SCP-5376
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アイテム番号: 5376
レベル2
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
danger

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SCP-5376。


特別収容プロトコル: サイト-19から南に2km離れた広い土地が即席のスタントアリーナに改装されており、多数の傾斜路ランプ、ループ、廃車が配置されています。SCP-5376が収容下で模範的行動を続けている報酬として、アリーナには数台のジェット噴射装置も設置されています。14日ごとに、SCP-5376は武装保安部隊によってこのアリーナへ護送され、1台のオフロードバイクを提供されます。その後4時間、SCP-5376は提供された全ての備品を用いて運転/衝突/パフォーマンス・スタントを行うことを認められます。保安スタッフはSCP-5376が脱走を試みた場合のみ介入します。この期間の終了後、SCP-5376はサイト-19のKeter棟にある収容室に再び護送されます。

3ヶ月前に現在の収容プロトコルが実装されて以来、SCP-5376は爆発していません。

説明: SCP-5376は腐敗の進行した死体に類似するヒト型実体です。SCP-5376はこの事実を自覚している様子がありません。皮膚は腐乱して剥がれ落ち、身体の各所で骨が大きく露出しています。少なからぬ量の肉が頭部から失われているため、下顎骨が完全に露出し、片方の目は眼窩から危険なほど脱落しかけています。これにも拘らず、SCP-5376は自我、運動能力、合理的知性、研究者との意思疎通能力を有します。SCP-5376は著名なアメリカ人スタントマン、イーベル・クニーベルの象徴的な衣装のレプリカである、青線と白星で装飾された白いバイクスーツを着用しています。SCP-5376は“ターボ・トンプソン”という名前を自称します。

ほとんどの物理学の一般的理解に反して、SCP-5376は質量、重力、高度の変化に関係なく、位置エネルギーを常時蓄積しています。この蓄積の速度は緩やかですが、累積的です。大量のエネルギーが蓄積されると、SCP-5376がどれほど些細な動きを取る時も、抑制されていた全てのエネルギーが一気に解放されるリスクが伴います。通常これは大規模な爆発を引き起こし、SCP-5376は無傷のままですが、周辺領域は完全に破壊されます。理由は十分に理解されていませんが、SCP-5376が自動車でスタントを実行すると、この蓄積エネルギーは迅速に、効果的に、そして比較的安全に排出されます。

SCP-5376はジョージア州の農村地域で開催されたバイクスタントショーにて、混み合ったショーの会場を徘徊する蘇生した死体についての報告と、ショーに参加させなければ暴力を振るうと脅迫する人物についての報告が同時に為された際に発見されました。

関係者:

  • エージェント サラ・マッカロー
  • SCP-5376
  • ルディ・ビリングス (民間人)

«記録開始»


[エージェント サラ・マッカローが群衆の中から、ショーのチケット売り場にいるSCP-5376に近寄る。他全ての民間人はSCP-5376から離れた場所に立ち、うち数名は鼻をつまんでいる。SCP-5376はチケット売り場の従業員 ルディ・ビリングスと激しく口論している。ヘルメットのバイザーが下がっており、顔は見えない。]

SCP-5376: もう言っただろ、兄ちゃん。俺は参加したいんだ! ショーに出させろ!

ビリングス: 俺も言ったよな、ポッと出の馬の骨をはいそうですかと出演させたりはしないって。あそこの連中は全員何ヶ月も前に許可を受けてんだし、訓練を受けたプロだ。俺はお前の名前すら知らない。

SCP-5376: そいつは残念だ。そう、この俺こそが偉大なる…

[SCP-5376は劇的な効果を狙って沈黙した後、突然ポーズを取ってビリングスを動揺させる。]

SCP-5376: ターボ・トンプソンだ!

[遠くからエレキギターのリフが聞こえる。]

マッカロー: 何、今の?

ビリングス: そんな名前は一度も聞いたことがねぇな。

SCP-5376: マジかよ、兄ちゃん? 岩の下にでも住んでんのか? 近頃は誰彼構わずチケット売り場に立たせとくらしいな。とにかく、そのお綺麗なハゲ頭に詰まってる心配事はどれも気にしなくていいんだぜ。さっさとチケットをよこせ、そしたら…

ビリングス: 失せろ、この野郎!

[エージェント マッカローが後ろから近づき、SCP-5376の肩を掴む。]

マッカロー: サー、一緒に来ていただきましょう。

ビリングス: やれやれ、ようやくかよ。

[SCP-5376がバイザー越しに注視する。]

SCP-5376: …エージェント?

マッカロー: [目に見えて動揺する] は — はい?

SCP-5376: アンタ、俺のエージェントか? タレント事務所の?

