SCP-5383

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特別収容プロトコル: SCP-5383が記載された文書はラスベガスのサイト-666に存在します。SCP-5383を調査する旨の要請書を出す場合は、研究監督官の承認を受けてから担当のRAISAオペレーターに送付する必要があります。アクセスはレベル5/5383クリアランスを有する職員に制限されます。

説明: SCP-5383は許し難い大罪1の特定の組み合わせであり、これを犯した人物からあらゆる罪深い行為に対する有責性が完全に消去されます。罪が原因でその人物に課せられる宗教的および神的な障害は全て取り払われます (例: 来世への移行許可が出る、など)。

SCP-5383が罪を消去する正確な過程は不明であり、Empyreanクラス神格実体に関する情報が無ければ、この状況はまず変化しないと思われます。しかし、SCP-5383で犯される罪があまりに凶悪で許し難いために、個人が全てを実行するのは全く想定されていなかったというのが戦術神学部門における通説です。完遂するとある種の "バッファオーバーフロー" が引き起こされ、結果的にカトリック教会の聖人として即座に列聖されます。

キリスト教の罪悪論に関する戦術神学部門の専門家は長らくSCP-5383の存在を推測していましたが、その具体的な性質が明らかになったきっかけは、1995年6月、SCP-4661内でTartareanクラス悪魔実体がバチカン遺物回収局からの庇護を求めて財団に接触してきた際のことでした。

インタビュアー: エージェント・アリス・スターリング

対象: PoI-5383.1 — "ブラッガロス"


スターリング: ごきげんよう、えー…… "ブラッガロス"さん。

ブラッガロス: おっと、そいつはただのエスニックネームだ。ブラッグでいい。

スターリング: ……そう。で、用件は?

ブラッガロス: 決まってるだろ、俺を収容するんだ。お前たちが普段やってることだよ。手錠をいくつか — 2つ目が要るかもだからな — そいつを俺に掛けて —

スターリング: 落ち着いて。なんでそうしないといけないの?

ブラッガロス: なんでって、それがお前たちの仕事だろ?

スターリング: 私たちがいるのはアンダーベガスよ。見かけた悪魔を全員確保してたら、ここの人口の半分と、うちのエージェントのゆうに10分の1が独房行きになるわ。それで、なんで貴方は私たちに収容してもらいたいの?

ブラッガロス: [ため息] 訊いてほしくなかったんだがな。

スターリング: 白状なさい。時間無いのよ、5時にサキュバスとの会合に行かないとだから。[間。] ほら早く。

ブラッガロス: わぁーったよ。あー、掻い摘んで言うとだな、バチカンのめちゃくちゃ偉い連中をめちゃくちゃ怒らせちまった。

スターリング: バチカン?

ブラッガロス: ローマのでかい建物があって、イケてる美術品がいっぱいあって、変な帽子被った気味悪いおっさんがいるアレな?

スターリング: バチカンが何なのかぐらい知ってる、私が聞いてるのはベガスからどうしてバチカンに渡ったのかよ。

ブラッガロス: あー…… 経緯?

[間。]

ブラッガロス: 参ったな、分かったよ。俺は盗みを働いていた。

スターリング: わあ、単純だった。それがバレたの?

ブラッガロス: 中に入って、物を取ってったら、帰り際に目をつけられた。うっかりして道具を —

スターリング: 人目に付く場所に置き忘れた、と。初歩的なミスね、アホらし。で、私たちが保護してくれると期待してここまで歩いて来たってわけ?

ブラッガロス: 一種のロードトリップみたいだったな。海を越え、大陸の大半を横切り、財団が悪魔を支配する世界最大の場所に向かって逃げてきたのさ。その間ずっと、大勢の遺物回収エージェントどもが代わる代わる追ってきた。あの名は伊達じゃない。遺物を回収するためなら奴らはどんな手も使う

スターリング: ふーん…… で、他にもあるんでしょ?

ブラッガロス: は?

スターリング: 両の角が痙攣してる。今まで大勢の悪魔を尋問してきたの、貴方は何かを隠してる。

ブラッガロス: あー、その…… この町の悪魔の半数が俺を殺して食べようとか思ってる、かも?

