SCP-5374
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アイテム番号: SCP-5374 レベル 2/5374
オブジェクトクラス: Keter 機密指定
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SCP-5374の牧場。

特別収容プロトコル: 配属された財団工作員は規模の大きい天文学会を全て監視し、SCP-5374やSCP-5374-1を検出されないよう妨害します。星間アノマリーユニット (Interstellar Anomaly Unit、IAU) がSCP-5374を直接監視し、行動パターンに追加の収容プロトコルの必要性を思わせる変化がないか確認します。

ファーマー・グレイズ・オールナチュラル・キャトル社が所有する土地に残されたウシについては、異常性を示す証拠がないか現在調査中です。

説明: SCP-5374は身長1.14 mで灰色の皮膚をした無毛の人型実体であり、両目は黒くて大きく、鼻や耳は確認できません。その起源は現状不明ですが、実体は十分な知性を有しており、SCP-5374-1という高度な異常技術を利用できます。SCP-5374は収容以前、"アレン・グレイAllen Grey" という偽名の下で、ファーマー・グレイズ・オールナチュラル・キャトル社を所有、操業していました。

SCP-5374-1は直径約26 mの宇宙船であり、大気圏内飛行と極度の真空内の移動が可能です。円盤状であり、中央には盛り上がった半球体が、底面には大砲に似た機構が設けられています。この機構からは固形物を分解可能な有向の光線を発射できます。SCP-5374-1はレーダーなどの既存の検出方法には映らず、直接視認した場合でのみ識別できます。

SCP-5374-1は2016年6月から、2017/01/13に財団に収容されるまで、アメリカ合衆国全土で活動していました。アメリカ合衆国中で毎年寄せられる大量の偽のUFO報告1から純正なSCP-5374-1目撃事例を見分けることは困難であるため、以下の記録はSCP-5374の活動と関連性が疑われているか、実際にそうであると判明している目撃事例でのみ構成されています。




特筆すべきSCP-5374-1目撃事例の記録



目撃事例 内容 付記
16/06/24 SCP-5374-1の描写と一致する目撃談がテキサス州ハスケル郡で報告された。ハスケル郡の牧場2から、3頭の牛が行方不明になったと判明した。 最初の既知のSCP-5374-1目撃事例。
16/07/27 ネブラスカ州の複数の牧場で、SCP-5374-1の多数の目撃証言とともに、いくつものミステリー・サークルが確認された。ミステリー・サークルは全て単語を形成しており、特筆すべきものには "arsehole"、"bastards"、"pillocks" などが挙げられる。 当時、この事案は地元民の悪戯と考えられていたが、現在ではSCP-5374が関連していたと見なされている。
16/08/03 カンザス州の牧場で大爆発が発生し、のちにSCP-5665が関連していたと判明した。目撃者の一人は、SCP-5374-1の描写と一致する機体が、大量の黒煙を噴出しながら現場から飛び去っていったと報告した。 SCP-5374-1が爆発物に対して脆弱であることを示唆している。
16/11/10 ある牧場警備員が、何頭かの牛をSCP-5374-1に連れ去ろうとしているSCP-5374を目撃した。SCP-5374に立ち向かうと、SCP-5374は "光線銃" に似ていると形容される装置を取り出し、警備員を分解すると脅して、SCP-5374-1へと逃げ込んだ。 前述の装置は地元警察によって現場から回収され、のちに非異常な子供用玩具であったと判明した。
16/12/12 タイソン・フーズカーギル・ミート・ソリューションズコナグラ・ブランズの各CEOがSCP-5374に誘拐され、彼らが "不毛な異星の地" と形容する場所に連行された。彼らはその場所で、自分たちの企業が牛肉や牛肉関連製品をイギリスに輸出し続けるなら分解すると脅された。間も無くして、彼らは南カリフォルニアの牧場にて裸の状態で発見された。 誘拐されたCEOは尋問され、記憶処理剤を投与された上で自宅に帰された。地理に関する説明と、彼らの身体から発見された鉱物の破片の分析結果から、連行された場所はウェールズのトレフィル採石場であったと判明した。この事案で財団はSCP-5374の存在を知り、調査によって過去にSCP-5374の活動に関連した牛が多数確認された。
17/01/13 SCP-5374の存在を知った後、財団光学衛星は合衆国本土の複数の大規模な牧場を監視するよう変更された。17/01/13、SCP-5374-1が目撃され、衛星がそれの離陸場所までの追跡に成功した。 SCP-5374はイギリス、ヨークシャーの農村部に所在する小さな農家に居住していると判明した。