マッカロー: …ええ。そうです私です。一緒に来てください、ここから離れましょう。ここのショーは大した事ありません。

SCP-5376: ハハッ! 確かにそうかもな、エージェント! 俺だってこんな古臭い南部のカーニバルや催しなんか放っておきたいよ - [前屈みになる] いやマジな話、俺はここの敷地よりずっと広い群衆の中に突っ込んだことがある [姿勢を戻す] - だが、俺はあそこの素敵な人々にショーを約束した。約束したからにはショーを披露しなきゃな! パフォーマーは絶対に舞台を投げ出さないんだぜ。

マッカロー: このイベントは一週間続きます。私と一緒に来てもらえれば、明日は丸一日公演できるように取り計らいます。

SCP-5376: アンタを雇った甲斐があったよ、本当に積極的だな。しかし残念だがそんなに長く待てない。俺は、あー、スタントしなきゃならないんだ。つまり、その、今すぐ。

マッカロー: では、駐車場にバイクがありますので、そこに-

[SCP-5376が痙攣する。]

SCP-5376: ダメだ。

マッカロー: はい?

SCP-5376: もうすぐ起こる。

マッカロー: 何がですか?

SCP-5376: ほら、例のあの、アレだよ。ヤベーやつ。隠れた方が良い。

マッカロー: [叫ぶ] 皆さん下がってください、ここから離れて!

SCP-5376: 畜生、今回こそは自力で制御できると思っ-


«記録終了»


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爆発するSCP-5376。

上記の記録に続き、SCP-5376は自発的に大規模な爆発を引き起こしました。エージェント マッカローの呼びかけによって、深刻な被害を受けた民間人はおらず、全ての目撃者は記憶処理されました。SCP-5376は拘留され、収容分析を待つ間、サイト-19の外部にある一時的な拘留室に移送されました。SCP-5376がエージェント マッカローに慣れ親しんでいる様子を見せたことから、彼女が必要なインタビューの担当者として選抜されました。

関係者:

  • エージェント サラ・マッカロー
  • SCP-5376

«記録開始»


マッカロー: こんにちは、SCP-5376。

SCP-5376: SCP-5376? 未だに俺をケースナンバー呼びしてんのか? そりゃアンタたちにクライアントが大勢いるのは分かるぜ、でも俺たちはもうお互い顔なじみなんだから名前で呼ぼうや。

[司令部は偽装を続けるようマッカローに指示する。]

マッカロー: そうですね。トンプソンさん。

SCP-5376: ただのトンプソンじゃあない…

[SCP-5376がポーズを決める。]

SCP-5376: ターボ・トンプソンだ!

[遠くからエレキギターのリフが聞こえる。]

マッカロー: 今の音は何処から?

SCP-5376: 知らん。いつもこんな感じだ。

マッカロー: そうですか。それでは、ええと、お久しぶりですね?

SCP-5376: 全くだよ。ちょっとの間、新顔のアホなクライアントに惹かれて俺を見放したんだろうと思いかけてた。一発屋のかわいい子馬ちゃんってか。きっと文字通りの馬だったんだろうな。踊れたりする奴。歌えたりもしたかもな。だが俺は信じ続けた、そしてアンタは帰って来た。ありがとう、エージェント。

マッカロー: クライアントを見捨てたりはしません。

SCP-5376: アンタは正真正銘のプロだ。でも、幾つか訊きたい事がある。

マッカロー: 私もです。どうでしょう、私が一つあなたの質問に答えたら、次はあなたが私の質問に答えるというのは。

SCP-5376: ゲームだな! 俺そういうの大好きだ! いいぜいいぜいいぜいいぜ。アンタが先だ。

マッカロー: 分かりました。まず改めてお訊ねしますが、あなたの出身は何処でしたっけ?

SCP-5376: ジャクソンビルだ。

マッカロー: …いえ、私が言いたかったのは-

SCP-5376: もう遅い! 俺のターンだ! オーケイ… 俺は今いったい何処にいる?

マッカロー: ここは… 私のタレント事務所です。スターズ・キャスティング… プロダクション。株式会社。

SCP-5376: へぇ、マジ? いやぁ、アンタやっぱりきっちりしてるよ、ここシャレてるぜ。エアコンはあるし、家具は本物だし、何でも揃ってる。サイコーだね。

マッカロー: ありがとうございます。

SCP-5376: で、こいつをお気に入りのクライアントに披露したかったんだな?

マッカロー: …はい。

SCP-5376: バイザーのせいで見えないだろうが、顔が赤くなっちまった。

マッカロー: そう、バイザーと言えば。ちょっと上げていただけますか?

SCP-5376: 大好きなエージェントのためなら何でもするさ!

[SCP-5376はバイザーを引き上げ、腐敗して皮膚の剥がれた顔を露わにする。マッカローは一瞬、悪臭のあまりによろめく。]

マッカロー: ううっ、臭い…

SCP-5376: ありがとう!

マッカロー: ああ… 昔の記憶と全く変わっていませんね。

SCP-5376: でもスーツは新品だ。セクシーだろ? でもアンタはちょっと変わったな。パーマかけたか? 鼻の整形とか?

マッカロー: 他にも色々。

SCP-5376: 俺の好みだ。で、次の質問だが、次回のショーはいつになる?

マッカロー: え、はい?