スターリング: 詐欺にかけて高飛びしたの?

ブラッガロス: ピラメイド商法だったな。

[間。]

スターリング: ひょっとしてピラミッド商法?

ブラッガロス: 違う。言わせてもらうが、人がメイド服を押し付けられる人数には限りが —

スターリング: [冷笑して] あーはいはい。

[間。]

スターリング: 早く言いなさい。どうせここでの主導権は私が握ってる。私にこびへつらわないとあっという間に野垂れ死によ。要するに、貴方の命はこの手の中にあるの。

ブラッガロス: そのお上品な手の?

スターリング: ええ、何でもいいでしょ。で、貴方を保護するべき理由は? 代わりに何を提供できるの?

ブラッガロス: そうだな…… バチカンの保管庫から盗んだのとかどうだ、この…… 何の価値も無いヤツを。

スターリング: だったらなんで提示した?

ブラッガロス: 俺にとっちゃ無価値だが、お前たちにとってはそうじゃないからだ。あらゆる罪を綺麗さっぱり、永遠に消し去る方法の指示書さ。しかも列聖までしてくれる。これを成し遂げれば、もう天国行きのエスカレーターに乗り損ねることはない。

スターリング: どうして貴方はそれを実行しないの?

ブラッガロス: 俺は悪魔だぞ。天国で何しろっつーんだよ? 聖餐用のワインをちびちび飲んで、エッチな修道女でも見てろってか?

スターリング: それもそうね。んー…… この話の裏は何?

ブラッガロス: 裏?

スターリング: どんな話にも裏はある。

ブラッガロス: ……OK、その指示なんだが、ちょっと…… 残酷かもしれない。耐え難いってことな。けど罪だぞ、それも個人の罪カウンターに過負荷をかける罪だ! そりゃ醜悪にもなる!

スターリング: どう醜悪なの?

ブラッガロス: えっとな、父親を [編集済] して [編集済] すると同時に親友を [編集済] しないといけない、それも汝の隣人の妻を欲しながら。

スターリング: 私の隣人が独り身だったのは間違いないわね。あと、何だそれ。

ブラッガロス: メイド服ってそのためにあるんかね?

スターリング: は?

ブラッガロス: えっ?

スターリング: あのね — まあいいわ、その指示書をこっちに渡しなさい。それから話し合いましょう。

ブラッガロス: そうはいかない。高級スイートな独房を用意すると約束するまで口をきいてやらん。

スターリング: こいつ。


[ログ終了]

SCP-5383の機微な性質のため、指示の全容はレベル5/5383クリアランスを有する職員のみが閲覧できます。該当する職員は、RAISAオペレーターに連絡を取り、封緘されたSCP-5383の複製をファックスで送付させても構いません。ただし、参考として、長大なSCP‐5383文書の中から関連する箇所を個別に抜粋して以下に提示します。

3. 罪のない動物の赤子に声を荒げる。


13. 主の名をみだりに唱える力量を試す競技で暴力を振るって結果を残す。


21. 肝臓が耐えられる限り飲酒する。


22. 汝の隣人の肝臓を欲する。


23. 汝の隣人の肝臓を盗む。


39. イースター・サンデーにソドミーか自慰を行う (両方実行した場合は手順45まで飛ばす)


67. 牧師との知恵比べに挑む。拳銃を携えるべし。


98. 恵まれない動物たちのための病院に火をつける。その通りの向こう側に店を構え、バケツを値上げして売る。”物価高騰” を引き合いに出すべし。


120. コメントを残さずに反対票ダウンボートを投じる。


143. 自殺 (suicide) を除くあらゆる殺し-cidesを1日で行う。


144. 自殺を行う。


145. 不浄な呪術で蘇生する。

全部で145の手順がSCP-5383で述べられています。個人の罪が消去されたか否かを確認するのは困難であるため、実験は一度も実施されていません。


補遺5383.3

以下の補遺はクリアランスレベル5/5383機密指定です。


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