1998/04/19
ダーネルは私の持ち物の大半を大聖堂区画に移動させるのを手伝ってくれた。ベッド、机、アーカイブ、そして必要になるだろう適切な設備がすべて揃っている。ここで私が何をすべきなのか、まだ完全にはわからない。写真を撮り、メモを取り、マーカーをつけながら、建物を半分ほど見学した。 「第五教会の切り口を見つけてください」と私は言われた。探せというのか、それとも勝手に作れというのか?この建造物と10年前に亡くなった命との不可解な結びつきを思い出す。
天が下界へと流れだしてきたとき、私にはその眼も、腕も見えなかった。私が生涯尽くしてきた職務に反し、私の思考は、心に巣くうウイルスとか、それが変容する方法だとか、我々の世界を超えた別世界だとかいったことを浮かべることはなかった。私は、ヨーロッパの征服者の有する技術を目の当たりにしたときの、アステカの恐怖に直面した。初めて異常な世界に足を踏み入れた者の恐怖に。自分が狩ることのできないほど大きな獣を見たネアンデルタール人の恐怖に直面した。異常とか正常とかといった観点では考えていなかった。一切考えていなかった。
私の知る真実は
やるべき仕事がある。
1998/04/21
カタコンベでのいろいろあった一日。いろいろあった夜?私は奇妙な「隠し」通路や部屋も含め、発見されたものを一通り歩いた。私は、時間のほとんどを発掘された遺物のカタログ作成、年代測定、観察に費やしている。私のこれまでの分野を考えると、これは非常に快適な仕事だ。あからさまに新米で、親切なマイテという娘は、私が一度に何時間も空けたりしないオフィスに物を持ってくるのを手伝ってくれる。長い廊下のアーチの間のこの場所にいると、まるで一生ここに住んでいるかのような気分になってくる。ここに移動させるという要求が承認されたことには驚いた。私に仕事に没頭する傾向があることを踏まえ、これまでの経験が考慮されたのかもしれない。
この場所と通常の考古学の発掘との間に違いはほとんどない。続き物のジャングル映画やコミックのように、若いころの空想を現実にしているように感じる。勇敢なサファリのリーダーの代わりに、私は年老いた教授役を引き受けた。その役らしい恰好をし始めだってしたよ。
1998/04/22
壁画についてがまだ残っている。私はその研究のために、研究主任として許されるだけその日の職務を延期した。壁画の語る物語は明白だ。天を追われた獣の軍勢が、神として崇拝されるために地上に降り立つ。何らかの理由により、彼らは集団で冬眠する。彼らは時間の犠牲となるのだろうか、それとも審判を待っているのだろうか?より大きな獣が到来するとともに、彼らは目覚める。戦争が勃発し、下等の獣たちは人類自身と同様に、新たな指導者を崇拝する。もちろん、私は他の宗教神話と同じように、歴史家の目を通して観察はしている。しかしそれは、未知の世界に身を置く者にはめったに達成できない贅沢だ。
私は死体を見た。それまでは避けていたが。
1998/04/24
記念日おめでとう、パトリシア。今でも愛してるよ。
1998/04/27
普段から同僚と会話をしているはずなのに、ここ数週間誰一人として会っていない気がする。マイテは私に食事を持ってきてくれるようになった。彼女は一流の料理人だ。
このアノマリーのもたらす影響には興味深い点がある。物質が普通よりも遅い速度で腐敗する。死は、一時的には延長される。思い返してみると、ここに滞在するのを許されたことには驚くことだ。まあ私自身は被験者になることは構わないが、最近財団内部でより倫理的な実験の条件を求める動きがあった。今でも起こっていると思う。
1998/04/30
あの死骸はどれだけの時間をかけて死んだものなのだろう?この実体たちは間違いなく大抵の生物よりは長生きで、さらにこの建造物の影響を考えると、私にはただ推測するしかできない。
あれは死んでいるのだろうか、それとも単に今際にいるのだろうか?その最期の数秒は何百年にも延ばされたのだ。
1998/05/03
トビーが間もなく休暇を取ると伝えてきた。いつになるかはわからない。彼は今夜だと言ったが、「今夜」が実際にはいつなのかは誰も知らない。どういった筋道なのかは思い出せないが、彼の上司と何か会議をしていたようだ。今では私はサイト管理官を務めている。想像できるかい?メトカーフ管理官なんてものを。そんなものを見たらすぐにでも連合に離反する者も出てくるだろうな。
1998/05/05
私は何日も長い間眠れていない。照明のせいだとほぼ確信している。数日出ていくかもしれないが、私の体で試しているちょっとした実験に支障をきたしうることには気づいている。
例の死骸を見ると怒りがこみあげてくるようになった。内心、生きていたならばと願っている。そうだと望んでいる。あれが引き起こしうる死は、あれを脅威とする。連合がイカの頭に風穴を開けるのを目撃できたことを誇りに思う。我々でも同じことをしたのだろうか?