回収記録-5374



17/01/14、遠方監視機器によってSCP-5374が農家にいることが確認され、SCP-5374-1も近くの納屋に所在しました。サイト-109のエージェントチームによる突入作戦が実施され、SCP-5374はSCP-5374-1とともに収容されました。特筆すべき点として、当時のSCP-5374はそれまでの遭遇事例で述べられていた銀色の宇宙服を着用しておらず、ツイードジャケットやフラットキャップといった、人間にとってありふれた服装をしていました。

自宅一帯が捜索されましたが、SCP-5374-1以外の異常技術は発見されませんでした。家財に関しても、1950年代から60年代のサイエンスフィクションを主とする膨大な古典的映画のコレクションを除き、特に目ぼしいものは存在しませんでした。



SCP-5374インタビュー転写記録


日付: 17/01/14

回答者: SCP-5374

質問者: ポール・セッジウィック3

前書: このインタビューはSCP-5374が収容されてから間も無くして、サイト-109地下2階の、3番インタビュールームで実施された。未知の実体に対する標準の予防措置として、SCP-5374とセッジウィック保安員は強固な透明の壁で隔てられた。


<記録開始>

セッジウィック: 貴方にいくつかお答えしていただきたい質問があります。協力してくれれば話がスムーズに進みますし、貴方の今後の暮らしを快適にさせる設備も整えられるでしょう。

SCP-5374: 質問なんざクソ喰らえってんだ、若造が。俺は何にも違法なことはしていない、これは自由権の侵害だ!

セッジウィック: どうか落ち着くよう願います。さもなければ、また話す気になるまで独房に戻されますよ。貴方が一体何者で、どこから来たのか教えてください。

SCP-5374: これまた随分と無礼な質問だな、若造が。俺は生まれも育ちもヨークシャーだ、父親からアレン・グレイと名付けられた。

セッジウィック: なるほど。グレイさん、貴方は自分の外見が人間でないと気付いていますか?

SCP-5374: 皮膚病に罹ってんだよ。

セッジウィック: その灰色の色素も、えー、異様な顔つきやプロポーションも、全て皮膚病によるものだと?

SCP-5374: そうだ。

セッジウィック: それは具体的にどういう皮膚病ですか?

SCP-5374: それは俺の個人的な医療情報に当たるから秘密だ、ご気遣いありがとーよ。弁護士を呼んじゃだめか? それとも、ゴミのトーリー党様は俺らの人権も一緒に廃止しちまったのか?

セッジウィック: 弁護士は必要ありませんよ、グレイさん。ただ質問に答えていただければいいのです。貴方が所有しているあの異常な飛行船についてはどう説明を付けますか?

SCP-5374: あー、あのフライングソーサーだろ? 見りゃ分かると思ったんだがな。

セッジウィック: その "フライングソーサー" はどういう経緯で手に入れましたか?

SCP-5374: 俺は昔っからちょいと物をいじくるのが好きでな、前に古びたジョンディア4の改造に取り組んでたんだ。微調整を始めて、そっから何やかんやあって、気付いたらああなってた、そういうわけだ!

