ポスター型SCP-5358-3実例に見られるSCP-5358-2。
| 配属サイト | サイト管理官 | 研究責任者 | 担当機動部隊 |
| サイト-43 | アラン・J・マッキンス | リリアン・S・リリハンメル博士 | MTF カッパ-43 |
特別収容プロトコル: SCP-5358-1実例及び-3実例は、サイト-43の大容量データストレージ施設2号に保管されます。実験はレベル3以上の職員に制限されます。影響者は速やかに拘留し、クラスC記憶処理を施します。
レベル2有害物耐性を有する機動部隊カッパ-43の潜入フィールドエージェントが、新たに-1実例及び-3実例が出現した対象地域の捜索に派遣され、それらを押収します。
財団ウェブクローラは、SCP-5358関連メディア.オンラインで発見されたSCP-5358-3実例を含む。の認知除染とSCP-5358-2及びGoI-5889に関する未公開情報の検証のため、それらをサイト-43のデータベースにダウンロードします。民間の目撃者にはクラスA記憶処理を施します。
SCP-5358-1実例のボックスアート。
説明: SCP-5358-1実例は標準的なVHSテープであり、GoI-5889 “ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア”によって製造・頒布されています。各実例には“ヴロルスキディア”Vlorschidiaという未知の国家、以下SCP-5358-2についてのインフォマーシャルが収録されています。
SCP-5358-1の異常性は、人間がその内容全体を中断無しで視聴した場合に発現します。影響者は最も近場にある広い水域を探し始めます。目的地に到着すると、影響者はその場に立って敬礼し、ヴロルスキディアの“国歌”と推定される理解不可能な一連の言葉を旋律に乗せて暗唱します。歌い終えた影響者は、周辺の状況に反応しないまま、数分から数時間にわたって汀線を見つめます。その後、影響者はSCP-5358-1の効果に関する全ての記憶を喪失します。
SCP-5358-2は面積、起源、位置が不明な土地です。ヴロルスキディアには次のような特色があります。
- “ヴロルシュ語”Vlorschという独自言語。
- 国歌。
- 国旗。背景は赤と青の縞模様で、前景には黒く太い輪郭線を有する黄色の“ V ”が描かれている。
- 数ヶ所で湾曲・屈曲・分岐している複雑な建築物。
- “ヴロイン”Vloinsという独自通貨。
- 政治制度。
- 歴史上の人物や事件など。
ソーシャルメディアサービス “Instagram” から派生したSCP-5358-3の一例。
SCP-5358-3実例はSCP-5358-2を宣伝する.どの実例にも、SCP-5358-2の所在地や有効な連絡手段についての情報はまだ含まれていません。軽微な認識災害性メディアの総称であり、その形態は新聞広告、ポスター、チラシ、テレビやラジオのコマーシャル、人気のあるソーシャルメディアサービスやウェブサイトへの投稿など多岐に渡ります。SCP-5358-3実例を視聴した人物は、自分または知人がヴロルスキディアを訪れたとされる特定時期の記憶を思い出します。しかしながら、影響者は通常、それ以上の詳しい説明を拒絶します。
SCP-5358-1実例と物理的なSCP-5358-3実例は、アメリカ合衆国ノースカロライナ州アシュビルの市域内に出現します。今日まで、報告された各実例の出現事象にはパターンが発見されていません。
SCP-5358-AはSCP-5358-1の司会者、ヴィヴォ・マン・ゴッリファーです。SCP-5358-Aは暗青色のタキシード、黒いネクタイ、白手袋、半ズボン、靴下、サンダルを着用した人間男性に似ています。インフォマーシャルを通して鼻から上が映らないため、どのような顔かは不明です。SCP-5358-Aに関する情報の捜索試行は失敗に終わりました。
補遺-1
SCP-5358-1の冒頭では、“ヴロルスキディア: インフォマーシャル”というタイトルが、下に“ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアが皆様にお届けします”という副題を添えて、黒背景に太い白字で1分間表示された後、徐々に多雨林を背景とする場面へ移行してゆく。