ヒトデの頭にぽっかり空いた穴。あれは死にたがっているが、あれ自身の神殿がそれを許さない。
1998/05/07
キンバリーは今日で13歳になるはずだった。
1998/05/10
マイテに怒鳴ってしまった。あの気の毒な娘に何と言ったかは定かではないが、恥ずかしくて考えたくもない。
絵に込められた物語が私の頭の中でますます形を帯びていく。
1978年、ロシア人は北極で、ある獣を発見した。彼らは墓の中で凍っていたその死骸を発見した。私たちはそれを建築した社会について何一つ知らない。彼らの唯一の遺物は死の遺物であり、獣のための霊廟だ。古代の建築者たちは、自分たちの成したことが忘れられることをわかっていたのか?すぐに死んでしまうのに、なぜこれほどまでに美しい作品を作り上げたのか?彼らの功績を総括すると死である。
私は不死の墓にいたのだ。
1998/05/13
パトリシアが私に夕飯は何がいいか尋ねる。私は普通のもので構わないと答える。彼女は笑い、私に自分がどこにいるのかわかっているか尋ねる。キンバリーが入ってきて、冷光を放つ紫のアイスクリームを食べる。この娘は私を抱きしめ、入れてくれたことに感謝を述べる。
私は、今夜おおきなアリーナで開催されるダンスショーのチケットを予約していた。ポケットの中に半券があるのを感じる。それは内緒だ。誰も私がこれを買ったことを知らない。キミーの無限の山に追加してあげる、もう一つの誕生日プレゼント。
短い休息のため頭を横たえていると、温かなトゥアハのシルクを感じる。
この島は楽園だ。
そしてみんな死んだ。
1998/05/15
平凡な一日。
新たに通路を見つけた。
1998/05/19
昨夜は日中に目が覚めた。廊下を歩き始めた。隠し部屋に入ったところ、見えたのは死体だけだった。この神殿を建てた者、そうでない者。何マイルにもわたって続いていた。
彼らは自分たちが死ぬことを知っていたのだろうか?彼らは喜びを感じながら壁画を描いたのだろうか?死、破壊、避けえないもの。あるいは、彼らは救われるはずだと信じていたのだろうか?