セッジウィック: すみませんがグレイさん、私にはとても信じられません。

SCP-5374: そうは言ってもこれが真実なんだよ! 俺は正直者だ。それに何にも間違ったことはしていない。こっから出さないって言うんなら、セジャトンさんよ、うちの下院議員を呼んで騒ぎ立てるぞ。

セッジウィック: セッジウィックです。では次に、牛泥棒の件について話しましょう。

SCP-5374: げっ。あんた、あー、そこまで調べがついてんのか。

セッジウィック: ついてますよ、グレイさん。この6か月間で、少なくとも38頭の牛が盗まれています。そのうち多数はそちらの敷地内で発見されましたが、こちらの財政アナリストが貴方の会社の帳簿を調べており、残りの牛についても追跡しています。そしてこの後には、大規模な破壊行為や誘拐の容疑の話が控えていますね。

SCP-5374: あー分かったよ、俺は牛を何頭か盗んだ。だがな、いいか、あのアメリカの大企業の連中は、俺が働いてる間ずっとチープで低品質なホルモン漬け牛肉をイギリスに流し続けてたんだ。そして当の馬鹿国家がEU離脱に投票したとき、俺はファーマーズ・ウィークリー5が何を言おうとも、事態は悪化する一方だって分かってた。

まあそうだな、確かに俺はちょっとイラッときて馬鹿やったのかもしれん。だがな、奴らの牛は俺と一緒ならより良い生涯を送れたんだ。俺はお人好しじゃないし、他の畜産農家と同じように、牛を屠殺場に送ったりもする。それでも俺は動物に敬意を払って接しているが、奴らは牛をまるで金儲けの機械の歯車のように扱い、労働者にもそれに劣らないほどひどい仕打ちを与えてんだ。真の犯罪者は誰か言ってみろよ、サドウィグさんよ。

セッジウィック: セッジウィックです。それに我々は貴方の罪よりも、貴方の異常な技術のほうに興味があります。要するに、そちらの "フライングソーサー" への搭乗方法を教えていただければ、貴方のためにもっとスムーズに事を運べるのですよ。

SCP-5374: 俺のソーサーをいじってないだろうな? あれはめちゃくちゃ危険だぞ、えらい数の問題を引き起こすかもしれん。なあ若いの、必要なら罰金を払うからよ、俺をここから出してくれ。そうすりゃ群れの世話ができる。

セッジウィック: 残念ながらグレイさん、貴方はどこにも行けません。貴方の罪はともかく、公衆での貴方の存在は正常性にとって脅威になります。貴方は今後もここに収容され、その収容の快適具合は貴方が協力的かどうかに強くかかっています。さて、貴方の乗り物の操縦方法を教えていただければ、同僚が爆発物を使用してこじ開けるのを避けられるのですがね。

SCP-5374: じゃあこの国は来るとこまで来たんだな? 見た目だけを理由に檻にぶち込むってか。あー、こりゃ驚いた、と言いたいところだが、この国の了見の狭ぁーい奴らは、もう何年も前からファシズムに向かって突き進んでんだ。だがな、サッジワッジさんよ。言わせてもらうが、俺はここに留まって我慢するつもりはねえぞ。俺の牛もな。

セッジウィック: グレイさん、どうか —

インタビュールームの天井から放たれた光線により、SCP-5374が分解される。

<記録終了>


後書: インタビュー中、SCP-5374-1は倉庫-2Eに保管され、財団スタッフが内部への侵入を試みていた。セッジウィック保安員がSCP-5374に向かって無期限に収容すると脅すと、SCP-5374-1は倉庫-2Eの天井を分解し、空中に浮遊した。その後、SCP-5374-1は地上から3番インタビュールームへの進入孔を開け、SCP-5374を分解した。これにより、サイト-109の温度調節インフラの一部と、Anomalousアイテム保管庫の空のロッカーがいくつか破壊されたが、大きな被害には至らなかった。

飛行船を撃ち落とす試みは、標準の小火器やSAM6を含めて全て失敗した。SCP-5374を分解した後、SCP-5374-1はファーマー・グレイズ・オールナチュラル・キャトル社まで飛行し、その場にいた牛のほとんどを分解して、視界から外れるまで真上に上昇した。





SCP-5374の現状


17/01/16以降、SCP-5374はクーロン-サートン盆地7で畜産業を再開しています。酸素や水、食料も無い場所で、SCP-5374と牛がどのようにして生存できているのかは不明ですが、サイト-109の天文学部門からの報告によれば、牛は繁栄しているように見受けられ、SCP-5374は地球への帰還の意思を示していないようです。現在、再収容は優先事項と見なされていません。



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