[記録開始]
SCP-5358-1の冒頭から抜粋された映像。
[留意すべき点として、英語を話しているのはSCP-5358-Aのみであり、その他の国民はヴロルスキディアの独自言語で会話している。ただし、字幕は表示される。]
[背景音楽が流れ始める。SCP-5358-Aが左側から画面内に入ると風景が歪み、明らかにグリーンバックを使用したクロマキー合成であることが判明する。SCP-5358-Aは金色の“V”が雑に描かれた青いマイクを持ってその場に佇む。SCP-5358-Aは満面の笑みを浮かべ、金歯を見せてから咳払いする。]
SCP-5358-A: やぁ、このインフォマーシャルを見てるよその国のよそ者諸君。俺の名はヴィヴォ・マン・ゴッリファー —
[“ヴィヴォ・マン・ゴッリファー”という白い文章が数秒間表示され、SCP-5358-Aはメッセージが消えるまで口をつぐむ。]
SCP-5358-A: — この大いに誇らしき国、誇り高き民の故郷、ヴロルスキディアの誇るべき一国民だ。そしてこのインフォマーシャルの司会者でもある。好奇心旺盛な視聴者猫たちに、我が国の文化、名所、住民などなど、アンタたちのくだらなくてつまらん国よりはちょっぴり面白いものをご紹介しよう。 (あくびをする) あーあ、きっとアンタたちは腰を下ろして、俺が取り留めもなく喋ったり、笑いを取るために他所の国民を侮辱したり、どうにかアンタたちをここに招こうと説得するのを見てるんだろう、そう考えるだけでもあくびが出るねぇ… でもまぁ、まだ見続けてはいるらしいな!
[破れたパーカーと青いズボンを着用した正体不明の人物が、ガソリンタンクを持って背景映像の中に入って来る。正体不明の人物は周囲にガソリンを注ぎ始める。SCP-5358-Aはこの人物の存在に気付いた様子を見せない。]
SCP-5358-A: さてと、ご覧の通り、ここは俺たちが大切に、そして、えー、真心を込めて管理してる素敵な多雨林だ。美しいだろう? ま、アンタたち観光客が来たら、全部燃えて灰になっちまうかもしれないがね… あぁ、心配すんな、今のは少し大袈裟に言った。そりゃ、多少の環境汚染やら何やらはあるかもしれないが、誰が気にする? 間違いなく俺たちじゃないね。 (ヒステリックに笑う)
[音楽が突然止まる。]
SCP-5358-A: 俺たちに意見するな。
[音楽が再開する。SCP-5358-Aは腕時計を確認する。]
SCP-5358-A: おおっと、もうこんな時間だ。先を急ごう、集中力の低い視聴者を退屈させるのはマズい。さぁ来な、行き先はもう分かってる!
[SCP-5358-Aがぎこちなく画面外に退出すると、正体不明の人物がポケットからマッチを取り出し、点火して地面に落とす。マッチが地面に当たる前に、コーナーは終了する。]
抜粋された家の映像。
[SCP-5358-Aは、ある家の一番上の窓に小石を投げ付けているが、何ら反応を得られていない。]
SCP-5358-A: おーい? お隣さん? 俺だよ、アンタがいっつも“芝生に入るんじゃねぇ”って怒鳴りつけてる奴だよ。いや待てよ、これじゃ全然絞り込めてないか?
[数秒の沈黙。SCP-5358-Aはレンガを拾い上げて投げる。50代と思われる住人が、戸惑った表情でカメラ視点に入って来る。レンガが窓を突き破って住人の顔面に命中し、住人は崩れ落ちる。]
SCP-5358-A: ヤッベェ、カットだカッ —
[場面が変わって、大袈裟な身振りでカメラに手を振る住人が映る。住人の歯は欠けており、頭部と両腕は取り付けられた紐で上から吊られている。窓はまだ割れており、血に染まっている。]
SCP-5358-A: よーし、その辺で良いぞ。
[SCP-5358-Aは背中からマイクを引き抜く。]
SCP-5358-A: 傷心の観光客にとってもう一つの見所は我らが国民、志の高い隣人たちだ。彼らはアンタたちを笑い者にしないし、怒鳴らないし、悪口も言わない。まさに純粋な偉大さが玄関先すぐの所でアンタたちを待ってる。彼らがいれば、過去… 10年ぐらい?アンタたちがやってきた同じ平凡な仕事だって問題なく続けられる。やれやれ、アンタたちはそのつまらん人生で画面を見つめる以外に何をやって過ごしてきたんだろうな?