1998/05/24 28
彼らが一緒に死ねたのは幸運だった。
彼らが死んだときに死ねたのは幸運だった。もし死んでいなかったら彼らは死んでいただろう。私は彼らに死ぬよう言っていたはずだから。
木曜日
わたしはかつては夢を見ていた。今は何か月も見ていない。
この神殿のありとあらゆる石を置いた者の名は永久に失われた。
今日は自らを省みた。私は財団の人間だ。私は物事が歪んでいるとき、そうだという事実を知るに足る知性を持っている。たとえ物事がそのように見えても、実際にはそうではない。私の体は仕事を効率的かつ効果的に行う。私はいつものように平静を保っている。マイテが像を落とし、それを百の破片へと砕いたとき、一瞬怒りが脳を貫いた。その千年に及ぶ死がついに終わりを迎えた。今日、この墓にまたひとり住人が増える。私は彼女に、それがお前だったらよかったのにと言う。
夜
第五教会の概念は一見しただけでは第五教会の概念にはほとんど見えないが、ゆっくりと現実を超越していくのだ。私の最初の講義からの引用だ。少々言い換えがあるかもしれないが。
これは第五教会の概念ではない。
私はここで起きていることを完全に認識しており、これが死体だということもわかっている。これに二次的な異常な影響はない。今日、私は少しだけ外に出た。私の心が、ここを立ち去ることと避けえないことに直面することの狭間で真っ二つになっていたからだ。それは夜だった、そして太陽はハイ・ブラジルのあの夜とまさに同じような姿を見せている。キンバリーとパトリシアは壁の下に閉じ込められた。血だまりが見えた。だが二人を救うことはできなかったし、救いたくもなかったのだろう。
私は、聴くべきでなかったテープに近づきすぎて、その内容をリピートし始めたために精神科に監視を受けるようになった。
私がこの日誌を書き始めたのは、私は飼うべきでなかった獣に近づきすぎて、その哲学をオウム返しし始めたからだ。もし私がここで死ぬならば、それは苦悶の中、長い時間をかけることになるだろう。もし仮にハイ・ブラジルの人々がここで死ぬとしたら、それは極めて急速に終わることになるだろう。あの夜の、誰よりも心から愛していた人たちの死とよく似ている。
それは起こったのだ。彼らは北極で獣を見つけた。大型侵略者がいる。怪獣たちがいる。私はベッドを離れ、自らそれを見ることができる。ロビーにある。壁に面するもの。私は壁に面した神殿にいる。壁にはイカがついている。それを否定して何の意味がある?これは起こったのだ。起きようとしているのだ。
その死体に何が起きた?獣が死んだとき、それは死んだのではなく命の次の段階、身体の復活へと移行したのだ。アナスタシス。実際に起こるだろう。それを否定してどうなる?
私は死を先延ばしにする。我々は皆、最終的に同じ運命にあるからだ。トビーが去ったのは、それを知っていたからだ。一緒に続けることもできるが、しかし
もうやめだ。
1998/06/17
今朝はコーヒーが熱すぎた。いくつか新たに遺物を文書に起こした。尿瓶、一種の宗教的な像、儀式に用いる短剣。人の遺体の集団埋葬地の証拠がある。
もし建物内で殺されたとしたら、彼らは信じ難いほど長きにわたり苦しんだに違いない。彼らは、建物がその中の人体の物質、腐敗する物質に与える影響のせいで、最終的に息を引き取るまで何百年も生存していたかもしれない。もっと長いかもしれない。
死にたくない。死ぬのが怖い。
私は来るべき破滅の当事者となりたくはない。
愚か者のように、気の触れた狂人のように、制御不可能な何かの影響を受けた者のように、私は死骸に触れた。評議会に、上司に、そして最終的にこれを文書にまとめる人に伝えたい。私は自分の行動、体の動き、思考、そして愛する人の記憶は完璧に制御できている。
ある種の審判の時が来る。私はそれを見たくはない。そして私には逃げ道があることを知っている。
この逃げ道が素晴らしいのは、それが何も新しいものではないということだ。それはいつだって、始めは小さいが徐々に大きくなっていく穴のように、頭のすぐ後ろにあったのだ。どこへ行けばよいかは知っている。私はかつて行ったことがある。
この神殿を建てた文明など存在しない。存在しなかったのだ。彼らに名前はない。ハナから名前などなかったからだ。彼らはどこへ行ったのか?なぜ彼らは我々のもとを去ったのか?彼らも私のように恐れていたのだろうか?こんなのはフレーバーだ。あきれ返るほどに退屈だ。再びあの島にいられるときか、あの部屋にいるとき以外は、私はもう何も考えない。
これは何一つとして気に病むことではない。待ち受けていることに比べたら穏やかなことだ。