SCP-5376: いや、てっきり俺はまた昔に戻るのかと思ったんだよ。俺とアンタの二人きりでアメリカ全土をロードトリップしてさ、アンタがショーを予約して、俺が観客をアッと言わせて、アンタは俺が観客をアッと言わせてる間に会場から何やかんやくすねる。良い時代だった。

マッカロー: …もうそういう事はできないと思います。分かるでしょう、今の私には事務所という責任を負っていますから。

[SCP-5376が椅子にへたり込む。]

SCP-5376: ああ。クソ。

マッカロー: しかし、必ずあなたをショーに出演させます。絶対に。

[SCP-5376が姿勢を正す。]

SCP-5376: そいつは良いや。

マッカロー: では、私から次の質問です。あの、えー、爆発は何ですか?

SCP-5376: おおそうだ、アンタは実際には見てなかったっけ。いや、さっきまではか。いいか、スタントは俺の天職だ。俺の人生であり、生きがいだ。

マッカロー: しかし、あなたは生きてないじゃ-

SCP-5376: 話を遮るな! あと失礼だぞ。とにかくだな、その使命を果たせない時、俺はすごく落ち着かなくなる。引っ掻けない痒みみたいなもんさ。それが溜まっていくと、やがて俺は爆発する。そのままの意味でだ。

マッカロー: しかし、スタントを続けている限りは問題無いんですね。

SCP-5376: そうとも、ベイビー。俺は生涯ショーマンだ。昔からそうだった。

[SCP-5376は親指で自らの胸を指す。]

SCP-5376: 俺には最高の仕事ができるぜ、ベイビー。ショーに参加させ続けてくれりゃ、俺のささやかな発作を気に掛ける必要は全く無い。だが…

マッカロー: だが?

SCP-5376: なぁ、ただ外に出て歩き回るだけでも、俺が痒みを扱う時の助けになるんだ。痒みを消すとまではいかないが、支えにはなる。なのにアンタは俺を屋内でもう1週間近く座らせてる。率直に言って残酷だし普通じゃない処罰だ。

マッカロー: 少しの間、収容し- スイートルームから足を延ばせる場所に移動させることもできます。

SCP-5376: ああ、ありがとう。だが… 今は、あー、うん。逃げた方が良いな。

マッカロー: ああ、畜生。


«記録終了»


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爆発するSCP-5376。

上記のインタビューに続き、SCP-5376は爆発し、自らが収容されていた一時拘留室を破壊しましたが、逃走は試みませんでした。エージェント マッカローと他の職員らもまた、負傷せずに生き残りました。その後間もなく、SCP-5376のレクリエーション用スタントアリーナが建造され、SCP-5376はサイト-19 Keter棟の防爆チャンバーに設けられた、エクササイズや運動用の器具を備えた恒久的な収容室へと移送されました。

SCP-5376はレクリエーション・エリアに案内され、設備に順応しました。SCP-5376は観客にパフォーマンスを披露する許可を繰り返し要請しました。この一連の行動はサイト管理官によって承認され、非番の職員から成る観客に向けた“ショー”が予定されました。


時系列


12:30: 門が開き、観客が到着し始める。数名の研究員が即席の軽食スタンドを構築する。

13:04: SCP-5376が武装警備員によってエリアに護送され、車両から降りる。SCP-5376は大勢の観客を見て強い感情を表す。

13:14: SCP-5376がショーの準備を始める。この準備は主に、鏡の前で興奮しながら叫び、レクリエーション・エリアに感嘆する行為から成る。

13:20: SCP-5376が提供されたバイクに乗り、拍手を受けながら走行を開始する。

13:23: SCP-5376はランプから一連なりに駐車された車を飛び越える。

13:29: SCP-5376はバイクの前輪のみを使ったバック走行を披露する。SCP-5376はこの間に立ち上がろうとするが、バイクから転落する。

13:37: SCP-5376は加速し、エリア中央にある巨大なループを走行し切ろうと試みるが、失敗してループの頂点から落下し、バイクに潰される。数分後、SCP-5376は見たところ負傷していない様子で立ち上がる。

13:43: SCP-5376はもう1台のバイクを持ち出し、それぞれのハンドルに片足ずつ乗せて2台同時乗りを行う。その後、駐車されている車の1台からドアをもぎ取り、それをチャリオットのように使って2台のバイクに自らを牽引させ、ランプから跳躍する。

[重要性の低い出来事を除去]

14:34: SCP-5376はまばらな拍手を受けながらバイクから降り、観客に呼びかける。

SCP-5376: なぁ皆。来てくれてありがとうよ。俺はこんなに大規模なショーで公演したのは初めてだし、アンタたちは皆、これ以上望めないぐらいに親切な観客だ。俺の古い、腐った心臓の脈を吹き返させてくれた。ここは間違いなく俺が今まで働いた中で最高のタレント事務所だよ。ああ… [鼻をすする] ああ、もう俺-

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爆発するSCP-5376。

スピーチに続いて、SCP-5376はまたしても爆発し、スタントアリーナに軽微な損傷を及ぼしました。爆発で負傷した職員はいませんでしたが、今後のショーは無観客で行われます。代案として、座席を段ボール製の書き割りで埋め、スピーカーから歓声を放送して観客を模倣します。感覚器官が腐敗しているため、SCP-5376は違いを判別することができないと思われます。

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