[3分間の沈黙。カメラは吊り下げられた死体とSCP-5358-Aの間で視点を動かしながら徐々にズームインする。やがて視点は突然リセットされる。]
SCP-5358-A: そうだ、今思い出した。アンタたちが人生で何をしようと実際誰が気にする? 俺は勿論どうでもいい。俺はただ、アンタたちにここで時間と金を無駄遣いしてほしいだけだ。とにかく、このコーナーにも飽きてきたな。先に行こうか? 更なる美を求め、いざ進まん! (片手を耳に当てて囁く) おい、ダレス、ボートとライターを用意しろ、分かったな? それとな、今回の清掃ではちゃんと漂白剤を使え。俺はあくまでも広告屋であってアドバイザーじゃねぇんだ、このダボがよぉ。
[コーナーが終了する。]
抜粋されたバーの映像。
[SCP-5358-Aは、乱闘しながら支離滅裂に叫んでいる人々の前に立っている。]
SCP-5358-A: ここは、えー-
[椅子がSCP-5358-Aを掠めて飛んでいく。悲鳴が聞こえ、SCP-5358-Aはそちらを向く。]
SCP-5358-A: (咳払いをする) そう、ここは現実から目を逸らしたい人々のためのバーだ。俺向きじゃないがね、俺は素面の方が好みだ… 少なくとも今日は。 (緊張気味に笑う) もしこの国を訪れちまったせいで無駄になった金のことを忘れたくなったり、次に何をすればいいか分からなくなったりしたら、ビールが安いからここに来ると良い!
[ワインボトルがSCP-5358-Aの背中に当たって砕ける。SCP-5358-Aは振り向く。]
SCP-5358-A: おう、今のは誰が投げた?
[群衆はSCP-5358-Aを無視する。]
SCP-5358-A: いいかテメェら、また同じ事があったら全員バーから蹴り出すぞ。聞こえたか? (溜め息) とにかく —
[SCP-5358-Aはカメラに顔を向ける。]
SCP-5358-A: 国民たちが暴れ狂い、戦争さながらに取っ組み合うのはちょっと無秩序だと思うだろうが、心配すんな、病院もあるんだ。正直言って、少し値は張るがね。ただし… ぶつかる相手に気を付けな。貯金以上のもんを失いたくないだろ。
[画面外でドアが開き、床に光が差す。シルエットが映り込み、SCP-5358-Aはそちらを振り向いて顔をしかめる。]
SCP-5358-A: あぁん、ジェリー? ここに顔を見せるたぁ大した度胸じゃねぇか。3ヶ月前に貸した1万2千ヴロインはどうした、この野郎 —
[カメラ視点が動いてジェリーを映し、SCP-5358-Aは他数名の身元不明人物と共にジェリーに飛び掛かる。場面が変わって、たるんだ目元に涙を浮かべ、片腕をポールに鎖で繋がれたジェリーがカウンターの向こう側にいる様子が映る。]
SCP-5358-A: ざまぁ見やがれ。返済が済むまではそこを動くんじゃねぇぞ。テメェにゃ同情するよ、だからもう少しだけ待ってやる。でも俺が言ったことを忘れんな。 (呟く) とんでもねぇたかり屋だ。
[コーナーが終了する。]
抜粋された公園の映像。
[SCP-5358-Aは足を組んでベンチに座り、周辺を観察している。1枚の葉がSCP-5358-Aの頭に落ち、SCP-5358-Aはそれを振り払う。]
SCP-5358-A: よう、インフォマーシャルを最後まで見てくれたらしいな。おめでと! 付き合ってくれて感謝するぜ。どうやらアンタたちの人生には他にやる事が無いらしい。ま、この素晴らしいもので満ち溢れ、アンタたちの居場所だってちゃんとあるヴロルスキディアを訪れて滞在することはできるのかな。 (含み笑い) 嗚呼、そうだったら良いんだがね。
[沈黙。]
