クレジット
本記事は、CC BY-SA 4.0ライセンスの下で提供されます。これに加えて、本記事の作成者、著者、翻訳者、または編集者が著作権を有するコンテンツは、別段の定めがない限りCC BY-SA 3.0ライセンスが付与されており、同ライセンスの下で利用することができます。
「コンテンツ」とは、文章、画像、音声、音楽、動画、ソフトウェア、コードその他の情報のことをいいます。

SCP-5432。詰め物による歪み具合を検証するため、2個の非異常なリンゴと並べられている。
アイテム番号: 5432
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-5432は長期的な収容のために、監督司令部の低温収容エリアにある標準的な異常オブジェクトロッカーで冷凍保存されます。
説明: SCP-5432はかつてハーマン・フライという102歳の人間男性だった調理済みのアップルパイです。SCP-5432から放出される残留亜原子オントロジカル1粒子を基に、フライ氏は標準的な人間ベースラインの25倍に及ぶ、現在まで記録された最高の内部ヒューム値を有していたと推定されています。
発見: SCP-5432は2020/02/10の5:32、極めて異常な出来事の続発と、普遍的ヒューム値の急上昇に続いて発見されました。この一連の事象は、監督司令部の南西27km地点を中心とする、既知存在全てにわたるベースライン現実の改変から成っていました。更なる調査の結果、ハーマン・フライが所有する2部屋のコテージが現実改変事象の震源地で発見されました。現実改変レベルは6:32にベースラインの7倍という最大値に達した後、当初の非異常状態に戻りました。この期間中に周辺地域の現実が大幅に改変されていたにも拘らず、地元の民間人はいずれもこれらの出来事を記憶していません。
フライの家は機動部隊アルファ-1 (“赤の右手”)の対応時点で既に無人であり、SCP-5432はコテージの海に面したポーチにある揺り椅子の上から発見されました。機動部隊はコテージの内部に“複数の実在しない自己啓発団体やニューエイジ宗教の本”が、フライの身元を特定するのに十分な量の身の回り品2と共に散らばっていると報告しました。オーブンは摂氏200度に予熱した状態で放置されていました。
補遺5432.1: 発見時事象ログ
注記 - 以下は、事象発生中の財団職員の直接目撃証言と、その終結後の全世界的な現実変動マッピングを編纂したものである。記録されたデータは、監督司令部に位置するチューリング-12スーパーコンピュータを使用し、かつての現実世界の状態を統計的にマッピングするために用いられた。
時刻 | 場所 | 事象概要 |
---|---|---|
5:32 am | ハーマン・フライのコテージ | ハーマン・フライのコテージがヘルストン南西部に出現する。オーブンは摂氏200度に予熱されている。 |
5:48 am | イギリス海峡 | 民間旗を掲げたモーターヨット81隻から成る船団がファルマスの南海岸沖5kmに出現する。船団の出現に伴い、南東の海から銃声が聞こえる。船団は135ノットの速度で銃声の方角へと航行し、世界を一周して44分後に北海岸沖に再出現する。 |
5:54 am | ポースレーヴェン、“ハーバー・ロード”パブ | 建造物の全ての窓が、架空の土地への孤独かつロマンチックな旅をする2人の人物についての歌、“チャイナへ向かう遅い船”Slow Boat to Chinaの旋律に共鳴して振動する。この楽曲をデュエットで歌う2人は、生得的に“ビング・クロスビー”及び“ローズマリー・クルーニー”であると理解される。そのような人物は既知の歴史上に存在しない。 |
5:59 am | ファルマス病院 | 施設の下の地面が突然の地殻変動によって海抜6.3kmまで上昇する。建造物のレンガが複合輝度1,500,000ルーメンで発光する。 |
6:04 am | ポースレーヴェン公共墓地 | 合計10,000本のゴードンズ・ジンのボトルと、10,000台のMGマグネットZA自動車が、上空から墓地の敷地内に落下する。 |
6:06 am | コーンウォール王立精神病院 | 正面玄関から病院に入った人物は、63km離れたリザード岬にある、自殺の名所として有名な崖の突端に転送される。 |
6:10 am | ニューキー、フィストラル・ビーチ | それまで放棄されていた倉庫が、32種類の実在しない宗教の宣伝広告で瞬時に装飾される。観察された例には“最終審判のプロセス教会”、“サイエントロジー教会”、“仏教”、“第二ハイトス教会”などが含まれる。 |
6:13 am | ボドミン | 高さ1km、幅100mの密閉された円筒形の刑務所がボドミン上空に出現する。この建造物はそれ自体と同じ高さの1本の柱を、積み重ねられた独房の列が取り巻く構造になっている。柱の構造は人間の死体で構築されたスクラントン現実錨に似ている。 |
6:18 am | 全世界的事象 | コーンウォール地方全域のあらゆる映像モニターが、“カール・セーガン”を自称する実体が司会者を務める実在しないテレビ番組“コスモス”の第9回放送を再生し始める。この放送では“クエーサー”や“銀河”などの仮説上の宇宙構造について複数論じられている。ボドミン上空の刑務所構造は水蒸気と化して消滅する。 |
6:19 am | リザード岬 | 名前の無い墓標2基(片方は他方の25%の大きさ)が崖の突端に出現する。墓標の周囲の地面が崩れて海に落ち、海岸線に2本の石柱が残される。 |
6:21 am | 全宇宙的事象 | コーンウォール地方が振動し、60デシベルの一定音量で“チャイナへ向かう遅い船”を生成し始める。ビング・クロスビーとローズマリー・クルーニーの声は、素性不明の女性と思春期の子供の声に置換される。ヒトの胎盤組織の層が現実世界の外表面に構築され、直径120,000 kmの胚殻を形成する。 |
6:25 am | セント・アイヴス | 町が自治体全体を占める巨大な天文台に置換される。天文台内部の望遠鏡の倍率は、宇宙全域を観測するのに必要な倍率の1,256倍である。 |
6:27 am | トルロ | 全住民 (19,260名)が、同一の外見を有する約28歳の素性不明の女性に置換される。女性はそれぞれウェディングドレスを着用し、アップルパイの材料を持っている。女性たちはトルロの聖母マリア大聖堂に集合する。全ての女性は入場後に当初の状態、場所、アイデンティティに戻る。 |
6:29 am | 全宇宙的事象 | コテージの半径5kmの地形がパイ皮に変化し、盛り上がってフライの家を包み込む。男性、女性、子供が手を繋ぎ合っている姿がパイ生地の表面を装飾する。既知現実世界を覆う胎盤組織の層に亀裂が走る。 |
6:32 am | ハーマン・フライのコテージ | フライのコテージ周辺のパイ皮は縮んでフロントポーチへと収束する。既にポーチにある揺り椅子の両隣に、追加の揺り椅子が1脚ずつ出現する。片方の揺り椅子は5~8歳の子供に概ね適した大きさである。SCP-5432が中央の揺り椅子の上に出現する。コテージのオーブンは摂氏200度に予熱した状態で放置されている。 |