人情報、犯行時の状況及び動機が陳述される)
被告: [呻き声]どうしてあんたがそんなことまで知ってるの!? やめて! どうして、動けない……![呻き声]
学級委員1: 先生、証拠品の提出を申請します。
先生: 許可します。
(証言によると、ここで教卓上に被告が履いていた靴が出現)
被告: あの靴、まさか……本物?
学級委員1: こちら、甲1号証は実際に犯行で使用された靴です。この靴裏からは、オオアリの数十匹分の体液などが検出されました。被告の犯行を示す決定的な証拠です。証拠品は以上です。
先生: ふむん……。なるほど。被告人質問を行います。被告人、あなたはアリを殺したことについてどう思いますか?
被告: どうって、だってそんな悪いことですか? 子供の頃の話だし、みんなだってあるでしょう、アリを踏みつぶしちゃったことぐらい!
先生: 遺族の方へ、謝罪したいなどの感情はありませんか?
被告: ふざけてるんですよね、そうですよね!? 謝罪ってアリにですか、ありえませんよ!
先生: [数秒間の沈黙]。そうですか、分かりました。……私からの質問は以上です。
学級委員2: 先生、我々からも質問が。
先生: 許可します。
学級委員2: 被告人に質問します。あなたは殺したアリについてなにか知識を持っていましたか?
被告: 言ってる意味がよくわかんない、いい加減にしてよ!
学級委員2: 知らない分からないと白を切っていますが、良いですか? あなたが殺したアリたちはあの日、初めて外に出ていたんです……!
被告: それは気の毒な話だけど、だからってなんでこんな目に私が遭わないといけないの!
学級委員2: 気の毒! そのように思いながらどうしてこのような蛮行に及んだのですか?
被告: ねえ[学級委員2の本名]、そろそろこの茶番やめてほしいんだけど。
学級委員2: 茶番……茶番ですか。わたしは今とても怒りを感じています。この感情は、あなたなどには分からないでしょう。この――虐殺者め!
学級委員1: [学級委員2の肩を寄せつつ]おい、その辺にしておけ。
先生: 質問は以上ですか。
学級委員2: ……はい。失礼しました。
先生: では、最終弁論に移ります。学級委員、論告をお願いします。
学級委員1: はい。被告の犯行は極めて残忍かつ狂暴であり、また無計画であったことは明らかです。しかしこれまでの態度を見てもわかるように、被告には自らが虐殺をしたという認識に乏しく――
被告: ねえだから待ってよ! なんでたかがアリを踏み潰したぐらいでこんな大事に
学級委員2: 黙れ! 少し位静かにできないのか!
被告: なっ、なによ一体! さてはドッキリなの? それでこんな手の込んだ真似を……。
学級委員1: [咳払い]認識に乏しく、また反省の色も見られません。学級委員としては被告に対し、然るべき罰――我々が与えうる最も重い刑を、極刑を求刑します。
(被告が驚いて立ち上がろうとし、失敗する)
被告: え、なに極刑って! ドッキリにしたってやりすぎでしょうそんなの!
先生: 被告人、静粛にしてください。これは最後の警告です。被告人、これにて結審ですが、最後になにか言いたいことはありますか。
被告: 早く終わらせてくれませんか?
先生: [数秒に及ぶ沈黙]言いたいことはそれだけですか?
(学級委員2が被告に掴み掛ろうとして制止される)
被告: もういいです。もう沢山です。早くネタばらししてください。
先生: ……では、投票に移ります。この場にいる全員、頭を低くして、顔を伏せてください。
(被告と先生以外の教室内にいる人間が一斉に机に顔を伏せる)
被告: はあ……まだやるの……。
先生: わたしの読み上げる次の選択肢に関して、賛成される方は挙手してください。
先生: 被告人を無罪放免とするのに、賛成の方。
(誰も挙手をせず)
先生: 被告人を有罪とするが、情状酌量の余地があると思われる方。
(誰も挙手をせず)
先生: 被告人を有罪としたうえ、学級委員の求刑を適切であると判断される方
(SCP-533-JP-2A『傍聴人』、学級委員の全員が挙手)
先生: 顔を上げてください。
被告: ねえ、ちょっと待ってよ、どうしてこんな……みんな正気なの?
先生: 判決を言い渡します。主文、被告人を死刑に処す。理由は、被告には自ら犯した罪への
被告: こんなの絶対おかしいわ! 私は罪なんて犯してない! アリをちょっと出来心で踏み潰しただけでしょう![解読不明な叫び]!
先生: 被告、黙りなさい! 被告には、自らが犯した罪への反省意識が薄く、社会に再び出た場合、再犯をする可能性が極めて高い。更生の可能性は著しく低いと判断せざるを得ない。よって、死刑に処するものとする。
被告: こんなの納得いかないわ! 冗談でしょう!? なに死刑って、ドッキリなんでしょう? 早くネタばらししてよ! ねえ!
(直後、被告は[削除済]を使用して自らの頭部を[削除済]。死刑が執行された)
先生: これにて、閉廷します。
<再生終了>
SCP-533-JP-E-4終了後、当該教室内にエージェントとセキュリティ担当十数名が突入し、被告の救命処置などを行いましたが、被告はすでに蘇生不可能な形で死亡していました。教室内の人間に対しては聴取を行った後、記憶処置を受けさせました。