SCP-5358-A: おう、俺がもし嘘吐いてると思ってるなら、それは違うぞ。ご覧の通り、俺は高級なスーツを着てる… だからここでは俺がプロだ、アンタたちじゃない。大体、アンタたちは一度もこの国に来たことがないだろ? どうしてそれで判断できる? ネタバレ注意… (嘲笑) 無理だね。
[SCP-5358-Aは、丘でピクニックをしながら曇り空を見つめている男女の2人組に気付き、そちらに顔を向ける。SCP-5358-Aはカメラに向き直り、歯を剥いて笑う。]
SCP-5358-A: こんなのはどうだ? 今からあそこのカップルの所へ行って、この美しい国をどう思うか訊いてみよう。それならアンタたちも納得してくれるかもしれない、ここに引っ越して俺たちの仲間としていつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも —
[SCP-5358-Aは6分間独り言を繰り返し、音声の歪みが着実に増してゆく。やがて場面が変わり、SCP-5358-Aが気まずそうな様子のカップルにインタビューする様子が映る。]
SCP-5358-A: (男性に) やぁどうも、この雄大なる国の親愛なる殿方。ヴロルスキディアについてどんな意見を持ってる? どうか (耳元で囁く) 賢明な答えを頼むぜ、さもなきゃ… いや、ただの冗談だ!
男性: ええと、その、住むのにはとても優れた土地柄ですよ。分かるでしょ? こう —
SCP-5358-A: ああ、分かってるとも。
男性: はい、それに… (合間) 彼女とここで暮らせるだなんて素晴らしいです… もう終わりでいいですかね?
SCP-5358-A: おぉう、ほらほら、恋人たちの国ヴロルスキディアでしか見つからない恋愛関係のゴールだぞ。ここなら真実の愛を見つけられるかもしれない… 見つからないかもしれない、誰が知るか。もしかしたらアンタたちは何処へ行ったって独りぼっちかもな。 (呟く) こいつらがいずれ破局して全てを後悔するように。
男性: 何か仰いましたか?
SCP-5358-A: あぁ、何でもねぇよ、ちょっとした… どうでもいい事さ。まぁ、遠いようで近い将来に待ち構えてる人間関係のもつれやこじれについては幸運を祈るぜ。
男性: …はい?
SCP-5358-A: (カメラに向き直る) これで満足か、もうすぐ国民になる諸君。こいつらが言った通り — 意に反して言わされたなんてことは絶対に無いぞ — この誇り高き国で暮らすのはスリル溢れる冒険なんだ。さぁ、何をぼんやりしてる? ここに来て滞在しろ、より良い生活がお前を待ってるヴロルスキディアに定住しろ。俺たちを無視するなよ、頼むよ。
[SCP-5358-Aは数分間カメラを指差している。]
女性: あの、大丈夫ですか?
SCP-5358-A: (小声で) その口を閉じろ、マレーナ。インフォマーシャルの撮影中だ。
[SCP-5358-Aは女性をマイクで殴る。映像が暗転し、“ 詐欺ではありません :) ”というメッセージが表示される。インフォマーシャルが終了する。]
[記録終了]
更新: 2020/03/30、アシュビルに位置するルアー湖の岸辺近くに、部分的に焼損し、死体を載せたボートが打ち上げられました。この死体は後ほど、SCP-5358-1のインフォマーシャルに映った家屋の住人と同一人物だと特定されました。財団が当該事案を認知した後、関係者及び目撃者は記憶処理され、死体は更なる調査のために押収されました。
ボートからは花、動物のぬいぐるみ、写真、以下のメッセージが記された絵葉書型のSCP-5358-3実例が回収されました。






